江戸しぐさの正体 の商品レビュー
<目次> はじめに 「江戸しぐさ」を読み解く三つの視点 第1章 「江戸しぐさ」を概観する 第2章 検証「江戸しぐさ」~パラレルワールドの 中の「江戸」 第3章 「江戸しぐさ」の展開~越川禮子と桐山勝 第4章 「江戸しぐさ」の誕生~創始者・芝三光と ...
<目次> はじめに 「江戸しぐさ」を読み解く三つの視点 第1章 「江戸しぐさ」を概観する 第2章 検証「江戸しぐさ」~パラレルワールドの 中の「江戸」 第3章 「江戸しぐさ」の展開~越川禮子と桐山勝 第4章 「江戸しぐさ」の誕生~創始者・芝三光と 反骨の生涯 第5章 オカルトとしての「江戸しぐさ」~偽史が 教育をむしばむ 第6章 「江戸しぐさ」教育を弾劾する~歴史教育 、そして歴史学の敗北 おわりに 「江戸しぐさ」は最後の歴史捏造ではない <内容> 公共広告機構の「江戸しぐさ」のCMは覚えている。我が愛する"山口晃"氏の作品だったからだ。そして、「傘かしげ」や「肩ひき」などは何となく目にしてきた。「へぇ」くらいの認識であった。 しかし、この本の最初の部分で、「江戸しぐさ」の創始者、芝三光の本の内容が紹介されると、唖然とした。明治になって生粋の江戸っ子は薩長政府により弾圧され、多くは死に絶えた!?。そのために「江戸しぐさ」は廃れたと…。もうこの段階で「江戸しぐさ」が嘘っぱちであり、著者の言う「歴史捏造」であることがはっきりした。 さらに、著者の危惧していることに私も気がつかなかった口だった。教育の世界にしっかりとこの「江戸しぐさ」が入り込んでいる。それも「道徳」に…。自分の思った型にすべての国民を押し込めたい首相のお気に入りらしい。困ったものだ…、いやそれどころではない! 礼儀というか、思いやりの精神はどの国だからでなく、大事にしなくてはいけない。日本だから、古くからの教えだから、なんて関係ない。正しいものは正しいのだ。しかし、周りをよく見ろ!礼儀がなっていないのは、大人、それも首相あたりの年齢の連中やそれ以上の年の人たち。「年寄りだからいいでしょう」って感じの傍若無人振りが目につく。若いのはけっこうちゃんしてるよ。
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「江戸しぐさ」なるものが、現実逃避型のでっちあげられた代物であることを、本書はきちんと論証・論破している。 さて、そんな歴史を改竄した偽物を、道徳教材として子供たちに教えている文部科学省は、いったいどう責任をとるつもりなんでしょ? まさか「ウソも何万回繰り返せば真実になる」式なん...
「江戸しぐさ」なるものが、現実逃避型のでっちあげられた代物であることを、本書はきちんと論証・論破している。 さて、そんな歴史を改竄した偽物を、道徳教材として子供たちに教えている文部科学省は、いったいどう責任をとるつもりなんでしょ? まさか「ウソも何万回繰り返せば真実になる」式なんじゃないでしょうね。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
普段目にするものを無自覚に実在のものと思い込んではいないだろうか。もし、それが全くのでっち上げであっても、気づかない。 江戸しぐさ、この言葉を初めて見たのは東京メトロの広告だった。 傘かしげ、片引き、こぶし腰浮かせ、ふ~ん、こんなの江戸しぐさっていうんだ。へぇ。 という印象でおしまいだった。 この本を読み始めたときに筆者は徹底的に江戸しぐさを批判する。なにもそこまで批判しなくても、そんなに悪いことじゃないじゃん、と思って読み進めた。 読み進めるにつれ、江戸しぐさを広めようとする団体がオカルトだということが暴かれていく。 江戸しぐさを身に着けていた江戸っ子は明治政府に抹殺された、とか その歴史は闇に葬り去られた、だとか 欧米化させたい明治政府の陰謀、なんてものとか そこまでくると完全なオカルト団体であることは明白だ。 そして、江戸しぐさなんてものは江戸時代には存在せず、1980年代に作られた創始者の創作であることが証明していく。 現在、この江戸しぐさは道徳の教科書に載っていることを筆者は批判している。 なぜならそこには、江戸時代の日本人特有の行動思想があったという偽の歴史をもとに書かれているからだ。 この本から読み取るべきは、物事を素直に受け取るだけではない、疑ってみて自ら考えるということが必要だということだ。 道徳的には正しいもの。そして愛国主義民族主義に訴えるもの、そういった人の心の琴線に触れるものにオカルトが入りこむとだまされやすい。 人は自分が見たいものを見ようとする。物事は自分が見たいもののように見えてくる。 そういった見方を、ふと立ち止まって疑ってみることが、考えるということではないだろうか。
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これは必読。歴史教育がファシズムに敗北してしまったが、狂人の戯言と笑い捨てていた俺にも責任の一端はある。耳が痛い。
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「江戸しぐさ」そのものがある程度歴史、というより江戸時代の風俗を知っていれば失笑ものだけに、「常識をくつがえされる」感覚を味わえないのがこの本の最大の欠点かもしれない。
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「江戸しぐさ」と称されているものが、実際の江戸時代の風俗とは異なることを種々の史料から検証した労作。さらに「江戸しぐさ」の誤りのみならず、それを”創作”したり、広めたりした人たちの経歴に着目し、どのような背景で生まれたのか、そしてなぜ受け入れられているのかまで踏み込んで考察してお...
「江戸しぐさ」と称されているものが、実際の江戸時代の風俗とは異なることを種々の史料から検証した労作。さらに「江戸しぐさ」の誤りのみならず、それを”創作”したり、広めたりした人たちの経歴に着目し、どのような背景で生まれたのか、そしてなぜ受け入れられているのかまで踏み込んで考察しており、今まで著者含めて断片的に語られていた「江戸しぐさ」批判の初めての体系的な著作と言える。 著者も挙げているとおり、完全に虚偽の産物である「江戸しぐさ」が受け入れられる背景として「道徳教育の教材としてならいい」「モラルが低下・崩壊しているのだから必要だ」というものがある。しかしそのような認識もまた怪しい。社会や若い世代などが”劣化”しているのだから、ということで虚偽が黙認されてきたというのもあるが、まずは「道徳的にいい話」それ自体の虚偽を虚心坦懐に見つめるためにも、本書は広く読まれるべきである。
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