すべて真夜中の恋人たち の商品レビュー
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この主人公に似ている部分が少なからずあるからこそかもしれないが、この結末の感傷に浸る感じは好きになれない。 三束さんが結構大きな部分で嘘をつき続けて最後には姿を消して返信できない状態で手紙をよこしてきたことも、聖が主人公に浴びせた言葉も普段そう思っているからこそ出てきた言葉だろうし謝られたとしても自分なら許せないと思う。 最後の話の締めとして、暗闇だの光だの感傷に浸る情緒が個人的に受け付けない。 川上未映子さん2冊目だけど、読みやすいとは思うけど、府に落ちなさを度々感じるので合わないんだろうな。何故合わないかをもっと言語化できるといいんだけど。
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「三束さんに会わなければ、とわたしは思った。そう思うと、胸が動いた。三束さんと合わなければ、わたしは大事なことを忘れてしまう。これまでどんなふうに話してきたのか、わたしのたったひとつの大事なことが薄まって、やがて取り返しのつかないことになってしまう。大事なことが、ほんとうになくなっていってしまう。」 自らを縛り付けてきた深く暗い過去と初めて決別できた瞬間。自己嫌悪を振り払い、人の温もりに飛び込もうとした勇気に元気付けられた。 冬子と聖の融和も象徴的だった。
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お互いにお互いを構成するものを少しずつ交換しながら、主人公の“わたし”は恋する人の心の夜空にそっと手を触れていくような日々を送る。繊細な心情を詳細に語りながらも、過去の傷口は存在しなかっようにフタをして。辛いとか傷ついたとかの言葉をいっさい使わずに、でも読者の方が痛いほどその傷口...
お互いにお互いを構成するものを少しずつ交換しながら、主人公の“わたし”は恋する人の心の夜空にそっと手を触れていくような日々を送る。繊細な心情を詳細に語りながらも、過去の傷口は存在しなかっようにフタをして。辛いとか傷ついたとかの言葉をいっさい使わずに、でも読者の方が痛いほどその傷口を自分の痛みとして受け入れてしまう作者の織物を紡ぐような文章の旨さ。 光が去っても、まぶたの裏に優しくて広がる淡い闇。その中に大切な人が浮かんでくるような、そんなお話。難漢字を使わない文章が目に優しい。ひとりきりの真夜中を過ごす人たちへ‥おすすめです。
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この作家を好きだった人のこと思い出して読んだ。内容はどことなく不穏ではあるけれど、女性が描く人間、という形で自分にはない視点だった。ラストは胸が苦しくなり、不思議な感情と儚さが残った。
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はっきりしたり壊れたり、儚く霧のようになったりする人間の関係性を間近で見ることのできた長編小説。間接的な言い回しから発生するふわっとした余白が、読者にさまざま思わせたり、余韻を感じさせたりする。眠れない夜に読みたいお話でした。
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audibleにて拝聴。 読んでいる時の感覚は、「夏物語」と近かった。 何気ない人との会話の積み重ねで物語が進んでいくのが独特なテンポ感だなぁと思った。 完全に孤独な人は居なくて、誰か何かしらとの関わりあいの中で個人になっていくような… 終盤の、入江の部屋での会話が印象的だった。 会話のテンポの悪さとかから、どう見ても入江の方が不器用ではあるんだけど、ハキハキと何でも言ってしまう人の中にも不器用さがある。 誰にでも何かしらの違った生きづらさとか不器用さがあるよなぁ…と… でも、入江と三束さんの関係がふわっと散ってしまったのが意外だった…三束さんの事を結局読者はほとんど分からないまま終わってしまった…
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心が嫌な感じに動かされる、女性特有の関係性の描写がとても上手い本。 風景や人の考え感情の描写も細かくて上手。 ただ細かいというのは直接感情を書いているのではなく、登場人物の行動や他人とのやり取りの中で伝える描写が多い。 恋愛を描いているのだろうけど、それだけじゃない他の部分の描写が強く心に残る。 主人公がいつもお酒を飲んでいる状態で好きな人と会っているのが不思議。鞄の中に日本酒を入れて持ち運んでいるのも不思議。 人と関わるのが怖いから、それを忘れるために飲みながら会うようしてるみたい。 そして、主人公が大切にしていたであろう 昔仲良かった中学の友達との思い出 そして社会人になってから出会えた友人。 そういう人達が、周りからあるいは自分から主人公との関係性を壊すような発言をしたり聴いたりする部分が心が痛い。 主人公があまり自己主張しないタイプなので、本人がどう感じているかも行動の描写で感じ取るしかないので、すごく気になる。心を痛めているのか、あまり気にしていないのか。 主人公以外は発言をしっかりするので、思ってること考えが分かりやすいのだが、主人公は本当に分からない。 唯一分かるのが、恋をしているという事実。 他のことはあまり気にしていない様子で執着もないけど、その人の事になると自分の今までの生活も変わるくらいの影響を受けてる。 そんな自分がわからなくなる恋はあまり出来ないと思うから、とてもいいよね。 恋は成就することはなく終わり、ぶつかっていた友達ともきちんと腹割ったせいか元の関係性に戻り、なんて事ない日常に戻る最後となる。 直接的な書き方をしないので、色んな事が想像の余地があり、余韻が凄く残る作品だと思う。 私は女性の関係性の部分の曖昧な書き方が上手すぎて、そこが心を抉った。
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タイトルに惹かれて読みました。 孤独に身を置きながらも、どこかで誰かとの繋がりを求めていたり、、、そういう不器用な人って結構多いんじゃないかなと思います。 人と人との繋がりが希薄になりがちな現代だからこそ読みたい作品。 著者の作品を初めて読みましたが、とても繊細で綺麗な文章でした...
タイトルに惹かれて読みました。 孤独に身を置きながらも、どこかで誰かとの繋がりを求めていたり、、、そういう不器用な人って結構多いんじゃないかなと思います。 人と人との繋がりが希薄になりがちな現代だからこそ読みたい作品。 著者の作品を初めて読みましたが、とても繊細で綺麗な文章でした。
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表現が繊細やあ 近づいてこうとすると離れてく感じでまさにこのストーリーの体現的な感じだ 乳と卵とはまた違ってて楽しめた 所々出てくる登場人物たちの長めの熱弁、また読みたい この人の本は今のところ女対女でジェンダーの話をしてるのがおもろいな
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1回目に読んだときの新鮮な気持ちを残す。 電車の中で足を大きく広げている人がいると、なんで足を閉じてスペースを作らないんだろうって思ったり、足を擦ってコツコツ鳴らしながら歩く人を見ると、なんでわざわざうるさい音を鳴らして歩くんだろうって思ったりする。なんだか自分には人よりも敏感な...
1回目に読んだときの新鮮な気持ちを残す。 電車の中で足を大きく広げている人がいると、なんで足を閉じてスペースを作らないんだろうって思ったり、足を擦ってコツコツ鳴らしながら歩く人を見ると、なんでわざわざうるさい音を鳴らして歩くんだろうって思ったりする。なんだか自分には人よりも敏感な部分が多いのかなって途方もない気持ちになることが多いまま生きてきた。それを時折、自分は生きづらい人間だなとか他の人はどうして気にしないでいられるのだろうとか思ったりしたこともある。でも考えても考えてもぐるぐる回るばかりで答えは出なくて、結局闇雲になってしまっていた。そうしているうちに、誰かに自分の本当の気持ちや考えを伝えるのが苦手になって、勝手に壁を立てて、勝手に孤独になっていった。感情を露わにするのはエネルギーを使うから大変だし、拒絶されたら怖いし、だったら表に出さずに、にせものの、つくりものの気持ちで繕っていれば自分は傷つかなくていい。そんな自分には聖の言葉がひどく刺さった。この本にはそんな自分に近いような、自己投影できるような、そんな生きづらさを抱えた主人公がいて、でもそれでいてどこか明るさや清々しさがあった。自分も救われた気がした。人間には、言語化できない部分が多いと思っている。それを乗り越えたくて、自分の思考を言語化したくて、映画を見たときにレビューを書くようにし始めた。そうすると自分の語彙のなさに嫌気がさして、読書を始めた。読書には映画には違う言語化されたものが詰まっていたから、そんな不純な動機から始まった読書に今は夢中になっている。だからこそ、この本の自分の感情は何かからの引用だって言葉も、それすらも引用かもって言葉もって言葉もどこか深く刺さるものがあった。映画や本や芸術に触れた自分のこの気持ちを言語化しようと記すとそこにまた別の要素が入って自分の純粋な気持ちが濁ってしまう。じゃあ自分の思いってどう表せるんだろう。そもそも自分を自分たらしめるものはなんなんだろうって。この本には言語化できないと思っていたはずの部分がきちんと、包み隠さずに言語化されていた。目で見た以上の情景も、単にふと思っただけことも、分からないことが分からないとも。難しい言葉で飾るだけが表現することではなかった。ひらがなと漢字まじりなことでそこに人間味が溢れ出てた気もする。合間合間に挟まれる描写が詩的だから頭の中で考えるのは難しかったけれど、何度も何度も反芻する楽しさも覚えた。こういう経験を通じたときに、自分の中に生まれる気持ちや考えは、上に述べたように他人の引用なのだろうかな。今記しているこの感想も引用なのかな。たしかに引用なのかもしれない。でもそんな引用が混ざり合って、それが透徹していなくても、むしろ濁っているからこそ自分の色になってくれるんじゃないかな。だからこそ人の人生って十人十色で多様な経験によって分岐して同じ人が二度同じ人でないように、「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。」というように自分は絶えず変化し続けているし、そんな色んなものが混じって自分が唯一の自分なんだろうなって。自分が触れてきたものが引用したものが自分を自分たら占めるんだろうなって。そんな色んな気持ちが自分の頭の中を回り回っているけど、それは決してモヤモヤした気持ちでなくふわふわした心地良いぐるぐるで、そのぐるぐると一緒に夜の散歩に出たくなった。
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