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ストーナー の商品レビュー

4.5

142件のお客様レビュー

  1. 5つ

    80

  2. 4つ

    37

  3. 3つ

    11

  4. 2つ

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2024/11/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ストーナーという1人の男性の一生を描いた本。決して派手な描写はなく、それがむしろ私たちのリアルな人生に近い感じで、彼が経験する一つひとつの出来事に胸が締め付けられたり、妻の態度にイラッとしたりした。そして人生最後の描写は圧巻だった。 自分がストーナーと同じような最期を迎えた時、どんな人生の振り返りをするのかな、抗えない死に向かうとき、何を思い浮かべるのかな、と考え始めたらなかなか寝付けない。明日仕事なのに。 とにかく翻訳の素晴らしさが際立っていたし、あと一ページを残して亡くなった翻訳者の後を継いだ方のあとがきが素晴らしかった。あとがきを含めて作品を堪能してほしい。

Posted byブクログ

2024/11/04

"完璧に美しい小説"という言葉に惹かれて読んだ。 物語が静かすぎて、電車やカフェで読むと全然内容が入ってこなかったからお家でゆっくり読書。 農家で育った青年が、親元を離れて大学で学び、英文学の教授になる。結婚し、子供も生まれ、本を出版。一癖二癖ある家族や同僚...

"完璧に美しい小説"という言葉に惹かれて読んだ。 物語が静かすぎて、電車やカフェで読むと全然内容が入ってこなかったからお家でゆっくり読書。 農家で育った青年が、親元を離れて大学で学び、英文学の教授になる。結婚し、子供も生まれ、本を出版。一癖二癖ある家族や同僚、生徒との些かないざこざを耐え忍ぶ人生。最後は魂が肉体から離れていくまでの精神活動が文章にされていた。 現実的な出来事というか平凡なことが書かれているけれど、現実から一歩引いて、見てる感じの静けさがあった。 今世を終えようとしている時、何ができ、何ができなかったのか、人生を振り返り、意味のある人生だったのか、虚無の人生だったのか、"人生で手にいれたのは妥協と、雑多で些細なことに悩まされる毎日"という言葉がリアルで切なさもありながら、同時に人生に対する充足感があった。 あとがきによると、この本はアメリカではあまり人気は出なかったらしい。この静けさが、わかりやすくアメリカンドリームを望む風土には響かなかったそう。しばらくの時を経て欧州でベストセラーになる。 エンタメではない読書。読書という行為に浸るための本だった。

Posted byブクログ

2024/10/13

田舎の貧しい農家の一人息子、ウィリアム.ストーナーは、ミズリー大学の農学部に入学したが、その後英文学に変え博士号をとり、その後母校の講師になり、助教授止まりで生涯を閉じたストーナーの物語。 第1次第2次世界大戦が時代背景にあり、初恋が実ったのに上手くいかなかった結婚生活、学生が...

田舎の貧しい農家の一人息子、ウィリアム.ストーナーは、ミズリー大学の農学部に入学したが、その後英文学に変え博士号をとり、その後母校の講師になり、助教授止まりで生涯を閉じたストーナーの物語。 第1次第2次世界大戦が時代背景にあり、初恋が実ったのに上手くいかなかった結婚生活、学生が研究を続けられるかの判断の相違で、(明らかに失格としたストーナーが是なのだが)上司になった同僚の怒りを買い、厳しい境遇での教師生活など、中々辛い日々が描かれる。 もちろん、禍福は糾える縄の如しなので、肉体的にも精神的にも幸せで信頼できる人との生活(年の離れた講師との世間的には不倫だが)や、可愛い娘との暖かいやり取りも描かれる。 異常な妻の行動、敵対する上司のやり口、ストーナーを苦しめる人たちも含めて、ストーナー自身、父母、娘と、哀しみが全編を覆っている。一方で、ストーナーの決断、自分で決めて、頑固なまでに突き進む力強さ、学問に対する情熱が見られる。読み進める程に、その後が読みたくなる。加速する魅力。

Posted byブクログ

2024/10/13

1人の男の人生を淡々と、でもなにか温かく記載している小説。衝撃的な最期ということではないが、最期の描写をかなり徹底しているところが結構衝撃的だった。

Posted byブクログ

2024/09/21

まず翻訳の技術がとても素晴らしいと感じた。1965年に出版された本書を今読んでも入り込める書き方だと思う。1ページを残して翻訳者は亡くなってしまったとのことで、最後までしっかり訳したいという気持ちがあったのだなという気持ちを知ると尚更考え込んでしまう。情景描写や心理描写が繊細に表...

まず翻訳の技術がとても素晴らしいと感じた。1965年に出版された本書を今読んでも入り込める書き方だと思う。1ページを残して翻訳者は亡くなってしまったとのことで、最後までしっかり訳したいという気持ちがあったのだなという気持ちを知ると尚更考え込んでしまう。情景描写や心理描写が繊細に表現されていて、ある程度登場人物の相関図や人間関係が理解できてからは読み進める手が止まらなかった。 帯の通り、ひとりの男が大学教師になってその日常を描く物語に過ぎず、共感できない部分も多々ありながらも、忍耐強い受動的な男にどこか目を逸せなくなる。 「どうしてこうなってしまったのだろう?」「これからの生き方にどのような意味があるのか?」とやや暗めな雰囲気を伴いながら、でもただ暗いだけではない空気感があってそれが何かを理解したくて読み進めたくなる感じか。ストーナーの段階ごとの年齢に自分が達するときにまた読んでみると、共感する部分が変わるような気がする。

Posted byブクログ

2024/11/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ウィリアムとイーディスとの出会いは、読者である私を不安にさせるものだった。イーディスの感情を読み取るのが難しく、ウィリアムに対する愛情が定かでないままに結婚しているような気がしてならない。 また、イーディスは前半から口数が少なく、受け身であるが故になんとも思わなかったのだが、2ヶ月実家に戻って以来、まるで別人のように口数を増やし、読者として徐々にイーディスに対して嫌悪感を覚える。娘の世話のほとんどウィリアムが担ったにもかかわらず、ウィリアムが娘を不幸にしていると言わんばかりの態度が腹立たしく感じられる時もあった。 ウィリアムと両親との関わり方も非常に凡庸であり、両親の死もさらっと流された。ウィリアムの人生を変えるウォーカーという生徒も、後で登場するかと思えば、全く登場しない。40歳になってから関係を持ったキャサリンとは別れて以降再会はしていない。 物語ならば、色々な要素に伏線を散りばめ、最後に結びつけるような構成にもできるが、わざわざそんなことをしないのが、私の好みと完全に一致している。推理小説、サスペンスも好きなのだが、最も好きなジャンルではない理由もそれに近い。 ストーナーがそもそも気難しい性格だからなのか、セリフの数と心情描写や客観的説明描写が美しい文章で述べられているのも非常に良い。 同じ授業をとっていれば、全員が同じ題材の本を読み、複数人の人とディスカッションができるという空間がかけがえのないことなのだと思い出される。私はまさに今、猛烈にこの本について誰かと語り合いたい。だが、そもそも本を読むのが好きな人は大量にはいないし、いたとしても同じ本を読んでいる確率は限りなく低く、ましてや「本について語り合いたい」なんて言い出そうものなら、嫌がられてしまう。 私が誰かとディスカッションしたいトピックは以下の2点 ・2度にわたる世界大戦がウィリアムに与えた影響および、デイブという戦死した友人の存在意義 ・もともと行く予定だったイーディスが行けなかったヨーロッパ。デイブが行ったヨーロッパはウィリアムにとってどういう対比関係にあるのか。 第一次世界大戦期に青年期を過ごした人たちが「ロスト・ジェネレーション」と括られ、ヨーロッパに異様な希望を見出すという時代があったが、本書がどれぐらいそれに絡んでいるのかがわからない。ヘミングウェイなんかはロスト・ジェネレーションの代表的な作家で、サリンジャーは第二次世界大戦期の作家である。私の読んだアメリカ文学作品の中では、南北戦争、第一次大戦、第二次大戦のどれか1つを取り上げることはあれど、『ストーナー』のようにどちらも経験している主人公を描いているのは珍しい。 とんでもなく大好きな作品だった。

Posted byブクログ

2024/09/01

彼の人生の大半が薄暗くて哀しくて絶望の匂いがする、でも不幸ではない。 こんな風に人生を送ることも悪くないと思った。 ストーナーにとって穏やか最期だったことに傍観してる私は救われたかな。

Posted byブクログ

2024/08/24

オモコロ編集長の原宿さんがメチャクチャ推してたから読んでみた。 書評にも書いてあったとおり、全体的に悲しい。悲しさが漂っている気がする。まだ今の状態じゃその悲しさばかりに気を取られて、どこかにある喜びや嬉しい、という感情に気づけなかった。 えーーーもっとさ、人生楽しいこともあるよ...

オモコロ編集長の原宿さんがメチャクチャ推してたから読んでみた。 書評にも書いてあったとおり、全体的に悲しい。悲しさが漂っている気がする。まだ今の状態じゃその悲しさばかりに気を取られて、どこかにある喜びや嬉しい、という感情に気づけなかった。 えーーーもっとさ、人生楽しいこともあるよね?美味しいもの食べたりさ、綺麗な景色見たりさ。って 脳内で喚きながら人生ってもしかして悲しいものなのか?って思ってそれに気づきたくない自分がジタバタしている。 もっと人生って分かりやすい楽しさとかあるもんじゃないの?でも、今この小説を読んで気づけない感情があったのなら、今までの人生で気づけなかった事もあったんじゃないか。 今、初めて読んで思った事はそんな感じ。もしかしたら5年後、10年後に読んだら変わるのかも。 次に読むのが楽しみ

Posted byブクログ

2024/07/08

あまりにも鮮やか。読む前は寂しい小説なのか、孤独や寂寥がこちらに伝播するのではないかと心配もしたが全くそんなことはない。一色ではない人生の記録。優しくて、寄り添うようなどっしりと構えたこの魅力はどこから来るんだろう?? 訳者が病に倒れたあとも、親族に口頭翻訳を頼んでまで物語を完成...

あまりにも鮮やか。読む前は寂しい小説なのか、孤独や寂寥がこちらに伝播するのではないかと心配もしたが全くそんなことはない。一色ではない人生の記録。優しくて、寄り添うようなどっしりと構えたこの魅力はどこから来るんだろう?? 訳者が病に倒れたあとも、親族に口頭翻訳を頼んでまで物語を完成させようとしたというのも含めて、一人一人の人生とはなんて重厚なんだろうと思いを馳せずにはいられない。

Posted byブクログ

2024/06/29

私自身が文学部卒なので、登場人物たちが文学の研究テーマを語る箇所には懐かしさを覚えた。 ただ私は全く文学者向きではなく、在学中研究テーマのみならず意義すら理解できない側だったのだが… 卒業後研究者の道を選んだ同級生に思いを馳せただけである。 その難しい箇所にもかかわらず、とても...

私自身が文学部卒なので、登場人物たちが文学の研究テーマを語る箇所には懐かしさを覚えた。 ただ私は全く文学者向きではなく、在学中研究テーマのみならず意義すら理解できない側だったのだが… 卒業後研究者の道を選んだ同級生に思いを馳せただけである。 その難しい箇所にもかかわらず、とても読みやすい本だった。農家出身の男が、農学部在学中文学に目覚め、研究者として勤めながら私生活も発展させてゆく。 その背景には常に不幸の影がちらついている。 読後帯にある通り美しい小説だったという感想を抱きつつも、自分だったらこんな生き様は嫌だな…というのが正直なところ。 もっと自分の気持ちに正直になって行動に移してもよいのでは? ストーナーが前向きな行動を取ったのは文学に向き合おうと決めるところくらい。 結婚生活で感じている違和感には向き合わない。 違和感って、あとあと取り戻せないギャップとなってのしかかってくるものなのだなと痛感させられる。

Posted byブクログ