すべて真夜中の恋人たち の商品レビュー
言葉の使い方というか組み合わせが好きだった。普段、心の中で感じても言葉にできない、言い表せない、気持ちが言語化されてる気がして、すごいなと思った。主人公が感じていた気持ちと全く同じ気持ちになったことはないのかもしれないけど、でもなんとなく分かる、の繰り返しだった。でもこれも聖が言...
言葉の使い方というか組み合わせが好きだった。普段、心の中で感じても言葉にできない、言い表せない、気持ちが言語化されてる気がして、すごいなと思った。主人公が感じていた気持ちと全く同じ気持ちになったことはないのかもしれないけど、でもなんとなく分かる、の繰り返しだった。でもこれも聖が言ってた「何かにたいして感情が動いたような気がしても、それってほんとうに自分が思ってることなのかどうかが、自分でもよくわからないのよ、いつか誰かが書き記した、それが文章じゃなくてもね、映画の台詞でもなんでもいいんだけど、とにかく他人のものを引用してあるような気持ちになるの」なのかもしれない。 相手から予想したリアクションが返って来ない時、自分がなにか的外れなことを言ったんじゃないかとか、余計なことを話したんじゃないかとか、考えすぎてしまうところ、わかる。 信用と信頼は似ているようでちがう。たしかに。信用は一方的な行為で何かがきっかけで消えるかもしれない。でも信頼は相互的な行為で簡単に消えたりしない。信用はしてるけど信頼はしてない、てこともありうるのか。大切な人を信頼したいし、大切な人に信頼されたいと思った。
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何故なのか分からないけれども、心の深いところに沁み入る様な物語でした。ぼんやりと生きている冬子に共感出来るところもありつつも、共感出来ないところもあり、等身大の女性の心情が細やかに描かれている印象を受けました。何に対しても受け身に生きていた冬子の人生の中で、三束さんと過ごした時間...
何故なのか分からないけれども、心の深いところに沁み入る様な物語でした。ぼんやりと生きている冬子に共感出来るところもありつつも、共感出来ないところもあり、等身大の女性の心情が細やかに描かれている印象を受けました。何に対しても受け身に生きていた冬子の人生の中で、三束さんと過ごした時間は、初めて彼女が主体的に行動出来た時間だったのだろうと思います。真夜中の様にしん…とした空気感を感じる、しんみりとした読後感でした。
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出てくる登場人物は全員、「わたし」も含めてちっともキラキラしていなくて、いい意味で人間らしかった。それぞれが自分の生活を送っている中で、仕事や日常を通して出会う人に対して不満を持ったり、すれ違いが生じたりする。 最近、「人にイライラするのは、自分が出来ることをその人はできないか...
出てくる登場人物は全員、「わたし」も含めてちっともキラキラしていなくて、いい意味で人間らしかった。それぞれが自分の生活を送っている中で、仕事や日常を通して出会う人に対して不満を持ったり、すれ違いが生じたりする。 最近、「人にイライラするのは、自分が出来ることをその人はできないから。」と聞いた。「だから、イライラしたらそれは自分の得意なことを見つけたチャンス。」だとも。 歳を重ねるごとに、自分はもう変わらないと諦めることがある。でもそれは悪い諦めではなく、そんな自分を受け入れ、そんな自分が幸せになる方法を模索しているようである。 自分自身が1番自分のことを見ているし、自分の人生なのだから、きらきらしていなくたって、誰かに認められなくたって、自分が一緒にいたいと思える人と一緒にいるし、したいことをする。それでいいんじゃないかなと思った。
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人の心の中を覗き見てる感じ。 主人公の感情を通して、 誰にでもある心の弱い部分を承認されるような感じ。 攻撃的になったり 卑屈になったり 嘘をついたり。 現れ方は人それぞれ。 でも、必ず癒えていく。 そんなふうに、最後はやわらかに前を向けそうな1冊でした。 どうしてこのシー...
人の心の中を覗き見てる感じ。 主人公の感情を通して、 誰にでもある心の弱い部分を承認されるような感じ。 攻撃的になったり 卑屈になったり 嘘をついたり。 現れ方は人それぞれ。 でも、必ず癒えていく。 そんなふうに、最後はやわらかに前を向けそうな1冊でした。 どうしてこのシーンを挟んだんだろう とまだ考えるところがあり、再読することでの気付きがまだありそうだなと思い、面白さを知れる余白という意味で★3つ。
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川上未映子さん、続けて三冊読破です。 この独特な言い回し、痛かったり、フッと笑ってしまったり、考えてしまったり、すっかりハマってしまった(笑)
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目を背けたくなるような繊細さ。 物語を読了したと言うよりかは、こうやって人生は続いていくよなあって生温かい感じが残る小説。
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私は何かを選択できていない。と嘆いていた冬子が部屋の片付けをしている時、典子のセーターは段ボールにつめたのに対して、聖から貰った洋服たちはタンスに閉まっていく描写が良かった。冬子自身が気付いて無いだけで、人生のあらゆる選択をしているのだなと。
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人付き合いが苦手で孤独を感じている主人公。すごく感情移入できたかと言われれば微妙だが、ところどころ共感できるところはあった。 主人公は面倒から逃げてきて、自分の意思で何かを選んだことはない、だからいまこうして、ひとりだと言った。目のまえのことを、いつも一生懸命やってきたが、それはごまかしだと。でも、それでいいんじゃないかと思う。与えられたことを、目のまえのことを一生懸命やって生きることは楽なことだとはわたしは思わない。だから、終盤の聖には少しイライラしたが、聖だって一生懸命生きてきたんだろう。ふたりの一生懸命生きることのベクトルが違うだけ。その人の人生はその人しか知らない、辛さや苦しみも。 だからこそ、そんな主人公が恋をして、自ら歩み寄りたいと思えた三束さんとは一緒にいて欲しかったな。 終盤の展開がすごくておもしろかっけど、切なかった。
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主人公の気持ちに霧がかかってて、言葉までの道はもっての外な程、程遠い「気持ち」が、徐々にクリアになってはまた闇に放り込まれて、もどかしく思いつつ読み続けた。素直でまっすぐな「光」と、モヤがかかった主人公、だんだん気持ちが「光」のように見えてくる様子が、こんな気持ちも、あるよなあ、...
主人公の気持ちに霧がかかってて、言葉までの道はもっての外な程、程遠い「気持ち」が、徐々にクリアになってはまた闇に放り込まれて、もどかしく思いつつ読み続けた。素直でまっすぐな「光」と、モヤがかかった主人公、だんだん気持ちが「光」のように見えてくる様子が、こんな気持ちも、あるよなあ、と。物語として読み終わりました。
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言葉の表現がとにかく綺麗で美しかった。会いたいのに会えない苦しさ、会いたくてたまらないもどかしが痛いほど伝わった。川上さんがすごい人だと思った。
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