すべて真夜中の恋人たち の商品レビュー
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人間関係のもやもや欲張りセット! な本。 ・同級生を「家に自分で上がったから」と襲う男子学生 ・男性上司との飲み会の席で口論になり、引き下がらない女。それだけでなく、何も言わないその場の女性たちを卑下する女 ・↑この女性の知人に「あなたは利用されているだけ。あの人は男性をとっかえひっかえしている性悪女」と吹き込む会社の元同僚 ・独身の同級生(女性)に家庭の愚痴を山ほどこぼした後、「あなたも子供を生むべき」と言い、最後には「この話ができたのは、あなたが自分の人生の登場人物ではなくなったから」と話す既婚女性 ……そんな生活の中で、主人公・冬子は三束という男性と出会う。 恋愛中心かと思いきや、周囲がクズだらけな世の中で冬子に見えた一筋の光が三束さんだったのかもしれないな、と思いました。 しかし、その光はあっけなく手の内をすりぬけてしまうという、なんとも悲しい終わり方。 (現実的には、「あんな顔して泣くなんて引くわ……」とか裏で思われてそうだなと思ったり。この本、ほんと人間不信になるにはぴったりだなと思います) 恋愛小説というよりは、その後の失恋にスポットをあてている物語という感触。そんなジャンルは聞いたことないけど、失恋小説。 「どろどろした中に一粒光るものがあれば、それで人は生きられます」ということなんでしょうか? ぜんぜん「恋人たち」が出てこないのはタイトルで選んだ人からしたら、これじゃない感満点かもしれないな……。 とはいいつつも、表現とか展開が好きだったので星満点にしてみました。
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素敵なタイトルと装丁に惹かれ購入しました。 川上未映子さんの作品を読むのはこちらが初めてで、どんな物語かと、とてもワクワクしながら読みはじめたのを覚えています。 読み終わったのは随分と前なのですが、ずっとこの本の以上に出だしから「あ、好きだ」となった本はありません。
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私も自己主張が強くない方なので、主人公に共感した。だからこそ、こういう性格をもどかしく感じる人がいることも、利用されやすいこともよくわかる。思ったよりも残酷だと感じる部分が多かった。 ただ人間はみんな違った弱さをもっていて、それぞれの考えで選んだものがある。 私はその人の背景に思...
私も自己主張が強くない方なので、主人公に共感した。だからこそ、こういう性格をもどかしく感じる人がいることも、利用されやすいこともよくわかる。思ったよりも残酷だと感じる部分が多かった。 ただ人間はみんな違った弱さをもっていて、それぞれの考えで選んだものがある。 私はその人の背景に思いを馳せたり、言葉をじっくりと待ったりできるような、三束さんのような人であることを選びたいと思った。 最後まで人物の背景が見えきらなかったところも、三束さんの弱さが見えたこともよかった。 同じ感性と弱さを持つ2人が出会えてよかった。
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冬の本を読みたいと思って手に取った本。 女性が書いたんだろうなとすぐに分かる文章。 自分が三束さんに恋しているんじゃないかって錯覚されるような緻密な心情が素敵だった。 女性同士の、価値観の違い、今までの過去を生き抜いてきた証、どちらが正しくてどちらか常識なのかとかそういう事ではな...
冬の本を読みたいと思って手に取った本。 女性が書いたんだろうなとすぐに分かる文章。 自分が三束さんに恋しているんじゃないかって錯覚されるような緻密な心情が素敵だった。 女性同士の、価値観の違い、今までの過去を生き抜いてきた証、どちらが正しくてどちらか常識なのかとかそういう事ではなくて、ただ友達としてのそういうぶつかり合いが書かれている所が1番心を打たれた。 男性とは違う女性ならではの思考で、感情的にはなってしまうけどそれでも賢くて、そういう女性の素敵なところが書かれていた。 でも、タイトルの意味が最後までピンと来なかった。 「真夜中」は作中の所々に感じ取れたけど「恋人たち」がよく分からない。恋愛の話と言うより、結局は主人公の人生の変化の話な気がする。
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・家族も家も、親も、学校も、この町もさ、何ひとつ僕が選んだものじゃないんだよ。そんなものばっかりが狭いところに窮屈にせめぎあっていて、何もかもがぞっとするような退屈さの延長にあって、ゆるみきってて、みんなそろいのお面でもつけてるみたいにぼうっとした顔してさ。ぞっとするんだよ。退屈...
・家族も家も、親も、学校も、この町もさ、何ひとつ僕が選んだものじゃないんだよ。そんなものばっかりが狭いところに窮屈にせめぎあっていて、何もかもがぞっとするような退屈さの延長にあって、ゆるみきってて、みんなそろいのお面でもつけてるみたいにぼうっとした顔してさ。ぞっとするんだよ。退屈と停滞を、平和とか安心なんかと取り違えてるんだよ。この街の奴らはみんな牛みたいなものさ。ぼおぼお鳴いて、ぞろぞろとかたまって動いて草食って眠って、子どもをつくって、それの繰り返しなんだ。何にも考えないでそうやって生きていくんだよ。そういうのがぞっとするんだよ。 ・彼女は自分が恵まれているってことに気がついていないせいなのよ。みんな自分と同じ条件でスタートしてるってそう思ってんの。彼女は自分の努力や向上心だけでうまくやれてるってそう思ってるのよ。 冬子にとって、ありまのままでいられる人に出会えたこと。突然の別れが来てもそれを乗り越えたこと。少し自分のことを好きになって強く生きている冬子を思うと、こみあげてくるものがある。どんな人と出会うかで人生に与える影響は大きいなと改めて思った。トラウマになることも、糧になることも。
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人が人に興味を持つ瞬間、興味のなかったものに溺れる瞬間、恋に落ちる瞬間、それってそれぞれだし、人にどうこうって言われることではないと思う。 三束さんは結局嘘をつきながらどんな気分で会ってたんだろうって思ってしまったのと、聖のあの感じも、冬子のよくわからないちゃんみたいな感じも、...
人が人に興味を持つ瞬間、興味のなかったものに溺れる瞬間、恋に落ちる瞬間、それってそれぞれだし、人にどうこうって言われることではないと思う。 三束さんは結局嘘をつきながらどんな気分で会ってたんだろうって思ってしまったのと、聖のあの感じも、冬子のよくわからないちゃんみたいな感じも、それぞれのキャラが最後にやっとわかったような。。。 わたしには少し難しかったけど、これは読まないとわからないこと。読んで良かった。
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いつもは読み終わったらすぐに売るんだけど、 久しぶりに死ぬまで手元に取っておきたいと思う本に出会いました。読後ずっと放心状態! 一生忘れない本かもしれない。 以下ネタバレあり 〆 読めば読むほど聖が私にそっくりだったので、 心から血を噴き出しながら読みました。 入江さんと三束さんの恋もイイ。 入江さんはやべー女!大嫌いな人種!イライラする! だけど、三束さんは、超トキメキ男子。 こんな人絶対に現実にはいないと分かりつつ、 紳士的で知性的でどうも近づけない三束さんに、 入江さんと同時に恋する気持ちで読んでいました。 ラスト、 誕生日のデートに三束さんはこなかった。 のちに「実は高校教師というのは嘘だった。もう会えない」という手紙が届くのですが、 それに対して入江さんがどう思ったのか一切書いてないのが芸術だなと思った。 「それでもいいから付き合いたかった」のか、 「嘘をついてたことに幻滅した」のか、 もし書いてあったら賛否の分かれる本になっていたと思う。 書かないことで解釈を読み手次第にさせたのが、 川上未映子マジですげーと思った。 入江さんの嘘が本当なのか検証しようもない、 実は他に理由があるのだろうなと思ってしまうもどかしさ、悲しさ、寂しさ…切ないラストだった。 また、本質的には恋愛小説ではなく、 女の人間関係を秀逸に描いた作品だと思った。 出てくる女はいわゆる「社会的強者」ばかり。 バリキャリで金もあって気が強く、男を狩りまくっているアグレッシブな聖。 恭子さんもバリキャリで、 聖を嫌いながらも、プレゼントが同じだったことから、実は似たもの同士、同族嫌悪な関係性なのが伺える。 典子さんは田舎で子育てをする専業主婦で、 仕事もなく社会から置いてかれている気持ちで卑屈になっているけど、実は裏では恋をしているという。 きっと性的魅力がある人なんだろうし、子供も2人いるから、周りから見たら「持ってる人」なんだよね… 3人とも受動的な入江さんを内心は下に見て(?)、 無意識のうちにサンドバッグとして使っている。 リアルだな〜…と思いました。
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世界との接し方が分からない酒弱34歳がアル中になって、引き続き自分の得られないものに普通に憧れて辛くなる話。どうしようもなくてどうしようもなく辛い。 かくいう私はこれを読み終えながら明日仕事があるのに身体の酔いに身を委ねている。 「あなたになぜ頑張ったって言ってもらわなきゃいけないの」って、その通りだよな。それも言い訳なのかな。
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言葉が綺麗なのは確かだったが、主人公の性格、ストーリーの進み方など、理解できない部分が多く感情移入しにくかった。 主人公が不器用というか、あまりにも恋愛下手すぎて、もどかしかったし、歯切れ悪いなと思ってた
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たまには恋愛小説も、と思い、以前からタイトルだけ頭に残っていて世界的にも評価されてる作品のようだったので、読んでみたけれど、 意中の相手が出てくるのも中盤に差し掛かってからだし、一人一人のセリフも長いし‥ストーリーはすすまないし‥で、結果何も起こらないという 自分のせっかちさを測...
たまには恋愛小説も、と思い、以前からタイトルだけ頭に残っていて世界的にも評価されてる作品のようだったので、読んでみたけれど、 意中の相手が出てくるのも中盤に差し掛かってからだし、一人一人のセリフも長いし‥ストーリーはすすまないし‥で、結果何も起こらないという 自分のせっかちさを測れただけの心が動かされない1冊でした。こんなに本を読んで何も思わない事はないので逆に印象に残ったと同時に 世界的には評価が高いという事で自分の感性に自信を失いました。ただ、作者の川上さんが美しすぎて ファンになったので他の作品もまた読んでみたい。
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