捏造の科学者 STAP細胞事件 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
STAP事件は実際のところ「何処に問題があった?」のかイマイチ判然とせず、そんな悶々としているとき、新聞に「捏造の科学者」が紹介されていたので速攻で手に入れました。 最初の私のイメージでは ・未熟な小保方氏が、たまたま画像などを間違って掲載しただけなのに何故あんなに非難されるのだろう? ・理研だったり笹井氏が、ちゃんと指導してあげればいいのに! こんな感じでした。 ところが笹井氏が自殺したことでさらに事件が解らなくなりましたが、この著書ではその辺がうまく解明されています。 著者は早稲田の大学院で物理学を専攻した須田桃子氏。 論点をかいつまんで云うと ・理研のCDB(発生・再生総合研究所)は、体質として国の予算獲得に意識が向いている。 ・国の予算はすぐ役立つ再生医療などに付きやすい。 ・CDBにおいて予算の付く研究はSTAPなどすぐ役立つ研究。 ・CDBではこのような研究は一つだけで他は基礎研究のみ。 ・笹井氏は予算獲得を急ぐあまり小保方氏の内面まで精査しなかった。 このような背景の中で事件は起きたとのことですが、小保方氏の最初の反論会見で私などはすっかり騙されてしまいました。 そもそも研究者の間で小保方氏の素性はバレバレだったようで、早稲田時代も平気でコピペしたり、議論がかみ合わなくなると急に怒り出すらしいんですね。 だけど竹井センター長なり笹井副センター長は先を急ぐあまり、そうした小保方氏の素性を見抜けず捏造を許してしまったとのこと。 さらに悲惨なのが事件後、笹井氏が自殺したこと。本人が申し出た辞任も許さず生殺し状態にしたことが自殺に追い込んだのではないかと周辺は分析しています。 これらは公金で事を進める機関ゆえ致し方ない気もします。つまり日本社会の科学の性(さが)みたいなものが如実に表れ「金が先か研究が先か」、「基礎研究が先かすぐ役立つ研究が先か」・・・・・。 常にこれに悩まされ、まるで「政治とカネの問題」とおなじようなニワトリタマゴです。 しかし要はバランス感覚がしっかりしていれば、このような大きな問題に発展しなかった気もします。 私もそうですが、時として急ぎ過ぎて前が見えなくなる時があります。 そうしたときはSTAP事件を思い出し、失敗しない心構えとバランス感覚を持ちたいものだと思います。
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「特例」で採用された小保方氏。特例が全くダメとは思わないけど、本来通過するべき重要な関所をすっ飛ばしているということを忘れてはいけない。
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STAP騒動を追った現場の新聞記者のレポートであり、迫力があって面白かった。現在進行形の事件は、マスコミがその時々に流す断片的な情報を拾っていくだけでは全容が掴みづらい。一段落?したところで、こうやって俯瞰的な整理をするのもマスコミの大切な仕事の一つだと思う。 こういう事件があ...
STAP騒動を追った現場の新聞記者のレポートであり、迫力があって面白かった。現在進行形の事件は、マスコミがその時々に流す断片的な情報を拾っていくだけでは全容が掴みづらい。一段落?したところで、こうやって俯瞰的な整理をするのもマスコミの大切な仕事の一つだと思う。 こういう事件があったことで、日本の科学界の権威が失墜する、ということがあるのかどうかぼくにはわからないけれど(科学界でもそういう「予断」がまかり通るのだろうか?)、理化学研究所のダメージは計り知れないし、笹井芳樹という世界的な研究者を失ったことは取り返しがつかない。小保方さんの肉声が伝わってこず、捏造が故意だったのか、それともミスや勘違いが結果として捏造に成長したのかはうやむやなままだが、いずれにしても「未熟な研究者の正しくない研究結果を、世界的な科学者や研究所が真に受けて発表してしまった」という構図が正しいとするのならば、小保方さんはもちろん、理化学研究所や関係者も責なしとは言えない。その背景には、予算取りとか、組織内の権力構造とか、成果主義とか、名声といった、科学の本質とは直接関係ない構図が影響を及ぼしていたわけであって、外から見てて黄禹錫の一件とはずいぶん違うな、と思ったぼくの第一印象は間違っていた。科学者にはそういう世界とは無縁のところで仕事をさせてあげたいな。そうもいかないことはわかっているけれど。 良書だが、気になった点もある。 STAP細胞を追い詰めたのは、マスコミでも、権威のある研究機関でも、世論でもない。あちこちで不審の声を上げた現場の科学者たちや、論文の剽窃や切り貼りに気づいた無名のひとたちだったはず。彼らはネットのそこここで声を上げたと聞いているが、本書ではそのくだりがほとんど省略されており、誰が、どのように声を上げたのかがうやむやなままだ。今回の事件で、非常に重要な部分のようにぼくには思えるのだが。 著者が直接見聞きした部分を重点的に書いたということなのかもしれない。だが、ネットを経由したスクリーニングと批判は、より広範なピアレビューの一種として、同種の事件の抑止力となる可能性がある。このあたりはちゃんと評価してほしかった。
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昨年世間を大きく揺るがせたSTAP騒動に関してのルポ 結局誰が悪かったのでしょう? 小保方さんは、未熟な野心家で世間知らずの子だった のだろうと思いますが。その脇の教授陣は どうだったのか。自殺した笹井氏・ハーバードの バカンティ氏・山梨大の若山氏・丹羽氏 やっぱり笹井氏の野心と...
昨年世間を大きく揺るがせたSTAP騒動に関してのルポ 結局誰が悪かったのでしょう? 小保方さんは、未熟な野心家で世間知らずの子だった のだろうと思いますが。その脇の教授陣は どうだったのか。自殺した笹井氏・ハーバードの バカンティ氏・山梨大の若山氏・丹羽氏 やっぱり笹井氏の野心とバカンティー氏の無邪気さ かなあと読んで思いました。
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昨年話題になったSTAP細胞事件。 何が矛盾しているか素人にも分かりやすく説明してあり、また時系列で捏造が分かっていく過程が興味深い。
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STAP細胞問題については、最初ニュースに出たときにはすごいと思ったものの、その後の報道では、発見の意義や今後の見通しよりも、発見者の小保方さんの個人情報ばかりが注目されているのに、非常に違和感を覚えました。 その後、論文に誤りが見つかった、さらには捏造の疑いもあるということにな...
STAP細胞問題については、最初ニュースに出たときにはすごいと思ったものの、その後の報道では、発見の意義や今後の見通しよりも、発見者の小保方さんの個人情報ばかりが注目されているのに、非常に違和感を覚えました。 その後、論文に誤りが見つかった、さらには捏造の疑いもあるということになり、今度はマスコミが一転して小保方バッシングに走り出したのも、一時はあれだけ持ち上げておきながら何なんだかな、と思いましたが、僕としてはむしろ、なぜこれほど注目を浴びることが当然予想される大発見で「捏造」などということがあり得たのか、なぜネイチャーの査読者をはじめとする超一流の科学者達が、発表前の段階でその誤りなり捏造なりを見抜けなかったミステリの方に、むしろ興味がありました。 この本を読んで、ようやく今回の問題の構造がかなりよく理解できましたが、それでも自殺した笹井氏は、遺書を読む限り最後までSTAP細胞の存在を信じていた様ですし、小保方氏も世紀の大詐欺師というよりはむしろ、STAP細胞の実在を本当に信じ込んでいて、そのために論文データを無理矢理合わせようとしたという雰囲気で、ミステリは完全には解決されないまま残った感じです。 ともあれ、この本を読んでみても、STAPスキャンダルは小保方氏一人を悪人として裁けばいいわけではなく、理研やマスコミなども含めて、スキャンダルを収めるどころかむしろ拡大させて世界に恥をさらしてしまった責任を、きちんとはっきりさせてもらいたいものだと思いました。
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STAP細胞事件の顛末を、取材をベースにして追ったルポ。 経緯についてはさすがに詳しいが、それでもなお釈然としないところが残る。笹井氏が自殺をしてしまったことも含めて非常に後味の悪い事件だ。この本を読み終わった2015年2月11日、小保方氏は懲戒解雇に相当するという見解が理研か...
STAP細胞事件の顛末を、取材をベースにして追ったルポ。 経緯についてはさすがに詳しいが、それでもなお釈然としないところが残る。笹井氏が自殺をしてしまったことも含めて非常に後味の悪い事件だ。この本を読み終わった2015年2月11日、小保方氏は懲戒解雇に相当するという見解が理研から発表された。 小保方氏が単独で行った不正であるのか。あれはウソでした、と言えずに物事が先に進んでしまい、引き返すことができなくなることはある。そうであったとしても、小保方氏が疑惑発覚後も明確に正当性を主張し、笹井氏がその遺書の中でもSTAP細胞の存在を信じて小保方氏に託すようなことを書いていることの理由がつかない。 第三者の悪意ある操作も可能であったとは思えないが。 別のところでは経済事件の観点も指摘されている。まだ真相の究明が必要なのではないのだろうか。
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事件の推移についてとてもよく理解できた。 iPS細胞を意識してか秘密主義の中で研究が行われていた。STAP細胞を作成する実験を実際に手を動かして行っていたのが小保方氏一人だけだった。共同研究者の若山氏も、優秀な(はずの)小保方氏には遠慮して「実験ノート見せて」とは言えなかった。...
事件の推移についてとてもよく理解できた。 iPS細胞を意識してか秘密主義の中で研究が行われていた。STAP細胞を作成する実験を実際に手を動かして行っていたのが小保方氏一人だけだった。共同研究者の若山氏も、優秀な(はずの)小保方氏には遠慮して「実験ノート見せて」とは言えなかった。なんて証言を読むと、いかにも不正を助長しそうな環境だったんだなと思う。小保方氏に同情する気は無いけど、実力が伴ってないのに優秀な人扱いされるのは、その本人にとって悲劇だ。 うーん。しかし「ノート見せて」ぐらい言えないものなんだろうか?そこに書いてあることこそいわば一次情報なんだから、共同研究者なら見たくならないんだろうか?
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今回の「STAP細胞事件」では当初から世紀の発見との発表を信じ取材してきた本人も早稲田大学大学院理工学研究科卒業のリケジョ記者の須田氏の作品。内容は異例づくしの発表記者会見から数多くの不正、捏造の認定そして笹井教授の自殺、理研が進める検証実験は2015年3月末まで続きます。なぜ、...
今回の「STAP細胞事件」では当初から世紀の発見との発表を信じ取材してきた本人も早稲田大学大学院理工学研究科卒業のリケジョ記者の須田氏の作品。内容は異例づくしの発表記者会見から数多くの不正、捏造の認定そして笹井教授の自殺、理研が進める検証実験は2015年3月末まで続きます。なぜ、早稲田大学も理研も?あのような不完全な小保方氏を評価しすぎてしまったのか???
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2015.2.8昨年、年初から年末まで話題に事欠かなかったスタツプ細胞についてのルポルタージュ。筆者は毎日新聞東京本社科学環境部記者。自らも早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。いわゆるリケジョ。なぜ、スタツプ細胞騒動はあのようになってしまったのか、関係者を丹念に取材し、まと...
2015.2.8昨年、年初から年末まで話題に事欠かなかったスタツプ細胞についてのルポルタージュ。筆者は毎日新聞東京本社科学環境部記者。自らも早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。いわゆるリケジョ。なぜ、スタツプ細胞騒動はあのようになってしまったのか、関係者を丹念に取材し、まとめられた。のだけれども、今まで放送されて知っていることばかりだった。 私が知りたかったのは非常に文系的なこと。なぜ、優秀な若山さん、笹井さんが騙されてしまったのか。若山さんは重い処分を受けることになり笹井さんは自殺…。優秀な科学者がかくもナイーブだった事実。科学者は常に実験結果を重視し、客観的事実に従う。まさか自らが信頼する科学者が嘘をつくとは夢にも思わず間違った方向に誘導されてしまった。愚かな一人の女性のために有能な科学者を失ってしまった現実。今後に生かされないといけない。
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