やがて海へと届く の商品レビュー
彩瀬まるさんは文章がとてもきれいなので大好きな作家さんなのだけれど…さすがに本作はいかがなものかなあと思った。 エンタメ小説を期待して購入したのでシンプルにつまらないと感じた。 震災でいなくなってしまった親友。その事実とどう向き合うか。それが本作のテーマな気がするけれど、結局...
彩瀬まるさんは文章がとてもきれいなので大好きな作家さんなのだけれど…さすがに本作はいかがなものかなあと思った。 エンタメ小説を期待して購入したのでシンプルにつまらないと感じた。 震災でいなくなってしまった親友。その事実とどう向き合うか。それが本作のテーマな気がするけれど、結局主人公はそのテーマに対してなにも「行動」をしていないと思う。むしろ行動をしていたのは主人公のまわりの人たち。主人公はただ「親友を忘れたいない!」と頑なに思い続けているだけの幼稚な人物におもえた。 結局、小説の好みの問題なのだろうけれど、自分としてはもっと主人公が窮地に陥って、そのなかで葛藤し、最後には行動しその葛藤を克服する、あるいはその葛藤に負けてしまう…そんなエンタメ作品を読みたかった。
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流れるように読める文章だから、辛い物事だって頭にスッと潜り込んでくる。この苦しみ、突然死んで消化しきれない感じ、思い出せなくなる自分の人生の登場人物たち。すみれが死後見ている世界だと気づいてから胸が締め付けられ、とてつもない苦しみとなって襲ってきた。酷い悪夢のように彷徨っているすみれが不憫で、涙が出そうだった。特に、泥から身体を再生して歩き出すあたり。 死ってこういうものなのかもしれないと漠然とした恐れを持ちながら、すみれの登場シーンを読んだ。 数え切れない愛おしい人間たちの命と記憶が確かにあったのだ。死者は花で彩られているのかもしれない。きっと届いているんじゃないかと祈るような気持ちだ。 いつかまた命の喜びを謳歌できたらいい。こうやって繰り返しているのかなとしんみり思った。
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大切な人の死との向き合い方は、人それぞれ違う。 消化するまでは、その違いがしんどく感じられるのだろうと思う。 自分自身の出来事と重ねて、考えさせられた。 たまたま読んだ日が3.11だったのも意味があったのかな。
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すみれが消息を絶ったあの日から三年。 真奈の働くホテルのダイニングバーに現れた、親友のかつての恋人、遠野敦。 彼はすみれと住んでいた部屋を引き払い、彼女の荷物を処分しようと思う、と言い出す。 地震の前日、すみれは遠野くんに「最近忙しかったから、ちょっと息抜きに出かけてくるね」と伝えたらしい。 そして、そのまま行方がわからなくなった― 親友を亡き人として扱う遠野を許せず反発する真奈は、どれだけ時が経っても自分だけは暗い死の淵を彷徨う彼女と繋がっていたいと、悼み悲しみ続けるが―。 死者の不在を祈るように埋めていく、喪失と再生の物語。 (アマゾンより引用) 主人公の同僚の人が好きだなぁ
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映画館でチラシをみて、観る前に読むのはどうか迷いつつ、図書館で見つけてしまったので手に取り。 岸井ゆきのと浜辺美波、すごくイイ配役だなぁと思いました(自分の読書中の真奈は伊藤沙莉でしたが)。 初めはスミレ側の話が真奈の想像?別人の話?と混乱したまま読んでいたけれど、途中でスミレのか!と気づいて…いろんな気持ちに悲しくなったり切なくなったり涙したり。 大切な人を永遠に失う心の痛み、苦しみ、それを昇華させていく過程の葛藤を静かに描いている作品でした。 心の痛みを苦しみのままずっと留め置いている事は、ある意味で生きていくことを止めてしまうようなものですよね。自分もいつまでもこのままじゃいけないな…。過去には決して戻れないし。嫌でも時間は経過してゆくし前に進むしかないのだから。 真奈や遠野くんのように。
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注射の止血がうまくいかず、図らずも出来てしまった内出血による”あざ”。 体の表面に残る”あざ”は、いつの間にか時間と共に消え去り、そこに”あざ”があったことすら忘れてしまう。 けれど心の中に出来てしまった”あざ”は時間が経ってもなかなか消え去ってはくれない。 たとえ長い年月が経とうとも。 人により心の”あざ”の持ちようはそれぞれ。 ”あざ”を消し去ることがなかなか出来ずにずっと抱えている者もいれば、前に進むために”あざ”を思い切って消し去ろうとする者もいる。 どちらも決して間違いではないのだと思う。 あの震災から三年後の物語。 大切な人を突然、行方不明という形で亡くし、自分だけ一人取り残された、と途方に暮れ、自身で創り上げた幻に惑わされる真奈。 そこにあるのは当惑、未練、怒り、絶望。 一向に前に進むことができず、その場にずっと留まったままひたすらもがく。 そして固結びになった心をほどくことさえ嫌悪する。 辛いままでいい、忘れたくない、楽になんてなりたくない。 心の中で泣き叫ぶ彼女に、これだけは言いたい。 忘れなくてもいいんだよ。でも自分で自分を痛めつけるのだけはやめて、と。 時間が解決する訳ではないけれど、逝ってしまった人が遺してくれたものを、いつか笑って眺めることができますように。 フカクフカク、ユックリと残りの人生を愛しいものにしてほしい。 もがいている途中で真奈が出逢った女子高校生のセリフ 「(震災を)忘れないって、なにを忘れなければいいんだろう。たくさんの人が死んだこと?地震や津波ってこわいねってこと?」 に深く考えさせられた。 私もこの質問にはなんと答えていいのか、分からない。 あの震災から10年。答えはまだ出ない。
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「どうして死んだ人間には反射的にやさしいふりをしたくなり、生きている人間のことは苛烈に糾弾したくなるのだろう。」 3.11で亡くなった唯一無二の親友の死を どう受け入れればいいのか分からない主人公。 骨も身体もなく、明確な死が見えない中で 死を受け入れることは忘れることになら...
「どうして死んだ人間には反射的にやさしいふりをしたくなり、生きている人間のことは苛烈に糾弾したくなるのだろう。」 3.11で亡くなった唯一無二の親友の死を どう受け入れればいいのか分からない主人公。 骨も身体もなく、明確な死が見えない中で 死を受け入れることは忘れることにならないか 彼女はまだ苦しみ続けているんじゃないのかと 彼女の死を受け入れる現実に抗い続ける。 作中で交わされる、 「忘れないっていう言葉が、すごくうさんくさく思えてきた」「それさえ言っとけばいいだろ的な・・」 という会話も印象的。 私たちは3.11を忘れてはいけないと言うけれど それは何を指しているんだろう。 震災の恐ろしさ? 今回で学んだこと? 多くの人の無念の死? [人の死]に対する受け入れ方は人それぞれだけれど きっと必要な想いは同じ。 相手が生きていたことは必ずどこかで繋がっていて 彼、彼女の死を受け入れることは、 彼、彼女の生を受け入れることなんだろう。 3.11で亡くなった沢山の人々の生を想い その行く道のあたたかさを祈る、 鎮魂歌のような作品だった。
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簡単には感想が書けない内容。 震災で突然親友を失ってそれを受け入れられない主人公。 死者がなんの前触れもなく 死ななければならなかった理不尽な状況下で 本人も受け入れられない心情が描かれる 帰りたい一心でひたすら歩きやっとあるべき場所へたどり着く
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自分の中に亡くなった人を息づいている、思う気持ちがあると気付けたのがよかった。一歩先に進む描写が胸を打つ。女子高生との会話もハッとさせられるね。
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*すみれが消息を絶ったあの日から三年。真奈の働くホテルのダイニングバーに現れた、親友のかつての恋人、遠野敦。彼はすみれと住んでいた部屋を引き払い、彼女の荷物を処分しようと思う、と言い出す。親友を亡き人として扱う遠野を許せず反発する真奈は、どれだけ時が経っても自分だけは暗い死の淵を彷徨う彼女と繋がっていたいと、悼み悲しみ続けるが――。【死者の不在を祈るように埋めていく、喪失と再生の物語】* この物語は、祈りであり、救いだ。死者を忘れるではなく、そこに留まるでもなく、一緒に歩んでゆく。いつか、こうなれたなら。
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