ストーナー の商品レビュー
ウィリアム・ストーナーの生涯を綴る人生の物語。 朝のラジオでこの小説を知った。 なんでも、何年前に刊行した本が今になってめちゃくちゃ売れているという話題。 MARUZEN&ジュンク堂でライターの原宿氏が推したことがきっかけだったらしい。 ストーナーという男の淡々とした人生を書...
ウィリアム・ストーナーの生涯を綴る人生の物語。 朝のラジオでこの小説を知った。 なんでも、何年前に刊行した本が今になってめちゃくちゃ売れているという話題。 MARUZEN&ジュンク堂でライターの原宿氏が推したことがきっかけだったらしい。 ストーナーという男の淡々とした人生を書いているだけで、なにも劇的な出来事は起きない、でも、それが、読む年齢によって自分の人生と重なる、みたいな紹介だった。 でも実際に読んでみると、全然平凡な人生なんかじゃない。 結婚、権力争い、遅れてきた2人の恋愛。 どのエピソードも、読み応えがある。 もちろん、誰かの人生にも有得るエピソードなんだろうけれど、やっぱり人生はドラマだ。 ストーナーという人間が時々よくわからなくなる、ひ弱な地味な男かと思いきや、情熱的で感情的な部分もあり。 でも、それが人間なんだろう。 私が好きな一文 「教師とは、知の真実を伝える者であり、人間としての愚かさ弱さ、無能さに関係なく、威厳を与えられる者のことだった。知の真実とは、語りえぬ知識ではなく、ひとたび手にすれば自分を変えてしまう知識、それゆえ誰もその存在を見誤る心配のない知識のことだった。」 めちゃくちゃ納得した。
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主人公ストーナーのまさに一生の小説。全体的には静かなでも奥底に何か熱を感じるのは、その彼の生き方そのものだろう。世界大戦が時代背景にあり、大学という少し世間から離れたようなところに身を置く主人公の人生にも、影を落としている。時代や周りに影響を受けながら、時に身を任せ、時に信念を貫...
主人公ストーナーのまさに一生の小説。全体的には静かなでも奥底に何か熱を感じるのは、その彼の生き方そのものだろう。世界大戦が時代背景にあり、大学という少し世間から離れたようなところに身を置く主人公の人生にも、影を落としている。時代や周りに影響を受けながら、時に身を任せ、時に信念を貫き、生きていく。どうしても折り合えない同僚や、変化する家族や友人との関係。人生の悲しみやどうしようもないことを抱えながらも、生きていく。死が近づいた時、ストーナーは問う。何を期待していたのか、かと。 人生に、自分に?私はどのように生きたいのだろう。
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静かな物語の中で、時折り涙が堪えられなくなる程の静かな感動に浸ることがあった。この物語からそれを受け取ることができた自分の感性の成熟が嬉しかった。 訳者あとがきを読んでその理由は分かるのだが、訳も素晴らしかった。 定期的に読み返したい。
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戦中を生きた、一大学教員の一生。家族とはいざこざがあり、教員内政治では憤懣がつのり、逢瀬をかさねる泡沫の人も登場し飽きさせない小説だった。教授の人生を垣間見えれて感慨深い。作者が有名作曲家と同じ名前なのも興味深い。
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この小説は… 大当たりだった。結局自分はこういう人生が送りたいのかもしれない。いや、送りたかった、かもな。平凡な人生を歩んだ大学助教授の悲しみの物語、とあるのだけれど、著者自らが後書きで紹介されているように、実は幸せな人生だったんだということがよくわかる。 まぁ、生涯の伴侶ともそ...
この小説は… 大当たりだった。結局自分はこういう人生が送りたいのかもしれない。いや、送りたかった、かもな。平凡な人生を歩んだ大学助教授の悲しみの物語、とあるのだけれど、著者自らが後書きで紹介されているように、実は幸せな人生だったんだということがよくわかる。 まぁ、生涯の伴侶ともそして大事な愛娘とも、もっともっとわかり合える時間を持てただろうに、相手への愛が足りなかったことを最後に悟るシーンは、なんだかな、とても身につまされて。 幸い自分にはまだまだ時間はあるはずなので、一日一日をちょっとでもこういう思いで生きていきたい。
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人はどのように生きるのか、が田舎の貧しい家に生まれた後大学の教師として生きていく男性の心情を通じて静かに物悲しく綴られてなんというか私にはとてもとても良かったです。上手く立ち回ることなく愚直なまでに自分の職を全うする姿と、一方で家庭を持つことの難しさ等々、決して気楽に読めるタイプ...
人はどのように生きるのか、が田舎の貧しい家に生まれた後大学の教師として生きていく男性の心情を通じて静かに物悲しく綴られてなんというか私にはとてもとても良かったです。上手く立ち回ることなく愚直なまでに自分の職を全うする姿と、一方で家庭を持つことの難しさ等々、決して気楽に読めるタイプじゃないけど、ジワジワと心の深いところに訴えてくる何かがある。作中では自分の研究にのめりこむ力強い場面や、同僚との確執、心安らげる場所、子供との関わりなど、なんだか自分の鏡をみているような気持ちになることも。人はみな生きていけば分岐点があり、どっちを選んでも正解なことも、そうじゃない事もあると思う。でもそれは全ては振り替えってみた時にわかることで、ストーナーの生き方は彼なりのベストだったのだろう。すべての人に幸福と苦悩があり、また育った環境も非常に重要なのだと訴えかけてくる。なんだかとても心揺さぶられる本でした。
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あとがきまで含めて、一つの作品だった…。 すごく静かで、すごく物悲しくて、でも愛と情熱に溢れた男性の生涯を共に生きたようで、温かい気持ちになった。
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沈痛な人生への痛みとやってくぞがあり、ページをくくれない日もあったけど長く机にあればあるだけストーナーの人生の時間に寄り添っている感じがしてよかった
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一人の男の人生。ヒーローでなく,悪でもなく,なにか偉大なことを成し遂げたわけでもない人生を書いた本だからこそ,何者にもなれないわたしたちの道を淡く照らしてくれる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
わたしはわたしだ。 至極控えめで、しかし圧倒的な、愛。 自分への弛まぬ愛があったのだと死を前にして実感できたことがどれほど幸せなことか。言葉にするとどこか陳腐に感じてしまうが、私は彼のことを少年の頃から見てきたのだ。特筆すべき才能があるわけではない物静かな少年が、怯えながらも決断を下し、惹かれ呑まれ、翻弄されながら生きた。私はそれを傍でずっと見てきたのだ。誇らしさを感じながらも自分の厚かましさを覚えていた唯一の自著が、明るい夏の午後、ベッドに横たわるその手から落ちるその瞬間まで。 その最期を看取ったとき。 自分のことを軽々に評価などするべきではないのだと思った。 この肉体を手放す前には、 思想を手元で確かめられる間は、 ひとときの自己評価にある種甘えるべきではないのだ。 全てを知ってなお、わたしはわたしなのだと悟ったストーナーの最期の顔が忘れられない。
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