夜の国のクーパー の商品レビュー
評判の割りにという感じでした。キャラや設定は面白かったが、ストーリーが安易に予想できてしまいました。 ただ、文章がすごく綺麗で、こんなに一文字一文字大切に読みたいと思ったのは初めてでした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
どうせ小説を読むのであれば、聞いたこともないような「とんでもないホラ話」がいい。しかも、現実世界とどこか地続きのものがいい。 まさにそれ。 ファンタジーのような世界の中に、いきなり妻に浮気をされた男性公務員(40)が登場するのだから頭の中は「?」だらけになる。 猫が欠伸をするとき、鼠を追いかけるとき、首根っこを掴まれたとき。 猫好きとしてはたまらないほど、猫の気持ちを噛み砕いてくれている。伊坂氏は猫なのか。猫が小説を書いているのか。 互いに話せるとは思っていなかった猫と鼠の掛け合いも小気味いい。 トム君は「考えたこともなかった」ことを突きつけられてばかり。先入観とは恐ろしい。 伊坂氏お得意(?と思っている)の、騙し絵のような種明かしには笑ってしまった。 そうやんな、輸血で卒倒してしまうような平凡な公務員の「私」が国対国の戦争の解決の片棒を担おうなんて思うはずないもの。普通なら。 僕の国対鉄国、猫対鼠、私対妻、いずれも問題は続いていくだろう。 でも今はそれでいい。おもしろかった。
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猫が喋る。あと、鼠も喋る。 国境の杉の木がぶよぶよとしたサナギに変わってクーパーになる。 で、戦争が終わって兵士達が街に乗り込んできたんだけどどうしよう、と猫に相談される地方公務員のお話。 物語の始まりは、『吾輩は猫である』を彷彿とさせるが、読んでいくうちに、それどころではない...
猫が喋る。あと、鼠も喋る。 国境の杉の木がぶよぶよとしたサナギに変わってクーパーになる。 で、戦争が終わって兵士達が街に乗り込んできたんだけどどうしよう、と猫に相談される地方公務員のお話。 物語の始まりは、『吾輩は猫である』を彷彿とさせるが、読んでいくうちに、それどころではないという気分にさせられる。 全体的にはお伽噺だ。お伽噺だが、そこには明らかに「戦争」があるから、ちょっとどきっとする。 面白く読めるんだけれど、ちょっとだけ風刺が効いている。 猫に関する描写はリアリティがありながらも、ちょっとトムとジェリーな感じ(しかも、作中で語り手になる猫もトム君だ!)。 これを読みながら幾度となく我が家の猫をこっそり観察した。しまいには、つかまえて顔を近づけて「おまえも本当はしゃべれるんだろう」と問い詰めたりもした。そして怪訝そうな顔をされた後、目を背けられた。 文庫の帯には「世界の秘密のおはなし」と書いてあったので、猫がしゃべれるということも世界の秘密なのだろう。 秘密ならば仕方がない。 何はともあれ、猫好きにお勧めの1冊です。
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ガリバー旅行記や進撃の巨人を彷彿とさせる場面がちらほらあった。「夜の国のクーパー」はファンタジーのようだけれど、どこか現代社会に通じている。国家、政治、戦争、支配するものとされるもののように。物語中「為政者が変われば国の方針は変わる」「何が正しくて、何が誤っているのか、自分で判断...
ガリバー旅行記や進撃の巨人を彷彿とさせる場面がちらほらあった。「夜の国のクーパー」はファンタジーのようだけれど、どこか現代社会に通じている。国家、政治、戦争、支配するものとされるもののように。物語中「為政者が変われば国の方針は変わる」「何が正しくて、何が誤っているのか、自分で判断しろ。それが重要だ」という言葉が何度も出てきた。為政者を信頼し過ぎるあまり、人々が考えることを止め、為政者に反対するものも居なくなったときの危うさを感じた。考えることは止めてはいけない。絶対に。
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猫と話す話。 猫とも話せなくないような気さえしてくる。 ホラ話なんだとはっきり言われれば 読み手としてこんなに気楽なことはないな。
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伊坂作品で漂流ネタ、猫がしゃべる設定。 「オーデュボンの祈り」を彷彿とさせる。確かあれは案山子が喋っていたし、伊坂さんの描きたくなる世界観の1つが、現実と続いていそうな非現実の物語。それが何らかの隔離された島なのだと勝手に納得。 冠人であったり、酸人、中心の鼠、複眼隊長、頑爺など...
伊坂作品で漂流ネタ、猫がしゃべる設定。 「オーデュボンの祈り」を彷彿とさせる。確かあれは案山子が喋っていたし、伊坂さんの描きたくなる世界観の1つが、現実と続いていそうな非現実の物語。それが何らかの隔離された島なのだと勝手に納得。 冠人であったり、酸人、中心の鼠、複眼隊長、頑爺など、何かの中心に立ち統率する者の重要さを感じた。 平民は従うのみ。 だからこそ複眼隊長の「何が正しくて、何が誤っているのか自分で判断しろ」という言葉が響いた。 動物の描写が自然で、気づけばトムに愛着が湧きすぎている。 もちろんギャロにもクロロにも、、、。 彼らの裏の顔が見えていないからかもしれない笑
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物語の語り手は猫です。どことも知れぬ国へ流れ着いたうだつのあがらない男性公務員が、この国でおこっている出来事を猫から話して聴かされます。戦時下における敗戦国の状況が、猫の目を通して語られるのですが、自由奔放に生きている猫のことですから、いまひとつ緊迫感に欠け、ユーモラスでありさえ...
物語の語り手は猫です。どことも知れぬ国へ流れ着いたうだつのあがらない男性公務員が、この国でおこっている出来事を猫から話して聴かされます。戦時下における敗戦国の状況が、猫の目を通して語られるのですが、自由奔放に生きている猫のことですから、いまひとつ緊迫感に欠け、ユーモラスでありさえします。そこにクーパーと呼ばれる杉の樹の怪物の話や、町に住む猫と鼠の交渉事やら、いろんなものが絡んできて、読み手としては、状況がうまく呑み込めないまま、それでもついつい惹きこまれて読み進んでしまいます。 猫が鼠を追うのは〝太古からの指令〟という本能のせいなのだそうですが、いつの時代も世界のどこかで戦争が絶えないというのは、人間もその〝太古からの指令〟に突き動かされているのかもしれませんネ。 ファンタジーではありますが、扱われているテーマはなかなかシビアで、深く考えさせられるものがありました。 べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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伊坂氏らしい何とも突拍子の無い世界構築だが、読み進めていく内、次第に現実と非現実の間を行き来するようになる。 猫が喋る、そして様々なオマージュ。散りばめられたファンタジーの中で繰り広げられる「戦争」は、あまりにもぽっかりと、そこにあるリアルとして浮かぶ。 物事とは、常に表裏一体...
伊坂氏らしい何とも突拍子の無い世界構築だが、読み進めていく内、次第に現実と非現実の間を行き来するようになる。 猫が喋る、そして様々なオマージュ。散りばめられたファンタジーの中で繰り広げられる「戦争」は、あまりにもぽっかりと、そこにあるリアルとして浮かぶ。 物事とは、常に表裏一体。 そして今、自分がこの目に見ているものは、物事の一側面に過ぎず、それどころかただの嘘の場合すらある。 個人的には戦争云々の話よりも、猫と鼠の関係性についての話が興味深かったです。
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猫のトムくんの描写がかわいらしくてかわいらしくて。 そしてネズミを追いかけてしまう時の表現とか、体を駆け上る感情や衝動の描き方が、なんていうんだろう、そう、そういう感じ、っていう。どうしてあんな風に言葉で表現できるのだろう。 あーこの人の描く登場人物がいつも大好きなのは、その...
猫のトムくんの描写がかわいらしくてかわいらしくて。 そしてネズミを追いかけてしまう時の表現とか、体を駆け上る感情や衝動の描き方が、なんていうんだろう、そう、そういう感じ、っていう。どうしてあんな風に言葉で表現できるのだろう。 あーこの人の描く登場人物がいつも大好きなのは、その表現方法が素晴らしいからというのもあるんだな、ととても思わされた1冊でした。 ネコ飼いたいな。
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やられた・・・どんでんがえしが見事だった。 目を覚ましたら見知らぬ土地で、目の前には言葉を話す猫。 このネコが話すこの国で起こったこととは・・・ 最初はそんなんでもなかったのに、途中から読むのが止まらなくなった。 久々に読んだ伊坂作品だったけど、面白かった!
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