満願 の商品レビュー
短編のミステリーが6編。 なんとも完成されたお話ばかりで、くいくい引き込まれる。 美しい母子が静かに策謀を巡らす「柘榴」が特によかった。
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収録された6編に共通するのは人が死ぬことくらい。心理サスペンス、社会派サスペンス、推理もの、ホラーじみたものなど、かなり毛色や長さの違う話が収録されている。敢えて言うなら無意味なほど広大なジャンルを表すカテゴリ用語となった「ミステリ」ってことになるだろう。 最も長い「万灯」がい...
収録された6編に共通するのは人が死ぬことくらい。心理サスペンス、社会派サスペンス、推理もの、ホラーじみたものなど、かなり毛色や長さの違う話が収録されている。敢えて言うなら無意味なほど広大なジャンルを表すカテゴリ用語となった「ミステリ」ってことになるだろう。 最も長い「万灯」がいちばん好きだけど最も米澤作品っぽくないかもしれない。他には「夜警」「満願」が好みだが、この3編は時制の倒置がおこなわれている点が共通している(所謂倒叙小説)。内容にはあまり関係ないかもしれないが・・。それにしても作品の幅が広いな~。
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儚い羊達の祝宴の続編のような短編集です。米澤穂信のブラックの部分が出ていてとても面白い。特に「柘榴」では女の打算が見えてくる。少女でも、女なのだ!と思う作品。「死人宿」「関守」「満願」なども、女のしたたかさが出ている。目的の為には、そこ迄出来るものなのだろうか?とも思えてしまうが...
儚い羊達の祝宴の続編のような短編集です。米澤穂信のブラックの部分が出ていてとても面白い。特に「柘榴」では女の打算が見えてくる。少女でも、女なのだ!と思う作品。「死人宿」「関守」「満願」なども、女のしたたかさが出ている。目的の為には、そこ迄出来るものなのだろうか?とも思えてしまうが、面白い物語です。
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これぞ米澤穂信の世界、という1冊。 嫌ミスっぽく感じる方もいるかもしれないけれど、いずれも人間の情念の世界が感じられ、逆に静かな湖面のような読後感がありました。
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とても良かったです。 うっとりしてしまう程の絶妙な後味の悪さ。 ブラックな米澤さんは大好きです。 6編いずれも良く練られていて、巧いなーと感じさせる大変満足な1冊でした。 短編ではあるものの人物描写や背景は色濃く描かれ、黒さの中にもほのかな甘さを感じさせる。 この配分がお見事。 そして世界の反転する様が美しく痺れます。 「死人宿」「柘榴」「関守」が特に好み。 少女だからこそのしたたかさや生々しさ、おぞましさを感じる「柘榴」が絶品です。 『儚い羊たちの祝宴』も大好きな作品なのですが、この作品も素晴らしいです。
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ミステリ短編集。さまざまなシチュエーションで描かれたそれぞれの物語は、どれも引き込まれるのだけれど。どうもラストにはうすら寒いものが残ってしまいます。でもきっとそれが魅力! お気に入りは「関守」。都市伝説の取材に行く主人公。ありがちなネタに思えたはずが、どんどん募る不穏な雰囲気。...
ミステリ短編集。さまざまなシチュエーションで描かれたそれぞれの物語は、どれも引き込まれるのだけれど。どうもラストにはうすら寒いものが残ってしまいます。でもきっとそれが魅力! お気に入りは「関守」。都市伝説の取材に行く主人公。ありがちなネタに思えたはずが、どんどん募る不穏な雰囲気。じわじわぞくぞくと嫌な予感が満ち満ちた後のこのラストは、何ともいえず怖い。その陰の物語が悲しく、真剣な思いがあるだけ、余計に。
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『ボトルネック』にも『インシテミル』にも響かなかったのに『儚い羊たちの饗宴』でずどんと撃ち抜かれたのだから、この結末、予想できていた。そして本当に、嬉しすぎる予定調和だった。 気持ち良く言い切ります。 米澤穂信は、短編がいい! 『儚い〜』ではどこか懐古主義的韻律で物語を括りつ...
『ボトルネック』にも『インシテミル』にも響かなかったのに『儚い羊たちの饗宴』でずどんと撃ち抜かれたのだから、この結末、予想できていた。そして本当に、嬉しすぎる予定調和だった。 気持ち良く言い切ります。 米澤穂信は、短編がいい! 『儚い〜』ではどこか懐古主義的韻律で物語を括りつつ、少女目線の濃いサイクルで短編をまとめた米澤穂信が、今回は、土俗的、古典的、伝統的な正当の手法で、小さく堅実に、物語を横串につないでみせてくれる。 小市民シリーズなどの作家の顔とはまた違って、リアリティたっぷりに様々な違う犯罪者たちが描かれるが、驚くのはそれぞれの描き込みかた。 中学生の繊細な心の機微はいいだろう。しかしそれと横並びに駐在員の巻き込まれる東南アジアの利権にからむ賄賂文化、江戸川乱歩の薫り漂う下宿などをぴしりと書き込まれると、この人、やるなあっておもう。 難を言うなら、それがあたしがこの人の長編が読めない理由なのだが、とにかく犯人がわかりやすい。犯行理由も、ものによってはわりとらあからさま。素直といえば素直だし、短編だから仕方ない?でもすこし、勿体無い気もするのだなあ。地の文が丁寧なだけに、も少ししなやかにしまっても? なんて贅沢ですが、いやもう、あともういっぽ。関守はそれを差っ引いても、しん、と、沈むような恐怖があって、よかったもの。
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どの話もほの暗くどんよりとした世界に引き込まれてとてもよかった。 「夜警」がいちばん好きかも。「万光」も良いんだけど、既に他の文庫で読んでいたので単行本には入れないで欲しかったなー。 そしたら★は5つだった。
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米澤穂信の作品は『古典部シリーズ』や『小市民シリーズ』しか読んでいないので人が死なないミステリーという印象しかないのだが、この作品は良い意味で裏切られた感じがする。古典部・小市民シリーズのようにふわふわした作品ではなく、後味や胸糞の悪い作品の詰め合わせでゾクゾクする。しかし、後味や胸糞が悪いが最後は狂気でありながらも美しいという作品もある。ブラックでありながらさりげなく甘みもある。いろんな側面を見せてくれる作品である。前半の3作品が好き。その中でも『柘榴』はすごく好き。米澤穂信ってこんな作品も描くのか。
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どういう展開になるのかは分からないけど、「こいつが実は悪い奴だ。」ということだけは分かっちゃいますよね。黒澤穂信作品だからね。
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