里山資本主義 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
今更感がありますが、ふっと古本屋さんで目に入ったので手に取って読んでみた。興味深いところもあったが、最終章で現代的な資本主義をボロクソに言い、里山資本主義が救うと言うあたりのロジックが少々乱暴に聞こえる。 自分の理解としては、現状のマネーを基準とした経済とは別の経済網、とくに過疎化した自然が豊かな場所において地元の資源をお金ではない収入(食料や燃料)として入手することによってセーフティネットにするというもの。またその副次的な資産として、自然から”収入を得る”ために他者との協力が不可欠で、つながりも強化されるという事。 イノベーティブという単語がいくつか出てきた気がするが、近代から現代に移行するにあたって切り捨てられてきた非効率的な自然資産を今の技術を使って、より効率的に使用しようといったところか。 オーストリアが国をあげて原発を排除し、豊富な森林からエネルギーを得ることを真剣に追求している姿は非常に興味深い。また高知県の収支をベースに、農漁業は黒字にも関わらず、県外から購入する飲食料品が圧倒的に赤字であり、そのギャップを埋めようとするという方法は色々な街でも参考になるのではないか。 P.129 地元農家はこれまで、マネー資本主義の中では市場価値のない半端な農産物を捨て、地元福祉施設はこれまで、地域外の大産地から運ばれてきた食材を買って加工していた。全国レベルで見れば効率のいいシステムかもしれないが、地域レベルで見れば外へお金が出て行くだけの話だ。ところが捨てていた食材を地元で消費するようになれば、福祉施設が払う食費は安くなり、しかも払った代金は地元農家の収入となって地域に残る。農家の収入が増えるだけでなく、関係者にやる気も出るし、無駄も減る。地域内の人のつながりも強くなる。 P.134 歌舞伎や文楽、浮世絵といった日本独特の文化が花開いていた江戸時代、オーストリアではワルツや交響楽、オペラといった欧州文化の枠が花開いていた。カフェでコーヒーを飲む習慣も、フランス料理の原形となった料理文化もこの時期のオーストリア発祥だったし、二〇世紀初頭にはクリムトに代表される画壇が華やかだった。時は流れ、日本発のカジュアル文化、たとえばマンガやアニメ、カワイイ洋服、映画に絵画、それに日本食は、引き続き世界に評価され発信されている。 しかしオーストリア発の現代文化と言われると、女性に人気のスワロフスキーのクリスタルガラス製品以外、ちょっと具体名は思いつかない。チロリアンやチロルチョコは福岡県の産品だし、戦後の一時間日本でも絶大な人気を誇ったトニー・ザイラー以降、有名人も出ていない気がするというと失礼だろうか。 だが、そのように歴史的に見れば停滞・後退を重ねてきたオーストリアは、にもかかわらず、質的にも金銭的にもとても豊かな生活の営まれる、美しい民主主義の国だ。 P.142 お金を払って製剤屑を引き取ってもらい、他方で電力を買っていた今までのやり方を、自分で木くずを燃やす事で発電するのに切り替えたということは、結局自社内で木くずを電力に物々交換したわけだ。その結果、億単位の取引が消滅してしまった。その分、貨幣で計算されるGDPmo減ってしまったことになる。だが真庭市の経済がこれで縮小したわけではない。市外に出て行ったお金が内部に留まるようになっただけだ。
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あまり面白く感じなかった。途中退出してしまったので誤っている点はあるかと思うが。 それは以下の3点によるものだと思う。 ①里山に日本の人口1億3千万を養うだけの能力があるように思えない。現に過去の大国だった国の周辺は木々が刈り取られ砂漠が広がっている。 ②医療など最先端の医療を...
あまり面白く感じなかった。途中退出してしまったので誤っている点はあるかと思うが。 それは以下の3点によるものだと思う。 ①里山に日本の人口1億3千万を養うだけの能力があるように思えない。現に過去の大国だった国の周辺は木々が刈り取られ砂漠が広がっている。 ②医療など最先端の医療を受けるにはやはり最先端の技術が必要で、それには多額の費用が必要だ。里山主義では医療は行わない? ③現代資本主義のアンチテーゼとして掲げたのかも知れないが、いくらなんでもノスタルジックに里山を考え過ぎ。
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可能性はあらゆるところに眠っていると気づかされた。今までうまくいっていたやり方が、これからも通用するとは限らない。時代を見据えながら、今必要なこと、何に価値があるのかを見出せるよう意識していけたらと思う。
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当たり前のように浸透しているマネー資本主義に対して、必ずしもそうでない価値観の考え方もあるよ、との気づきを与えてもらいました。 実際にそれで回り始めている地方の事例が多数紹介されていますが、同じような考え方は、世界的に見た地方、すなわち途上国にも適用できるのかも、と思います。 あ...
当たり前のように浸透しているマネー資本主義に対して、必ずしもそうでない価値観の考え方もあるよ、との気づきを与えてもらいました。 実際にそれで回り始めている地方の事例が多数紹介されていますが、同じような考え方は、世界的に見た地方、すなわち途上国にも適用できるのかも、と思います。 あと、これに限らず、○○資本主義という違った価値観の提案がもっと色々とあってもイイのかもしれません。
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2014.3記。 「里山資本主義」とはナイスネーミングだと思うが、その中身は結構多義的と感じた。 一つには、「エコ循環社会」みたいな要素。 薪でご飯を炊く、とかバイオマス発電とか。 二つには、過疎の村に広い意味での「自給自足」を部分的にでも持ち込むことによって、新たな「生きがい...
2014.3記。 「里山資本主義」とはナイスネーミングだと思うが、その中身は結構多義的と感じた。 一つには、「エコ循環社会」みたいな要素。 薪でご飯を炊く、とかバイオマス発電とか。 二つには、過疎の村に広い意味での「自給自足」を部分的にでも持ち込むことによって、新たな「生きがい」「助け合い」を呼び起こすこと(お年寄りが作った野菜を地域通貨に交換して、コミュニティが回復する、とか)。 そして、三つには新しい産業が地域で生まれうる(木造建築の技術革新によって、林業は十分に競争力のある作業になりうる、とか)といった要素。 著者は、こういったこと「だけ」で今の高度資本主義社会を代替できるなどとは言っていない。あくまで、現在の枠組みの「バックアップ」だと言っている。でもまあ、こうした里山ライクな取り組みは、「マネー資本主義の先頭集団にだけ許されたぜいたく」ではないのか、という疑念も消えないのだった。
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報徳思想の至誠、推譲に通ずる考え方・実践に共感。昨年、本に出てくる方に直接お会いする機会を得て感動しました。
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資本主義に代表される、どんどん働き収入を増やすことで「豊か」になるマッチョな経済。 これに疑問を投げかけているのが、筆者が主張する里山資本主義である。 真庭市の林業モデルに代表するような、支出を収入に変えるアイデア。 世界のエネルギー価格相場に影響を受けない、持続可能で安定な経...
資本主義に代表される、どんどん働き収入を増やすことで「豊か」になるマッチョな経済。 これに疑問を投げかけているのが、筆者が主張する里山資本主義である。 真庭市の林業モデルに代表するような、支出を収入に変えるアイデア。 世界のエネルギー価格相場に影響を受けない、持続可能で安定な経済の形成。 資本主義によるマッチョな経済だけでなく、里山資本主義によるしたたかな経済も形成することによって、「豊かな」暮らしが形成されるのではないだろうか。
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地産地消を押し進め、地域通貨を導入する。里山資本主義の一つの形態だ。外部から買うのではなく、自分の持っているものが何かを冷徹に見据え、地域内で循環できないかと徹底的に考え抜いている。こうした地域が増えれば、まだまだ日本はやっていける。 注目点 ・原油は投機マネーの流入で価格が乱...
地産地消を押し進め、地域通貨を導入する。里山資本主義の一つの形態だ。外部から買うのではなく、自分の持っているものが何かを冷徹に見据え、地域内で循環できないかと徹底的に考え抜いている。こうした地域が増えれば、まだまだ日本はやっていける。 注目点 ・原油は投機マネーの流入で価格が乱高化するようになってしまった。 ・CLT。コンクリートと同じ強度を持つ木材。高層建築も可能とする ・7階立てのCLT建築、震度7の揺れを耐えきる。火事にも強い。 ・町の外から魚を買う必要がない。 ・それくらい育てないと畑の地力が落ちてしまう。 ・もっと遊びたい、次はいつ来るの? ・日本の金利収支は14兆円の黒字。貿易赤字の6兆円をぶっ飛ばす。
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"大量消費を推奨する成長を核とした経済で、この国は続けていくべきなのでしょうか? エネルギーを大量に消費する生活に浸っているけど、一端立ち止まって生活スタイルも考えてみよう。 という問いかけをしている本。 もう一度、日本国内の全ての地域で、きちんと経済が循環する仕組みを...
"大量消費を推奨する成長を核とした経済で、この国は続けていくべきなのでしょうか? エネルギーを大量に消費する生活に浸っているけど、一端立ち止まって生活スタイルも考えてみよう。 という問いかけをしている本。 もう一度、日本国内の全ての地域で、きちんと経済が循環する仕組みを考えてみよう。 都市だけではなく、地方でも、現有の自然資産、自然資源を定義しなおして、アイデア出せば、地域の経済は循環していくという事例を紹介し、国家経済についても論考している。 考えてみれば日本の国土の70%は山。荒廃した森林もきちんと人が手を入れていくことで、循環型の環境を作れるし、木材は燃料、建材など様々な用途に活用できる。 都市に暮らすことしかしらない私には目からうろこの、わくわくする話が多く、心が揺れた。"
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降りる暮らし推奨ではなくアグレッシブな内容。行間はちょっとひいてしまうほどギラギラと熱い。 木材ペレットのことに紙幅を相当割いているのは、つまりエネルギーを自給できず地域外に支払うもっとも大きいコストがエネルギー代で、ここを握られている限り貧しさから脱却できないからだということが...
降りる暮らし推奨ではなくアグレッシブな内容。行間はちょっとひいてしまうほどギラギラと熱い。 木材ペレットのことに紙幅を相当割いているのは、つまりエネルギーを自給できず地域外に支払うもっとも大きいコストがエネルギー代で、ここを握られている限り貧しさから脱却できないからだということがわかる。 無縁社会からの脱却をとりあげた章は若干特異な例という気がするが、昨今、難民を受け入れ地域通貨を支給することにより振興を試みているイタリアの過疎の町の例も別のメディアで見聞きし、何らかの形で小さな経済圏をたくさん回していくことは実は国際問題の解決にもつなげられる発想かもしれないと思った。
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