天、共に在り の商品レビュー
あのタリバンにも一目おかれていたなんてどんな人なんだろうと思い、中村哲さんの自伝的著作のこの本を取った。(あと、今、中村さんの活動をまとめたドキュメンタリー映画が公開されているので、それの予習もある。) 中村さんの文章は、あくまで淡々と事務的に事実を述べるにとどめているが、その...
あのタリバンにも一目おかれていたなんてどんな人なんだろうと思い、中村哲さんの自伝的著作のこの本を取った。(あと、今、中村さんの活動をまとめたドキュメンタリー映画が公開されているので、それの予習もある。) 中村さんの文章は、あくまで淡々と事務的に事実を述べるにとどめているが、その行動力と信念は常人に真似できるものではない。こうだったらいいのにな、という理想を中村さんは本当に実行してしまう。砂嵐が吹く荒涼とした砂漠が、水路と緑豊かな大地になったカラー写真のページは思わず目を見張る。土木技術なんて素人のお医者さんなのに。山田堰に見る優れた観察眼と歴史に学ぶ姿勢も本当に尊敬する。温故知新を体現している人だ。 しかし、いくらかの犠牲を伴ったことは想像できたが、伊藤和也さんという日本人の職員が、よりにもよってテロで亡くなっていたことは知らず、心が痛んだ。ペシャワール会のサイトに遺族のメッセージが載っていたので読んだが、特にお母様の悲痛な思いには涙が溢れてしまった。 読み進めていく内に、中村さんも、アフガンのために身を粉にして働いていたけれど、家庭を顧みずにいたのかもしれないと思い始めた。お子さんは寂しかったんじゃないのかな、とか。でも、中村さんが亡くなったときの息子さんのメッセージを読んで、愛情深くて、限られた家族の時間をすごく大切にしていた人なんだと知って、どこまで完璧な人なんだと驚嘆した。 「平和とは観念ではなく、実態である」 この一文はハッとさせられた。平和はいつの間にか論じるものになっていた気がする。恥ずかしいな。 この本を読んで、より今やっている映画を観に行きたくなった。中村さんの生きた声を聞きたい。
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p13 旱魃 渓谷の住人たちは一斉に村を空けて退避、栄養失調と脱水で倒れる子どもたちが急増し、赤痢で死亡するものが後を絶たなかった。飢えや渇きを薬で治すことはできない。医療以前の問題である。医療事業と並行して、飲料水源の井戸を掘り、灌漑設備の充実を進めてきた。飢えは食料でしか癒せ...
p13 旱魃 渓谷の住人たちは一斉に村を空けて退避、栄養失調と脱水で倒れる子どもたちが急増し、赤痢で死亡するものが後を絶たなかった。飢えや渇きを薬で治すことはできない。医療以前の問題である。医療事業と並行して、飲料水源の井戸を掘り、灌漑設備の充実を進めてきた。飢えは食料でしか癒せない p23 共に生きるとは美醜、善悪、好き嫌いの彼岸にある本源的な人との関係だと私は思っている p27 火野葦平 花と龍 p28 内村鑑三 構成への最大遺物 p40 天、共にありをヘブライ語でインマヌエルという p86 病気治療どころでない 実際、病気のほとんどが、十分な食糧、清潔な飲料水さえあれば、防げるものであった 残った村人たちを集め、深い井戸を掘る作業がはじめられた p117 農村の回復なくしてアフガニスタンの再生なし p125 人々の暮らしの単位といえる村落は、当然、異なる水系で隔てられるからだ p228 いかに強くすくるかよりも、いかに自然と折り合うかが最大の関心となった p244 アフガニスタンの実体験において、確信できることがある。武力によってこの身が守られたことはなかった。
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他人がやらないから自分がやるしかない、というそんな言葉では信じられないほどの苦難の連続だったに違いないのに、その功績をさらっと書いている。ホント、偉人だ。
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私たちがテレビを通してみるものとは違う現実がここにはある。人として仕事をするうえで大切な本質に気付かされる。
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今まで中村さんの本を地道に読んできたけど、この本は中村さんの軌跡が知れるから、中村哲さんという人が知りたいなら、この本がベストチョイスだと思う。 それで、もっと中村さんのことが知りたくなったらほかの本も読んでみる みたいなチョイスはありかもしれません。 最後のほうのページにあ...
今まで中村さんの本を地道に読んできたけど、この本は中村さんの軌跡が知れるから、中村哲さんという人が知りたいなら、この本がベストチョイスだと思う。 それで、もっと中村さんのことが知りたくなったらほかの本も読んでみる みたいなチョイスはありかもしれません。 最後のほうのページにある、過去と現在の対比写真がすごかった。過去にそこが砂漠だったことなんて分からない、完全な緑の大地になっていて、感動した。 今までいろんな中村さんの本を読んできて、実際に中村さんがなさってきたことを文字とモノクロ写真だけでは知っていたけど、カラーで見ると感動が全然違う。 過去には何人もの人間が死に絶えた砂漠を、緑の大地にしてしまう力。 ほんとすごいな。ただただ感嘆の声が漏れる。 元々は医師として派遣され、現地でハンセン病をはじめとする感染症の治療を始めて、団体を立ち上げて、無医地区に病院を作り、井戸を掘り、用水路を造る…。 中村さんの本を読めば、流れとしてそうなっていくのは理解できるけど、実際にその場にいたときに、咄嗟に「無医地区に病院を作る」だとか「井戸を掘る」だとか、そういう判断ができるのがすごいなと思う。 にしても、戦争って、いわゆる先進国って、ほんとに勝手だよなあ。 誰のせいでアフガニスタンがこんな目に遭わないといけないんだろう。 捏造と錯覚で成り立つ世界。これを読んだわたしですら、生きるのがつらくなってしまうのに、中村さんはずっとどんな気持ちで頑張ってこれたんだろう。 けど、日本よりずっと人間らしいアフガニスタンにいるほうが、もしかしたら心地よく過ごせていたんじゃないかな。 中村さんの生きることに対する姿勢に、ちょっとでも近づいていきたい。 だから、生き物はすべて等しい命だと思っているわたしは、人間の勝手で辛い目に遭ってしまう動物たちのために活動している団体に毎月募金と物資を送ることにした。 すべての生命が等しく幸せになってほしい。 最終章はわたしたちに向けたメッセージ。心に刻みます。金と経済発展がイコール幸せではない。人間に必要なものは、そう多くない。
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現在のアフガニスタンで起きている飢餓や人権侵害問題についてのテレビ報道を見て、いてもたってもいられなくなって読んだ。 環境的要因の視点は知らなかったので、新たな発見だった。 そこに追い打ちをかけるように、国際社会が貿易を停止したことで市民が生命の危機に陥っている。 他人事じゃ...
現在のアフガニスタンで起きている飢餓や人権侵害問題についてのテレビ報道を見て、いてもたってもいられなくなって読んだ。 環境的要因の視点は知らなかったので、新たな発見だった。 そこに追い打ちをかけるように、国際社会が貿易を停止したことで市民が生命の危機に陥っている。 他人事じゃないと思った。 行動した人の文章は、説得力が格段に違う。
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縁がつながって井戸を掘ったり用水路を作ったり。医療以前に水とそこで暮らせる基盤作りが大切。誰かのために何かを成し遂げる。
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2021年「天、共に在り」読了。中村哲さんが、なぜ世界から賞賛されていたのかを学ぶために読んだ一冊。中村さんがアフガニスタンの人々にどれだけ寄り添っていたかがとてもよくわかった。物事にはさまざまな側面があり、見る方向によって正しさは変化する。特に国際問題にはその傾向が強く感じられ...
2021年「天、共に在り」読了。中村哲さんが、なぜ世界から賞賛されていたのかを学ぶために読んだ一冊。中村さんがアフガニスタンの人々にどれだけ寄り添っていたかがとてもよくわかった。物事にはさまざまな側面があり、見る方向によって正しさは変化する。特に国際問題にはその傾向が強く感じられる。OOが正しい、OOは間違っているだけでは語れないことが、世界にはたくさんあることを再認識できた。また、争いが起きるときには必ず誰かがお腹を空かせている気がする。食料と水、これが満たされれば、もっと世界は平和になるのではないだろうかと考えさせられた。
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本当にすごい人すぎる。心から尊敬、中村哲先生。 日本からでは、現地の声や状況はわからない。 マスコミの報道は偏っているんだなと改めて感じる。 綺麗な水が、いかに大切か。医療よりもさきにやることがあるからと、 医者であるのに自ら井戸掘りに用水路をひくことに率先して行動。 その様子を...
本当にすごい人すぎる。心から尊敬、中村哲先生。 日本からでは、現地の声や状況はわからない。 マスコミの報道は偏っているんだなと改めて感じる。 綺麗な水が、いかに大切か。医療よりもさきにやることがあるからと、 医者であるのに自ら井戸掘りに用水路をひくことに率先して行動。 その様子を淡々と綴られているのだけど、並大抵のことではない。 これらの事業に人生を捧げた中村哲先生だけど、ご家族はどんな気持ちだったのかと心配になる。 中村先生みたいには生きられないけど、自分のできる範囲でアフガニスタンを支援したいと思った。
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中村哲さんは現代の偉人だ。 人間と自然に対する絶望を一心に引き受けながら、 人間と自然を裏切らず信頼し続けた人。 アフガニスタンの医療支援する医師でありながら、広大な砂漠地帯に、農業用水路や堰などを建設するなど、途方もなく壮大な人生だ。 氏はそれを英雄気取りせず、淡々と事実...
中村哲さんは現代の偉人だ。 人間と自然に対する絶望を一心に引き受けながら、 人間と自然を裏切らず信頼し続けた人。 アフガニスタンの医療支援する医師でありながら、広大な砂漠地帯に、農業用水路や堰などを建設するなど、途方もなく壮大な人生だ。 氏はそれを英雄気取りせず、淡々と事実だけを書き記されている。 9.11すら日常の一コマのように思えた。 アフガニスタンでの飢えや貧困は、アフガン戦争、テロ報復戦争による被害だけでなく、地球温暖化による旱魃被害が大きな要因であるとはなんとも無慈悲だ。 「己の分限を知り、誠実である限り、天の恵みと人のまごころは信頼に足る」 なぜここまで自分を捧げることが出来たのか?と思うけれど、氏のこの言葉が全てを物語っている。
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