マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ の商品レビュー
ドラァグクイーンのシャールが夜食を提供する店「マカン・ラマン」。なぜか、人生に行き詰った人が自然と足を向ける場所だ。シャールの提供する料理はいわゆる「マクロビ」と言われる料理だろう。一つ一つの食材が意味を持ち、それらが合わさって、栄養価の高い絶品の夜食が出来上がる。読んでいるこち...
ドラァグクイーンのシャールが夜食を提供する店「マカン・ラマン」。なぜか、人生に行き詰った人が自然と足を向ける場所だ。シャールの提供する料理はいわゆる「マクロビ」と言われる料理だろう。一つ一つの食材が意味を持ち、それらが合わさって、栄養価の高い絶品の夜食が出来上がる。読んでいるこちらの胃袋が反応してしまう描写だ。重い病気を抱えたシャールがある人を「自由な人なんていない。誰でも自分の荷物は自分で背負わなくてはいけない。」と諭す。シャールの抱えた荷物は重い。また厨房に立つシャールの微笑みを待ち続けたい。
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数日熱が出て下がらない、というのは、私にとって日常なのだが、それにしてもだるく、苦しい。そんな時に読んだ。本棚にしまってある数冊は、疲れて読めずに図書館に返してもらい、若干延滞しているのはわかっていて、吸い寄せられるように読み始め…。半日かからないで読み終えた。今夜家族にすぐ返し...
数日熱が出て下がらない、というのは、私にとって日常なのだが、それにしてもだるく、苦しい。そんな時に読んだ。本棚にしまってある数冊は、疲れて読めずに図書館に返してもらい、若干延滞しているのはわかっていて、吸い寄せられるように読み始め…。半日かからないで読み終えた。今夜家族にすぐ返しに行ってもらう。次に待っている予約者の方も、同じにぐったりしていたら、この本が助けになるかもしれないから。 ドラッグ・クイーンのシャールは、トランスジェンダー。ドレスなどを商う傍ら夜食のカフェを開いている。 身体と心をみたす,ナチュラルで温かい食事。それをゆったり語り合いながら摂ることで癒やされていく。 そこに集う人は、真面目に生きているのに、なんとなく頭打ちになったり、苦しんでいる人たち。自殺するほどではない、この程度のことでは死ねない。でも、明日も今日もこのまま暮らすのは苦しい人達。 男女どちらの立場で読んでも、「ああ、分かるこういうこと」…って思う悩み。 それを癒やしてくれる場所や他人に、思わず人は縋る。でも、実はシャール自身が、誰よりも、重い病と、マイノリティーとしての悲しみを引き受けている。 シャールを癒やすのは、では誰なのか。 それは、自分自身なのだと、私は思う。人を癒やすことに、シャールが縋っていなくて、自分の事は自分で引き受けているから、このお話は潔いし、暗くない。 明快で取ってつけた爽快感はないけれど、潔い。どこか向こうの方に白い光が見えるような。 マカン・マランの店内は暗く、良い香りに満ちて、人はそこで休むけれど…そこから出て白昼歩む時の店の外の光は目に痛い。けれど、自分の日常をなんとかこなした時眼裏に見る光は、純白で、きっと優しい。 そんなことを思わせる。疲れも苦しみも、読み終わると溶けるようで。良い小説だった。 そして本を閉じて、こんなものが食べたいな。ここに行きたいな、と思って、レビューを拝見し…。私は、しばしふと考えた。 出てくる料理にお腹がぽわっと温まる思いがするし、シャールに確かに癒やされるけれど…。それにばかり目が行くけれど。この話はそれだけの話かな。 自分のために身体に優しい料理を作り、自分の悲しみは自分が引き受ける。そして…どうしても捨てたくないことは自分にしかわからないから、大事にする。他人の大事なことも、自分にはわからないから大事にする。 それができたら。 あれもこれも与えられなきゃ嫌だ、と言わずに、捨てるものを捨てて、持てるものだけしっかり持つ。 今日生きられたのだから、明日も。 そう自分に声をかけて。 誰かの期待する未来より、残された自分の望みに素直になって、折り合いをつけて暮らせば、自分の家も、マカン・マランになるのだ。 誰かがシャールのように毒抜きをやってくれたらと思うから、あの場所をみんな慕うけど…。自分で出来るようにならなきゃ、きっとみんなただここで腐るだけ。 自分で自分は癒せる。もしかしたら他人様も…。無論、他の方からも力をもらっている。その力を目覚めさせるのが、このカフェの底力ではないか。コンビニ飯や外食で身体に毒を貯め。『こうでなくては。保証がほしい。』という見えない鎖で心に毒を貯め…。 それでは苦しすぎる。 今日、あなたが生きて暮らせている。 それだけで大丈夫。まず、そこから。 自分のために、さあ、優しく一杯のお茶をどうぞ。
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男性ですが女装する人が営む昼間はダンス衣装、夜23時には夜食を出す秘密のカフェのお話し。ドラァグクイーンという言葉も初めて知りました。見た目はごつくて口も悪いけれど心は温かくて、体調を気遣った少し漢方的なスープを出してくれる優しいお話しでした。とにかく出てくる料理、特にスープがお...
男性ですが女装する人が営む昼間はダンス衣装、夜23時には夜食を出す秘密のカフェのお話し。ドラァグクイーンという言葉も初めて知りました。見た目はごつくて口も悪いけれど心は温かくて、体調を気遣った少し漢方的なスープを出してくれる優しいお話しでした。とにかく出てくる料理、特にスープがおいしそうです。。
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この手のお話好きだなあ。 宮下奈都さんのお話に出てくるハライとか。 マカン・マラン、インドネシア語で夜食を表す。 不定期に深夜営業をするお店。 こんなお店が近くにあったら通い詰めちゃいますよね。 出てくる人もどこにでもいるでも素敵な人たちで、お料理や飲み物もすごく気になる。 実...
この手のお話好きだなあ。 宮下奈都さんのお話に出てくるハライとか。 マカン・マラン、インドネシア語で夜食を表す。 不定期に深夜営業をするお店。 こんなお店が近くにあったら通い詰めちゃいますよね。 出てくる人もどこにでもいるでも素敵な人たちで、お料理や飲み物もすごく気になる。 実際にはどんな味なんだろう。 自分でも作れたらなあ。 装丁もすごく好き。
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うん、良かった! こんな夜食カフェがあるのなら、毎夜毎夜探し回るだけどなぁ・・・ 見つけても、人には言えないけれど・・・
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苦しくても、不自由で不平等でやってられないと思っても、それでも生きる、そんな人たちへの応援歌、そんな風に受け止めました。 ひとりでお正月を迎えるのは淋しい。その一文は今の私には辛い。考えさせられる。 一泊だけでも帰ろうかな。うーん。
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やっぱ 料理のお話はいいね 心がほっこりする マカン・マランの料理も魅力的だけど シャールの人間性も魅力的 こんな 話し相手いたら 入り浸っちゃうね
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
隠れ家の深夜のカフェでとっておきのマクロビオティック。 生きていくのがしんどい今の世の中で、少しは救いになりそうな本です。 ドラァグクイーンのマスターとその境遇が、他の類似作品と一線を画しています。
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(2016/7/12読了) 古内さんは、多分アンソロジーでは読んだことがあるけど、単独の本は初めてだと思う。 わたしは食いしん坊なので、食べ物を題材にしたは大好き。でも料理は苦手なので、作中の料理人には、羨望と嫉妬を感じてしまう。 おかまちゃんが登場する本も読んでいる方じゃないか...
(2016/7/12読了) 古内さんは、多分アンソロジーでは読んだことがあるけど、単独の本は初めてだと思う。 わたしは食いしん坊なので、食べ物を題材にしたは大好き。でも料理は苦手なので、作中の料理人には、羨望と嫉妬を感じてしまう。 おかまちゃんが登場する本も読んでいる方じゃないかな? 読みやすく、優しい気持ちになれる。 こんなお店があったら、私も常連さんになって、シャールさんにたくさん相談してみたい。 (内容) ある町の路地裏に元超エリートのイケメン、今はドラッグクイーンが営むお店がある。そこには様々な悩みをもつ人が集まってきて? (目次) 第1話 春のキャセロール 第2話 金のお米パン 第3話 世界で一番女王なサラダ 第4話 大晦日のアドベントスープ
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真夜中にこっそりと営業する、 夜食カフェのマカン・マラン。 どこかで読んだことのあるような、 ほっこり系おとぎ話かしらと 先入観を満タンにしつつ読み始めました。 世の中にはいつだって勝ち組と負け組、持てるものと待たざる者、マジョリティとマイノリティが存在していて その仕組みの中...
真夜中にこっそりと営業する、 夜食カフェのマカン・マラン。 どこかで読んだことのあるような、 ほっこり系おとぎ話かしらと 先入観を満タンにしつつ読み始めました。 世の中にはいつだって勝ち組と負け組、持てるものと待たざる者、マジョリティとマイノリティが存在していて その仕組みの中で自分の存在を見失わないよう、 溺れないように必死で生きている人たちがいる。 小説の中から、そんな人たちの辛さや必死に生きる姿が リアリティを持って伝わってくるためか マカラ・マランがおとぎ話みたいに 疲れた人がそっと羽を休める 止まり木のようなカフェであることが、 読み終わった今もとてもとてもうれしい。
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