なくしたものたちの国 の商品レビュー
珠玉のファンタジーと美しいイラストとのコラボ,のはずが
角田さんのファンタジー,文章力と表現力の素晴らしさで何が起きてもすっとはいってくる。さすが。 松井さんのイラスト,きれいです。では,果たして二つの良い作品がコラボしてよい本に仕上がったのか? 例えば最初の短編、”晴れた日のデートと、ゆきちゃんのこと”。帰り道はだいだいいろだ、...
角田さんのファンタジー,文章力と表現力の素晴らしさで何が起きてもすっとはいってくる。さすが。 松井さんのイラスト,きれいです。では,果たして二つの良い作品がコラボしてよい本に仕上がったのか? 例えば最初の短編、”晴れた日のデートと、ゆきちゃんのこと”。帰り道はだいだいいろだ、のひとことで、幼い日の一日の終わりに近づいた時間帯,まだ今日を引きずって遊んでいたい気持ちと,暮れて行く太陽の沈む前にうちに帰りたい気持ちとの甘酸っぱいせめぎ合い、住んでいた町の景色、色,一瞬にして鮮明に読者に情景を浮かび上がらせる。だから、いらないのだ。イラストが。 絵本は,最低限の文章で,書かれていない部分を描いてある絵から補足して行くもの。どちらも目一杯だと、味の濃いおかずばかり並んでいる食卓のように邪魔しあってしまうように思う。
はみがきこ
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泣いた。なくしてしまったもの、もう会えない人。それらはきっとどこかに存在し続ける。わたしとは交わらないどこかの国で。 喪失のかなしみをのりこえたいときに、オススメしたい小説。
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日常を描いているようで、その中に起こるちょっと不思議でファンタジックな事柄を日常に落とし込んでいるような気がする小説でした。ヤギのユキちゃんだって、ミケの生まれ変わりの銃一郎だって、ナリコ以外の人にとってはただのヤギでありただの少年なのに、彼女たちを特別大事に思っているナリコにとってはかけがえのない大事な人たちなんだと思いました。そういう大事に想われた経験のあるものだからこそ、無くなってしまった後に「なくしたものたちの国」へ行けるのかなと考えました。
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出会えて良かった本。読んだ後、ああよかったと思った。物語だけど、分かる、と思うことばかりだった。 過去に無くして後悔したときの記憶やこれから無くすだろう、無くなるかもしれない、という私自身の不安が、本に触れている間だけでもなぐさめられたように思う。 不思議な出来事が起こるんだけど、騒ぎ立てず、静かに受け入れているところとか、最悪のタイミングだった時の心情とか、黒い気持ちでいっぱいになって自己嫌悪するところとか、作り話だとしても分かり合える人と出会えたようで嬉しかった。 ヤギのゆきちゃんと会話できなくなった場面では、そういえば、私も飼ってた犬とそういうことがあったのを思い出した。言っても信じてもらえないと思うし犬は犬だし、と押し留めていた思い出が不意に肯定されたようで嬉しいような、最期の時を思い出してしまってすごく悲しいような気持ちになった。話の中で、ゆきちゃんがずっと優しいことも余計に寂しさを誘った。 一瞬ジブリの黒猫が浮かんだけどそれはかき消した。 〜〜↓すごくネタバレ・あらすじ↓〜〜 主人公の小さい頃〜死ぬまでの5つの話。嫌な人は出てこない。 小学生の時、ヤギのゆきちゃんと友達になってお母さんのティアラを持ち出して無くしてしまった話、 高校生の時、昔飼ってた猫のミケの記憶がある男の子と知り合って、初めて終電で帰った日におばあちゃんが亡くなってた話、 33才の時、不倫をして生き霊になってしまった話、 生き霊卒業後、結婚して子供もできたけど電車に娘を忘れてきて管理庫に探しに行く話、 最後に、今までの色々と繋がって人生の終わりに向かう話。でもそれには怖さとか暗さは全く無くて、ゆきちゃんにもまた会えたし無くしたものも見つかった。 あぁこれかぁーとか、よかった、安心した、と思えるようなハッピーエンドだった。
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忘れないようにしようと、ひとつひとつのものや景色や人に触れて私は思う。別の場所で、違う姿で、違うかたちで、違ういのちのありようで出会ったときに、思い出せるように、忘れないようにしよう。愛した人たち、愛したものたち、どうか忘れませんように。忘れてもいいのよと、耳元でおだやかな風のよ...
忘れないようにしようと、ひとつひとつのものや景色や人に触れて私は思う。別の場所で、違う姿で、違うかたちで、違ういのちのありようで出会ったときに、思い出せるように、忘れないようにしよう。愛した人たち、愛したものたち、どうか忘れませんように。忘れてもいいのよと、耳元でおだやかな風のようにだれかが言う。そう、その声の主だってわたしは思い出せないのだ。とても近しくて、たのもしい、やさしいだれか。忘れてもいいのよ、忘れていたって出会えばまた、どうしたって愛してしまうのだから。いいえ、どうしたって出会ってしまうのだから。P.182 ↑一番印象に残った言葉
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主人公ナリコの一生が、5つの短編で描かれている。 不思議で甘酸っぱくてやさしい世界感でありながら、『死』というものを考えさせられた。 命あるものはいつか死ぬ。そしてまた生まれる? 『いま』を大切に生きよう、愛そうと思えた。
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無くしたものも、また会える。 そうだといいな。 わたしが無くしたものはなんだろう。 年齢を重ねて、無くすものや人が多くなったときに、読み返したい。
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一人の少女を通して「いつの間にかなくしてしまったもの」をテーマに物語が書かれている。5つの短編集。 おもちゃ、恋愛、友情、本、学生時代、家族と過ごした時間、いつのまにかなくなっていたものを思うって切ない。 読んでいくうちに、自分が自然となくしてしまったものに気付かされて泣けて...
一人の少女を通して「いつの間にかなくしてしまったもの」をテーマに物語が書かれている。5つの短編集。 おもちゃ、恋愛、友情、本、学生時代、家族と過ごした時間、いつのまにかなくなっていたものを思うって切ない。 読んでいくうちに、自分が自然となくしてしまったものに気付かされて泣けてしまった。何かの本でみた、「失恋したときに辛いのは、相手がいなくなったことよりも、その人を想う自分が引き裂かれたようで辛いから」という言葉を思い出した。 今やりたくてもできないことや、なくしてしまったものに思いを馳せるのではなく、今生きている時間を大切にしたいと思った。 角田さんのファンタジー要素の入ったお話は読んだことなかったけれど、こういったお話も好き。
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いつのまにかなくなったもの、というのが、人生にはたくさんある。捨てた記憶はないのに、あんなに大切にしていたものが、なぜ自分の側からなくなってしまったのだろう。 もの以外にも、いつのまにか離れてしまった友人だとか、別れた恋人だとか、無理やりに忘れることに決めた人とか、記憶とか、たく...
いつのまにかなくなったもの、というのが、人生にはたくさんある。捨てた記憶はないのに、あんなに大切にしていたものが、なぜ自分の側からなくなってしまったのだろう。 もの以外にも、いつのまにか離れてしまった友人だとか、別れた恋人だとか、無理やりに忘れることに決めた人とか、記憶とか、たくさんある。なくしたものたちが積み重なって、今がある。 この小説の主人公は雉田成子。成子は8歳まで、人間以外のいろんなものと話ができたけれど、ある日突然それができなくなった。 そして成子は成長してゆく。痛々しい恋愛をしたり、それが破れたあと平穏な恋愛をしたり、結婚して子どもを産んだりする。ものや、人や、関係を得たり、なくしたりしながら。 昔家で飼っていてすでに死んだ猫が男の子にのりうつって登場したり、主人公が生き霊になったり、浮世離れしたエピソードもあるのだけど、それがとても心地よい。 角田光代さんの文章と、松尾たいこさんのイラストが、綺麗で切ない。 なくしたものたちが集まっている国や、忘れ物保管所みたいなところが、実際にあったらおもしろい。なくしたことさえ忘れてしまっているものも、たくさんあるのだろう。 出会いと別れを繰り返して人は生きていく。今大切にしているものや人も、いつかなくしてしまうこともあるのかもしれない。 それらすべてが必然なのだ、と思わせてくれる物語だった。
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姿をかえ、かたちをかえ、わたしたちはまた出会う。 出会いと別れ、生きることのよろこびとせつなさ…。 松尾たいこさんが描かれるイラストと角田さんの文章で 素敵な大人の絵本の様な雰囲気の1冊に仕上がっています。 読んでいてとても懐かしく (ああ、子供の頃こんな風に感じた事...
姿をかえ、かたちをかえ、わたしたちはまた出会う。 出会いと別れ、生きることのよろこびとせつなさ…。 松尾たいこさんが描かれるイラストと角田さんの文章で 素敵な大人の絵本の様な雰囲気の1冊に仕上がっています。 読んでいてとても懐かしく (ああ、子供の頃こんな風に感じた事があったな) としみじみとした気持ちになりました。 心がほわっとする1冊です。
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