「子供を殺してください」という親たち の商品レビュー
精神を病んでいるのに自覚のない子供を抱えた親たち。 しかし、なぜそうなったのか。 そして、これからどうしたら良いのか。 現日本の抱える法整備や施設の受け入れ状態等々の問題点が書かれている。 知らないことも多々あった。 とても難しい問題。 2018.3.4
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これは表紙がずるい。ミスリードさせようとしている。こんな幼い子供の丸まった小さな背中を見たら、「子どもを殺したいとはなんて非情だ!鬼!悪魔!」という怒りが瞬時に湧いてくるに決まっている。想像するのはネグレクトとか児童虐待とか、暴力に抑圧されている非力な存在の子どもの姿だ。 で...
これは表紙がずるい。ミスリードさせようとしている。こんな幼い子供の丸まった小さな背中を見たら、「子どもを殺したいとはなんて非情だ!鬼!悪魔!」という怒りが瞬時に湧いてくるに決まっている。想像するのはネグレクトとか児童虐待とか、暴力に抑圧されている非力な存在の子どもの姿だ。 でも読み始めると内容が全く違う。成長した子どもの暴力と殺意に怯える親や兄弟の姿がそこにはあった。 不謹慎にも、殺してあげられるなら殺して差し上げたい、という気持ちすら芽生えてくる。もちろんそんな犯罪行為は許されるわけはないのだが、我が子や肉親に命を狙われるという救いがたい状況下におかれたことがない者には、彼らの切迫感は想像もできないことだろう。 命を狙われているから助けて欲しいと訴えているのに、肉親なんだから家族内で解決してよ、という論理。子どもがそんな状況になったのは親の育て方が悪かったんじゃないの、という突き放した態度。あぁ、なんとも冷たい。非行少年少女の家庭内暴力と勘違いしているんじゃないのか? 読めばわかるが全く違う。親子の絆、兄弟の絆なんてもうない。あるのは近親憎悪からくる殺意だけだ。殺意をもったストーカーが肉親だったと考えればイメージとしては近い。 精神を病んだ理由は様々だろう。確かに親の育て方に問題がある面も多少はうかがえる。失恋やいじめ、進学、就職の失敗など。しかし、そんな状況になっても、ほとんどの人は親兄弟に殺意を抱くようにはならない。たぶんほんの一部なのだ。 自分には壮絶な甘えのように見えるが、専門的にはどうなんだろう? 著者は精神科医ではないので、その辺には突っこんでいない。 逮捕や入院とという事態になっても、粗暴なのは家族の前だけで、警官や医者の前だと大人しくなる患者もいるため、その先の切迫した事態が理解できない警察や病院もある。 それにも関わらず、病院は長くて3か月の入院で追い出す。それ以上入院させていても医療点数が稼げないので儲からないからだ。設備の整った、新しくきれいな病院ほどそうすると言う。患者や家族のことなんて考えない。優先されるのは利益のみ。そんな制度になってしまっているのは行政にも責任がある。 そして家族を殺したいと思っている患者が、家族のもとに帰される。 具体的な事件名は伏せられているが、実際に何件かこのような状況になって殺人事件となった事例も紹介されている。 どうしたらいいのだろう。なんのアイデアも浮かばない。途方に暮れるばかりだ。 続編も刊行されているので読もうと思う。
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殺到、急増、一点張り。語彙多くなく推測の話し少なくない。しかしこれらの問題対応が簡単でないことも良くわかる。海外の対策や国内で良策を出している地域や機関の例があるともっと良い。
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借りたもの。 病識のない精神疾患患者を、医療機関に繋げる支援をしている著者が見た、当事者家族の姿と現在の精神医療の問題点を垣間見る本。 子が精神疾患を患う患者の原因は親にあると明言する。何故なら親子関係――それは人間関係の根本である――が原因だからだ。 しかし、親にその自覚などあ...
借りたもの。 病識のない精神疾患患者を、医療機関に繋げる支援をしている著者が見た、当事者家族の姿と現在の精神医療の問題点を垣間見る本。 子が精神疾患を患う患者の原因は親にあると明言する。何故なら親子関係――それは人間関係の根本である――が原因だからだ。 しかし、親にその自覚などあるわけが(そして認めるわけも)無いし、親が原因であっても、それを自覚した上で改善しようとする本人の努力が大事でもある。 とはいえ、この本に挙げられる家庭は往々にしてそれを妨げる傾向がある気がする。 大抵は世間体を気にしたり、肉体的・精神的暴力などで辟易して関わりたくない(←この気持ちはわかるけど…)という理由から。 また、現在の精神疾患への医療機関が、本来治療を必要とする重度の患者を受け入れる体制が整っていないこと、「儲からない」「手がかかる」という理由、更には法律・制度から早期の退院を促していること等、問題を指摘している。 p.267から記載されている行政機関、医療機関などの専門機関へ相談に行く際にまとめておくべき要項はきちんと解説されていて、とても大切なことだと思う。 児童の後ろ姿の表紙から児童虐待問題の本かと思っていたら、違った…… しかし、これは一種の虐待が潜んでいる。それを暗示しているのかもしれない。
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思っていた内容と違った。 もうちょっとそれぞれのケースに踏み込んだものを期待してしまった。 後半は、ただ作者の演説を聞かされてるだけ、みたいな気分になった。
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私は、著者がこんなにも「精神病院に入れなければ!」「もっと長く入れなければ!」となっているのは、精神病院を素朴に万能視しているからなのかと思ってた。 でも、精神病院でこういう人たちを治療することに限界があることや諸外国と比べても日本の精神病院に問題があることもちゃんと知っていて、...
私は、著者がこんなにも「精神病院に入れなければ!」「もっと長く入れなければ!」となっているのは、精神病院を素朴に万能視しているからなのかと思ってた。 でも、精神病院でこういう人たちを治療することに限界があることや諸外国と比べても日本の精神病院に問題があることもちゃんと知っていて、それでも精神病院に望んでいるというのが意外だった。 著者は、家族側に立てば、この社会の中でこんな風になっている人たちを収容するのは精神病院でしょう(少なくとも現状では。)という結論なのかな。 あと、著者は、精神障害者についての偏見や差別の助長の問題についても少し書いてるけど、著者こそ、ツイッターでの精神障害者の事件のピックアップの仕方とか自身が関わっている漫画の内容とか、この問題のその部分をそういう風に見せるの世間に向けて良い効果になると思うんですか?とか思ったりもするけど。
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内容(「BOOK」データベースより) 自らは病気の自覚のない、精神を病んだ人を説得して医療につなげてきた著者の許には、万策尽きて疲れ果てた親がやってくる。過度の教育圧力に潰れたエリートの息子、酒に溺れて親に刃物を向ける男、母親を奴隷扱いし、ゴミに埋もれて生活する娘…。究極の育児・...
内容(「BOOK」データベースより) 自らは病気の自覚のない、精神を病んだ人を説得して医療につなげてきた著者の許には、万策尽きて疲れ果てた親がやってくる。過度の教育圧力に潰れたエリートの息子、酒に溺れて親に刃物を向ける男、母親を奴隷扱いし、ゴミに埋もれて生活する娘…。究極の育児・教育の失敗ともいえる事例から見えてくることを分析し、その対策を検討する。現代人必読、衝撃のノンフィクション。 題名と表紙から、駄目な親が幼い子供を放棄する事に対する本かと思いきや、そうでは無く精神を病んだ人々の家族の痛切な思いを受け止めて来たノンフィクションでした。こればかりは誰がそういう風な状況になるのかは最後まで分からないと思うのですが、人の人命に関わるような激しい精神疾患についても事件になるまでは割と放置になる事が分かって、とてもとてもびっくりしました。症状が悪くなればなるほど受け皿が無く途方に暮れる現状が分かりやすく書かれています。筆者は疾患のある人々を医療機関へ繋ぐのが仕事なのですが、完全にそこから逸脱して頑張っておられます。是非色々な人に読んでいただきたい本であります。
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強烈なタイトルのこの著書。 自傷行為や家庭内暴力、他人への誹謗中傷やストーカーを繰り返してしまうなどの精神疾患のある子供と対峙していくにつれ疲れ果てた親が、実際に口にする言葉なのだそうです。 こういった後天的な精神疾患のある患者を医療機関に移送する民間サービスを営む著者押川氏は、...
強烈なタイトルのこの著書。 自傷行為や家庭内暴力、他人への誹謗中傷やストーカーを繰り返してしまうなどの精神疾患のある子供と対峙していくにつれ疲れ果てた親が、実際に口にする言葉なのだそうです。 こういった後天的な精神疾患のある患者を医療機関に移送する民間サービスを営む著者押川氏は、 自治体や警察に相談したにもかかわらず適切な治療行為を受けられなかった精神疾患を持つ患者が、その直後に無差別殺人などの重大な犯罪をおかしてしまう光景を目の当たりするにつれ、 対象患者に対する日本の法制度や医療制度、そして何より子供に対する親の意識の低さに警鐘を鳴らしています。 まず著書が作中で、こういった後天的な精神疾患の回復や治癒がうまくいかない原因が親にあると痛烈に断言している点が印象的でした。 親が見栄や外聞を気にしてわが子の現状から目を背けようとしたり、治療や保護を病院や警察や保健所や著者のような民間サービスなどに「人任せ」にする現状を、 子供を持つ全ての親が正しく認識しないとこの問題は解決しないと述べられている点は、子供を持つ一人の親として非常に心に刺さる指摘でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
精神障害者移送をしている著者の活動記録のようなもの。 移送だけじゃなくて面会やら環境調整やら宿泊施設経営やら、とにかく手広くやっている。 物々しい言葉使いやパターナリスティックな態度などで敵意を持たれやすいと思うが、内容に批判を加えるのは簡単ではなさそうというくらい実情をよく見ている印象。 本人の問題、家族の問題、病院から制度まで、どれか一つに帰責しないで多角的に分析している。 別に医療化や入院が最適なソリューションじゃないことを著者自身はわかりつつ現実に対応して支援しているようだ。 そのうえで敢えて書くけど、ちょっとナイーブ過ぎて被害的。文章のトーンが。そのあたり「頑張っている」と自認する関係者は腹立つかも。 各種メディアで見る姿と本で読んだ印象はだいぶ違うので、興味のある人は読んでみるといいと思う。
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家庭内暴力に疲れ果て、年老いた親が中年になった子供を殺害 する。先日もそんなやりきれないニュースがあった。 しばらく前に本書の著者・押川氏をテレビで見た。精神障害者移送 サービスなる業務を行っている押川氏の仕事に密着したドキュメント だった。 自覚症状もないままにア...
家庭内暴力に疲れ果て、年老いた親が中年になった子供を殺害 する。先日もそんなやりきれないニュースがあった。 しばらく前に本書の著者・押川氏をテレビで見た。精神障害者移送 サービスなる業務を行っている押川氏の仕事に密着したドキュメント だった。 自覚症状もないままにアルコール依存症に陥り、家族に暴力を振るう 男性や、暴君のように母親に自分の欲求を満たす為の要求を繰り返す 少年。彼らを説得し、いかに医療に結び付けるかの過程が紹介され ていた。 本書では押川氏が実際に手掛けた事例の紹介と、精神科医療周辺の 問題点と対策を検討する書である。 なんともショッキングなタイトルだが、実際の事例はそれ以上に衝撃的 だ。我慢に我慢を重ねた家族が、藁にも縋る思いで押川氏に助けを 求めるのだろう。 殺すか、殺されるか。そんなギリギリの状態にまで追い込まれた家族。 そして病識もなく、荒れて行き、精神に異常を来して行く子供。双方が やりきれない。 だが、そうなった結果は「親が悪い。教育が悪い」と結論してしまうの はいかがなものか。確かに本書で扱われている事例はある程度の 資産があり、教育程度も高い家庭がほとんどで、幼いころから多大な 期待を背負わされたり、欲しい物はなんでも手に入る環境に置かれた 子供が多い。 しかし、同じような環境で育った子供のすべてが初めての挫折から 引きこもりになり、家族を振り回す存在になる訳でもないだろう。 それの証拠に、本書でも老いた親に変わって保護者の立場を 引き受けた弟や妹の、「その後」の苦悩も紹介されている。 心の問題は難しいよね。人間、程度の違いはあるもののストレスに 晒されて生きている。「こうでありたい」と描いた理想とは違った生活 を送っていることだって少なくない。 それでもどこかで折り合いをつけて生きているんだと思う。折り合いを つける。そのことが出来なかった人たちが心を病んでしまい、鬱屈し た気持ちが一番身近にいる家族に向かってしまうのではないかな。 著者が言うように、取りあえずは医療に繋げることは重要だと思う。 それでも、退院後の受け皿がなければ元の木阿弥なんだよね。 自傷他害の恐れがある人の受け皿のないことが、悲惨な事件を 招いているのは日々のニュースを見ていても分かるもの。 日本では殺人事件の発生件数は減少傾向にあるという。だが、事件 件数のうち、家族間の殺人発生率は増加しているそうだ。 遠くない昔のように鉄格子のはまった医療施設に閉じ込めておけば いいとは思わない。それでも「3か月で退院」という現行の制度では 救えない家族がいるんだよね。難しいわ。 だって、私だっていつ・何が原因で精神を病んでしまうかも分からない のだもの。
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