やがて海へと届く の商品レビュー
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彩瀬さん初読み。美しくて切なくて、それでいて温かい。彼女自身、旅の途中に震災を体験し、死について深く考えたからこそこんな文章を紡ぎ出すことができたのだろう。残された側だけでなく、残してきた側の世界も描くことで幻想的な美しさが作品に加わっている。それぞれが前へと進み出す希望あるラストもいい。
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ここのところ手に取る作品の多くに震災が 関係してくることが多くなってきた。 知っていて読むこともあるけど 知らずに読み始め、これもまた、 と食傷気味に思ってしまう自分がいる。 いろんな目線から読めるし なんども再確認しないと薄れがちになる 震災のこと。 私が友達をこういうかたち...
ここのところ手に取る作品の多くに震災が 関係してくることが多くなってきた。 知っていて読むこともあるけど 知らずに読み始め、これもまた、 と食傷気味に思ってしまう自分がいる。 いろんな目線から読めるし なんども再確認しないと薄れがちになる 震災のこと。 私が友達をこういうかたちで失ったからって 真奈のように酷いダメージを 受けるか、心配になってしまった。 逆にここまで、思い続けられる友人を もてたことを羨ましく思う。
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東日本大震災で親友すみれを失った真奈がすみれの死を受け入れるまでの物語り。作者は29歳。なんて若いんだ! 文章は透明感があって美しい。 けれど、夢の部分とか、抽象的でいまいちよく理解できなかった。
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契機になったとしても、特定の震災に限定された物語ではありません。もっと空間と時間のひろがりをもった作品です。若い(一世代)作者の表現は、とてもみずみずしく、好ましく感じました。仕事(レストラン)を語り進める地の文と、話者の意識の基底を流れるイメージ(水とか)の発露である詩的な言葉...
契機になったとしても、特定の震災に限定された物語ではありません。もっと空間と時間のひろがりをもった作品です。若い(一世代)作者の表現は、とてもみずみずしく、好ましく感じました。仕事(レストラン)を語り進める地の文と、話者の意識の基底を流れるイメージ(水とか)の発露である詩的な言葉の対比が絶妙のバランスですばらしいです。
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前に進む事と、忘れる事は全く違う事であって、そこを心の底から理解するまでの苦悩と葛藤が胸に迫ります。私も親友を大学生の時亡くしましたが、今も彼女の携帯番号は消せないし今後も消すことはないけれど、私は私の人生を歩いている。すみれとすみれの母の関係が非常に微妙でそこが真奈の嫌悪感に繋がるのだろうけれど、私には最後語りかけた母の言葉はごく普通の母の言葉に聞こえました。もし遺体が見つかっていれば誰もが納得してもっと早く前に進めたのでしょうか。静かな中にも倒錯した意識の中では感情が激しく揺れ動き印象深い作品でした。
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恋バナの爽やかな話かと思いきや、いい意味でで、ひっくり返された。 芥川賞の候補になっても不思議ではない位、文学的な表現に溢れている。 2、3回と読む度に深さを感じられるような作品。
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久しぶりに小説なんぞを読んでしまった。これは死と再生の話ではない。時間軸のない記憶、生死の境すら不分明なイメージ、寄せて返す彼岸への波のようなものを描いている。深夜営業のダイニングバーの静謐感のある店内描写はまるでそこが暗い海の底にあるかのようだ。
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東日本大震災で友人を失った悲しみから立ち直れない、一人の女性の物語。未曾有の大震災で突然、親しい人の命を奪われた人は、この世の中にどれだけいるのだろう?失った命の数は報道されるけど、失った人の心の数は報道されない。そんな一人の女性が友人の死を受け入れながら、前に進んでいく。内容は...
東日本大震災で友人を失った悲しみから立ち直れない、一人の女性の物語。未曾有の大震災で突然、親しい人の命を奪われた人は、この世の中にどれだけいるのだろう?失った命の数は報道されるけど、失った人の心の数は報道されない。そんな一人の女性が友人の死を受け入れながら、前に進んでいく。内容はそんなに複雑ではないけど、回想シーンと現実のシーンが上手く切り替わりが出来てなくて、少し読みにくかった。ラストも、もっと前向きな方が亡くなった友人も喜ぶのではないだろうか・・・
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苦しいかなしいお話です 文があまりに美しい 身近な人の惨死を超える どれほどの「力」を必要とするのだろう 海へ…… ラストに救いがあってよかった ≪ 悼みつつ それでも生きて 歩く日々 ≫
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この題名は何か哀しいことが始まりそうな予感を含んでいる。 海辺でやっと安らぎを手にして満たされながら次の世界へと旅立つ姿は鳥肌が立つほど美しかった。そして同時に死とは哀しいことではなく美しいものなのだと気がついた。震災という悲劇で命を落とした魂が美しい姿を見せるところに生きるもの...
この題名は何か哀しいことが始まりそうな予感を含んでいる。 海辺でやっと安らぎを手にして満たされながら次の世界へと旅立つ姿は鳥肌が立つほど美しかった。そして同時に死とは哀しいことではなく美しいものなのだと気がついた。震災という悲劇で命を落とした魂が美しい姿を見せるところに生きるものへのメッセージが暗示されている。限りある生を大切にしなさいと。
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