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それを愛とは呼ばず の商品レビュー

3.6

70件のお客様レビュー

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2016/04/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

*妻を失い、仕事を奪われ、故郷を追われた54歳の経営者。夢を失い、東京に敗れた29歳のタレント。そしてふたりは、出会ってしまった。狂気を孕んでゆく女の純粋は、男を搦めとり、その果てに―。想像の範疇をはるかに超えるこのラストを、あなたは受け止められるか?* 確かに、想像の範疇を超えてました、ラスト。と言うか、あまりに唐突過ぎて、慌てて読み直したほど。もともと紗季には共感出来なかったけど、こんな思い込みの激しい女がいたらと思うと恐ろしく、そこはさすがの描写でしたが。

Posted byブクログ

2016/03/01

 桜木紫乃はぼくの分類ではノワール作家である。釧路出身の作家というだけで興味を覚えるのは、高城高という釧路に生まれた和製ハードボイルド作家の作風を想起できるからだろう。実際に、似ている部分がなくもない。時代を違え、性別を超えても、なおかつ似ているのは、釧路という土地のもたらす地の...

 桜木紫乃はぼくの分類ではノワール作家である。釧路出身の作家というだけで興味を覚えるのは、高城高という釧路に生まれた和製ハードボイルド作家の作風を想起できるからだろう。実際に、似ている部分がなくもない。時代を違え、性別を超えても、なおかつ似ているのは、釧路という土地のもたらす地の果てのような孤立した寂しさと、霧や寒さを携えてなおも独歩し得るだけの魂の強さ、そして物語としての陰影の濃さ、等々、であろう。  本作では桜木紫乃得意の釧路、という風土は、わずかな部分でしか使われていない。しかし、釧路の風土をインスピレーションさせるような、もう一方での土地としての新潟、さらに新千歳空港からさほどの距離にもないのだが、湖畔に立つ荒れた別荘物件と対面のさびれた温泉街いう、鄙び感の否めない架空の土地・南神居町という舞台が用意されている。この作家はやはり土地を決定したところから物語を語り始める人なのだろう。土地から蒸気のように漂い出して気化してきた物語という明暗の雲を手繰り寄せる作家なのだろう。  新潟で意識不明となった妻を愛しながらも妻の経営していた会社から追われ行き場を失った中年男と、釧路出身だが東京で芸能界入りの夢を絶たれた美少女が、吹きだまる粉雪のように、まるで雪風の向かう風下のような土地・南神居で遭遇する。そこには片方で優しさを求める少女の姿と、眠ったまま新潟の病院で眠る妻への思いを断ち切れない中年男の物語が交錯することなく、風景の中でたたずむ。  そこに現れる若者。狂気の世界を彷徨うように、地球の果てまで行き着きたかったかのような若者の、奇妙な生活が加わり、南神居の人々の孤独は彼の特異な影響力によって一層際立ってゆく。よるべなき者たちの運命を待ち受けていたのは、残酷さと表裏一体の優しさであるのかもしれない。  人と人との交情や、哀切を漂わせながら、この物語は思いがけない終盤を迎える。そこに辿り着くまで、本書が一体何の類なのかその正体すらわからぬままに、読まされる。やはり桜木紫乃という作家はノワール作家であったという確信をうすらうすら深めながらも、実にじわじわと。

Posted byブクログ

2016/02/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

桜木さんの作品どれを見てもまず思うのは「タイトルが秀逸」ということ。「それを愛とは呼ばず」って「それ」ってどれ?と思って読み始めますよね、多分。 「それ」は人によっては愛なのだろうし、狂気でしかないかもしれないし、見方によっては一種の宗教のようにも見えなくもない。以前の作品の「無垢の領域」とちょっと通じる世界観がありますね。 物語の要はもちろん紗希の伊澤への思い、なのですけれども、全編振り返ると主人公伊澤の、妻への思いは愛だったんだろうか、小木田君の春奈への思いは愛だったんだろうか、妻が、息子へした仕打ちは愛だったんだろうか。…実はどれも愛のようで愛ではなかったのかも知れない、どれも「愛とは呼べなかった」ものだったんじゃないか…という感じがします。 紗希も結局のところ伊澤を愛していたわけではなかったのじゃないかなと感じます。自己憐憫を伊澤に投影させていただけなんじゃないかなぁ。作者は「そういう愛もあるよ」ではなくもっと冷たい突き放した目線で紗希を描いているように感じます。 個人的には「霧(ウラル)」より好きですね。 こういう切り口の作品がもっと読みたい作家さんです。

Posted byブクログ

2016/01/14

ちょっと怖かったです。 普通の人だと思ってたら少し狂ってたというか、どうしてさみしさは連鎖するのかなとか寂れた情景と心の寒さが重なってやるせない気持ちが残りました。

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2016/01/09

どの場面でもスッキリしない感が好きです。 それぞれが暗い部分を持ち、通り過ぎていく、、、みたいで。 ラスト、 涼介が 紗希に殺された場面がなくて、びっくりした。 取調室? で、紗希が、物語を読む様に語ったところ、 シーンは短いがこれが 「朗読」 に繋がるとおもった。 愛ではなく、...

どの場面でもスッキリしない感が好きです。 それぞれが暗い部分を持ち、通り過ぎていく、、、みたいで。 ラスト、 涼介が 紗希に殺された場面がなくて、びっくりした。 取調室? で、紗希が、物語を読む様に語ったところ、 シーンは短いがこれが 「朗読」 に繋がるとおもった。 愛ではなく、語りなのかなぁ。

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2015/12/23

ホテルローヤルから桜木作品2作目。タイトルからせつない恋の物語なのかと思っていたけど、意味は最後の最後にわかる、っていうか衝撃的だった! 主人公は2人。いざわコーポレーションの副社長の亮介と芸能事務所に所属している沙希。新潟、東京、北海道にて印象深い人たちと出会うが、この2人は感...

ホテルローヤルから桜木作品2作目。タイトルからせつない恋の物語なのかと思っていたけど、意味は最後の最後にわかる、っていうか衝撃的だった! 主人公は2人。いざわコーポレーションの副社長の亮介と芸能事務所に所属している沙希。新潟、東京、北海道にて印象深い人たちと出会うが、この2人は感情の抑揚があまりなく、どうなっていくんだろうという感じだった。 メモしておきたい言葉などあって素敵な本だったが、本当の幸せ?なんかせつない。

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2015/12/03

はじめまして桜木さん、でした。 後半がなかなか難しくて…消化不良中です。 いろいろと衝撃度の高いものをどんどん投下されるので、わたしの中でも賛否別れてしまっているので、桜木作品初心者には難しかったのかな。 2015/11/15読了

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2015/11/15

実業家である10歳年上妻が事故で寝たきりとなり、その片腕の夫が会社より追い出されるような形で出てきた東京の夜の街で芸能界より落ちてしまった女と出会う。女の好意を受け止めようとせず、妻に献身的につくしてきた夫に純愛物語を感じていた。しかし、最終章でこれは単なる恋愛ものではなかったの...

実業家である10歳年上妻が事故で寝たきりとなり、その片腕の夫が会社より追い出されるような形で出てきた東京の夜の街で芸能界より落ちてしまった女と出会う。女の好意を受け止めようとせず、妻に献身的につくしてきた夫に純愛物語を感じていた。しかし、最終章でこれは単なる恋愛ものではなかったのだとようやく気付く。著者の名前を確かめず、題名に惹かれ一気に読んでしまった。北海道・実業家・夜の女 桜樹氏のいつもの独断場だった。題名だけで読んだのがよかったのかもしれない。「それを愛とは呼ばす」かなりの名言である。

Posted byブクログ

2015/10/14

え?これが究極の愛なのだろうか? 正直、最後の結末にはかなり驚かされた。 いったい何が起こったのか茫然自失状態だ。 ひとはささやかな幸福の中でこそいちばん良い死を迎えられる。 皆、紗希には「ありがとう」と言った。 デイケアセンターの亡くなった老人おふたりも。 やはり幸福だったのだ...

え?これが究極の愛なのだろうか? 正直、最後の結末にはかなり驚かされた。 いったい何が起こったのか茫然自失状態だ。 ひとはささやかな幸福の中でこそいちばん良い死を迎えられる。 皆、紗希には「ありがとう」と言った。 デイケアセンターの亡くなった老人おふたりも。 やはり幸福だったのだろうか。 たとえ法律家がそれを愛とは呼ばなくとも。

Posted byブクログ

2015/10/10

女優を目指すも売れることが出来なかった女と実業家の妻を持つ中年男の出会いを描く…のかと思いきやまさかのミステリーに!! 余りにすんなりと自殺者の遺体を埋めてしまう行いからこれちょっとおかしいなとは思ったのだが。 急展開すぎてむしろ肩透かし!! 真面目すぎるヒロインがそんな結末?...

女優を目指すも売れることが出来なかった女と実業家の妻を持つ中年男の出会いを描く…のかと思いきやまさかのミステリーに!! 余りにすんなりと自殺者の遺体を埋めてしまう行いからこれちょっとおかしいなとは思ったのだが。 急展開すぎてむしろ肩透かし!! 真面目すぎるヒロインがそんな結末? 新聞連載だったようなのでまあ、ありかも。連載読んでた人も度肝抜かれたでしょうねww

Posted byブクログ