二度寝とは、遠くにありて想うもの の商品レビュー
津村記久子さんのエッセイ。 穏やかな雰囲気のエッセイだったので、わたしの好みに合いました。 以下特に面白かったところ。 ・布団への限りない敬愛 ・気安い顔の災難 ・幸せになれないということ ・お菓子の行列の足元 ・2000年の新卒 ・一人でごはんは不幸すか? 2000年の新卒で、...
津村記久子さんのエッセイ。 穏やかな雰囲気のエッセイだったので、わたしの好みに合いました。 以下特に面白かったところ。 ・布団への限りない敬愛 ・気安い顔の災難 ・幸せになれないということ ・お菓子の行列の足元 ・2000年の新卒 ・一人でごはんは不幸すか? 2000年の新卒で、仕事について書いてあった所が特に印象的でした。 仕事を見つけるという行為は、食べていくために毎日こなさなければいけないことと、そのことで受け取る金額と、自分の適性の間に、自分が耐えうる妥協点を見いだすことであると思う。 本当にその通りだと思います。
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芥川賞作家の方に何を今更!無礼だ!と思われるだろうけど、津村さんの言葉に対する感性の鋭さにただただ敬服。しかも、もともとの言語感覚が優れているだけでなく、言葉を貪欲に掘り下げてさらに研ぎ澄まそうとしている姿勢が感じられる。プロの仕事だなあと。 「正しい死に方なんて誰も知らない...
芥川賞作家の方に何を今更!無礼だ!と思われるだろうけど、津村さんの言葉に対する感性の鋭さにただただ敬服。しかも、もともとの言語感覚が優れているだけでなく、言葉を貪欲に掘り下げてさらに研ぎ澄まそうとしている姿勢が感じられる。プロの仕事だなあと。 「正しい死に方なんて誰も知らない」 すごく考えさせられた。書かれている内容は理性的でそれほど重くはない(と思う)けど、なんかずしっときた。 「親は親をやりなおせるけどな」 こういう経験をしていないと共感は難しいのだろうな、と思わせる津村さんの親子観。静かに淡々と、でも確実に怒りの炎を湛えているのだなと思わせる、ちょっと他とは違った雰囲気が印象的だった。
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「やりたいことは二度寝だけ」の続編です 今回もゆるく優しくときどきハッとさせられました ・幸せになれないということ →相手に加害するひとは実は被害者に依存してて、そのままじゃ幸せになれないよ?というお話。 「気に入らないことへの感度」を下げて、幸せをちゃんとペーパーで包んで大事...
「やりたいことは二度寝だけ」の続編です 今回もゆるく優しくときどきハッとさせられました ・幸せになれないということ →相手に加害するひとは実は被害者に依存してて、そのままじゃ幸せになれないよ?というお話。 「気に入らないことへの感度」を下げて、幸せをちゃんとペーパーで包んで大事にしようと思う。 ・世界の人を見る機会 →津村さん独特のオリンピック鑑賞法が愉快 ・横暴な小説係 →小説家としての自分を一つの企業に見た立てて、自身を俯瞰して見てみたお話。これは結構大事なことで、自分を感情なんかとは切り離して「部署」として分けてみると少しストレスがへるかも?「清掃課」とか「作業アトリエ部署」とか ・なんでも言い合えるっていい? →これは大人になるほど薄々感じてたことを見事に言語化してくれててすごく腑に落ちた。「なんでも言い合える関係を維持する」よりも「言うべきことと言わないでいるべきことをより分ける」ことの大事さ ・「味わい深い」のふところ →きっと世間から意見や感想を求められる津村さんが導き出した使い勝手のいい形容詞のひとつが「味わい深い」なんだろうな、と。そしてお話の最後に出てきた「引き出しにあったけど、手前の方にはなかった言葉」とか、そういう言葉を「買ってたのに見つけられなくなってた手芸用品」に例えられてて、同じく手芸をする身としては「その感覚、非常にわかります」となった
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作家さんの小話が2,3ページに続いて掲載されているものをまとめたもの。 コラム・エッセイをまとめたものである。 私自身、筆者の津村紀久子の作品は一つも読んだことがないのだが、タイトルに惹かれて購入した。 語り口がとても柔らかく、すごく読みやすい。丁寧にのっぺりとした言い回し(書...
作家さんの小話が2,3ページに続いて掲載されているものをまとめたもの。 コラム・エッセイをまとめたものである。 私自身、筆者の津村紀久子の作品は一つも読んだことがないのだが、タイトルに惹かれて購入した。 語り口がとても柔らかく、すごく読みやすい。丁寧にのっぺりとした言い回し(書き回し)であり、作者本人も認めるところのぼんやりした人なのだと思う(笑)。 とても落ち着いて読めるので、寝る前等に読むのに適している。 また、ゆったりとした考え方でもしっかりと自分を持って、文章を起こしてくれているので、こちらもまたしっかりと受け止めようという心持ちになる。 リラックスしたい人におすすめ
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津村さんの素性は知らなかったけど、仕事について題材が多い理由が分かってよかった。基本、エッセイは読みたくない(津村さんがいうように好きなものの印象は壊したくないから)けど、読んで良かったな。味わい深いです。
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この本に出会えてよかった。 お菓子フェチ、周りの騒音対策、マルチタスクしたがるけど各々の進捗がうぐぐな件など、ひとつひとつのお話がとてもおもしろいです。 それにしても、世の作家さんって観察眼鋭いなあと常々感じるのですが、津村さんの眼はかなりアグレッシブです。
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ゆるくて面白いエッセイでした。 私も大阪出身、在住なので余計に身近です。 私も「味わい深い」を積極的に使っていきたいです(笑)
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掲載誌によってガラッとテーマが変わるので読みやすい部分と読みにくい部分とがあった。 趣味は違うけれど日々つらつらと思うことには共感する部分が多かった気がする。 コピー用紙の秘めたる能力を私も探したことがある。 結局見つからなかったが。
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前エッセイよりは楽しく読めた。エッセイというものに慣れてきたのかな。行った美術展に関する章もあり、何のグッズが売っていたかなども書かれてるのが面白かった。やはり挿絵がいい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
やっぱりいい。津村記久子よ。1本目の「ふーとーん」「ふーとーん」という布団コールで、鷲掴みにされてしまうわたしもどうかしている。 2010年〜2014年ごろまでに書かれたエッセイをまとめた1冊で、その間に彼女は会社員を辞め、専業作家となる。「働く」をテーマに小説を書いてきた氏にとって、間違いなく人生最大級の変化があった数年だったと言えるだろう。かつて、週に5日会社に行くという習わしから解放されたらと夢想していたのだという。週3回ジムに通い、自炊し、片付けをし、二度寝をしようと。しかし、「容易に時間を潰せる海外ドラマにはまる」という期待を裏切らないダメっぷり。二度寝はやはり、遠くにありて想うものである。 彼女の思考には、肩に力が入っている感がまったくないが、はっとさせられることがたくさんある。例えば、インターネットでの調べものは、結局自分の身にならないとか。友達がいるかいないか=人望をはかる尺度であるとか。働くことは誇りを持って生きる妥当な方法だとか。消極的な人間関係に拘うことはないというメッセージは、学生の頃に聞きたかった。 そして何よりも文章がうまい(お前に言われてもな!)。かくも的確に言葉を紡ぎ出せるその技量に感嘆しきり。展覧会に関するレポート(めいたもの)だって、さらっと書いているようだけど、絵を評することがいかに難しいか。これが「印象派とは何たるや」を知らなかったぐらいの素人だと自負しているから驚きである。 この中ではグルスキー展に足を運んだことがある。あれを見て、「自然は時に感動的だが、人間の思い通りにはならず、金も物も人も、本来は不快なものなのだと思う。けれどもそこで生きていくしかないのだし、それをどのように捉えれば、生きて何かを見ることを興味深く思えるかということについてのヒントが、たくさんある展覧会だと思う。」なんて言える?すごいよー津村記久子。
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