丹生都比売 の商品レビュー
絶版されて久しい丹生都比売をもう一度読みたくて手に取った。 表題作、コート、夏の朝がとても良かった。 梨木さんの静謐な文体が好きではあるものの、最近の心象世界に深く潜っていく系の作品があまりピンと来ずしばらく読んでいなかった。もう一度チャレンジしてみようか……
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4.5。この本はいい本だ。何か私には響く。涼しく、薄ら淋しいが、悲しい寂しさじゃない。淡々とそのように在る。その感じが。あと、とても完成されてる、そういう印象をおぼえた。話もだが、文章、それで綴られる世界が。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
梨木さんの、弱いものに対する視線がほんとうに温かくて。文字を追っているだけで癒やされる。 「夏の朝」はもうボロボロ泣いた。夏ちゃんは今でいうところの発達障害とか自閉なのかな?という感じの子なのですが、おかあさんやおとうさんやほかの大人たちの、夏ちゃんを見守る優しさや空回りする一生懸命さがうつくしい。
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鉄板の文体。 美しい文字の流れを読むだけで 心がすっと落ち着いていきます。 淡さと畏怖、綻びと静けさ。 そういう世界はなかなか現実でも 小説でもないことです。 贅沢です。 夏の朝を読んだとき、 あるワンシーンがはっきりと映像として 私の体をすり抜けていきました。 その光景に...
鉄板の文体。 美しい文字の流れを読むだけで 心がすっと落ち着いていきます。 淡さと畏怖、綻びと静けさ。 そういう世界はなかなか現実でも 小説でもないことです。 贅沢です。 夏の朝を読んだとき、 あるワンシーンがはっきりと映像として 私の体をすり抜けていきました。 その光景に泣けた。。
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梨木香歩さんの短編集。 あとがきによると 「ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく」 という芯を持つ蔓でつながった短編たちとのこと。 静かに変わりゆくものたちの物語、そんな言葉にすればおそらく全ての物語がそうなんだろうけど、でもやはり梨木さんの物語の静かさと不思...
梨木香歩さんの短編集。 あとがきによると 「ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく」 という芯を持つ蔓でつながった短編たちとのこと。 静かに変わりゆくものたちの物語、そんな言葉にすればおそらく全ての物語がそうなんだろうけど、でもやはり梨木さんの物語の静かさと不思議さと美しさは特別だと思う。 特に好きだなと思ったのは、「コート」と「夏の朝」。 変わってしまうことの寂しさ、そして変わらない優しさにぎゅっと胸がしめつけられる。 いつだって世界や人を取り巻く優しさに気付いていたい。 そう思えた。
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端正な短編集。読んでいると、自分の芯がキーンと透き通っていくような、世界が柔らかに静まっていくような感じだった。 「丹生津比売」以外は初めて読んだけれど、どれも不思議な世界。 「丹生津比売」は、ヅカファンの私には「あかねさす紫の花」の後日談のような話で、大海人皇子と鸕野讚良の息子...
端正な短編集。読んでいると、自分の芯がキーンと透き通っていくような、世界が柔らかに静まっていくような感じだった。 「丹生津比売」以外は初めて読んだけれど、どれも不思議な世界。 「丹生津比売」は、ヅカファンの私には「あかねさす紫の花」の後日談のような話で、大海人皇子と鸕野讚良の息子、草壁皇子が主人公。大海人皇子一行が近江を逃れ、吉野に隠棲していた頃の話なので、古代史ファンとしても興味深く、旅行で行った吉野のあの山深さ、溢れる緑や風や光、鳥の声などを思い浮かべながら読めた。 梨木さんご本人が書かれていた後書きも良かった。 文庫になったら買いたい。
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表題は飛鳥時代の壬申の乱前、大海人皇子が籠った吉野の滝宮での日々。水銀を主題に膨らむ、草壁皇子を描いた物語。 物語全体の雰囲気が清らかで、草壁皇子のイメージにとてもよく似合っていると思いました。 印象的だったのは鵜野讚良皇女。賢く強く、欲が深く、その心の鬼たる欲とずっと対峙してい...
表題は飛鳥時代の壬申の乱前、大海人皇子が籠った吉野の滝宮での日々。水銀を主題に膨らむ、草壁皇子を描いた物語。 物語全体の雰囲気が清らかで、草壁皇子のイメージにとてもよく似合っていると思いました。 印象的だったのは鵜野讚良皇女。賢く強く、欲が深く、その心の鬼たる欲とずっと対峙しているひと。均衡を崩せばたちまち呑まれる危うさを孕んだ、悲しいひと。父たる天智に似ている、と設定されていたので、これはこのまま梨木さんがイメージする天智かな。 短編集で、全体的に不思議な世界と優しい物語にあふれていると思います。
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短編集。丹生都比売はだいぶ昔に読んでて再読。きっと私が最初に触れた梨木香歩がそれやったと思う。 コート、夏の朝、丹生都比売がよかった。
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2015.01.23.読了 どれも梨木香歩らしさ溢れるよい小説 丹生都比売 におつひめ を読みたくて借りた本。 私の考えられる世界とは ことごとく異世界に連れて行ってくれる 梨木香歩さんの小説は とても好き。 湿り気のない文章で 心地よい感じ。
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梨木香歩の短編集。不思議な雰囲気でこの世にはあり得ないことを物語として著している作品が多い著者だが、この短編集もそのような作品がならぶ。特に表題作「丹生都比売」はこの作品集の中で一番長く、短編と言うより中編小説と言えるだろう。古代大和の国の出来事を題材にしてしかも単なる古代歴史小...
梨木香歩の短編集。不思議な雰囲気でこの世にはあり得ないことを物語として著している作品が多い著者だが、この短編集もそのような作品がならぶ。特に表題作「丹生都比売」はこの作品集の中で一番長く、短編と言うより中編小説と言えるだろう。古代大和の国の出来事を題材にしてしかも単なる古代歴史小説ではなく、著者らしい幻想的な作品で古代を舞台にしているので物語の展開が違和感なく受け入れられた。 私が好きな作品は「月と潮騒」。ひんやりとした夜の情景をあらわし、夏に読んだら本当に涼しく感じられそうだと思った。また「コート」も娘ふたりを育てた実感から、とても受け入れやすい作品だった。 梨木香歩はひんやりとした静寂、孤独などを感覚として表現する他にはない作家だ。
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