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人質の朗読会 の商品レビュー

3.9

212件のお客様レビュー

  1. 5つ

    48

  2. 4つ

    88

  3. 3つ

    45

  4. 2つ

    8

  5. 1つ

    1

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2024/09/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

海外旅行ツアーで誘拐された人質が1人ずつ朗読したそれぞれの過去の物語。 落ち着いた語りの中に「死」が見え隠れする。朗読の終わりに朗読者の職業、年齢、なぜこのツアーに参加していたのかが明記されており、そこが妙にリアル。語りの内容と現在の人生がリンクしている。全編を通して重いし、辛い。 小川洋子氏は容赦なく、残酷だ。 今を大切に生きよう。そんな風に思えた。

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2024/09/02

私のよく聞くラジオ番組で、「忘れ得ぬ人」についての投稿を照会するコーナーがある。もう会うこともないけれど、連絡を取ろうとも思わないけれど、時々ふと思い出す、忘れ得ぬ人。 人質という厳しい状況の中で、それぞれに書きおろされ、そして順に朗読されていった物語は、誰もが持つ「忘れ得ぬ人」...

私のよく聞くラジオ番組で、「忘れ得ぬ人」についての投稿を照会するコーナーがある。もう会うこともないけれど、連絡を取ろうとも思わないけれど、時々ふと思い出す、忘れ得ぬ人。 人質という厳しい状況の中で、それぞれに書きおろされ、そして順に朗読されていった物語は、誰もが持つ「忘れ得ぬ人」についての記憶であった。 本書を読みながら、自分なら何を書き、どう読むだろうかと、誰もが考えることだろう。今の仕事とも家族とも全然関係のない、人生を決めるような何か決定的なものというのでもない、秘密と言うわけでもないがあえて自分から語ることもなしにきた、そういう記憶。 映像と音や匂いで、マルチモーダルに記憶されている状況を、いったん書き下ろしてから朗読するという迂遠な手続きだけれど、その手続きを経ることで、声が整うのだろう。覚悟の遺書や日記としてではなく朗読のための原稿としたことで、その原稿ではなく録音された音源として読者に手渡すことで、それを読んだ人たちはもういないのだとすることで、静かに整った声にじっと耳を澄ませるように促すのだ。

Posted byブクログ

2024/08/24

連作短編集で、旅行中に捕まり人質となった人たちが一人一人語っていく物語。 その語られる内容がなんだか温かくて何気ない出来事なのだけど、その切り取った場面の描写が繊細で読んでいて小説の世界に入るってこういうことか、となった。 小川洋子さんの作品はやっぱり文章が美しい。宝石みたい。 ...

連作短編集で、旅行中に捕まり人質となった人たちが一人一人語っていく物語。 その語られる内容がなんだか温かくて何気ない出来事なのだけど、その切り取った場面の描写が繊細で読んでいて小説の世界に入るってこういうことか、となった。 小川洋子さんの作品はやっぱり文章が美しい。宝石みたい。 この人の描く世界観が好きでずっと浸っていたくなる。

Posted byブクログ

2024/08/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ある国を訪れていた日本人ツアー 観光客7名と添乗員1名がゲリラに誘拐され、その数ヶ月後、救出隊との銃撃戦で人質は8名全員死亡。それから少しして、彼らが拘束中に行っていた〝朗読会〟の 音源が公開された。その朗読会は、人質一人ひとりが自分の人生からストーリーを切り出し、書き言葉にしたものを他の人質に語り合うというもの。それぞれの章が1人の朗読内容になっている。 そういう設定を理解した時、この本は語り手=書き手によって異なるストーリーの切り取り方、口調、言葉の選び方などを味わえることを狙った短編集なのだろうと予想したが、蓋を開けてみるとどの語りも小川洋子仕様。これはどういうことなのだろうと思わずエピローグの章にジャンプしてしまいそうになったが、章が9つあることを確認し、ぐっとこらえて全てのエピソードを順に読むことにした。 8編終わって、エピソードの長さには多少の幅があり、常体で綴る人と敬体で綴る人の違いはあったが、やはりどれも小川洋子の作品であり、この設定がどのような効果を狙ったものであったのか掴めずにいた。 どれも小川洋子の作品というのはしかしもちろん良い意味でもあり、つまりどのエピソードも、ドラマチックな展開があるわけではないのに引き込まれる要素がさりげなく散りばめられており、すらすらとページがめくられた。 いよいよ最後の章、日本からやってきた一行の語りではないところへやってきた。わたしは未だここでこの小説の構成が生かされる展開が用意されていることを期待していた。 結論としては、そうはならなかった。確かに語り手は人質メンバーではなく現地の部隊員であり、そういう意味では多少の新鮮さはあったが、やはりもう一つの小川洋子作品であることには変わらず、短編がもう一つ加えられたに過ぎなかった。加えてそのエピソードには語り手が幼少期に出会った日本人の発話が出てくるのだが、「恐れ入ります」といったような、外国語に翻訳して、それを更に日本語に訳し直したらそうはならないだろう、というような日本語独自の表現なども現れてますます現地部隊員の語りであることの真実性が薄れて少し興醒めしてしまった。 読んでいる間、このような結末、つまり結局は普通の短編集と変わりないのであって人質がそれぞれの人生を語り継ぐという設定が十分に生かされない作品になるということを危惧し、ではその場合どうしてこの設定を採用したのか、ということを考えていた。 一つは、これを語っている人は既にこの世を去っているんだ、と思いながらその語りに触れることでそうでない場合とは異なる聞き手(読み手)の印象を狙ったものであるという説明。確かに、この設定下におけるものでなければ、と自問してみれば、あまり引き込まれるわけではないかもしれないエピソードも多い。だがこのストーリーは実際に生きた人物が自省を促す非常に特殊な状況下で綴ったものである、かつその人物は既に死んでいる、という設定がつくと、ストーリーが与える印象が変化してもおかしくない。現に、わたしは特に飽きることなく全9章を読み終えた。 もう一つは、「死」や「死者」をテーマとした作品であるということ。一つ目の説明に加えて、この本で語れれるほとんどすべてのエピソードに(すべてではないように思えるが)死が登場するからだ。死を間近に控えた語り手が死や死者にまつわる話をする。それは一種の予言であるとも捉えられるかもしれないが、更に言えば、人が自分の人生に存在した死者といかに分かち難く繋がっているかということを示唆しているという風にもとれる。そうするとこの本は、既に死者となっている彼らの語りを録音を通して聴く遺族が、彼らの語る誰か別の人の死を通して彼らと新たに繋がる、死はわたしたちの関係を断つものではないということを暗示しているのかもしれない。

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2024/07/03

人生を彩り形作るのは、 心の底から泣いたり笑ったりするような特別な瞬間だけでなく、些細だけど確かな記憶として残るような出来事で、 そういった思い出を大事に温めて心の温度を保つことができれば、 避けられない悲しみや別れを乗り越える糧にきっとなるだろうと感じた。 辛い現実という背景...

人生を彩り形作るのは、 心の底から泣いたり笑ったりするような特別な瞬間だけでなく、些細だけど確かな記憶として残るような出来事で、 そういった思い出を大事に温めて心の温度を保つことができれば、 避けられない悲しみや別れを乗り越える糧にきっとなるだろうと感じた。 辛い現実という背景で語られる自己の物語は、 平常時に語られるそれとは違って、虚栄や妬心を含まず、 まっすぐで純度が高いものだった。 私が語る物語は、どんな物語だろう。

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2024/06/18

語り合う場所は危機的な状況なのに、話す内容はどこか穏やかで温かい気持ちにもなる 私だったら、どういうことを話すだろう…

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2024/05/30

朗読される内容がどれも温かくて優しいものばかりでした。 ほんとにいつまでも朗読会が続けば良いのに、と思ってしまいました。 重たい感じもなく良かったです。 もし死ぬのかも…、という状況の中で自分だったら過去のどんな話をするのだろうか。 こんな温かい内容自分には話せないかも…。 い...

朗読される内容がどれも温かくて優しいものばかりでした。 ほんとにいつまでも朗読会が続けば良いのに、と思ってしまいました。 重たい感じもなく良かったです。 もし死ぬのかも…、という状況の中で自分だったら過去のどんな話をするのだろうか。 こんな温かい内容自分には話せないかも…。 いや、口ベタで上手に話せないかも…。 そんなこんなを考え、過去を思い返してみたり、さらにこの先の生き方を考えさせられました。

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2024/05/21

 9篇からなる短編小説集で、冒頭から小川洋子さんらしからぬ衝撃的な設定があります。各編の外側に別の世界を準備することで、連作ではない短編どうしがつながる発想と構成が見事です。  物語は、地球の裏側の小さな村で、遺跡観光ツアーの日本人8名が反政府ゲリラに拉致、という報道から始まり...

 9篇からなる短編小説集で、冒頭から小川洋子さんらしからぬ衝撃的な設定があります。各編の外側に別の世界を準備することで、連作ではない短編どうしがつながる発想と構成が見事です。  物語は、地球の裏側の小さな村で、遺跡観光ツアーの日本人8名が反政府ゲリラに拉致、という報道から始まります。事件発生から百日以上過ぎ、犯人の仕掛けたダイナマイトの爆発で人質は全員死亡。  さらに2年が過ぎ、特殊部隊の盗聴テープに録られた人質の音声が公開されます。人質たちが順に自らの過去を語った様子は、「人質の朗読会」と題しラジオ番組で流され、その放送を一夜ごとに再現したのが本書の内容です。  7(ツアー客)+1(ツアーガイド)+1(政府軍兵士)一人一人の語りから見えてくることがあります。他人には些細なことでも当人にとっては特別で、記憶の中に染みつき、意識の底に刷り込まれた出会いがあるのだと‥。  そして、各編の共通点として「死」と「祈り」が見え隠れします。さらに本書の冒頭、既に8人は救出作戦が失敗し、死亡していることが明かされており、言わば死者が語る自らの物語なのです。  確かに、物語によって死者たちが蘇り、生きた証を伝えることでこの世とつながり続けることができるのでしょう。ただ小川さんは、人物の内面には決して踏み込みません。冷徹かつ克明な描写に徹することが、透明感あふれる筆致を生むのでしょうか。幻想的に見えながら、輪郭が明確でリアリティが失われない世界に、感心し圧倒されます。ある一人の人間が生きたある時間を追体験する‥、不思議で妙に心に残る読書体験でした。  不思議な巡り合わせですが、本書(単行本)が発刊された直後、東日本大震災が発生し一万人を超える方が亡くなりました。当然ながら、一万を超す一人一人の物語があったはずで、これを誰が書き残し伝えていくのでしょう‥。

Posted byブクログ

2024/05/15

「最初の7ページでもう名作だとわかります」の帯に惹かれて買いました 導入部でこの先への期待がふくらみました その先は特に状況や大筋に関係しないエピソードトーク集でした

Posted byブクログ

2024/05/05

人生のひとときを切り取るような。 何でもない日常なのにどこか特別な物語。 悪くはないけど、入ってこなくて ふーんって思いながら読んでいた。 環境?時間?気分? ハマらなくて残念。 また少し置いてから読んでみよう。

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