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里山資本主義 の商品レビュー

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297件のお客様レビュー

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2022/10/17

藻谷浩介(1964年~)氏は、東大法学部卒、日本政策投資銀行勤務を経て、日本総合研究所主席研究員を務める、地域エコノミスト。 私は新書を含むノンフィクションを好んで読み、興味のある新刊はその時点で入手するようにしているが、今般、過去に評判になった新書で未読のものを、新・古書店でま...

藻谷浩介(1964年~)氏は、東大法学部卒、日本政策投資銀行勤務を経て、日本総合研究所主席研究員を務める、地域エコノミスト。 私は新書を含むノンフィクションを好んで読み、興味のある新刊はその時点で入手するようにしているが、今般、過去に評判になった新書で未読のものを、新・古書店でまとめて入手して読んでおり、本書はその中の一冊である(本書は2014年の新書大賞。累計販売部数40万部超)。尚、『デフレの正体』(2011年の新書大賞第2位。累計販売部数50万部超)も今般入手し、読了した。 本書は、2011年から藻谷氏とNHK広島が共同で製作した、中国地方向け放送番組「フェイスグランデ 里山資本主義」をもとに取材を進めた内容をまとめた、藻谷氏とNHK広島取材班による共著である。 内容は、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災・福島第一原発事故等により、「マネー資本主義」やエネルギーに関するリスクが顕在化したことを受けて、里山のような身近なところからエネルギー、食糧などを自給することにより、地域内で完結できるものは極力完結させるシステムを作ろうとする考え方・取り組みを「里山資本主義」と名付け、それを先取りする中国地方の各地(岡山県真庭市、広島県庄原市、山口県周防大島、島根県邑南町、鳥取県八頭町等)を紹介すると同時に、日本の将来のための理想的なシステムとして推進することを提唱するものである。 但し、著者は、(マネー)資本主義を全面否定しているわけではなく、里山資本主義を、①貨幣換算できない物々交換の復権、②規模の利益への抵抗、➂分業の原理への異議申し立て、という主に3点において、お金の循環が全てを決するマネー資本主義のアンチテーゼになり得るものと位置付け、(お金に依存しない)サブシステムとして構築することの意味を強調している。 更に、里山資本主義の推進は、人と人とのつながりを回復・強化することになり、高齢者にも、出産・子育て世代にも住みやすい地域作りに寄与するものであるとし、また、里山資本主義の様々な志向は、世界の先端企業が取り組むスマートシティのコンセプト(エネルギーの効率化、コミュニティの復活等)と驚くほど一致したものだともいう。 そして、著者は、現在の日本に蔓延する不安・不満・不信の根底にあるのは、マネー資本主義に対する漠然とした不安であり、それを和らげるためには、地に足の着いた里山資本主義的なシステムの構築が不可欠であると結んでいる。 私はこれまでも、行き過ぎた資本主義(=新自由主義=マネー資本主義)による格差の拡大や環境・気候問題に対する強い問題意識から、様々な本を読んできたが、里山資本主義は、(本書でも軽く触れられているが)社会学者・広井良典氏がいう「ポスト資本主義」の文脈や、斎藤幸平氏が唱える「コモンズ」の概念と通ずるところがあり、大いに共感を持った。 本書出版から10年近く経ち、里山資本主義的な活動をメディア等が取り上げる機会も増えたような気がする(コロナ禍により否応なく進んだ、新しい生活様式や働き方も後押しになっているのだろう)が、大都市圏に住み、里山資本主義を実践することが難しい自分としても、改めて生活を見つめ直すきっかけにしたい思う。 (2022年10月了)

Posted byブクログ

2022/08/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

経済100年の常識  →たくさん稼いで、たくさんお金を遣う 都会はスマートシティへ 楽しくなければ定住してもらえない  →稼ぐのは都会に勝てない 林業で重要なこと  →森林が持続的に良好な状態であるようにする  →元手に手をつけず、利子で生活が理想 生きるのに必要なのは水と食料と燃料だけ 大切にすべきは人との絆、自然とのつながり  →一人一人がかけがけの無いもの 社会が高齢化するから日本は衰える、 という主張には賛同できない  →里山資本主義的な明るい高齢化 ーーー 初回読んだ時はまるで頭に入らなかったが 2回目でかなり掴めた

Posted byブクログ

2022/04/22

マネー資本主義が危機を迎えると、対抗運動がしばしば力を持つ。昔はそれが「共産主義」一択で、マルクスがその頃よく読まれたりするが、「里山資本主義」も含めて選択肢が増えているのは良いことだと思う。 2022年現在のような、国際情勢が不安定な時はエネルギーや食べ物を海外に頼るのはリスク...

マネー資本主義が危機を迎えると、対抗運動がしばしば力を持つ。昔はそれが「共産主義」一択で、マルクスがその頃よく読まれたりするが、「里山資本主義」も含めて選択肢が増えているのは良いことだと思う。 2022年現在のような、国際情勢が不安定な時はエネルギーや食べ物を海外に頼るのはリスクが高い。それを国内にある使われてない「資源」=耕作放棄地、手付かずの山林、空き家などを活用していくのは共感できた。 里山資本主義はマネー資本主義を補完するサブシステムと紹介されている。しかしそれは資本主義を一度通すと、ただの里山への回帰に留まらず、一段洗練された姿(スマートシティのような)になるのかなと思い、将来主流になって行く可能性も感じた。否定の否定みたいに。

Posted byブクログ

2022/03/23

地方で生活したいと思っているものにとって、具体的な例などがあること、高齢者がイキイキと生活していることなど明るい気持ちになることができた。

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2022/02/07

220206 やはり自然が好きだ。この分野でお金を産むことができたらどれほど楽しいだろうかと妄想してしまう。オーストリアのような確立されたバイオマス文化を作れたら面白いだろうな。(エネルギー事業、エンターテイメント事業、キャンプ、教育、食…)飯能などを舞台にクラファンとかを使って...

220206 やはり自然が好きだ。この分野でお金を産むことができたらどれほど楽しいだろうかと妄想してしまう。オーストリアのような確立されたバイオマス文化を作れたら面白いだろうな。(エネルギー事業、エンターテイメント事業、キャンプ、教育、食…)飯能などを舞台にクラファンとかを使って事業を起こせないだろうかと考えてしまった。 オーストリアで林業を学ぶのもアリだよな。 里山資本主義とは地域内で完結するものは完結させようという運動。かつ開かれた地域主義。 マネーに依存しないサブシステムの構築。(自然×人間関係×テクノロジー) 筆者の主張は一貫して、お金に依存した社会から脱却して、食料・燃料・水を自ら調達してマネー資本主義と共存したしなやかな世界を生きようというものであった。そして後者の生き方を里山資本主義と呼び、さらにそこで職を生み出していることも含め、それを実現している人々の生活をオーストリアの例も交えながら具体的に解説していた。 今まで家庭菜園を通した食の安定的な確保や余り物を媒介にしたコミュニティづくりは学生時代に目にしてきたのでそこまで目新しさを感じなかったが、燃料を自らかつエコシステムで調達している事例は初めて出会ったので衝撃的だった。小さなまち単位でもいいから木質バイオマスエネルギーを普及させてみたいと思ってしまった。飯能でできないだろうか。 この世の中(マネー資本システム)はまれに災害やウイルスの蔓延、石油などの化石燃料の高騰などにより一時停止することがある。未曾有だとか、今までにないなどと言ってパニックになるのではなく、これを念頭に置いて暮らしていくと余計な不安を抱えずに生きることができるなと思った。里山を使いこなしていた先人から学び、今の社会システムに組み込んで柔軟な生き方をしていきたい。近くに親がいるなら子どもを任せてもいいし、近所の人に面倒を見てもらってもいいし、誘導しつつ状況に合わせて柔軟に生き方を変えていく。まずは家庭菜園からだなぁ。 ■マネー資本主義のアンチテーゼの体現 1.物々交換(⇆貨幣を介した等価交換) 2.小規模経済(⇆規模の利益) 3.一事業者多事業(⇆分業の原理)

Posted byブクログ

2021/09/20

資本主義とか政治とか年金とか 日頃なんとなく感じている「将来への不安」 そういったものに対して 新たな考え方「里山資本主義」 =コストや環境負荷を抑えた経済(物理的に持続的) =手触りのある経済(精神的に持続的) が必要ではないかと投げかけていると受け取った。 ここ数年でSDG...

資本主義とか政治とか年金とか 日頃なんとなく感じている「将来への不安」 そういったものに対して 新たな考え方「里山資本主義」 =コストや環境負荷を抑えた経済(物理的に持続的) =手触りのある経済(精神的に持続的) が必要ではないかと投げかけていると受け取った。 ここ数年でSDGsがCSRの枠組みを越えて、SDGs達成に貢献しなければ企業として傾くという水準までになっている。 そのようななか、個人的にはきっと本書のような生き方、経済がスタンダードとなる時代が来るのだろうと思うし、自分もそのような考え方にキャッチアップしていきたい。 確かに筆者は要するに「自然の中でで人との繋がりのある金銭消費の少ない経済を拡大せよ」と言っており、読者としては はいはい地方で農業林業やれって言うんでしょ となりがちだ。 だが、実際にコロナで都市で働く意味を問われるなかで、果たして本当にどれだけ都市にいる意味があるのかは経験した人しかわからないのでは…と思う。

Posted byブクログ

2021/08/11

斉藤幸平「人新世の資本論」を読んだ流れで、この本を読んだことを思い出す。当時とにかく就職をする前で、関東から旅行以外で出たことのなかった自分がしばらく島根に滞在する機会もあり、田舎の人、食、風景の中に生きる豊かさ、美しさに打たれた。そこから翻ってみると東京の資本主義経済という不健...

斉藤幸平「人新世の資本論」を読んだ流れで、この本を読んだことを思い出す。当時とにかく就職をする前で、関東から旅行以外で出たことのなかった自分がしばらく島根に滞在する機会もあり、田舎の人、食、風景の中に生きる豊かさ、美しさに打たれた。そこから翻ってみると東京の資本主義経済という不健康な巨大歯車の中、イチから下っ端としてお願いしてまで入れてもらって、わざわざ働きたくもない。この先明るい未来があるとも思えない。オルタナティブがあり得ないのだろうかという希望を持って手に取った本だった。 ところどころに光が差すこともないではないのだが、最後まで読み進めた結果は、「メインは今まで通り以外あり得ないから、まあ他の選択肢は予備電源程度に備えとこうよ」という大人なところに落ち着いていて、現実はまぁそうだよな、という諦め混じりの納得と、途中で見えたあの希望の光は何だったんだ、というやるせなさで読み終えた。→「人新世の資本論」に続く。

Posted byブクログ

2021/08/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「域際収支」というものを都道府県別に示したグラフである。域際収支とは、商品やサービスを地域外に売って得た金額と、逆に外から購入した金額の差を示した数字。一目瞭然である。東京や大阪など、大都市圏が軒並みプラスなのに対し、高知や奈良など農漁村を多く抱える県は、流出額が巨大である。 今度は、域際収支が最下位の高知県を品目別にどれが赤字でどれが黒字かをみたもの。いわば、お金の流れを健康診断した結果だ。農業や漁業、林業など一次産業が黒字でとっても健康的であるのに対し、電子部品を部門。そして、意外なのが、飲食料品が赤字となっていることだ。

Posted byブクログ

2021/04/26

「人新世の資本論」に続いて、現代社会を大幅に見直すきっかけとなる本。 今までの金儲け中心で大量消費社会に疑問を持ち、多くの地方で後期高齢化の深刻さがジワジワと影響を広める中で1つの解決策として提案されているのが里山資本主義。 地方をネガティブなイメージで見るのではなく、これからの...

「人新世の資本論」に続いて、現代社会を大幅に見直すきっかけとなる本。 今までの金儲け中心で大量消費社会に疑問を持ち、多くの地方で後期高齢化の深刻さがジワジワと影響を広める中で1つの解決策として提案されているのが里山資本主義。 地方をネガティブなイメージで見るのではなく、これからの日本のイノベーションの最先端へと変える中心地としてこれから益々見直されて変革していくと思われる。 里山資本主義は環境面で優れているだけではなく、地域内でのお金の循環システム(ある意味これが脱成長コミュニズムの理想型なのか?)であり、コロナ禍において見直されるこれまでの社会のあり方に対して革新的な提言を示している。 ああ!早く田舎に移住したい!

Posted byブクログ

2021/03/04

マネー資本主義を降りて、里山資本主義への転向を掲げる。 エネルギーを自給し、コンパクトな経済社会を立ち上げようというもの。 経済に振り回され、疲弊仕切った都会人にはとても魅力的な提案だと思う。 ただし、コミュ障にはハードルが高い。 田舎暮らしに憧れるが、田舎の濃厚な人間関係を警戒...

マネー資本主義を降りて、里山資本主義への転向を掲げる。 エネルギーを自給し、コンパクトな経済社会を立ち上げようというもの。 経済に振り回され、疲弊仕切った都会人にはとても魅力的な提案だと思う。 ただし、コミュ障にはハードルが高い。 田舎暮らしに憧れるが、田舎の濃厚な人間関係を警戒し踏み切れないで居る人達も少なからず居るはず。 私もそのうちの1人だ。 そこを解決出来れば里山資本主義に賛同し、且つ実行にまで移すことができる人間は多いと思う。 里山ニートでありつつ、コンパクトな経済社会の一員になれたら理想的なのに。 そんな社会をただいま思考中。

Posted byブクログ