資本主義の終焉と歴史の危機 の商品レビュー
資本主義の分析という分野において、昨今取り上げられる脱成長モデルとそう遠くない論旨。 文字通り十年一昔となりながらも、筋道としては現在からそれほどそれてないように感じる。 再読。
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10年ぶりの再読です。 資本主義の本質をフロンティアの開拓、"中心"による"周辺"の搾取と捉える考え方をベースとして、ゼロ金利は無成長状態の現れでありそれはフロンティアの消失によるものである、最終的には自国内に"周辺"(...
10年ぶりの再読です。 資本主義の本質をフロンティアの開拓、"中心"による"周辺"の搾取と捉える考え方をベースとして、ゼロ金利は無成長状態の現れでありそれはフロンティアの消失によるものである、最終的には自国内に"周辺"(搾取される側)を作り出し中間層を没落させ民主主義を危機に晒す、周辺が消失した時に資本主義は終焉する、その終焉は近く、今後は資本主義を脱して新たなシステムを構築したものが次の覇権を握る、といった内容の本であると理解しました。 とくに15,6世紀との対比は興味深いです。中国が内需主導型に転換できない場合、低成長、デフレ状態となるという読みも当たっています。とはいえ資本主義を脱しようとして失敗しているので半分当たりといったところでしょうか。 少ししか触れられていませんが量的緩和への批判の部分は結構的確で、実際貨幣数量を増やしたところで貨幣流通速度が下がれば物価水準も取引量も変わらんのですよね。コロナによる供給ショックで結果的に物価は上がりましたが、あれがなければ結局どれだけ量的緩和だけしたところで物価は上がっていなかったんじゃないかと考えてしまいます。 なおメインの論旨について、プログラマー兼医学博士として申しますと、やはり一つ一つのアイデアや研究開発だけで生産性向上を成し遂げる事自体は可能であり、そういう意味ではフロンティア自体は無限にあると言え、そうである限り資本主義は終焉しないと言えます。それが良いかどうかは別として。 ただ中間層の没落や消費の低迷は事実であり、どちらかといえば搾取で過剰な富を蓄積するような行き過ぎた資本主義が終焉するという言い方の方が正しいように思います。またそれを願いたくもあります。
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「超マクロ展望世界経済の真実」と併読するとよい。 グローバリゼーションの進展によって、発展途上国(周辺)と先進国(中心)という構図は内部化された。それが、先進諸国における格差の拡大と中流階級の消失である。 「利子率革命」「価格革命」に代表されるように、もう世界経済は大幅な成長...
「超マクロ展望世界経済の真実」と併読するとよい。 グローバリゼーションの進展によって、発展途上国(周辺)と先進国(中心)という構図は内部化された。それが、先進諸国における格差の拡大と中流階級の消失である。 「利子率革命」「価格革命」に代表されるように、もう世界経済は大幅な成長を見込めない。
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仕事で毎年目標が上がっていくけれど、そもそもその市場広がっていってないよね…?という気持ちがこの本を読むとすっきりします。
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資本主義の目的である拡大と成長のための侵食先が欠乏していき、そして金利の低下から資本主義の終わりと未来への警告を唱える一冊。 ルターとスノーデンを同列に考えるなど、ちょっと強引かなと思うところもあるが、資本主義の終焉を憂える根拠は理解できる。 エネルギー問題など色々あるが、著者の...
資本主義の目的である拡大と成長のための侵食先が欠乏していき、そして金利の低下から資本主義の終わりと未来への警告を唱える一冊。 ルターとスノーデンを同列に考えるなど、ちょっと強引かなと思うところもあるが、資本主義の終焉を憂える根拠は理解できる。 エネルギー問題など色々あるが、著者の指摘する資本主義の侵食先となるのは、これからはきっと宇宙になると個人的に思うが、人類初の月面着陸から大きな進歩が感じられない宇宙開発が、資本主義が終わったらそれこそ進まなくなるし、どうなるんだろうか。
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「中心」が「辺境」を侵食・拡大していくことで成長を続け、資本を永続的にドライブさせていく、それが資本主義社会。「辺境」つまり投資先が無くなってしまったから、利子率が低下しゼロに近づいている。そのせいで、金余りが起きバブルの生成と消滅が起きやすくなっている、という筆者の主張。そこま...
「中心」が「辺境」を侵食・拡大していくことで成長を続け、資本を永続的にドライブさせていく、それが資本主義社会。「辺境」つまり投資先が無くなってしまったから、利子率が低下しゼロに近づいている。そのせいで、金余りが起きバブルの生成と消滅が起きやすくなっている、という筆者の主張。そこまでは同意できる。構造としてはそうなんだろう、たぶん。 しかし、利子率がゼロ=資本主義の終焉は強引。9.11や3.11まで資本主義の行きつく先にしてしまうのは論理が飛躍しすぎ。読んでいて、史的唯物論と同様の強引さと違和感を感じる。社会科学系の論文にありがちなこの手の結論ありきの文章展開は辟易する。 確かに筆者の言う、成長神話が間違いだ、という主張は魅力的に聞こえる。環境問題と整合するし、他人・他社・他国との競争に飽き飽きしてる人も多いだろう。でも、何が幸せなのか価値感の軸はたくさんあるとは思うが、世の中が多様性に向かう方向性は悪いことじゃないと個人的には思っている。 で、多様性を生み出すのはたぶん資本主義じゃないと難しいと思う。経済構造が上部構造を規定するんだから、資本が利潤を求めていろんな方向にフロンティアやスキマを開拓してくれないと、社会が多様する道は拓けないんじゃないか。イメージでは、多様性を生む資本主義は熱帯雨林や湿潤温帯の生態系で、民主的でない資本主義・社会主義は針葉樹林や人工林。後者の方が効率的だろうけれど、棲みかとしては心地よくない気がする。 ・・・という自分も論拠なしに論理展開してる。筆者のことは悪く言えないかも。
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資本主義の最終局面にいち早く立つ日本。世界史上、極めて稀な長期にわたるゼロ金利が示すものは、資本を投資しても利潤の出ない資本主義の「死」だ。他の先進国でも日本化は進み、近代を支えてきた資本主義というシステムが音を立てて崩れようとしている。一六世紀以来、世界を規定してきた資本主義と...
資本主義の最終局面にいち早く立つ日本。世界史上、極めて稀な長期にわたるゼロ金利が示すものは、資本を投資しても利潤の出ない資本主義の「死」だ。他の先進国でも日本化は進み、近代を支えてきた資本主義というシステムが音を立てて崩れようとしている。一六世紀以来、世界を規定してきた資本主義というシステムがついに終焉に向かい、混沌をきわめていく「歴史の危機」。世界経済だけでなく、国民国家をも解体させる大転換期に我々は立っている。五〇〇年ぶりのこの大転換期に日本がなすべきことは?異常な利子率の低下という「負の条件」をプラスに転換し、新たなシステムを構築するための画期的な書! 第1章 資本主義の延命策でかえって苦しむアメリカ: 経済成長という信仰 利子率の低下は資本主義の死の兆候 第2章 新興国の近代化がもたらすパラドックス 先進国の利潤率低下が新興国に何をもたらしたのか 先進国の過剰マネーと新興国の過剰設備 資本主義システムの覇権交替はもう起きない グローバリゼーションが危機を加速 第3章 日本の未来をつくる脱成長モデル: 先の見えない転換期 資本主義の矛盾をもっとも体現する日本 積極財政政策が賃金を削る理由 ケインズの警鐘 ゼロ金利は資本主義卒業の証 第4章 西欧の終焉 欧州危機が告げる本当の危機とは? 英米「資本」帝国と独仏「領土」帝国 新中世主義の躓き 欧州統一というイデオロギー 資本主義の起源から過剰は内蔵されていた 人類史上「蒐集」にもっとも適したシステム 中心/周辺構造の末路 第5章 資本主義はいかにして終わるのか: 資本主義の終焉 近代の定員一五%ルール ブレーキ役が資本主義を延命 無限を前提に成り立つ菌ぢあ 未来からの収奪 デフレ化する世界 ゼロ成長維持ですら困難な時代 長い21世紀の次に来るシステム 脱成長という成長 豊かさを取り戻すために
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先進国が横並びの低金利と中間層の没落が何年も続いていることを理由に水野和夫さんは「資本主義の終焉」に入っていると主張する。 先進各国では(日本もご多分に漏れず)自己責任の新自由主義やグローバリズムを喧伝することで中間層を没落させて富裕層にさらに富を集中させていく構造があり、99...
先進国が横並びの低金利と中間層の没落が何年も続いていることを理由に水野和夫さんは「資本主義の終焉」に入っていると主張する。 先進各国では(日本もご多分に漏れず)自己責任の新自由主義やグローバリズムを喧伝することで中間層を没落させて富裕層にさらに富を集中させていく構造があり、99%の人々にとって資本主義を維持するインセンティブがなくなってきている。 米国の「ウォール街占拠運動」「トランプ現象」「サンダース現象」、英国の「ブレグジット」、フランスの「国民戦線ル・ペン」、イタリアの「五つ星運動」にも、日本国内の「反TPP」「れいわ山本太郎」にもその傾向が見られる。
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現状、資本主義が末期状態にあり、だましだまし延命させているだけだということが分かる。 その一例がアベノミクス。異次元金融緩和によって資産価値(株価)を膨張させ、あたかも経済がうまく回っているかのように見せかけている。しかし持続可能なシステムではないから、いつか破綻する。 利子率の...
現状、資本主義が末期状態にあり、だましだまし延命させているだけだということが分かる。 その一例がアベノミクス。異次元金融緩和によって資産価値(株価)を膨張させ、あたかも経済がうまく回っているかのように見せかけている。しかし持続可能なシステムではないから、いつか破綻する。 利子率の水準が利潤率の水準を反映しており、先進各国の利子率の低下が資本主義の瀕死状態を表しているというのは説得的。 しかし著者が掲げる「脱成長」というのは魅力に欠ける。共産主義社会でも成長はできるのでは? 要するに、成長とはイノベーションのことだろう。知識と財産が共有された自由な共産主義社会でこそイノベーションが乱発すると思われる。マルクスも、共産主義社会になればゼロ成長になるという夢のない話はしていなかった。共産主義は資本主義からの撤退・敗走ではなく、アップグレード・上位互換でしょう。
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『#資本主義の終焉と歴史の危機』 ほぼ日書評 Day578 初めにお断りしておく。旧民主党の御用学者が書いた、目次だけ見れば大概の内容の予想が付く類の本である。2014年刊の新書なので書店には並んでいないかと思うが、間違ってもused購入などなさらぬよう。 本書の主張を一言...
『#資本主義の終焉と歴史の危機』 ほぼ日書評 Day578 初めにお断りしておく。旧民主党の御用学者が書いた、目次だけ見れば大概の内容の予想が付く類の本である。2014年刊の新書なので書店には並んでいないかと思うが、間違ってもused購入などなさらぬよう。 本書の主張を一言でいえば、フロンティアなき今、資本主義は遠からず終焉を迎える。その中でも課題先進国たる日本は拡大なき均衡による新たな経済学体制を目指すべきというもの。 こんな学者が「内閣官房内閣審議官(国家戦略担当)」に就いていたのであるからして、日経平均7千円時代は必然であったと言わざるを得ない(Amazon書評で高評価を取っている非正規雇用者の増加は、程よく"人材派遣会社"の会長に収まっている、自民政権時代の大臣による悪政に起因するものだろうが)。 とまれ、本書を簡単に振り返る。 出だしは多少興味深い主張で始まる。 "アメリカは、近代システムに代わる新たなシステムを構築するのではなく、別の「空間」を生み出すことで資本主義の延命を図りました。すなわち、「電子・金融空間」に利潤のチャンスを見つけ…" どうだろう、2014年刊にしては、なかなかのものではないか? ただ、時代は、まだアメリカが「リーマンショック」の影響から十分に立ち直れず、日本が先行して経験した超低金利&デフレのスパイラルに落ち込もうか、というタイミング。 ここでいう「電子・金融空間」は、過度なレバレッジを掛けた金融商品("リーマン" を引き起こした原因と位置づけられる)と、ほぼ同意である。今日のような、メタバース、ブロックチェーンといった代物ではない。 そうした新たなフロンティアへの挑戦といったポジティブな文脈ではなく、むしろ実体経済からの逃避という批判的視点で、たまたまこうした表現を用いているにすぎない。 2010年代の超低金利を、もはや資本の産み出す期待利潤が失われつつあるから、と資本主義の終焉近しを予言するのだが、その根拠として16世紀の新たな大規模金脈(物理的な鉱山)発見が、大インフレをもたらした歴史を持ってくる。供給側の限界が強固であった時代との半ば意図的な混用は学問の徒の名に恥じるものではなかろうか(この辺り詳しくは、本書を手に取るきっかけとなったDay572『自由と成長の経済学』を参照されたし)。 https://amzn.to/3925CXP
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