人質の朗読会 の商品レビュー
うまく理由を言語化できないけれど、 とにかく空気感や文章が好き。 人生の中の出来事が、 職業選択に繋がっていて、そうか〜と感慨を受けたり。 でもただ明るいというよりは 静かに生と死が流れている感じ。 やまびこビスケットと花束が特に好きかな。
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人生の中で誰しもひとつは持つ大事な出来事、自分を変えた出来事を朗読していくもの。人質たちの置かれている状況自体はそこまで関係がないように感じて、実はお互いがそれを共有するという意味で重要となり悲しいような美しいようなそんな作品だった。
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“記憶”の美しさそのものを得られる物語 なんて美しくて悲しくて儚くて確かな欠片達なんだろうと思いました。 命や人生がそういうものなのか。 詳細や輪郭が確実に見えるわけではないのに、 失われる、失われたこと、が辛くて心が痛い。 けど失われたことや、失われ方だけに意味がある訳では...
“記憶”の美しさそのものを得られる物語 なんて美しくて悲しくて儚くて確かな欠片達なんだろうと思いました。 命や人生がそういうものなのか。 詳細や輪郭が確実に見えるわけではないのに、 失われる、失われたこと、が辛くて心が痛い。 けど失われたことや、失われ方だけに意味がある訳ではない。 相手が大切にしているものや、してきたものを 大切にしたいというか、当然ながら相手にそういうものがある、ということのかけがえのなさを感じました。
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WOWOWでドラマ化もされた本作。タイトル通り、自分の命がどうなるのかもわからない人質という状況下での朗読会の様子が綴られています。 語られた思い出は、わかりやすく嬉しかったり悲しかったりではなくて、どれも妙に記憶に残る印象的な出来事ばかり。 祈るような気持ちでの読書。 一話ご...
WOWOWでドラマ化もされた本作。タイトル通り、自分の命がどうなるのかもわからない人質という状況下での朗読会の様子が綴られています。 語られた思い出は、わかりやすく嬉しかったり悲しかったりではなくて、どれも妙に記憶に残る印象的な出来事ばかり。 祈るような気持ちでの読書。 一話ごとに、読んだ後はしみじみと余韻にひたりたくなる不思議な気持ちになりました。 何だかとても厳かで静謐な世界。そしてもの悲しさが漂う作品でもありました。 特に印象深かったのは、 「やまびこビスケット」 「冬眠中のヤマネ」 「ハキリアリ」 久しぶりに著者の作品を読みましたが、小川さんならではの世界観を感じました。
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2023.11.26 読了。 地球の裏側で8人の日本人の乗ったバスツアーが拉致される。元猟師小屋に隔離された人質たちはいつしか「朗読会」を始める。 「人質の朗読会」という題名からもっと残酷な小説かと想像していたが、人質たち一人ひとりのささやかな経験を語るものだった。誰にでもき...
2023.11.26 読了。 地球の裏側で8人の日本人の乗ったバスツアーが拉致される。元猟師小屋に隔離された人質たちはいつしか「朗読会」を始める。 「人質の朗読会」という題名からもっと残酷な小説かと想像していたが、人質たち一人ひとりのささやかな経験を語るものだった。誰にでもきっとある「他人にとってはどうでもいいが忘れられずに心の奥にそっと置いてある経験」が淡々と綴られていた。 小川洋子作品は数冊しか読んだことがないが、どれも「静寂」と「祈り」と「たまたま出会った人々との縁」を大切に、丁寧に描かれている気がする。それは癒しや優しさだけでなく哀しみや人の弱さも毒々しいしさも表現されているように思える。 でも、そんな世界観が時々非常に恋しくなる。 きっと小川さんも日々を大切に生きているんじゃないかと想像する。
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他人から見ると些細な出来事だけれど、自分にとっては磨く前の原石のような出来事。それをこの絶体絶命の状況で語るというのが興味深い。話の内容に深い意味はなくとも、本当に心に残った(引っかかった)ことが最期に浮かぶのかもしれない。 佐藤隆太さんも書かれてたけど、「私だったらこの場面で...
他人から見ると些細な出来事だけれど、自分にとっては磨く前の原石のような出来事。それをこの絶体絶命の状況で語るというのが興味深い。話の内容に深い意味はなくとも、本当に心に残った(引っかかった)ことが最期に浮かぶのかもしれない。 佐藤隆太さんも書かれてたけど、「私だったらこの場面で何を語るだろう」ってつい考えちゃう。今夜の夜更かしの理由はこれになりそうだ。
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皆誰しも物語を持っている。日々に翻弄されるサラリーマンであれ、夕食に頭を悩ます主婦であれ、老若男女関係なく、人と人が出会うなら、そこに物語は常に芽吹く準備をしているのではないか。 そうして発生した物語は、必ずしもその人の容姿や言動に垣間見えるほどはっきり見えるものではなくとも、...
皆誰しも物語を持っている。日々に翻弄されるサラリーマンであれ、夕食に頭を悩ます主婦であれ、老若男女関係なく、人と人が出会うなら、そこに物語は常に芽吹く準備をしているのではないか。 そうして発生した物語は、必ずしもその人の容姿や言動に垣間見えるほどはっきり見えるものではなくとも、その人が人生の中で縒ってきた糸束のうちの特別な一本だったりするのではないか。その一本をそっと手に取って、色や光沢、ほつれを読み上げる時は誰しも物語の主役――例え輝かしいものを見ているだけであっても――になれる、そんなことを考える一冊でした。 誰かの物語は、また誰かの物語を呼び起こすのではないか。頑なだったものを開かせたり、手にしていることすら気づかなかったものを「私にだってあったかもしれない」そんな気持ちにさせる気がする。 そうして人が亡くなるたび、物語は永遠に失われる。それは特別なことではなく、当たり前のことだと、今もそうだと今更気付く。
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人質という絶体絶命なはずの立場で、ぽつりぽつりと語られるそれぞれの物語。 少し不思議だったり、温かい気持ちになるような思い出のかけらが、同じ立場に置かれた見ず知らずのツアー客の前で共有されてゆく。 もしも私が人質だったら、どんな物語を語るだろうか。
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日本から遠く離れた場所でゲリラの人質になった8人の日本人。突入作戦の失敗で全員死亡。盗聴から彼らが生前、一人一人書いて朗読していた物語が語られる。 彼らの人となりなどは殆ど語られず、淡々と物語が続く。 小川洋子節という文体があるなと感じた。饒舌だけど、口煩く感じない。熱量がある...
日本から遠く離れた場所でゲリラの人質になった8人の日本人。突入作戦の失敗で全員死亡。盗聴から彼らが生前、一人一人書いて朗読していた物語が語られる。 彼らの人となりなどは殆ど語られず、淡々と物語が続く。 小川洋子節という文体があるなと感じた。饒舌だけど、口煩く感じない。熱量があるのに、冷ッと感じる。 それぞれが自分の過去を見返した内容。そんなに不思議な物語は少ない。 読み終わって暫くして、死霊の語った物語だったような気がしてきた。 何故、小川さんはこの設定にしたんだろうか。
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南米で8人の日本人が現地ゲリラに拘束された。ゲリラに拘束された日本人たちは、それぞれの人生で印象的だった出来事について、毎晩話し始めた…。 プロローグとエピローグにゲリラの話を挟み込んだ、8話+1話の掌編。足をくじいて動けなくなった工員のために杖をつくる話、特に美味しくないビス...
南米で8人の日本人が現地ゲリラに拘束された。ゲリラに拘束された日本人たちは、それぞれの人生で印象的だった出来事について、毎晩話し始めた…。 プロローグとエピローグにゲリラの話を挟み込んだ、8話+1話の掌編。足をくじいて動けなくなった工員のために杖をつくる話、特に美味しくないビスケットを作り続け、意固地な大家とビスケットで意思疎通を始める女性など、最初はホワッとした話から、じわじわと小川洋子らしい言葉によってやさしく物を撫でるような表現の作品に沈み濃縮されていく。 表現の秀逸なコンソメスープの作り方とやり投げの槍と選手の肉体の話は、小川洋子の真骨頂であろう。個人的に好きなのは、やはり『死んだおばあさん』だろうな。小川洋子の話っぽくはないが、本作では一番印象的な話だ。最後にまたもう一度拾われるあたり、作者もこの中で重要な作品と感じているのだ。 全体に中年以降の設定の人たちの話になっており、全体のテーマとしてもそれぞれのテーマとしても「死」を見つめる話がほとんどだ。ガラスのような…というのも、硬さを感じないため少し違う気がする。砂の城のような儚さが、本作の醍醐味であろう。 それぞれの作品のテーマで、長編を書いて欲しくなるし、読んでいて小説を書きたくなる作品群だ。
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