資本主義の終焉と歴史の危機 の商品レビュー
超低金利がつづく日本経済に資本主義の終焉の予兆を見いだし、資本主義の発祥から現在にいたるまでのプロセスをおおまかに踏まえながら、このシステムが現在直面している危機について論じた本です。 著者は、ジョン・エルスナーとロジャー・カーディナルの『蒐集』における「帝国とは、諸民族を集め...
超低金利がつづく日本経済に資本主義の終焉の予兆を見いだし、資本主義の発祥から現在にいたるまでのプロセスをおおまかに踏まえながら、このシステムが現在直面している危機について論じた本です。 著者は、ジョン・エルスナーとロジャー・カーディナルの『蒐集』における「帝国とは、諸民族を集めた一コレクション」であるという洞察を参照しつつ、「電子・金融空間」の開放によって無限の成長をつくりだそうとした英米の「資本帝国」とEUに代表される「新中世主義」の「領土帝国」のいずれもが、いまや行き詰っていると主張し、新しいシステムを創出する必要があると論じています。 具体的な処方箋が示されていないのはよいとしても、資本主義の「終焉」についての議論が、あまりにも時間的なスケールの大きな話に感じてしまいます。もちろん次のシステムについてある種の理念的なレヴェルで考察をおこなうことには意義があるのでしょうが、それにしても本書の議論はあまりにも茫漠としていてつかみどころがないと感じてしまいます。
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利子率の低下は資本主義の死の前兆。古いシステムから新しいシステムである利子率革命を実現した「長い16世紀」と比較して現在を資本主義が終焉を迎える「長い21世紀」と見る。ゼロ成長、ゼロ金利、ゼロインフレである現在の日本がゼロ成長社会に適応するトップバッターだという。成長神話に取り付...
利子率の低下は資本主義の死の前兆。古いシステムから新しいシステムである利子率革命を実現した「長い16世紀」と比較して現在を資本主義が終焉を迎える「長い21世紀」と見る。ゼロ成長、ゼロ金利、ゼロインフレである現在の日本がゼロ成長社会に適応するトップバッターだという。成長神話に取り付かれてはこの先中間層が貧困層に没落する。ゼロ成長社会へソフトランディングさせる時が来た。
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現代の超低金利の時代背景を16世紀の中世封建制の終焉から読み解く。 経済の勉強に加えて、歴史を学ぶことの重要性を再確認させてもらった。
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「閉じていく帝国と逆接の21世紀経済」が面白かったので、少し前(2014年)に話題になっていた本書も読んでみました。主張されている内容は同じ。歴史的な流れについては、本書のほうがより詳しく述べられています。 本書を書かれた時点で、あと数年で資本主義の終焉を象徴するような動きが始ま...
「閉じていく帝国と逆接の21世紀経済」が面白かったので、少し前(2014年)に話題になっていた本書も読んでみました。主張されている内容は同じ。歴史的な流れについては、本書のほうがより詳しく述べられています。 本書を書かれた時点で、あと数年で資本主義の終焉を象徴するような動きが始まるとおっしゃっていますが、それから4年。英国のEU離脱、ロシア、中国の内向きな動き、そして米国の保護主義と、まさにその流れで動いていますね。。
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サヨク思想の特徴がよく表れている。 問題点を指摘し、自説に都合の良い歴史を引用して変革がいかにも必然であるかのように説き、そして責任は回避する。 代案らしきものはあるが、人間の本性であるエゴ、暴力性、ねたみそねみのような要素から目を背けているため、小学生が考える「ぼくのかんが...
サヨク思想の特徴がよく表れている。 問題点を指摘し、自説に都合の良い歴史を引用して変革がいかにも必然であるかのように説き、そして責任は回避する。 代案らしきものはあるが、人間の本性であるエゴ、暴力性、ねたみそねみのような要素から目を背けているため、小学生が考える「ぼくのかんがえたりそうのしゃかい」程度の空想になっている。 「資本主義の本質は貧者からの収奪であり、収奪すべきものがなくなれば自壊する」という主張はわかる。 「成長しすぎた強欲資本主義は、国民国家と民主主義を破壊し、特権富裕層による王政的な支配に行きつく」という主張もわかる。 しかし、「もう成長はないのだから、あきらめてスローライフを生きよう」という主張には、「それは素敵だね。でもどうやって?」と問わざるをえない。 「グローバル企業の規制はG20の連携が必要」という主張も「それはそうですね。で?」としか言えない。 ピケティはグローバリズム企業の規制が容易ではないことを認識しており、「まずできそうなこと」として各国の情報交換を提唱している。また、経済格差を世代間で固定させないために教育の重要性を訴えている。 ケインズは経済成長を促す原動力が単なる利益率だけではなく、人間の「アニマル・スピリッツ」にあることを理解し、一見無駄に見えるピラミッド建設や聖歌隊の維持にも価値を見出している。 三橋貴明(ピケティやケインズと並べるのはどうかと思うが)は日本の各地を回ったうえで、災害対策、交通インフラ整備、少子化対策としての生産性向上、そして国家防衛のための「政府による投資」が必要であると説き、国家と企業・家計を同一視するプライマリーバランスによる投資抑制を批判している。 過去20年で日本「だけ」が成長していないのは、日本が資本主義の最先端に到達したわけではなく、小泉改革と民主党の失政が原因であり、マスゴミと結託した民主の残党は中共による「日本停滞戦略」を忠実に実行している。 資本主義の行き詰まりは第一次、第二次の世界大戦でリセットされたという非情な現実を考えると、今なすべきことはお花畑の空想に賛同するのではなく、「今度は」負け組に入らないことである。 そのためには国内にはびこるサヨクと特アの一掃、これこそが最優先事項だ。
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経済成長の神話を否定し、その根拠を経済の視点から説明している。近年のデータのみならず、他国の過去の事例も多く提示しているのが特徴的。 経済成長は常に周辺を必要としているが、周辺が開拓され尽くした現状、成長の余地はなく、無理な金融政策はバブルとデフレを生むだけだと明かす。 よっ...
経済成長の神話を否定し、その根拠を経済の視点から説明している。近年のデータのみならず、他国の過去の事例も多く提示しているのが特徴的。 経済成長は常に周辺を必要としているが、周辺が開拓され尽くした現状、成長の余地はなく、無理な金融政策はバブルとデフレを生むだけだと明かす。 よって、より理想的なのはゼロ成長ということになるが、その社会の仕組みはどんなものか、どのようにシフトしていけば良いかについては、具体的には書いていない。そのことに不満を持つ読者もいるのかもしれないが、今だに経済成長が多くの人に信じられている現状を考えれば、ゼロ成長の可能性を根拠を持って解き明かしているというだけでも、充分知る価値のある内容だと思う。 私は自然環境や物資資源などの見地から現在の社会の危うさを指摘する書は読んだことがあったが、経済の視点に絞って解説している本はあまり読んでいなかった。経済に詳しい人には、むしろこういう本の方が分かりやすいのかも。
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2014年の刊行で著者は民主党政権時代の政策ブレーンでもあった経済学者。 経済成長の時代は終わった、資本主義は終焉に向かっているというのが論点。その根拠は、グローバリぜーションが進み新興国にも資本が流れ込み、資本を投下すべき世界中の地理的・物的空間がなくなった。それが長期的に低金...
2014年の刊行で著者は民主党政権時代の政策ブレーンでもあった経済学者。 経済成長の時代は終わった、資本主義は終焉に向かっているというのが論点。その根拠は、グローバリぜーションが進み新興国にも資本が流れ込み、資本を投下すべき世界中の地理的・物的空間がなくなった。それが長期的に低金利に現れているというもの。 じゃあ次は何が待っているのかいうと、著者自身も明確な答えは持ってないけど、皆さんにかかってますとい〆る。次の一手を期待していただけにズルっと来たが、そうなると「先行き不透明だし自分さえよければいいや」なんていう個人主義に向かって世の中が走るような気がしてならない。
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長期にわたる低金利は、資本を投下してももはや利潤を得られない、資本主義の死を意味しているという主張はわかりやすかった。では資本主義が徐々に終焉に向かっていく中で、中国やロシアなどの非資本主義の大国はどのような変化を遂げ、また他の資本主義国家にどのような影響を及ぼすのか、疑問が残っ...
長期にわたる低金利は、資本を投下してももはや利潤を得られない、資本主義の死を意味しているという主張はわかりやすかった。では資本主義が徐々に終焉に向かっていく中で、中国やロシアなどの非資本主義の大国はどのような変化を遂げ、また他の資本主義国家にどのような影響を及ぼすのか、疑問が残った。 金融のグローバリゼーションと、電子・金融空間(実物以外の取引空間)の創出により、資本は国境、または実物経済の垣根を容易に越えるようになった現代。マネタリーベースを増減させたところで一国内の消費者物価や雇用を操作することはもはや不可能である、という考え方も納得できる。ただし著者もこれほどの原油安は予見していなかったように、多方面から慎重な考察を行わないとシステムを誤った方向に誘導してしまう恐れもあると思う。 いずれにしても主張はわかりやすく、さらなる議論が必要であると感じた。また非常に多くの学者の言葉を引用してあり、素人としては勉強になった。
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どうしても資本主義の向こう側が見たくてPart1 著者の考えでは、資本主義に次ぐシステムを生み出すポテンシャルを最も秘めている国は、日本なのだという。 何故ならば、最も早く資本主義の限界にぶち当たった国が日本だからだそうだ。 けれども、次なるシステムはまだ誰にも見えてはおらず、...
どうしても資本主義の向こう側が見たくてPart1 著者の考えでは、資本主義に次ぐシステムを生み出すポテンシャルを最も秘めている国は、日本なのだという。 何故ならば、最も早く資本主義の限界にぶち当たった国が日本だからだそうだ。 けれども、次なるシステムはまだ誰にも見えてはおらず、今は只、ゼロ金利・ゼロ成長・ゼロインフレを基調とした「定常状態」を維持することで、資本主義の暴走を食い止めることしか方法はないという。脱・成長主義だ。 資本主義の次の社会は私の生きている内にやってくるのだろうか。私が次なるシステムを考え構築できる力など持ち合わせているはずもないから、頭の良い人、頑張ってくれ!という感じだ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
大学の講義がきっかけで日銀のマイナス金利政策の勉強をしてから、経済への興味が出てきた。また、先進国の経済は持続可能なのか?という疑問が昔からあったため、本書のタイトルに惹かれて読んだ。もう一回読もうと思う。 本書は、 「20世紀後半のグローバリゼーションによって資本が国境を越えて行き来出来るようになったことで維持される近代資本主義の構造は、後進国が近代化した時点で崩壊し、ゼロ金利・ゼロ成長の世の中が訪れる」ことを、12世紀頃から始まる資本主義の歴史を検証することで、説得力のある形で主張している。 成長を善とするシステムがこのまま続けばバブルの膨張と破裂が繰り返される不安定な社会になり、中間層が没落し、マルクスの言うような革命が起こりかねないという(これを筆者は資本主義の突然の終焉・・・ハード・ランディングと呼んでいる)。 資本主義を穏やかに終わらせられれば(ソフト・ランディング)、人類は持続可能であるそうだ。 筆者は、日本を世界で最も早い時期に資本主義が終焉を迎えた国とみなし、日本が資本主義の次にやってくる新しいシステムの提案者になることが出来るとしている。ただし、具体的なシステムについては言及せず、知識人が団結し知恵を絞る必要があるとだけ述べてある。
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