セラピスト の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
セラピスト 密室で守秘義務のもとに行われるコミュニケーション、セラピー。 それを主導するセラピストとは? 箱庭療法や風景構成法という手法、河合隼雄や中井久夫、山中康裕という日本でこの手法を主導してきたセラピストたち。 フロイトやユングなどの精神分析の巨匠たちとそれと対峙するカール・ロジャースの傾聴カウンセリング。 脳研究などの発達によりわかってきた精神医療とカウンセリングの使い分け。 そして、自ら被験者となった体験と、不安定な精神状態であることのカミングアウト。 おそらく、最相さんの自らの苦しい体験への思いれからかもしれませんが、他の著書のような切れ味の鋭いドキュメンタリーとは言えませんが、カウンセリングの闇や学閥・理論派閥、コミュニケーション不全が一般的になってきている現代特有の新しい症状、忙しすぎて丁寧な診療ができない医者やカウンセラーの現状など、様々な問題点を描いています。 河合氏亡きあと、どのような方向にこの業界が向かっていくのか、興味深いところです。 竹蔵
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こころの病が増えている現代の、その治療の変遷が記されています。 河合隼雄先生を中心に、その医学会をとりまく治療の意義と検証が読めます。 きっとものすごい取材量だったんだろうなという経緯に敬意を表しつつ、 今のわたしのレベルには、読み進めるのが難しかったです。 でも良書ですよ。 ...
こころの病が増えている現代の、その治療の変遷が記されています。 河合隼雄先生を中心に、その医学会をとりまく治療の意義と検証が読めます。 きっとものすごい取材量だったんだろうなという経緯に敬意を表しつつ、 今のわたしのレベルには、読み進めるのが難しかったです。 でも良書ですよ。 【本文より】 ・精神的に追い詰められている人々は、健常者よりずっと鋭い眼力をもつと村瀬は語った。 ・「自分のことを責めてらっしゃるけど、案外よくやってらっしゃるのではありませんか」 ・人の心にレッテルを貼るのではなく、言葉にできない思いを汲み取って相手の心の深層に近づいていく。 ・「これが自分でやったことだ、と言えることがしたいです」 ・心理臨床の営みの目的は悩みを取り去ることではなく、悩みを悩むことであるということだった。 ・そもそも人間の記憶力は思い出すたびに、不確かなところを自分でつくったもので埋めようとする傾向がある。 ・自分の鈍感さを情けなく思う気持ちが頭をもたげてくる。 ・人が変わるって、命がけなんです。時には怒りにもなる。 ・人間関係を個人的な水準のみではなく、非個人的な水準にまでひろげてもつようになると、その根底に流れている感情は、感情とさえ呼べないものではありますが、「かなしみ」というのが適切と感じられます。
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筆者が様々な現場で見聞きした精神医療現場での逐語録。 箱庭療法や風景構成法を通し、学び感じたこと。 そして精神医療現場の現実が描かれている。 筆者の取材力、文章能力に脱感すると共に この逐語録から何を最も伝えたかったのか考えさせられる。 3秒診察がまかり通るほどに多い患者数に ...
筆者が様々な現場で見聞きした精神医療現場での逐語録。 箱庭療法や風景構成法を通し、学び感じたこと。 そして精神医療現場の現実が描かれている。 筆者の取材力、文章能力に脱感すると共に この逐語録から何を最も伝えたかったのか考えさせられる。 3秒診察がまかり通るほどに多い患者数に 国家資格として認められていない乱立された資格。 私たち読者はこの逐語録からその問題を解決することもできなければ 筆者の意図はどこにあったのだろうと思ってしまう。 答えのない問題だからこそ、何か筆者の意見が欲しかったような読了感。
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いろいろと勉強になった。読みたい本も増えたし。 今は亡き著名な先生方とのやりとりがあって、この方こんなふうに話されるんだ…!ととても感動した。 膨大な量の参考文献を見るだけでもためになると思う。
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全くの門外漢ですが、手に取ったときの興味を失わずに読み終え、なんとなく自分自身も見つめてみたい気持ちに。特に印象的だったのは非言語表現の一方的な解釈の危険性、セラピストの教育分析の必要性、精神疾患の診断基準の変化など。素人でも分かるように平易な言葉で、かつ下手に足を踏み入れないよ...
全くの門外漢ですが、手に取ったときの興味を失わずに読み終え、なんとなく自分自身も見つめてみたい気持ちに。特に印象的だったのは非言語表現の一方的な解釈の危険性、セラピストの教育分析の必要性、精神疾患の診断基準の変化など。素人でも分かるように平易な言葉で、かつ下手に足を踏み入れないように慎重に書かれていると感じました。
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P158 19世紀末、西洋近代に誕生した臨床心理学のほとんどの理論では、意識すれば治る、が大前提となっていた。心を知ることが出来るのは自分だけだが、自分にもわからない部分があって、それを無意識と呼ぶ。そして、無意識を意識化するための橋渡しをするのが精神分析などの心理療法で、意識...
P158 19世紀末、西洋近代に誕生した臨床心理学のほとんどの理論では、意識すれば治る、が大前提となっていた。心を知ることが出来るのは自分だけだが、自分にもわからない部分があって、それを無意識と呼ぶ。そして、無意識を意識化するための橋渡しをするのが精神分析などの心理療法で、意識下はいずれも言葉によって行えると考える。無意識に溜まっているものが病を引き起こすと考えるからこそ、言語化することが治癒につながると考えられた。 <箱庭療法> 著者は双極2型障害を患い、しっくりくるカウンセリング、セラピストを探していた。 その課程で、箱庭療法を知る。 箱庭を作るカウンセラーと、それを見守るセラピスト。 セラピストの安定した姿勢が「母子の一体感」「自由にして信頼された空間」を作りだし、言葉でカウンセリングできない人との物語の共有が治療的であると、第一人者だった河合隼雄は述べている。 彼が箱庭療法を日本に紹介した理由の一つは、言語を必要としないこの療法は言語化が苦手な日本人に向いていると考えたからである。 また、戦後に紹介された、カール・ロジャーズについては、「説教ではなく傾聴」「理論より態度」を優先したとして高く評価している。 一方、この対局に位置するのは、言語による分析と、その解釈を患者に直面化させる「精神分析」である。 <近年の疾患と箱庭療法> だが、その箱庭療法も近年の流行の疾患である発達障害には対応が難しい、とされている。 もともと、箱庭療法や絵画療法の、イメージの世界で遊ぶ療法は主体性がしっかりあり、その葛藤を基礎とする疾患には確かに非常に有効であった。 だが、近年は往年の乖離性障害や、対人恐怖などの疾患は減り、引きこもりや発達障害などが増えている。これらの疾患を河合隼雄は「主体性が希薄な疾患」と呼んでいる。 主体性の希薄化は、全体に見受けられ、カウンセリングを受ける方も施す方も、悩めない、巣立てない人間が増えている。 <1/3の法則> セラピストを志す人間は、平均的な人間が1/3、共感性の高い人間が1/3、そして、現在病んでいる人間が1/3、である。 優秀なセラピストは1/3、平均が1/3、不向きな人間も1/3である。 近年のセラピストは対個人もだが、学校や地域の環境の改善を目指す、地域援助が求められていることも多い。 <感想> 河合隼雄にもともと興味があったので、読んだ。 「ものがたり」を共有するためのツール、としての箱庭療法の来歴から、特徴、そして(残念ながら)近年の流行の疾患への対応が難しい理由まで、俯瞰できて興味深かった。 ちょっと飛躍するかもしれないが、 近年、本が売れないのと関係もあるかも。
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掘り下げたインタビューと、カウンセリングの歴史の振り返り。『絶対音感』と同じくノンフィクションの常道である。しかし、普通のノンフィクションでないのは、著者が大学院にかよってまで臨床心理学を学んだことと、みずからが精神的な病を抱えていること。中井久夫に取材目的でカウンセリングを受け...
掘り下げたインタビューと、カウンセリングの歴史の振り返り。『絶対音感』と同じくノンフィクションの常道である。しかし、普通のノンフィクションでないのは、著者が大学院にかよってまで臨床心理学を学んだことと、みずからが精神的な病を抱えていること。中井久夫に取材目的でカウンセリングを受けた「逐語録」が作中に挿入されて、重層的な印象を与える。 著者とテーマのかかわりでいくと『眠れない一族』を思い出す。 クライエント自身の治癒力を尊重して、そばに寄り添う、耳をジッと傾ける姿勢が幾たびも強調される。かといって、ただもちろん相槌を打って聞いているだけでも埒が明かないようで、なかなか属人的なところもありそうに思った。河合隼雄と中井久夫の話が多いだけにそう感じる。 河合隼雄の「治ることを拒否したクライエント」のエピソードが印象的。精神科医は、ときにクライエントの人格の奥深いところに介入するわけで、病気だけを見ていてはいかんということだろう。薬で器質的なところは改善できてもそれだけでは。。。 やはり昔(河合、中井の時代)に比べると精神科医は忙しい。3分間診療。時間がかかる箱庭療法は流行らない。 中井久夫の著作を読んでいたせいか、本書で述べられるカウンセリングの考え方に驚きや新鮮味はあまりなかった。それだけ中井の著作がよく彼の考え方を伝えているのだろう。
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著者は執筆のため、膨大な資料を読み、たくさんの精神科医や心理士に取材を重ね、自らもクライアントになり心理士養成機関で学びを深めたという。自分自身の心とも深く向き合いながら書き上げたであろう、渾身の一冊。
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言葉にして理解する。自分や人を理解するためにあいまいな部分を明確にしなきゃいけない。ずっとそう思ってましたが、言葉にするということはあいまいな部分を削ぎ落してしまう面もあるんですね。無理に言葉にする必要はないんだと分かり、ほっとしました。 後半の、合わないカウンセリングを受けたせ...
言葉にして理解する。自分や人を理解するためにあいまいな部分を明確にしなきゃいけない。ずっとそう思ってましたが、言葉にするということはあいまいな部分を削ぎ落してしまう面もあるんですね。無理に言葉にする必要はないんだと分かり、ほっとしました。 後半の、合わないカウンセリングを受けたせいで深いところに置き去りにされてそのままになってしまった人がいるというところが印象に残ってます。 よく売れていると店頭で紹介されてたので軽めの読み物かと思って購入したんですが(実話をもとにした小説だと思ってました(笑))聞きなれない用語が多く、内容は濃く、たくさん考えさせられてしまうので、読むのに時間がかかりました。今回はあまり時間がなかったのでざっくりとしか読めませんでしたが、難しいことをわかりやすく書いてくれている本だと思うので時間のある時に読み直したいです。 ……まあ、ざーっと読んだだけなので、改めて読んだらレビューに書いたようなことが全然書いてなくて驚くかもしれませんけども(笑)
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箱庭治療など、精神疾患系患者のセラピスト、治療方法の話。書店では一般向け的なPOPの書かれ方だったので読んでみたが、私にとっては専門的に思える箇所が多く読みづらい。 【心に残ったこと】 「真っ直ぐにきちんと逃げずに話を聞く」と言うこと、これがなかなか社会に中で行われていない、...
箱庭治療など、精神疾患系患者のセラピスト、治療方法の話。書店では一般向け的なPOPの書かれ方だったので読んでみたが、私にとっては専門的に思える箇所が多く読みづらい。 【心に残ったこと】 「真っ直ぐにきちんと逃げずに話を聞く」と言うこと、これがなかなか社会に中で行われていない、これは家庭の中でも会社でも、友人同士でも行われていない、それを我々はちゃんとする 子供らと絵を書いてみても良いかもな。 1.今気になっていること。お饅頭欲しい、頭が痛いなど 2.最近見た夢 3.好きなこと
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