国を救った数学少女 の商品レビュー
スウェーデンの作家「ヨナス・ヨナソン」の長篇ミステリ作品『国を救った数学少女(原題:Analfabeten som kunde rakna、英題:The Girl Who Saved the King of Sweden)』を読みました。 「ヨナス・ヨナソン」の作品は一昨年の6...
スウェーデンの作家「ヨナス・ヨナソン」の長篇ミステリ作品『国を救った数学少女(原題:Analfabeten som kunde rakna、英題:The Girl Who Saved the King of Sweden)』を読みました。 「ヨナス・ヨナソン」の作品は一昨年の6月に読んだ『窓から逃げた100歳老人』以来ですね… 久しぶりの北欧ミステリです。 -----story------------- 人種差別の激しかった南アフリカで、暮らしのためにし尿処理場で汲み取り桶運びに明け暮れる女の子がいた。 「ノンベコ」13歳。 天才的な数学の才能はあるけれど学校には行ったことがなく、だから当然読み書きのできないこの少女が、大人になって遠くスウェーデンの国王と首相の命を救うことになろうとは、本人も含め誰も予想だにしていなかった… 物語の舞台は南アフリカからスウェーデンへ。 開発の途上で余ってしまった爆弾1個をめぐって、そっくりなのに全然似てない双子、いつもへべれけの爆弾開発者、じゃがいも農家の伯爵夫人、のん気な王様、きれい好きな首相、モサド諜報員、そして「胡錦濤国家主席」まで、ひと癖もふた癖もある人物が入り混じって、てんやわんやの大騒ぎ。 爆弾は誰の手に? 「ノンベコ」の恋の行方やいかに? そして、スウェーデン王は共和主義者の魔手から無事逃れられるのか?! ----------------------- 前作『窓から逃げた100歳老人』と同じく、コメディ&エンターテイメント要素が強い作品で、大人向けのお伽話的な軽いミステリとして愉しめました… 史実にフィクションを巧く織り交ぜたドタバタ騒動劇で、随所に光るブラックユーモアが印象的な作品でしたね。 原子爆弾はだれのもの―? アパルトヘイトの象徴である南アフリカ・ソウェト地区出身で、母親がシンナー中毒で学校にも通えず、5歳のときから糞尿運びの仕事をするという劣悪な環境で育ち、わけあって原子力研究所で掃除婦として働くことになった天才数学少女「ノンベコ」は、この世に存在していてはいけない原子爆弾をたまたま手に入れてしまったから、さぁ大変… しかも、原子爆弾とともにスウェーデンに辿り着いた彼女が巡って出会うのは、どこかふつうじゃない人ばかり、、、 見た目は瓜二つで名前まで同じなのに似てない双子の「ホルゲル(1号)」と「ホルゲル(2号)」、自称すご腕だがちょっと間抜けなイスラエル諜報員「A」と「B」、不法滞在の中国人3姉妹、さらにはのんきなスウェーデン国王「カール16世グスタフ王」やきれい好きの「ラインフェルト首相」、中国の「胡錦濤(こきんとう)国家主席」まで巻きこんで… 心臓発作で死亡したばかりの男の殺害、警察からの逃亡、原子爆弾の炎上阻止、「ホルゲル(1号)」のパラシュートなしの高度600メートルからの大ジャンプ、そして「カール16世グスタフ王」が白いシャツに赤い血のシミを付けながら3羽の鶏を斧でさばいたり、「ラインフェルト首相」がブランド物の燕尾服と革靴を泥だらけにしながら畑でジャガイモを収穫したりと、てんやわんやの大騒動。 「ノンベコ」の機転の利いた行動で、原子爆弾は無事にスウェーデンから国外に持ち出され、「ノンベコ」と「ホルゲル(2号)」は幸せな家庭を築く… というエンディングも良かったですね、、、 「ノンベコ」の頭の良さに加え、卓越したコミュニケーション能力が、世界の平和を守りましたねー 時折、笑いながら、愉しく読めました。
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こういう小説を「怒涛の伏線回収」っていうんだろうな。久々に小説で涙が出るまで笑った。元々の小説も良いのだろうけど、翻訳も良いのかな。
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読書メーターから移記 完璧な完成度のエンタメ小説。読書の楽しさをあらためて感じられる最高のどたばたで、現実社会のシニカルな面もあって、莫迦話にもなってないことも素晴らしい。気分転換に最高の一冊かも。タイトルだけが違和感。
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ところどころブラックすぎて、ちょっと考えないとわからない時もあるユーモアとスウェーデンドリームに満ちた奇想天外な冒険小説。 読み終えてから、この邦題はちょっと変な気がして原題を確認したけど、スウェーデン語なのでわからなかった。 ホルゲル2号が最終的に幸せになってほっとした。 「心...
ところどころブラックすぎて、ちょっと考えないとわからない時もあるユーモアとスウェーデンドリームに満ちた奇想天外な冒険小説。 読み終えてから、この邦題はちょっと変な気がして原題を確認したけど、スウェーデン語なのでわからなかった。 ホルゲル2号が最終的に幸せになってほっとした。 「心が弱い」と評されているけど、彼の育った環境を思うと驚くほど健全だ。 ハイビー事件 https://web.archive.org/web/20080803051005/http://www.glbtq.com/social-sciences/gustav_v.html
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
前作の『窓から逃げた100歳老人』よりは楽しく読めた。 理由は、死者をポイ捨てするような描写がなかったから。 面白くはあったんだけど、不満もある。 国を救った…の国はどこのこと? 最初は南アフリカのことかと思ったんだけど、最終的にはスウェーデンのこと?と思ったり。 そして、割と早めに主人公のノンベコは少女よりも大人になっていた。 なぜそういうことになるかというと、歴史上の実在の人物をストーリーに絡めようとするからだと思うの。 要は南アフリカの文盲の少女が、持ち前の数学的才能と機知で、底辺の生活を脱出。 その際に、どういうわけかあってはならないはずの原子爆弾がついてきて、それを安全に処置するためにてんやわんやの大騒ぎ…って話なのだ。 本当なら手に汗握って、スピーディーな展開に心臓バクバクさせながら読むべきなのに。 生まれ故郷を脱出するのに、5歳から9年ほど「し尿処理場」で所長として働く。 所長を首になり、世界に向かって歩き出したとたんに交通事故に遭い、被害者なのに賠償金を払うために加害者の下で10年以上掃除婦として働かされる。 あってはならない原子力爆弾を取引に使い、逃げ出した先がスウェーデン。 手違いで爆弾までスウェーデンに届いてしまったので、その処理に悩むこと10数年。 冗漫なんだよ。 歴史上の人物は必要なのかな。 確かにスウェーデン国王はチャーミングではあったけど。 かと思うと、宗家の三姉妹は、あの有名な宗家の三姉妹とは全然違ったし。 欧米の小説で割とあるスラップスティックなコメディ。 本屋大賞の翻訳部門にノミネートされていたから読んだけど、彼の作品はもういいかな。 面白く読んだけど、残るものは特にない。 もっとずっしりと読みごたえのある本を読みたいのだ、私は。
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ありえない設定、そこに、実在の人物、史実を取り混ぜて話は進む、「間違って出来てしまったかなり危険な爆弾」という深刻な問題を抱えながら。 心の中でゲラゲラ笑いながら読んだ。 現在のスウェーデン国王、当時の首相が出てくる場面は特に。 ブラックユーモア、ちょっとした批判・風刺も出...
ありえない設定、そこに、実在の人物、史実を取り混ぜて話は進む、「間違って出来てしまったかなり危険な爆弾」という深刻な問題を抱えながら。 心の中でゲラゲラ笑いながら読んだ。 現在のスウェーデン国王、当時の首相が出てくる場面は特に。 ブラックユーモア、ちょっとした批判・風刺も出てくる。 個人的には、それぞれの登場人物は憎めない愛すべき人間に感じた。
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著者の作風・文体のファンである。例によって破天荒な進行だが、笑いの裏に共感できる主張が感じられる。主人公は南アフリカ出身の最貧困層の黒人の女の子だが、持ち前の機転と弛まぬ向学心によってハチャメチャな、あり得ない人生の行く末にハッピーエンドが待っている。ひょんなことから存在するが、...
著者の作風・文体のファンである。例によって破天荒な進行だが、笑いの裏に共感できる主張が感じられる。主人公は南アフリカ出身の最貧困層の黒人の女の子だが、持ち前の機転と弛まぬ向学心によってハチャメチャな、あり得ない人生の行く末にハッピーエンドが待っている。ひょんなことから存在するが、存在しないとされている核、これをめぐって、同名の双子(性格が真逆)、同名ゆえに存在しないことになった片割れ、飲んだくれの技術者、イスラエルの諜報員、常識はずれの中国人3姉妹、過激思想の女の子など風変わりな人物群と、中国の胡錦濤国家主席、スウェーデンの王と首相が入り乱れて、どんな展開になるのか先がまったく読めない物語に引き込まれていく。深刻な事態なのに、生真面目なバカさ加減が同居しているおかしさが秀逸。読後感がいい。
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何日間かかけ、読み終えたが私はあまり面白く感じなかった、、。もっと数学的な話かと期待していたのですが、数学の話は少なく、、。あまりぴんと来なかった。頭のいいノンベコ、ちょっとドジな3人姉妹、変わりものの父のもとに生まれた男の双子、様々な人が核爆弾をかこみ、わちゃわちゃなっていくは...
何日間かかけ、読み終えたが私はあまり面白く感じなかった、、。もっと数学的な話かと期待していたのですが、数学の話は少なく、、。あまりぴんと来なかった。頭のいいノンベコ、ちょっとドジな3人姉妹、変わりものの父のもとに生まれた男の双子、様々な人が核爆弾をかこみ、わちゃわちゃなっていくはなし。途中は楽しくて読み進めていたのですが、最後が残念という感じでした。
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グイグイと読ませるスピード感がある。ところどころ、ここまで設定入れなくても、とブレーキかかるところはあるが、全体に面白い。 シンボルとしての君主制の評価には、異論を認めつつ反対、と思っています。
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史実をおりまぜたフィクションだが壮大な時間と空間のスケールで終始楽しめる。 南アフリカで生まれ育った非凡な主人公が複雑に絡み合った事情によりスウェーデンに移住し 王や首相を始めとした様々な人物と痛快に物語を繰り広げる。 語り口が常にひねくれた冗談と皮肉にあふれていて、文章の作り...
史実をおりまぜたフィクションだが壮大な時間と空間のスケールで終始楽しめる。 南アフリカで生まれ育った非凡な主人公が複雑に絡み合った事情によりスウェーデンに移住し 王や首相を始めとした様々な人物と痛快に物語を繰り広げる。 語り口が常にひねくれた冗談と皮肉にあふれていて、文章の作り方がとても面白い。
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