注文の多い注文書 の商品レビュー
『星を賣る店』はそれだけでも楽しめるけれど、もちろん展覧会も行けば楽しみは倍増と書いたけれど、プラスアルファとして、こちらも副読本的要素が強いかと。 これまた懐かしの制作物+物語スタイル且つ小川さんというわけで、以前から他の本でも「制作中」「もうすぐ発売出来るはず」などと言われ...
『星を賣る店』はそれだけでも楽しめるけれど、もちろん展覧会も行けば楽しみは倍増と書いたけれど、プラスアルファとして、こちらも副読本的要素が強いかと。 これまた懐かしの制作物+物語スタイル且つ小川さんというわけで、以前から他の本でも「制作中」「もうすぐ発売出来るはず」などと言われており、発売を楽しみにしていた一冊。 5つのケースが「注文書」「納品書」「受領書」という構成で、それぞれベースとなる話がある。注文書と受領書は小川さん、受領書はクラフトさんの完全なキャッチボール。 篤弘さんの小説はいかに面白い「構成」であるかというところに作者のフェチズムがあるので、それを理解すればより面白いのだけれど、時に複雑すぎてこんがらがってくる事もある。こちら混乱するような複雑さはなく、楽しめる程度の構成のアソビがあり、小川さんを介する事でまたちょっと違ったクラフトさんも垣間見えた、良い相乗効果の抜け感のある一冊。 キャッチボールが本当の投げ合いであるところがまた面白い。
Posted by
絶品!これしか言葉が浮かばない 実はクラフト・エヴィング商會なるものは読んだはおろか存在すら知らなかったのだがこれほどのものだったとは…正に究極のコラボレーションと言い切っていいだろう。 「ないものあります」の挑戦状に「ないもの」の名手小川洋子が真っ向勝負に出る、してその底本が川...
絶品!これしか言葉が浮かばない 実はクラフト・エヴィング商會なるものは読んだはおろか存在すら知らなかったのだがこれほどのものだったとは…正に究極のコラボレーションと言い切っていいだろう。 「ないものあります」の挑戦状に「ないもの」の名手小川洋子が真っ向勝負に出る、してその底本が川端康成やサリンジャーとくれば読書家垂涎の一冊。 やり取りされる書簡の形式も注文書〜と凝っていて物語の造形を深めるのに一役買っている、納品書に添えられる写真もいい。小川さんの日本語が良いのはもちろんだがこの演出には恐れ入った。 感動のまま二度読みをしたが次は手許に置いて原作と共に読んでみたい素晴らしい本です
Posted by
おとぎ話のような美術館の中にいるような読んでいると不思議な世界が広がった。とにかくアイデアの上手さが光っている作品。
Posted by
一見して無理難題な注文に応えていく、2組の作家。なんだか不思議な、どこかにありそうなお話。凄く読みやすかった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
どんなものでもお取り寄せします、ないものあります、をコンセプトにした五編の不思議な物語。 各話、注文書、納品書、受領書という構成で描かれ、注文書及び受領書を小川さんが、納品書はクラフト・エヴィング商會がそれぞれ担当する。 注文されるものはどれも前回読んだ「星を賣る店」のような不思議な物で、納品する際の商品説明も不思議満載。 それだけでなく、注文と納品のやり取りの中に、人の心の機微が描かれ、そこがまた堪らない。 ぜひまたこのコンビで新作を書いて欲しい!
Posted by
ないものでも取り寄せてくれるクラフト・エヴィング商会を舞台にした小説。一話が注文書、納品書、受領書の形で作られて読みやすくおもしろかった。どの話にも元になる小説があり元の小説も読んでみたくなった。
Posted by
「どんなものでも、お取り寄せします」「ないものもあります」を謳い文句にしているクラフト・エヴィング商會に舞い込んできた5つの注文を描いた短編集。 小川洋子氏が「①注文書」「③受領書」とを、クラフト・エヴィング商會(吉田篤弘氏・吉田浩美氏のユニット名)が「②納品書」を担当した共作...
「どんなものでも、お取り寄せします」「ないものもあります」を謳い文句にしているクラフト・エヴィング商會に舞い込んできた5つの注文を描いた短編集。 小川洋子氏が「①注文書」「③受領書」とを、クラフト・エヴィング商會(吉田篤弘氏・吉田浩美氏のユニット名)が「②納品書」を担当した共作で、素晴らしい化学変化でした。5編とも、心地よい余韻を残してくれます。 注文書にはそれぞれ普通では手に入らない“探しもの”が指定されていますが、商會は必ずそれを見つけ出し、納品書にはその入手経緯と写真が添えられています。普通は「ない」はずなのに写真としてそこに「ある」という感覚に、現実ではない別の世界に迷い込んだような錯覚に。 さらに指定された5つの“探しもの”は全て、実際にある別々の本のなかで登場しています。本書での“探しもの”が原作のなかでどのように登場したのか…読みたい本が派生して増えるのが嬉しくもあり困りもの。早速、ボリス・ヴィアンの『うたかたの日々』を読んで、<肺に咲く睡蓮>を見つけてみたいと思います。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
クラフト・エヴィング商會に探しものを頼む依頼者の章を小川洋子が、依頼物が見つかった報告文とその物の制作をクラフト・エヴィング商會が担当するという形式の一冊。 5つのケースが収録されており、それぞれが既存の5つの小説をモチーフとしているのが面白い仕掛け。 すべてがひとつの物語として高度に成立しているのが素晴らしい。 『人体欠視治療薬』 恋人の体に触れると、その部分が見えなくなってしまう女が治療薬を依頼する。 細部にも神経が行き届いたとても出来のよい短編である。女の恋愛の顛末が切なくて意味深長。 このケースが一番好みだった(小川洋子の小説の世界観溢れている) 登場する小説は彼女と同じ症状を持つ主人公が登場する川端康成の『たんぽぽ』。 『バナナフィッシュの耳石』 サリンジャー愛好家が”バナナフィッシュの耳石”を探し出すよう依頼する。 『ナイン・ストーリーズ』に収録された一編から広がる物語で、バナナフィッシュの耳石をこんなふうに解釈するんだ、とその発想力に驚き。”耳石”のビジュアルがとても美しい。 『貧乏な叔母さん』 郵便配達員の祖父に育てられた主人公。 祖父が死んだある日、謎の叔母さんが背中に乗ってきた。最初は混乱していたが、叔母さんとの日々に慣れた頃、突然叔母さんがいなくなる。 主人公は叔母さんを探しだしてくれるよう、クラフト・エヴィング商會へ手紙を書く。 この物語は緻密なSF仕掛けが施されていて、話の軸は”叔母さん”ではなく”手紙”であるところが、連作短編の中で典型をうまく外している。 村上春樹の『貧乏な叔母さんの話』と密接に絡んでいる。 『肺に咲く睡蓮』 指圧師の老人による依頼は、突然死した客の標本商が探し求めていた”肺に咲く睡蓮”を探し出すこと。 標本というテーマは小川洋子の小説によく出てくる。 結末は予想しやすいが、納品された”標本”たちがとても美しい。 モチーフとなったのはポリス・ヴィアン『肺に咲く睡蓮』。 『冥途の落丁』 内田百閒の落丁本に隠された謎。この作品だけは、依頼者がその本をクラフト・エヴィング商會に引き取ってくれるよう頼む形になっている。 この落丁の話は実話なのだろうか?そこが気になった。 物語だけでも魅力的なのだが、クラフト・エヴィング商會により”実在するもの”として作り上げられた写真が魅力を増す。 常識で考えるとないはずなのに、実在すること。 あとがきの対談にもある通り、「ない」ことを証明することは不可能だから、どんなものでも「ある」と信じ続けることに価値はあるのかもしれない。 ちょうどクラフト・エヴィング商會の展覧会を見たから、より想像力が広がった。
Posted by
久々にに身悶えした一冊。 小説の前に日本語を読んでいる感覚に こちらも正座をするような心持になります。 分からない漢字が出てきて辞書を引きたくなる、 あの感覚。 ちゃんと読んで下さいよ、片手間はダメですよ、と。 読んでいるのはこちらなのに 読まれているのは当方でしょうか、...
久々にに身悶えした一冊。 小説の前に日本語を読んでいる感覚に こちらも正座をするような心持になります。 分からない漢字が出てきて辞書を引きたくなる、 あの感覚。 ちゃんと読んで下さいよ、片手間はダメですよ、と。 読んでいるのはこちらなのに 読まれているのは当方でしょうか、と 振り返ってしまう あの既視感。 小川さんの文章には そうやって言葉からこちらの頭の中を どんどんアップロードしていく軽やかさと 類を見ない世界があります。 読み終わった一冊を 丁寧に両手で挟んで 余韻を楽しんだ作品でした。
Posted by
実に美しい作品。装丁、写真ともに上品で綺麗。まるで宝石のようです。一つ一つの短編も味わい深く、小川洋子さんならではの不思議な世界に浸れました。読んでいる間、タイムスリップした気分です。元になった作品も読んでみたくなりました。こうした不思議な湿度のある作品に触れさせてくれる小川洋子...
実に美しい作品。装丁、写真ともに上品で綺麗。まるで宝石のようです。一つ一つの短編も味わい深く、小川洋子さんならではの不思議な世界に浸れました。読んでいる間、タイムスリップした気分です。元になった作品も読んでみたくなりました。こうした不思議な湿度のある作品に触れさせてくれる小川洋子さんは、やはり素晴らしいです。
Posted by