注文の多い注文書 の商品レビュー
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ないものがある「クラフト・エヴィング商會」に寄せられた五件の注文。前置きが長い依頼主たち。注文が多いというか無茶というか。それでも確実に揃えてくれる信頼性と満足度。小川洋子さんが注文書・受領書を担当し、クラフト・エヴィング商會が納品書を担当。おもしろいのが、川端康成、J・D・サリンジャー、村上春樹、ボリス・ヴィアン、内田百閒の作品に端を発しているところ。五人の事情と、五つの不可思議商品を楽しめる。
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装丁に惹かれ、また帯の内容に食いついてしまった ーーーーーーーーー 詳細なネタバレはしないが、大まかな流れを紹介していくので、ある意味ネタバレになるかも… これから読まれる方はご注意ください ーーーーーーーーー 「この世にないものを探してください」 注文書→納品書→受...
装丁に惹かれ、また帯の内容に食いついてしまった ーーーーーーーーー 詳細なネタバレはしないが、大まかな流れを紹介していくので、ある意味ネタバレになるかも… これから読まれる方はご注意ください ーーーーーーーーー 「この世にないものを探してください」 注文書→納品書→受領書 この形式で物語として5話が展開する また、それぞれ以下の文学作品をも、モチーフとし絡めてくる たんぽぽ(川端康成)、バナナフィッシュにうってつけの日(J・D・サリンジャー)、貧乏な叔母さんの話(村上春樹)、うたたかの日(ボリス・ヴィアン)、冥府(内田百閒) (読んだのは村上春樹しかなかった…「うたたかの日」はずっと気になっているが多分好みじゃないだろうなぁ、だけどいつか対面しそうな予感のする本) この発想力と構成が面白く、唸らされた まずは「発注書」 お尋ねモノは何か… ここで各物語の発注者が、どんなモノをどういう理由で探し求めているかを紡ぎ出す もちろん、実在しないモノたちだ おまけにたいていが複雑でややこしく、無理難題に限りなく近い そしてそれぞれそのモノに対する思い入れと、複雑な背景を抱えており、それらも含め語り出す… 「納品書」 ややこしい難題を、どう現実化するか クラフト・エヴィング商會が、見事に応える 「クラフト・エヴィング商會」は実在しない書物や雑貨などを手作りで作成し、その写真に短い物語風の文章を添える、という形式の書物をいくつか出版しているユニットだ この著でも、実在しないモノをきちんと作って写真になって納められている(私たち読者も写真で見ることができるという楽しみがある) これが自分の想像とどう違うか? そんな視点で見るのも面白い そしてその応えがとても粋だったりする モノづくりだけではない、人の本質を突く納品書も完成させる 「受領書」 さて、そのモノを受け取って、どうだったか… 後日談もきちんとあり、物語が完結する 結局モノじゃないんだよね その人が自分の人生に起きたことに対してどう落とし前をつけていくか… クラフト紙エヴィング商會さんと発注されるモノは、お医者さんと処方箋みたいな感じで、最後は各人の治癒力だ(わかっていてもなかなか難しいのが人生) とにかく想像力を掻き立てられる本だ 発注されたモノだけでなく、小川洋子さんの表現力に引っ張られ、連れて行かれるのだ 中には自分の想像力が妙な方向に行ってしまい、気持ち悪くなってしまったほど… 全体としては、ハッピーエンド的な話が多いはずなのだが、各処に綺麗事じゃない人の奥底のどろっとした部分や、醜い部分も垣間見れ、構成力の面白さや小気味良い流れと相まって、鋭く切り込みを入れられる よって読み終わった感の爽やかさは(個人的には)なかった 「そう、人ってドロドロしてて醜いんだから…そんな世の中甘くないのよ」 と笑顔で目が笑っていない人に言われたような気分になった 小川さんの文章は淡々と静かに、暖かく優しい…反面、人に対する鋭い気づきが「この人は絶対にごまかせない」と感じる 隠しきれない人の残酷な部分、見苦しい心の内、浅はかな知恵、なんでもお見通しなのだ だからか時々怖さを感じてしまう とはいえ、やはり居心地の良い文面を求め、今度は何を感じさせてくれるのだろう…と好奇心からまた読みたくなる…そんな方なのである
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小川洋子が注文書を書き、吉田夫妻が納品書を書き、受領書で小川が返す、とてもユニークな5つの物語だ。特に、貧乏な叔母さんと肺に咲く睡蓮が素敵だ。
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クラフト・エヴィング商會(吉田篤弘)と小川洋子が好きなわたしにとっては狂喜の本です。 クラフト・エヴィング商會というのは吉田篤弘・浩美氏がご夫婦で活動されているユニットの名前を指すのですが(ちくまプリマ―新書の装丁デザインなどをされています)、たまに吉田篤弘の書く小説の中にないはずのものをどうにかして探してくれる「ないものがある」お店として登場します。 この本はそんなクラフト・エヴィング商會に5名のお客さんが来店し、探し物を頼むという短編集です。 お客さんからの依頼(発注書)を小川洋子、手に入れて届けるまでの経緯(納品書)をクラフト・エヴィング商會、経緯を知った・品を手に入れた後のお客さんの感想(受領書)を小川洋子が書いています。 ちなみにそれぞれの品(物語)には発想の源となった小説作品が存在します。作品名とともに気に入った話の感想を記しておくことにします。 「人体欠視症治療薬」ー『たんぽぽ』川端康成 まず薬の作り方がすごく気持ち悪い…。コピ・ルアク(ジャコウネコの糞に混じった未消化のコーヒー豆を使った珈琲)みたいだと思いました。 あまり飲みたくない…。 物語の結末が切ない、とかそんなことより例示されている病の初期症状に私が該当(白い小さな丸が見えない!)し、且つ「発症していなければ見えないはず」の薬が視認できることの方が問題です! わたしは一体、何が見えていないのでしょうか。 是非とも一度薬を飲んで確かめてみたいところです。 「肺に咲く睡蓮」ー『うたかたの日々』ボリス・ヴィアン この話が5篇の中でいちばん好きです。 人体に寄生する植物を蒐集する標本化と盲目の指圧師。 P.159の『穴はごく小さいものでした』から始まる骨と睡蓮が生えていた描写は妖しく、読んでいると本当にそんなことがあったら素晴らしいことだと思う反面、生々しく気味悪さと気持ち悪さを感じます。 五感から得る情報の中で最も大きな割合を占めるのは視覚からの情報ですが、それが機能しない場合、他の感覚が研ぎ澄まされると言いますから、指圧師には他の人が「見えない」ものがある意味「見える」のかもしれないですね。 ちなみに『うたかたの日々』は読んだことがないのですが、わたしはこの話を読んで、江國香織の『つめたいよるに』の1篇「桃子」を思い出しました。 見えるとか見えないとかばかり言っている気がしますが、あとがき的なおまけも面白くて作者3名の鼎談ですが、その中に 『「よくわからないもの」とか「見えないもの」を探し出すコツって、「見えないもの」を「見えるもの」で包囲してしまうことなんです。』(P.199) という発言があり、なかなか興味深いです。 また、巻末の小川洋子による発想源となった5つの小説へのコメントも面白いです。
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クラフト・エヴィング商會の面目躍如! 小川洋子からの「この世にないもの」の注文に応える、という小説。文庫もあり。
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本好きのお知り合いの方からオススメして頂いた作品。 小川洋子さんはかなり前に読んだ「博士の愛した数式」以来(もはや内容全然覚えてないけど…笑)だった。 うーん、正直個人的にはイマイチ…という感じでした。 方向性としては「大人のファンタジー」という感じでしょうか。 作品全体...
本好きのお知り合いの方からオススメして頂いた作品。 小川洋子さんはかなり前に読んだ「博士の愛した数式」以来(もはや内容全然覚えてないけど…笑)だった。 うーん、正直個人的にはイマイチ…という感じでした。 方向性としては「大人のファンタジー」という感じでしょうか。 作品全体に漂っている「浮世離れした摩訶不思議感」が本作の魅力なのだと思います。 個人的には、逆にそのリアルから離れ過ぎた感じについていけないなぁ…という感覚でした。 注文書を小川洋子さんが、それに対する納品書(架空のサンプルを制作し、その写真付きで)をクラフトエヴィング商会が、という試み自体は面白いなと思いましたが… 他の方のレビューは高めのようなので、こういった作風ががっつりハマる方もいるんだと思います。 各章の原作を読んでいたら、少しは感じ方が違った…かも? <内容(「BOOK」データベースより)> サリンジャーの「バナナフィッシュにうってつけの日」、村上春樹の「貧乏な叔母さんの話」、内田百けんの「冥途」など、5つの物語に登場する“この世にないもの”を小川洋子が注文し、クラフト・エヴィング商會が探し出す…。はたして「ない」はずのものは、注文主に届けられるのか?現実と架空が入り混じる世界で、2組の作家が想像力の火花を散らす前代未聞の小説。
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個人的に良い本とは、読んでいるうちにもっと本が読みたくなるもの、と思っているのですが、これもそう。書物への愛が感じられる。ぜひ、一度注文してみたい。
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【内容】古今東西の作品で描かれた、この世になさそうなものをなんとか探し出してくるお話。小川洋子さんとクラフト・エヴィング商會の合作。 【感想】クラフト・エヴィング商會名義の本は全て持ってるけどこれは買ってない。物語性が強すぎるので。もっとカタログ的なのが好みで。とは言え、取り扱わ...
【内容】古今東西の作品で描かれた、この世になさそうなものをなんとか探し出してくるお話。小川洋子さんとクラフト・エヴィング商會の合作。 【感想】クラフト・エヴィング商會名義の本は全て持ってるけどこれは買ってない。物語性が強すぎるので。もっとカタログ的なのが好みで。とは言え、取り扱われている商品が読んだことのある作品ばかりだったし、楽しいのはたしか。
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活字を読みたい、手紙のやりとりをしたい、読んだら久しぶりにアナログに触れたくなった本。 日頃デジタルまみれで疲れてきてるのか。
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あぁ…おもしろかった。 美しく、そわりと寒気のする、個人的にはこのくらいの季節で読んで良かったなぁと思った一冊。 芋づる式に、出てくる作品、作家さんをもっと知りたくなりました。(恥ずかしながらひとつも、ひとりも、お名前は知っていても手にしたことがありません。) 文庫本は、中はど...
あぁ…おもしろかった。 美しく、そわりと寒気のする、個人的にはこのくらいの季節で読んで良かったなぁと思った一冊。 芋づる式に、出てくる作品、作家さんをもっと知りたくなりました。(恥ずかしながらひとつも、ひとりも、お名前は知っていても手にしたことがありません。) 文庫本は、中はどうなっているんだろう? 単行本であるからこその紙の質感、装丁、重み、なんでしょうか。すごくよかった。 追える作品を読んで、もう一度戻ってこられたらなぁと思いました。 こういう、ありそうな、なさそうな、遠すぎない不思議。すき。
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