街場の共同体論 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
問い ・なぜ、共同体論が必要なのか 答え ・消費社会の行き過ぎた進展とともに家族が解体され、格差社会が出来上がった。同時に、学校教育も解体され、われわれの子供の世代の学力は極めて低い状態のまま、われわれは老後という弱者に転落する時代を迎える 以下、現代の日本社会の特徴 父親が没落し、母親による家族支配と呪縛がもたらされるようになった。 ・父と息子の葛藤はドラマにならない ・圧倒的な支配力をもつ母親が誕生した ・母親の育児戦略は「弱者デフォルト」 ・母親の「父親兼任」はきつい 拡大家族論 ・賢い男は「家族内序列2位」を選ぶ ・人を傷つけると全能感が味わえる ・ヴァーチャルが実で、リアルが虚な人たち ・連帯する能力の有無が生死を分ける時代 消費社会が進むことで、家族が解体していったといえる。 ・「こども」の数が異常に増殖してしまった ・強者には支援する義務が、弱者には支援される権利がある 格差社会は階級社会とは異なる。 ・子供が年収で大人を値踏みする社会 ・社会的に要請された「身の程知らず」 ・「フェアな競争社会」には落とし穴がある 学校教育に希望を託した時代は終わり、資本主義は、貧富格差の拡大を願っている 以下、こうした社会において生きる知恵 コミュニケーション能力とは、相手の体温を感じられるところまで近づくこと 弟子という生き方は、楽だ。 ・努力と報酬が相関しない。 ・ほんとうの人間的能力は「事後」にしかわからない ・四十代以上は、師弟関係が理解できない ・質のよい情報をフォローする ・自分に居着かない開放感がある
Posted by
「人と人の結びつき」をテーマとして、家族、格差社会、教育、コミュニケーション、師弟関係について日本の状況を考察する。著者の身の回りの出来事から、世界の趨勢まで幅広く問題提起し、どうあるべきか自身の考えを提示する。 これまでこのシリーズを何冊も読んできたが、この本はテーマ別によくま...
「人と人の結びつき」をテーマとして、家族、格差社会、教育、コミュニケーション、師弟関係について日本の状況を考察する。著者の身の回りの出来事から、世界の趨勢まで幅広く問題提起し、どうあるべきか自身の考えを提示する。 これまでこのシリーズを何冊も読んできたが、この本はテーマ別によくまとまっていて、とても判りやすかった。例えば近年、日本の社会が経済優先の思想に重点が置かれたため、家族制度が崩壊し、格差社会を生み、教育制度の歪みを生んでいる。特に学校教育については学生が「自身の学力を高めること」ではなく、「少ない努力でいかに学歴を手に入れるか」を競っている状況を指摘する。そしてそれが彼らにとって当たり前であることを、著者は危機的な状況と感じている。 自分も著者の指摘はよく判る。数年前、新入社員に業務の背景を説明していたら「無駄な知識は要らないので、何をやるかを早く教えて欲しい」と言われたことがある。曰く、「最小限の努力で最大のパフォーマンスを発揮するのが自分のポリシーだ」と。彼は能力はありそうだったが、周りと上手く行かなかったのか、結局5年ほどで退職してしまった。 内田樹の本を読むと彼の思想に感化されてしまい、世の中の出来事にいろいろ意見したくなる。でも誰も聞いてくれるわけではなく、何も行動できず、テレビで放送される事件や事故の報道に向かって文句を言うだけの自分が何だか情けない。。。
Posted by
最後のほうのコミュニケーションに関する論説にはなるほどと思った。コミュニケーション能力がある、ない、というのは一般的に使われている意味よりももっとシビアだ。厳密には相手に伝える能力ということだが、伝えられない状況でも「いかにして伝えるか」をルールを破ってでも実行できる力であること...
最後のほうのコミュニケーションに関する論説にはなるほどと思った。コミュニケーション能力がある、ない、というのは一般的に使われている意味よりももっとシビアだ。厳密には相手に伝える能力ということだが、伝えられない状況でも「いかにして伝えるか」をルールを破ってでも実行できる力であることのようだ。
Posted by
内田樹 「 街場の共同体論 」 相互扶助をベースとした 家族論、教育論、コミュニケーション論の本。現代社会に対して、「政治、メディア、教育が ここまで不調になってしまった以上、やれることは自分でやるしかない」というスタンスで 問題提起している 今年の上半期一の面白さ 相互扶...
内田樹 「 街場の共同体論 」 相互扶助をベースとした 家族論、教育論、コミュニケーション論の本。現代社会に対して、「政治、メディア、教育が ここまで不調になってしまった以上、やれることは自分でやるしかない」というスタンスで 問題提起している 今年の上半期一の面白さ 相互扶助システム *こどもは〜みんなの仕事だから 自分の仕事じゃないと思う。おとなは〜みんなの仕事だから 自分の仕事だと思う *人間は 迷惑をかけたり、迷惑かけられたりするもの *強者には支援する義務があり、弱者には支援される権利がある コミュニケーション能力とは *コミュニケーションを円滑に進める能力ではなく *コミュニケーションが不調に陥ったとき そこから抜け出す能力 *コミニュケーションがうまくいかない人は ルールを破れない人 鶏鳴狗盗(けいめいくとう) *本当の人間的能力は事後にしかわからない *人間は商品ではない〜人間は化ける 教育=パスをつなぐ *非対称性の関係の中で 上位者が 未熟者を保護し支援する形でしか始まらない *そうやって初めて後継者を育てることができる クレーマーは社会的に下降していく〜嫌なやつは社会的に上昇できない 階層社会で上位にたどり着けるのは いい人だけ〜相互扶助のネットワークに呼ばれ支援を受ける *知らないことを知らないと言える人 *他人の仕事まで黙ってやる人 *他人の失敗を責めない人
Posted by
「そうでない人」を排除して、社会的に良いことなど、あるのだろうか 最近、日本も日本人もおかしくなってきている。 この、「おかしさ」を言語化することにおいて、内田氏は相当長けていると思う。 毎ページ「そうだよな」という箇所が、たくさんある。 最近の少なくない日本人が、なんでもか...
「そうでない人」を排除して、社会的に良いことなど、あるのだろうか 最近、日本も日本人もおかしくなってきている。 この、「おかしさ」を言語化することにおいて、内田氏は相当長けていると思う。 毎ページ「そうだよな」という箇所が、たくさんある。 最近の少なくない日本人が、なんでもかんでも、 他人をバッシングするようなメンタリティーになっている。 日本社会の通念上で支配的な倫理観や道徳感に照らし合わせて、 個人や集団、組織の「間違い」を見つけて、徹底的に批判するようになっている。 まるで、それが、自分の義務みたいに思っている人も多くなっているんじゃないだろうか。 個人的には、非常に気味が悪い現象だと思う。 その現象の背景にあるのが、完全なる人を求めて、 宗教用語を使えば、逆説的に個人救済を求めているような感じを受ける。 もちろん、この現象の背後には、今の日本のかなり絶望的な状況にある。 改めて言うわけでもなく、もう日本は豊かではありません。 貧困率も20年前と比べて高くなり、 経済成長は、この20年でほとんどしていない。 また世帯所得も94年から25%ほど減少している。 また人口減少に直面し、日本の社会システムの抜本的な改革や変更が求められているが、 現状「変化」できない構造になっている。 そのため、多くの人が不安になり、個人の安定と救済を求めるのは、 非常に理にかなっていると思うが、現状、手軽な個人の救済はないと思う。 おそらく、無意識的に完全なる誰かを求めて、そうではない人を、 排除する意識が起こっているように思う。 この意味で、今の日本の社会状況は、非常に危険な状況だと思う。 「そうでない人」は、ほぼ日本人の全てに当てはまる。他人のミスや欠点を、最大限努力して見つけ出すことが、エトス(行動様式)となっている。 この行為は、まったく社会的寄与しないし、 そして、生産性もない。 「そうでない人」を排除して、社会的に良いことなど、あるのだろうか? ただ、この傾向は、おそらくこれからも続いていくに違いない。
Posted by
久しぶりに内田さんの本を読みました。 社会で起こっている複雑なことを、 誰かがかみ砕いて解説してくれるととても助かります。 当然、その「誰か」が問題で、 内田さんなら大丈夫だろうと私は思うので読みます。 今の社会の状態が、 戦後豊かになることを望んで進んだ結果であるとの文章に 深...
久しぶりに内田さんの本を読みました。 社会で起こっている複雑なことを、 誰かがかみ砕いて解説してくれるととても助かります。 当然、その「誰か」が問題で、 内田さんなら大丈夫だろうと私は思うので読みます。 今の社会の状態が、 戦後豊かになることを望んで進んだ結果であるとの文章に 深く納得しつつも、恐ろしさとやりきれなさを感じて いつもなら「そうか!」とすっきりするところが 「そうだよね」と、げんなりするという方にすすみ、 読みながら気分がふさいでしまいました。 「教育」を「経済」の視点でとらえると、 何も勉強(努力)しないで資格を得ることがいちばんトクした人になる、というのが みもふたもなさ過ぎて嫌になる。 少しでも他者を思って動くこと、そういう人の割合が少しでも増えること、 自分から、動かしていく以外に策はないんだろうな。 次世代を育てる、自分がもらったものを次に渡すことの大切さ。 「人に迷惑をかけない」という言葉の裏にある思考にぞっとする。 他者は、めぐりあわせでそうならなかった自分の姿と思えば 考え方も変わっていく。
Posted by
痛快で笑ってしまう。 触れることがタブーとされているようなことや、それ言っちゃおしまい、みたいなことをがんがん明るみに出していて、面白かった。 色々考えさせられる。ちょっと、怖さや痛さもある。
Posted by
内田先生の本は初めてだった。何故今まで読んでなかったのだろうと思えるくらい分かりやすくて、面白かった。 私たちが属している共同体とは一体何なのか。今後どうやっていくのか。身近なところから鮮やかに現代を切り取る姿は惚れ惚れする。
Posted by
家族や教育、コミュニケーションなど、日本社会や日本人について語った本。 人が幼児化し、非常識になり、「当たり前のこと」が通じない世の中になりつつあって、ちょっと落ち着いて世の中についてゆっくり考えてみましょう的な本。 これまでの著者の本を簡潔にまとめたような内容でした。 著者...
家族や教育、コミュニケーションなど、日本社会や日本人について語った本。 人が幼児化し、非常識になり、「当たり前のこと」が通じない世の中になりつつあって、ちょっと落ち着いて世の中についてゆっくり考えてみましょう的な本。 これまでの著者の本を簡潔にまとめたような内容でした。 著者の本をまだ読んだことがない人には、お薦めします。
Posted by
コミュニケーション能力とは、コミュニケーションを円滑に進める力ではなく、コミュニケーションが不調に陥ったときに、そこから抜け出すための能力
Posted by