七十歳死亡法案、可決 の商品レビュー
垣谷美雨さんの世界に入りこみました。 ちょうど介護をしている私には介護者と介護される側を感じながら読み進めることができ、すごく面白かった。 ただ介護についてのストーリーではなく、優しい人との出会いや、きちんと自分の気持ちを友人に話し、前向きに行動した主人公は同じ主婦として、かなり...
垣谷美雨さんの世界に入りこみました。 ちょうど介護をしている私には介護者と介護される側を感じながら読み進めることができ、すごく面白かった。 ただ介護についてのストーリーではなく、優しい人との出会いや、きちんと自分の気持ちを友人に話し、前向きに行動した主人公は同じ主婦として、かなりかっこいいと思いました。
Posted by
昨年(令和4年)に久しぶりに映画館で映画を見たのですが、そのタイトルが「プラン75」でした。それを見た私にとって、この本の帯に書かれているコピー「70歳死亡法案、可決」は私の興味を惹くものがありました。想定の話ではありますが、成長の無い日本で介護・医療にかかるお金がかかる中でどう...
昨年(令和4年)に久しぶりに映画館で映画を見たのですが、そのタイトルが「プラン75」でした。それを見た私にとって、この本の帯に書かれているコピー「70歳死亡法案、可決」は私の興味を惹くものがありました。想定の話ではありますが、成長の無い日本で介護・医療にかかるお金がかかる中でどうしようもなくなった未来の政府は、ついに70歳になったら全ての人が安楽死をしなければならない、それまでに70歳を超えている人は法律施行がされる2年後に全て安楽死をしなければならない、という途方も無いと思ってしまう法律を国会で可決してしまうことから、このお話が始まります。 この小説において、法律施行までの2年間に様々な議論がなされたことが書かれています。様々な立場の人がいて、賛成や反対の根拠を述べています。介護を何年にもわたって行っている人にとっては朗報と思われる一方で、70歳過ぎても元気で過ごしている人達は反対同盟を作って活動しています。反対の根拠として「年金を返上する、自分たちは世の中に役立っていることを証明する等」の具体的な活動を通して反対しているのが印象的でした。また、いつまで生きるかわからず、お金をどのように貯めるのか使うのかを迷っている人達にとっては、それまでに有効に使ってもらうための「寄付制度」が充実するなど、色々と考えられているなと思いました。本来ならば足りなくて困るはずの老人施設や増大する医療費の問題も、一気に解決することになるというもの頷けました。 さらに興味を惹かれたのは、この法律は小説の上でも、施行されなかった可能性が大きいということです。法律成立から施行まで敢えて「2年間」と期間を区切ったことで、国民が介護・医療・予算の使い方などにおいて、真剣に考える時間を設けたのが、その時の内閣・議会の考えだったのかも知れないなと思いました。実際には、このような法律がすぐに成立するのは難しいとは思いますが、良い頭の体操・思考実験となりました。 以下は気になったポイントです。 ・人間というのは、60歳を過ぎてから大きく成長するのです、初めて人生を俯瞰することができ、なんのために生きるのかという若い頃からの問いに対する答えをやっと見つけ、人間性を磨くことができる。それまで自分の家庭を守ることを第一義に考えるあまり私利私欲に生きてしまうことの多かった生活も、ふと立ち止ま李、来し方を振り返り、もっと広い目で人生を考えられるようになる。いわば人生の醍醐味とは60歳を過ぎてからである(p238) ・歳を重ねて初めて、人生一度きりってことが身に染みる(p257) ・仕事は人を変える、自分もまだ人の役に立てるんだって実感できると、生きる意欲を取り戻す(p317) ・この小説のテーマは「長寿化は不幸の種の一つ」ということにあるのではなく、少子高齢化や寿命と健康寿命のギャップ、若者の就職難やブラック企業や介護職の過酷な現場など現代日本の様々な矛盾の皺寄せが主婦にきているところである。主婦が家出をすることで、主婦が背負わされていたものを少しずつ家族が分担して受け持つことで、みんなが変わっていくという話である(p356) ・介護はできるだけ他人に任せるべきである、赤の他人じゃ気を遣わなくてはならない、嫁と違って奴隷のようにこき使えない。遠慮や気遣いというのは、人間関係の潤滑油みたいなもので、それがないとギスギスしてくる(p360) 2023年6月2日読了 2023年6月3日作成
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
う〜ん、考えさせられる。冒頭はバカで甘えた人間ばかりでイライラしながら読んでたけど、読み終わった後は少し微笑んでしまった。少子高齢化問題は本当に深刻だと思うし、安楽死を選べる社会にならないかな、と実は思っている私には非常に興味深いトピックだった。政治家ってこういう小説読むのかな。是非読んでほしいな。
Posted by
近い将来、いや、明日から始まってもおかしくない親の介護問題。読み始めは気が重く逃げてしまいたかった。 お嫁さんの耐えがたい状況に家族全員が鈍感過ぎるのが腹が立ったが、私もこの家族の誰かと同じになるのだろう。 終盤にかけての展開は重たかった空気が徐々に変わり、一気に読み進める事がで...
近い将来、いや、明日から始まってもおかしくない親の介護問題。読み始めは気が重く逃げてしまいたかった。 お嫁さんの耐えがたい状況に家族全員が鈍感過ぎるのが腹が立ったが、私もこの家族の誰かと同じになるのだろう。 終盤にかけての展開は重たかった空気が徐々に変わり、一気に読み進める事ができた。 あー、何か気が重いな。
Posted by
国の将来、介護の現実、楽したいが為に困難から目を背ける人の性、などが読み易く書かれているなぁと思いました。 本の半分くらいまでは暗くて物語も進まず読み辛かったですが、その後家族それぞれの思いや結び付きが見えてきて面白かったです。 もう少し登場人物の気持ちの深さを知りたかった面もあ...
国の将来、介護の現実、楽したいが為に困難から目を背ける人の性、などが読み易く書かれているなぁと思いました。 本の半分くらいまでは暗くて物語も進まず読み辛かったですが、その後家族それぞれの思いや結び付きが見えてきて面白かったです。 もう少し登場人物の気持ちの深さを知りたかった面もありますが、それやり出すと多分倍ぐらいの文章量になると思うので、この位のボリュームが丁度だったのかなとも思います。
Posted by
最終的に円満に落ち着くのだろうと思いながら読みましたが、そこに行き着くまで考えさせられるところが多々あります。 政治家の方々に読んでもらいたい内容です。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
なんてインパクトのあるタイトルだろう。 と、安楽死合法化を希望してる私を惹きつけるには十分なタイトル(^^) 主人公の周りの男性陣の頼りないこと頼りないこと 家族ってなんだろう。 ストーリー上は明るい展望が開けた感じで終わったので、読後感はまぁまぁ。 でもやっぱり、極端に走らないと気づけない周りの鈍感さ(敢えての)がやっぱりリアルで、なんども腹立たしい気持ちになりました。 主人公とっても有能な人なんですよね。 家で飼い殺す(!)ところだった夫と祖母含め親戚たちの罪深さといったら。 誰もが老いて死ぬわけだから、できれば明るく楽しく、人生に満足して死にたいものです。 大満足まではいかなくても『悪くなかったな』くらいには思いたい。
Posted by
七十歳死亡法案可決。 テーマが面白かった。 自己中な夫、我儘な寝たきりの祖母、引きこもりの長男に家を出た娘。 これを全て一人で支える妻はもう生活に耐えられなくなっていた。 法案が通って、若者と老人が率直にぶつかり合いながら、日本の将来を模索する。 場当たり的な検討ではな...
七十歳死亡法案可決。 テーマが面白かった。 自己中な夫、我儘な寝たきりの祖母、引きこもりの長男に家を出た娘。 これを全て一人で支える妻はもう生活に耐えられなくなっていた。 法案が通って、若者と老人が率直にぶつかり合いながら、日本の将来を模索する。 場当たり的な検討ではなく、ショック療法から見えてくるものもあるのではないかと感心した。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
七十歳死亡法案が可決され、2年後に施行されることになる。自宅で義母の介護を一手に引き受けている東洋子は、その日を心待ちにしていた。 ワンオペ在宅介護で押し潰されそうな東洋子、同居しながら自分事として介護を受けとめていない夫、引きこもりの中年息子。 東洋子が家出してからは状況が一変。あれよあれよという間にみな好転して、鼻白む。お仕事小説もかくや。オチに至ってはなんともはや… エンタメとして読み心地はいいが、釈然としない。
Posted by
まずは題名に惹かれました。 この法案が出来た事で皆がそれぞれに人生を考え出します。 不必要なものや事は手放して。 まずは登場人物の主婦が家を出ていく事から家族が変わっていきます。 我慢する事をやめてみたら、自分がいなくてもどうにか家族は生活を送れるように。そして自分もやりがいや別...
まずは題名に惹かれました。 この法案が出来た事で皆がそれぞれに人生を考え出します。 不必要なものや事は手放して。 まずは登場人物の主婦が家を出ていく事から家族が変わっていきます。 我慢する事をやめてみたら、自分がいなくてもどうにか家族は生活を送れるように。そして自分もやりがいや別の居場所を見つけて生きていけるように。 1つの家族の話だけではなく、この法案が若者から高齢者を交えて話し合う場でのやり取りがとてもリアルでした。 結末も良かったです。
Posted by