注文の多い注文書 の商品レビュー
ほんっとに面白かったなあ。「物」と「時間」の物語。ところどころにはさみこまれてる「物」の写真も美しく、とても贅沢な一冊。インターネットやらなにやらで日々の生活が便利になった分、人が幸せになってない気もするけど、だからこそこういう物語が沁みてくる、っていうのは、ちょっと皮肉だが、良...
ほんっとに面白かったなあ。「物」と「時間」の物語。ところどころにはさみこまれてる「物」の写真も美しく、とても贅沢な一冊。インターネットやらなにやらで日々の生活が便利になった分、人が幸せになってない気もするけど、だからこそこういう物語が沁みてくる、っていうのは、ちょっと皮肉だが、良いものは良い。「この世にないものを探す」のは、インターネットで検索できないけど、本の中でなら、心の中でなら、できる。小川洋子さんの頭のなかは、小説は、いままでも一環してそういうことを言ってたんだな、と改めて思わせてくれる。たまらん。だいすき。
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とにかく、 読みたいから読む。浸りたいから読む。 依頼人から不思議な品を求められ、それに丁寧に応えていくクラフトエヴィング商會。 なんだろなぁこのかんじ。 すごくここちいい。
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「ないもの、あります」の看板を掲げるクラフト・エヴィング商會に寄せられる様々な注文。 実際に足を運んだ人の語りだったり、手紙だったり、注文書の形式に決まりはないらしい。 何がどうして必要なのか、それがどんなに入手困難なものなのか… 注文書を読んでいると、「そんなのあるの?」と困惑してしまう。 あぁ、なんて情けない…。 注文書の無理難題への回答が、納品書。 「ないもの、あります」の言葉通り、魔法のように鮮やかに奇跡を起こしてくれる。 望みのものを手に入れた依頼者のその後が受領書で語られる。 ほろ苦い結末もある。 手に入れれば幸せになれるわけではないことをしばしば忘れてしまうものだ。 依頼者もそうなのかもしれないなと思う。 でも、クラフト・エヴィング商會はそのことを知っている。 だから、「こちらになります」と差し出すだけ。 受領書に悲しい結末が綴られていても、次の依頼も変わらぬ仕事をするだけ。 きっと依頼者の幸福を密かに祈りながら。 なんとも贅沢な読書体験に大満足。 物語と現実の不思議なリンクにドキドキ。 巻末の好きな人ばかりの対談も幸せ。 次の注文書の物語も読みたいな…。
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『Webちくま』連載の単行本。単行本化にあたり書き下ろしが2篇収録されている。 元になった短篇があり、それをモチーフにストーリーを膨らませて行くというユニークな手法がとられている。 各短篇でモチーフになっているのは、川端康成『たんぽぽ』、サリンジャー『バナナフィッシュにうってつけ...
『Webちくま』連載の単行本。単行本化にあたり書き下ろしが2篇収録されている。 元になった短篇があり、それをモチーフにストーリーを膨らませて行くというユニークな手法がとられている。 各短篇でモチーフになっているのは、川端康成『たんぽぽ』、サリンジャー『バナナフィッシュにうってつけの日』、村上春樹『貧乏な叔母さんの話』、ヴィアン『うたかたの日々』、内田百閒『冥途』の5篇だが、『冥途』をモチーフにした『冥途の落丁』が一番面白かった。 文中にあるよう、『境界に足を取られてしまう』ではないが、内田百閒は確かに虚実の境界が曖昧になるような読書体験が出来る。
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