丹生都比売 の商品レビュー
この「丹生都比売」は九篇のお話から成る短編集ですが、あとがきの通り、読み終わってしまえば、それぞれのお話を数珠のように繋ぐ蔓が確かにあるのだな、と感じます。 「丹生都比売」のキサという少女の不思議な美しさ、「夏の朝」の球根から生まれた春という少女、「トウネンの耳」の旅鳥、トウネン...
この「丹生都比売」は九篇のお話から成る短編集ですが、あとがきの通り、読み終わってしまえば、それぞれのお話を数珠のように繋ぐ蔓が確かにあるのだな、と感じます。 「丹生都比売」のキサという少女の不思議な美しさ、「夏の朝」の球根から生まれた春という少女、「トウネンの耳」の旅鳥、トウネン。 何度も書きますが、全編お話の展開とは関係なく、とてつもない静寂に包まれた、触ることのできない透明な箱の中の美しい世界、と感じます。 旅立ちは孤独でさびしいように思うけど、同時に静かであたたかく、安心できるものなのだ、と思えるのです。
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やっぱり すごいなぁ 梨木果歩さんの世界観。 初めての短編集だとか。 8編の短編と中核となる中編「丹生都比売(におつひめ)」。 短編にも世界観がでているけれど、丹生都比売はさすが。 どんどん引き込まれていく、戻れなくなる・・・ それにしてもこの世界観をこんなきれいな文章で表現す...
やっぱり すごいなぁ 梨木果歩さんの世界観。 初めての短編集だとか。 8編の短編と中核となる中編「丹生都比売(におつひめ)」。 短編にも世界観がでているけれど、丹生都比売はさすが。 どんどん引き込まれていく、戻れなくなる・・・ それにしてもこの世界観をこんなきれいな文章で表現するなんてすごい。 壬申の乱の人間関係がこんなことになっていたのは、習ったはずがまったく頭の中に残っていませんでした。 あとがきには「ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく、という芯を持つ蔓なのだろうと思う」。 間違いなく自分の世界を変えてくれた作家さんの一人です。 これからも梨木さんの本は読み続けなければ。
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不思議話し短編集。表題「丹生都比売におつひめ」の実母の妖しさと皇子の儚さも良かったけど、「コート」、すごく短い物語なのに、亡くなった姉に思いをはせる最後、ぐっときた。
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大好きな梨木香歩さん。梨木香歩さんの作品は全て読もうと密かにささやかな目標を立てているので、また新たな一冊を入手した。「初の短編集」とあった。9作品が収録されている、美しい紺色の装丁の単行本。肝心の収録作品もとても美しかった。大切にとっておきたいと思う本になった。 なんとも不思議な短編が続き、しかもひとつひとつがとても短くて、私にとっては、”新しい梨木香歩さん”を見ているように感じていたら、急に「コート」が現実的な哀しさで満ち溢れていて、ふいに涙が出そうになった。 そして「夏の朝」。 今までのお話の短さからすると「あれ?」と思う長さなんだけれど、自分の世界観を持った小さな女の子「夏ちゃん」の成長を見守り、語るのは守護霊。この守護霊、幼い頃に亡くなった夏ちゃんのお父さんのお姉さんだということが後々わかる。この守護霊が語ると、一瞬悪役に思える寺内先生も頑張り屋のいい先生なんだと納得できる。「夏ちゃん、大丈夫だよ」と心から応援しながら読み終えると、なんという上品な、素敵なお話なんだ!という感動が胸に押し寄せた。さすが、梨木香歩さん。これ、隠れた名作なんじゃないか、と思った。たぶんどこにでも実はたくさんいる「夏ちゃん」のような子たちに、そしてその子を見守る大人たちに心からエールを送りたいと思いつつ、次の「丹生都比売」へ。 「丹生都比売」・・・う~ん、読めない。「におつひめ」と読むらしい。水銀(みずがね)を産し、清らかな水が流れている吉野の地を統べているご神霊、姫神さまの名前とのこと(検索した結果)。神社もあるみたい。歴史に疎いわたしは、冒頭に記載されている系譜を何度もめくりながら読んだ。天武天皇、持統天皇・・・はて、聞いたことあるぞ?・・・もういよいよ物語も佳境に入るというところで、ようやく昔々学校で習った「壬申の乱」とつながる。我ながら情けない。歴史上の人物を主題にした物語となると、どうしても、どこまで史実なのか、どこからがフィクションなのか気になるところだけれど、まぁ、それはおいといて、というか、読了後そんなことどうでもよくなる。歴史のことが知りたければ別の書籍を読めばいい。 ―とてもとても美しい日本語で綴られた物語だった。この物語から立ち上がる気配そのものがなんだか高貴なものに感じられるくらい。余分な言葉が一切ないと言い切れそうなほどの厳選された言葉で進んでいくので、歴史的なことをもっと知りたいという人には物足りないかもしれないけど、ひとつの物語として素晴らしく完成された世界だと思った。神様の「ご降臨」だとか、「霊験あらたかな」ことだとか、いつもは鼻白んでしまうのだけれど、梨木香歩さんの手にかかると、その世界の人知を超えた力と美しさに引き込まれてしまう。さすがとしか言いようがない。草壁皇子については、あまり多くの記録が残っていないようで(たぶん)、この草壁皇子が主人公だからこそこのような美しい物語と成り得たのではないかと思うほど、この皇子の人柄、内なる思いがわかる物語だった。草壁皇子が本当にこの物語のような人物だったとしたら、なんとも生きにくい時代だっただろうなと思う。親に間引かれそうな燕の雛を助けようと必死になる草壁皇子。自分と重ね合わせているのかと思うと胸が苦しくなった。それでも、疑惑のある持統天皇も、ただただ自分の欲のためだけではなかったのだろうと、そう思える草壁皇子の最後だったように感じた。 ラストにそっと添えてあるような「ハクガン異聞」もなんだかすごくよかった。なんというかこれが最後に収録されていることが当たり前というような、ラストにふさわしい短編に思えた。
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梨木香歩作品集「丹生都比売(におつひめ)」、2015.9発行。短編7話と中編2話。摩訶不思議、意味不明、支離滅裂な感じの作品集ですw。短編では「カコの話」と「コート」、中編では「夏の朝」が比較的面白かったです。
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言葉のひとつひとつが透明で、その美しいきらめきが私を迎えてくれる。 『月と潮騒』では、引っ越ししたてのマンションの一室がまるで海底にあるかのような豊かな描写に、思わず潮風を感じた。
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表題作のみ、きらきら、芯から透き通ってしずかに光るように美しかった。ほかは……なんというのだろう。悪くいうには忍びない(この著者の作品を、ほんとうに長く愛読してきたから)けれども、かの女の多くの作品と同じくーー意図してかどうかはわからないがーーユング心理学にいう『グレートマザー(...
表題作のみ、きらきら、芯から透き通ってしずかに光るように美しかった。ほかは……なんというのだろう。悪くいうには忍びない(この著者の作品を、ほんとうに長く愛読してきたから)けれども、かの女の多くの作品と同じくーー意図してかどうかはわからないがーーユング心理学にいう『グレートマザー(すべてを呑み込む太母)』が、文章の後ろ側から立ち上ってあらわれているように思えてしまう。またそれだけでなく、現代というにはすこし昔の、「お母さんのいうようにしておけば間違いはないのよ」という、おしつけるような、ある種行き過ぎた強すぎる母性をも感じてしまうのである。……物事やいきものにはそれぞれ、それ自身の想いや生き方、なりわいなどがあるのに……
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9篇収録の短篇集。 天武天皇と持統天皇の子、草壁皇子が主人公の表題作をはじめ、人の暮らしや歩みが森や草花、生き物と共に織り紡がれた小説たち。 美しさと切なさ、畏れ、あたたかみ…読んでいて自分の感情が四季のように彩られます。 梨木マジック。
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ちょっと、違うかなぁ? 今じゃないかなぁ?と読み進め、苔むしていると思い足を置いたら、ズブズブと底なし沼にはまってしまいました。
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とても短い話だけど、どれも印象的。 文字から映像が浮かぶ。 なんだかどの話も「旅」しているよう。 5年後とか、10年後にまた読み返したい。
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