すべて真夜中の恋人たち の商品レビュー
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なんだこれは…なんという物語なんだ… 大きなことは何も起こっていないのに「何だったんだこれは」と呟かざるを得ない、大きな衝撃が腹の底にどんと当たって呆然と立ち尽くしている。 その振動が心地よく、指先まで熱く痺れていくことに、文字が身体を通り抜けたのを感じる。 未映子、好き…! 登場人物の造形も素敵だし、色のない映画に僅かばかり彩色したような静かさが良い。 これぞ小説…! と膝を打ちたくなった。 ラストを読み終えて、再び物語の始まりのページを繰ったとき、暖かなものが内部を通り抜けていった。 わたしもいつかの真夜中にいて、わたしの中にも冬子がいて、何度となくその夜を超えて今があった。 ただ、冬子が真夜中の光をまっすぐ見つめ、それを美しいと感じ、三束さんに語りかけることができていることが嬉しかった。 あなたはこれから。 また何度となく別の夜を迎えて痛みや苦しみを得ても、あなたはあの夜、あの喫茶店で、あの通りで、三束さんが自分を見つめる瞳の中の煌めきに触れ、受け入れられることの不思議と安心と、終わりのない苦しみや痛みを知り、それでも触れたいと伸びる本能の恐ろしさを抱き、すべて叶わぬまま離れたあとの寂しさを乗り越えたのだから、自分と、自分以外の人の弱さに触れることも出来たのだから、もう大丈夫、とひとりほろほろと泣きながら、ずらずらと述べてしまうほど愛しい小説だった。 しばらくは余韻…
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この人の本は二つの相対する考え方が出てきてどちらの意見についても考えることができるからとても好きだな〜 冬子が自分で選択したのはきっと、聖なんじゃないかなと思えた。 それとも典子が言ってたように、冬子と聖の関係は共依存的なものなのかもな〜とも思った
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自分なりに真っ直ぐ生きつつも、明確な意志をもてず、周りに馴染めない冬子。その対人関係の不器用さは自分と重なるところがある。 決断せず、苦しまず楽しまずの人生を送っていた冬子が変わっていく様子、そのけなげさに心が洗われる。 あと、安直な結末に落ち着かなかったのが好き。
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冬子は一見真面目で人にどう思われるか気にするタイプの人間かと思いきや いきなりアル中みたいになり、お酒飲んだ状態でカルチャーセンターに行き、吐いてそこに居合わせた三束さんのことを徐々に好きになる。 あまり恋愛の展開などはなく冬子の心情や過去がおもかな? 最後は結局三束さんは高校教師じゃなく嘘をついてたことが心苦しくなったからと手紙を寄越してそれが最期。 もっともっと2人の展開が見たかったかも。
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川上さんの作品、初読みとなりましたが、ずっと読みたいと思いながら積読となっていました。 読み始めた最初の頃はどことなく違和感を感じていました。 読み終えた今は完全に放心状態ですが、違和感の正体が今ならわかります。 とにかく文章が美しい。 普段自分が使っている言葉と、本作の言葉、同じ日本語っちゃあ日本語なんですが、違うんですよねぇ。 きっとそれが最初に感じた違和感の正体。 不器用な主人公、入江冬子の純愛物語。 テーマは光。 本来光は目に見えるものではなく、私達が日頃目にしているのは、反射した光。 いやぁ〜、上手いなぁ。 説明 内容紹介 「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う」。わたしは、人と言葉を交わしたりすることにさえ自信がもてない。誰もいない部屋で校正の仕事をする、そんな日々のなかで三束さんにであった――。芥川賞作家が描く究極の恋愛は、心迷うすべての人にかけがえのない光を教えてくれる。渾身の長編小説。 内容(「BOOK」データベースより) 「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う」。わたしは、人と言葉を交わしたりすることにさえ自信がもてない。誰もいない部屋で校正の仕事をする、そんな日々のなかで三束さんにであった―。究極の恋愛は、心迷うすべての人にかけがえのない光を教えてくれる。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 川上/未映子 1976年8月29日、大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン歯ー、または世界』(講談社文庫)が第137回芥川賞候補に。同年、第1回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』(文春文庫)で第138回芥川賞受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』(青土社)で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』(講談社文庫)で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞と第20回紫式部文学賞を受賞。2013年、詩集『水瓶』(青土社)で第43回高見順賞、短編集『愛の夢とか』(講談社)で第49回谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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冬子〜、人付き合いが苦手とされていたけど、終始よどみなく場を収める嘘をつきまくってきたから、人間のことはよく理解しているかんじ。三束さんに出会って、美しい恋する思いが極まって膨らみきる過程が痛々しい。結局友情の物語みたいな帰着が、さみしいような、リアルな恋愛てこういうものかと思うような。
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川上未映子さんの本を読むのは初めて。 文章が美しいって口コミをたくさん見たけど、この文章は美しいというか、回りくどいように感じて私は苦手…… 他の作品は違うのかな? 冬子はひたすら暗くて途中アル中で読んでてイライラというか、なんだろうこの人...って思ってしまった... 冬子には終始共感出来ず。 この物語通して共感できる人はいないな…… ただ、冬の雰囲気と香り、ストーリーの空気感はかなり伝わってきた。 私にはまだ早い内容だったのかも。
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主人公の入江冬子は人と関わることが苦手で、会社を辞めて、一人暮らしの自宅でフリーランスの校閲の仕事をしていて、大手出版社の社員石川聖に、仕事の受け渡しをしてもらっている。 聖は冬子と同い年で同郷という共通点があるものの、はっきりとものを言う性格で、冬子とは対照的な性格をしている。...
主人公の入江冬子は人と関わることが苦手で、会社を辞めて、一人暮らしの自宅でフリーランスの校閲の仕事をしていて、大手出版社の社員石川聖に、仕事の受け渡しをしてもらっている。 聖は冬子と同い年で同郷という共通点があるものの、はっきりとものを言う性格で、冬子とは対照的な性格をしている。 いつもぼんやりとしていて、ほとんど感情を表にあらわさない冬子という人物を際立たせるために、石川聖がすごく重要な役割を果たしているような気がします。 女性らしい滑らかな文章で綴られていて、物語にどんどん引き込まれていきます。 カルチャーセンターで知り合った三束さんと冬子との会話の内容が、二人の醸し出す空気が切なく澄み切っていて、まるで夜の闇に吸い込まれてしまいそうで、ほんとうに美しいのです。 たとえそれがいつかはかなく消え去ってしまったとしても、この出会いが一筋の光のようにいつまでも冬子の心の中で輝き続けているのだと思う。 恋愛ってそういうものなのだなぁと思う。
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うーん、女性の生きづらさのようなものがぼんやりと書いていました。何も持たない、人に言われたことを疑いもさずにするだけの冬子さんが三束さんとの交流を経て、自分だけの言葉を見つける。真夜中は綺麗で、光を放っていて、とページの節々に散りばめられた言葉が綺麗で、時に残酷でした。 人を好きになった時のその人の名前を何度も読んでみるという恋愛の温かさが書かれていて安心しました。「真夜中に一緒に散歩してください」がすごく好きです
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この作品を楽しめないのは私がまだ子どもだからだろうか。 文章は美しい。 純文学の世界を楽しませてもらった。 しかし、主人公を見ているとしんどくてつらい気持ちになってしまった。 私もまた社会の中で孤独を感じることが多いからかもしれない。
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