天、共に在り の商品レビュー
中村さんについては、逝去された際のニュースを微かに覚えている程度でした。「アフガニスタンに国際協力で多大な功績を残された方が不幸なかたちでお亡くなりなった」その程度の認識しか持ち合わせていませんでした。 本当に大人物であったのだと本書を読んで認識を改めました。残された功績は言う...
中村さんについては、逝去された際のニュースを微かに覚えている程度でした。「アフガニスタンに国際協力で多大な功績を残された方が不幸なかたちでお亡くなりなった」その程度の認識しか持ち合わせていませんでした。 本当に大人物であったのだと本書を読んで認識を改めました。残された功績は言うに及ばず、異文化に対する深い理解、自然と人間の関係性に対する堅固な思想、困難を乗り越える忍耐力、自身の知識を常に更新する柔軟性、これらを持ち合わせて変化を生み出す為の行動を起こせる稀有な方だったのだと思います。 一点最後まで分からなかったのは、何が中村さんをここまで突き動かしたのかです。哲学にも造詣が深い方のようなので、芯になる考え方が何かあったのでしょう。内村鑑三の著作など、本書で述べられた幾つかの本にヒントがあるかもしれない為、読んでみようと思います。 改めてご冥福をお祈りすると共に、中村さんが持たれていた気概の一端でも自身が持てるように努めます。
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自分自身が河川技術者であり、灌漑施設更新の施工監理の経験があるから、肝が河川からの取水部であり、あの施工の難しさを思い出しながら読み進めた。 そもそもは、キルギスに行くにあたり、中央アジアの本を読もうと、積読になってた中から選んだ。近い地域で、集中して読みたいと。 大正解。気...
自分自身が河川技術者であり、灌漑施設更新の施工監理の経験があるから、肝が河川からの取水部であり、あの施工の難しさを思い出しながら読み進めた。 そもそもは、キルギスに行くにあたり、中央アジアの本を読もうと、積読になってた中から選んだ。近い地域で、集中して読みたいと。 大正解。気候変動の影響はキルギスでもあり、山頂の万年雪が完全に解けるようになったらしい。アフガンの旱魃も同じ気候変動による。 世界のメディアや政治家達が、タリバン対世界という単純な図式で自分達の勝手な正義を吹聴している下、現実の世界では生きていくための様々な闘いが個人レベル、血族や地縁、渓谷レベルであったのだ。事実は自分から取りに行かねば、知ることはできなくなっている。 河川技術・灌漑技術に最新は無い。その地域に合わせて、最適化されていく。各地で先人から今に至るまで各地で工夫されているそれら土木施設をいま一度、ただある物ではなく、学ぶ施設という視点で見つめてみよう。 常に様々な事に神経を尖らせながら最期を迎えてしまわれて…思いを知る皆に託されたのだろう。
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中村さんのアフガニスタンでの活動がよくわかった。義理堅い人だったのだろう。 彼の生き方は尊敬に値する。医者でありながら、飢餓は救えないため、用水路を作り、自給自足の生活を支えた。筑後川の山田堰を参考にしたのは驚きだった。
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立派な方であることはよくわかる。著者の経験は素晴らしいものであるゆえ、工夫すればもっとドラマティックにかけるとも思う。
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戦争と旱魃で住む場所を追われた人々が故郷に戻り生活できるよう、井戸・用水路を掘り続けた医師・中村哲先生。別の著書でハンセン病患者の支援をされていた時の話も読んだが、中村先生は一貫して「現場主義」。見返りを求めず、本当に人々のために活動されていたことがわかる。だからこそ現地の人々も...
戦争と旱魃で住む場所を追われた人々が故郷に戻り生活できるよう、井戸・用水路を掘り続けた医師・中村哲先生。別の著書でハンセン病患者の支援をされていた時の話も読んだが、中村先生は一貫して「現場主義」。見返りを求めず、本当に人々のために活動されていたことがわかる。だからこそ現地の人々も自然と参加するようになったのだと思う。 用水路の設計などについてはかなり技術的な記述が多く難解であったが、用水路ができ、灌漑農業ができるようになったことで、荒れ果てた砂漠の大地が緑地に変わっていく様子には感動を覚えた。 中村先生に起きたことは本当に残念で悲しいが、先生が残したものや意思は、これからもきっと残るはず。それがせめてもの救いだ。
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かれこれ30年前に福岡に赴任していた頃、ペシャワール会によく足を運んでいた知人が、中村哲さんのことを話してくれたことがあった。私自身は何の関りも持てなかったが、彼の名前を聞く度に一方的な親近感と畏敬の念を抱いていた。 彼の幼い頃の思い出は、当然だが火野葦平が書いた玉井組の世界と...
かれこれ30年前に福岡に赴任していた頃、ペシャワール会によく足を運んでいた知人が、中村哲さんのことを話してくれたことがあった。私自身は何の関りも持てなかったが、彼の名前を聞く度に一方的な親近感と畏敬の念を抱いていた。 彼の幼い頃の思い出は、当然だが火野葦平が書いた玉井組の世界と重なる。「花と龍」の、懐かしい読後の空気が戻ってきた。ペシャワールで医療に、アフガニスタンではさらに「水」という生きるための最低限ともいえるインフラを整えるべく灌漑工事に奔走するその一途な姿は、やはり玉井組の、金五郎の血筋だと思わせる気迫がある。 911後、テロ特措法ができ、難民キャンプで救援活動するNGOなどを守るために、自衛隊派遣の議論をしていた衆院特別委員会で、著者は「不確かな情報に基づいて軍隊が日本から送られるとなれば、住民は軍服を着た集団を見て異様に感じる。自衛隊派遣は有害無益、飢餓状態の解消こそが最大の問題」と話した。当時、議員たちをざわめかせたこの話は、新聞で読んで「哲さんらしい」と思った記憶があるが、「観念の戦いは不毛、平和は戦争以上に積極的な力でなければならない」という言葉は本当に重い。長引くロシアのウクライナ侵攻を見ながら、この言葉は今も生々しく感じられる。 アフガニスタンという言葉も文化も違う土地の懐深くに飛び込み、人との絆を大切にしながら、人々の命と平和を第一に行動してきた著者。自然の理を知る、ということは「人間の技術の過信を去ることから始まる。人為と自然の危うい接点で知恵と祈りを尽くす。その祈り抜きに技術を語るのは、画竜点睛を欠く」と書く。環境問題に苦悩する今の世界にとっても金言。さまざまな意味で、あらゆる分野に共通する言葉が多く詰まった一冊だった。
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文章は決して上手くなく、後半の井戸掘り関連は専門的でもあって読みにくいが、現地に根付いた支援活動をベースにした鋭い視点とコメントが素晴らしい。写真も多く使われていて、砂漠を緑化して農耕地にしていった実績も圧巻の一言。 見習う、学ぶことの多い書。
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映画「荒野に希望の光を灯す」を観てから読んだから、情景が映像とともに読めて良かった(むしろ映画を観ないで読んだらあまり理解できていなかったかも)。途上国の中でも情勢の中で翻弄される国で本当に凄いことをやってのけた人物だと思うし、やはり途上国で何かを行うには現地の人との信頼関係と共...
映画「荒野に希望の光を灯す」を観てから読んだから、情景が映像とともに読めて良かった(むしろ映画を観ないで読んだらあまり理解できていなかったかも)。途上国の中でも情勢の中で翻弄される国で本当に凄いことをやってのけた人物だと思うし、やはり途上国で何かを行うには現地の人との信頼関係と共に、誰と組むかも大事だよなぁと改めて。
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中村先生はどうしてアフガニスタンの農村回復に心血を注げたのだろう。冒頭で医者になろうとしたのは決して高尚な理由だけではないと述べられているので、中村先生が生来公益のために身を捧げられる性質があった訳では無いと思う。どこからこの偉業を成し遂げようとする意志が来るのか。 この本を手...
中村先生はどうしてアフガニスタンの農村回復に心血を注げたのだろう。冒頭で医者になろうとしたのは決して高尚な理由だけではないと述べられているので、中村先生が生来公益のために身を捧げられる性質があった訳では無いと思う。どこからこの偉業を成し遂げようとする意志が来るのか。 この本を手にしたのはきっかけも覚えていないくらい偶然である。中村先生の名前すら知らなかった。しかし、本を読み進めるうちにこんな名もなき偉人がいるのかと心から驚いた。偶々本を読まない限り全く知らなかったであろう人なのだ。恐らく自分の友達10人に聞いても知ってる人は1人くらいだろう。世の中は中村先生のような影の立役者によって支えられているに違いない。 最後の日本の人々へ向けたメッセージは日頃自分が思っていることと似通っていて、中村先生のような、世界を、飢餓を、死を見てきたような人と意見が同じで嬉しかった。私が普段感じていることは間違いではないのだ。 ほんの少しでいいから中村先生のような生き方をしてみたい。勇気と信念を貰える一冊でした。
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読書する良さを改めて感じられた一冊。 生涯行くことのない場所での、することのできない経験を少しでも知るために私にとって読書は欠かせないものです。 これまでアフガニスタン情勢については、テレビのニュースで部分的に見聞きする程度でした。 でもやはり、与えられる情報だけで知った気にな...
読書する良さを改めて感じられた一冊。 生涯行くことのない場所での、することのできない経験を少しでも知るために私にとって読書は欠かせないものです。 これまでアフガニスタン情勢については、テレビのニュースで部分的に見聞きする程度でした。 でもやはり、与えられる情報だけで知った気になるのは大変恐ろしいことだと思いました。 この本に記されている中村氏の視点が全てではないでしょう。 違う国籍、立場から見たらまた異なるアフガニスタンが見えてくるのかもしれません。 この本では主に用水路の作り方が記されています。 しかしながら、その行程を読み進めるとアフガニスタンの自然環境だけでなく政治的状況、人々の考え方も垣間見ることができます。 中村氏は自然に対しても、人に対しても決して力業で事を進めることなく相手を理解し、尊重していく姿勢を貫きます。 これは普通の生活を送る私達にとっても基本的、かつとても大切なこと。その理由がこの本を読むことで心から理解できると思いました。 「世の中は相変わらず『経済成長』を語り、それが唯一の解決法であるかのような錯覚をすりこみ続けている。経済力さえつけば被災者が救われ、それを守るため国是たる平和の理想も見直すのだという。これは戦を図上でしか知らぬ者の危険な空想だ」 「知識が増せば利口になるとは限らない。情報伝達や交通手段が発達すればするほど、どうでもよいことに振り回され、不自然な動きが増すように思われて仕方がない」 「戦場に身をさらした兵士なら、発砲しない方が勇気の要ることを知っている」 「経済的利権を求めて和を損ない、『非民主的で遅れた国家』や寸土の領有に目を吊り上げ、不況を回復すれば幸せが訪れると信ずるのは愚かである。人の幸せは別の次元にある」 レビューを書くのが難しいので、終章の中で特に心に残った文章を抜粋します。 中村氏は物書きではないので、いささか読みにくさを感じるのは事実ですが、それ以上に読む価値がある一冊でした。 ご冥福をお祈りします。 2020年6冊目。
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