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ストーナー の商品レビュー

4.6

138件のお客様レビュー

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2024/09/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ウィリアムとイーディスとの出会いは、読者である私を不安にさせるものだった。イーディスの感情を読み取るのが難しく、ウィリアムに対する愛情が定かでないままに結婚しているような気がしてならない。 また、イーディスは前半から口数が少なく、受け身であるが故に、なんとも思わなかったのだが、2ヶ月実家に戻って以来、まるで別人のように口数を増やし、読者として、徐々にイーディスに対して嫌悪感を覚える。娘の世話のほとんどウィリアムが担ったにもかかわらず、ウィリアムが娘を不幸にしていると言わんばかりの態度が腹立たしく感じられる時もあった。 ウィリアムと両親との関わり方も非常に凡庸であり、両親の死もさらっと長された。ウィリアムの人生を変えるウォーカーという生徒も、後で登場するかと思えば、全く登場しない。40歳になってから関係を持ったキャサリンとは別れて以降再会はしていない。 物語ならば、色々な要素に伏線を散りばめ、最後に結びつけるような構成にもできるが、わざわざそんなことをしないのが、私の好みと完全に一致している。推理小説、サスペンスも好きなのだが、最も好きなジャンルではない理由もそれに近い。 ストーナーがそもそも気難しい性格だからなのか、セリフの数と心情描写や客観的説明描写が美しい文章で述べられているのも非常に良い。 同じ授業をとっていれば、全員が同じ題材の本を読み、複数人の人とディスカッションができるという空間がかけがえのないことなのだと思い出される。私はまさに今、猛烈にこの本について誰かと語り合いたい。だが、そもそも本を読むのが好きな人は大量にはいないし、いたとしても同じ本を読んでいる確率は限りなく低く、ましてや「本について語り合いたい」なんて言い出そうものなら、嫌がられてしまう。 私が誰かとディスカッションしたいトピックは以下の2点 ・2度にわたる世界大戦がウィリアムに与えた影響および、デイブという戦死した友人の存在意義 ・もともと行く予定だったイーディスが行けなかったヨーロッパ。デイブが行ったヨーロッパはウィリアムにとってどういう対比関係にあるのか。 第一次世界大戦期に青年期を過ごした人たちが「ロスト・ジェネレーション」と括られ、ヨーロッパに異様な希望を見出すという時代があったが、本書がどれぐらいそれに絡んでいるのかがわからない。ヘミングウェイなんかはロスト・ジェネレーションの代表的な作家で、サリンジャーは第二次世界大戦期の作家である。私の読んだアメリカ文学作品の中では、南北戦争、第一次大戦、第二次大戦のどれか1つを取り上げることはあれど、『ストーナー』のようにどちらも経験している主人公を描いているのは珍しい。 とんでもなく大好きな作品だった。

Posted byブクログ

2024/09/01

彼の人生の大半が薄暗くて哀しくて絶望の匂いがする、でも不幸ではない。 こんな風に人生を送ることも悪くないと思った。 ストーナーにとって穏やか最期だったことに傍観してる私は救われたかな。

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2024/08/24

オモコロ編集長の原宿さんがメチャクチャ推してたから読んでみた。 書評にも書いてあったとおり、全体的に悲しい。悲しさが漂っている気がする。まだ今の状態じゃその悲しさばかりに気を取られて、どこかにある喜びや嬉しい、という感情に気づけなかった。 えーーーもっとさ、人生楽しいこともあるよ...

オモコロ編集長の原宿さんがメチャクチャ推してたから読んでみた。 書評にも書いてあったとおり、全体的に悲しい。悲しさが漂っている気がする。まだ今の状態じゃその悲しさばかりに気を取られて、どこかにある喜びや嬉しい、という感情に気づけなかった。 えーーーもっとさ、人生楽しいこともあるよね?美味しいもの食べたりさ、綺麗な景色見たりさ。って 脳内で喚きながら人生ってもしかして悲しいものなのか?って思ってそれに気づきたくない自分がジタバタしている。 もっと人生って分かりやすい楽しさとかあるもんじゃないの?でも、今この小説を読んで気づけない感情があったのなら、今までの人生で気づけなかった事もあったんじゃないか。 今、初めて読んで思った事はそんな感じ。もしかしたら5年後、10年後に読んだら変わるのかも。 次に読むのが楽しみ

Posted byブクログ

2024/07/08

あまりにも鮮やか。読む前は寂しい小説なのか、孤独や寂寥がこちらに伝播するのではないかと心配もしたが全くそんなことはない。一色ではない人生の記録。優しくて、寄り添うようなどっしりと構えたこの魅力はどこから来るんだろう?? 訳者が病に倒れたあとも、親族に口頭翻訳を頼んでまで物語を完成...

あまりにも鮮やか。読む前は寂しい小説なのか、孤独や寂寥がこちらに伝播するのではないかと心配もしたが全くそんなことはない。一色ではない人生の記録。優しくて、寄り添うようなどっしりと構えたこの魅力はどこから来るんだろう?? 訳者が病に倒れたあとも、親族に口頭翻訳を頼んでまで物語を完成させようとしたというのも含めて、一人一人の人生とはなんて重厚なんだろうと思いを馳せずにはいられない。

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2024/06/29

私自身が文学部卒なので、登場人物たちが文学の研究テーマを語る箇所には懐かしさを覚えた。 ただ私は全く文学者向きではなく、在学中研究テーマのみならず意義すら理解できない側だったのだが… 卒業後研究者の道を選んだ同級生に思いを馳せただけである。 その難しい箇所にもかかわらず、とても...

私自身が文学部卒なので、登場人物たちが文学の研究テーマを語る箇所には懐かしさを覚えた。 ただ私は全く文学者向きではなく、在学中研究テーマのみならず意義すら理解できない側だったのだが… 卒業後研究者の道を選んだ同級生に思いを馳せただけである。 その難しい箇所にもかかわらず、とても読みやすい本だった。農家出身の男が、農学部在学中文学に目覚め、研究者として勤めながら私生活も発展させてゆく。 その背景には常に不幸の影がちらついている。 読後帯にある通り美しい小説だったという感想を抱きつつも、自分だったらこんな生き様は嫌だな…というのが正直なところ。 もっと自分の気持ちに正直になって行動に移してもよいのでは? ストーナーが前向きな行動を取ったのは文学に向き合おうと決めるところくらい。 結婚生活で感じている違和感には向き合わない。 違和感って、あとあと取り戻せないギャップとなってのしかかってくるものなのだなと痛感させられる。

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2024/08/29

貧しい農村出身の男が大学の教師になって人生を終えるまでの話。特別派手な事件があるわけではなく淡々と書かれている。共通点はほとんどないにもかかわらずどこか自分を重ねることができる。ストーナーの感情の描写のせいか、美しい文章のおかげか、博識でもなんでもない私が引き込まれて読むことがで...

貧しい農村出身の男が大学の教師になって人生を終えるまでの話。特別派手な事件があるわけではなく淡々と書かれている。共通点はほとんどないにもかかわらずどこか自分を重ねることができる。ストーナーの感情の描写のせいか、美しい文章のおかげか、博識でもなんでもない私が引き込まれて読むことができた小説らしい小説。

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2024/06/11

ウィリアム・ストーナーの生涯を綴る人生の物語。 朝のラジオでこの小説を知った。 なんでも、何年前に刊行した本が今になってめちゃくちゃ売れているという話題。 MARUZEN&ジュンク堂でライターの原宿氏が推したことがきっかけだったらしい。 ストーナーという男の淡々とした人生を書...

ウィリアム・ストーナーの生涯を綴る人生の物語。 朝のラジオでこの小説を知った。 なんでも、何年前に刊行した本が今になってめちゃくちゃ売れているという話題。 MARUZEN&ジュンク堂でライターの原宿氏が推したことがきっかけだったらしい。 ストーナーという男の淡々とした人生を書いているだけで、なにも劇的な出来事は起きない、でも、それが、読む年齢によって自分の人生と重なる、みたいな紹介だった。 でも実際に読んでみると、全然平凡な人生なんかじゃない。 結婚、権力争い、遅れてきた2人の恋愛。 どのエピソードも、読み応えがある。 もちろん、誰かの人生にも有得るエピソードなんだろうけれど、やっぱり人生はドラマだ。 ストーナーという人間が時々よくわからなくなる、ひ弱な地味な男かと思いきや、情熱的で感情的な部分もあり。 でも、それが人間なんだろう。 私が好きな一文 「教師とは、知の真実を伝える者であり、人間としての愚かさ弱さ、無能さに関係なく、威厳を与えられる者のことだった。知の真実とは、語りえぬ知識ではなく、ひとたび手にすれば自分を変えてしまう知識、それゆえ誰もその存在を見誤る心配のない知識のことだった。」 めちゃくちゃ納得した。

Posted byブクログ

2024/06/09

主人公ストーナーのまさに一生の小説。全体的には静かなでも奥底に何か熱を感じるのは、その彼の生き方そのものだろう。世界大戦が時代背景にあり、大学という少し世間から離れたようなところに身を置く主人公の人生にも、影を落としている。時代や周りに影響を受けながら、時に身を任せ、時に信念を貫...

主人公ストーナーのまさに一生の小説。全体的には静かなでも奥底に何か熱を感じるのは、その彼の生き方そのものだろう。世界大戦が時代背景にあり、大学という少し世間から離れたようなところに身を置く主人公の人生にも、影を落としている。時代や周りに影響を受けながら、時に身を任せ、時に信念を貫き、生きていく。どうしても折り合えない同僚や、変化する家族や友人との関係。人生の悲しみやどうしようもないことを抱えながらも、生きていく。死が近づいた時、ストーナーは問う。何を期待していたのか、かと。 人生に、自分に?私はどのように生きたいのだろう。

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2024/05/22

静かな物語の中で、時折り涙が堪えられなくなる程の静かな感動に浸ることがあった。この物語からそれを受け取ることができた自分の感性の成熟が嬉しかった。 訳者あとがきを読んでその理由は分かるのだが、訳も素晴らしかった。 定期的に読み返したい。

Posted byブクログ

2024/05/07

戦中を生きた、一大学教員の一生。家族とはいざこざがあり、教員内政治では憤懣がつのり、逢瀬をかさねる泡沫の人も登場し飽きさせない小説だった。教授の人生を垣間見えれて感慨深い。作者が有名作曲家と同じ名前なのも興味深い。

Posted byブクログ