折れた竜骨(下) の商品レビュー
米澤穂信の『折れた竜骨』を読了。 第64回日本推理作家協会賞受賞作。他、『本格ミステリ・ベスト10』2012年版国内ランキング第1位、「ミステリが読みたい!」2012年版国内篇第1位、『このミステリーがすごい!」2012年版国内編第2位、『週刊文春2011ミステリーベスト10」...
米澤穂信の『折れた竜骨』を読了。 第64回日本推理作家協会賞受賞作。他、『本格ミステリ・ベスト10』2012年版国内ランキング第1位、「ミステリが読みたい!」2012年版国内篇第1位、『このミステリーがすごい!」2012年版国内編第2位、『週刊文春2011ミステリーベスト10」国内部門第2位と、各種ミステリ・ランキングで上位に入選した作品。実際、相当面白い作品。 この作品がどんなものかは、以下の作者の言葉をご覧いただきたい。それが一番分かり易いはず。 「『折れた竜骨』は、魔法が存在する十二世紀末のヨーロッパを舞台にしたミステリです。魔法とミステリの取り合わせに面食らう方もいらっしゃるかもしれませんが、幽霊や超能力など、現実にはあり得ない力を援用するミステリはけっこうあるのです。私はかつて、それら特殊な設定を用いたミステリを、心躍らせて読んだものでした。読者とのあいだに交す約束事さえしっかりしていれば、その約束事がたとえこの世のものでなかったとしても、ミステリは成立する。そこにミステリという知的遊戯の懐の深さを見たからです。本作がどこかの誰かに、かつて私が覚えたような昂奮を与えてくれることを願ってやみません。」 つまり簡潔に述べれば、ファンタジー要素を含んだ本格推理小説というわけである。実際、このように特殊な設定がある作品を読むのは初めてというわけではないので、面食らうこともなかった。 本作は最初に登場人物の名前が横文字で書いてあり、誰が誰だか混同してしまわないか不安だった。だがその心配は杞憂に終わった。皆それぞれ個性的ですぐ覚えられたからだ。たまに人物の書き分けが出来ていない作品が見受けられるが、本作はその点に関して言うことはまるでなかった。 また、終盤には戦の場面がある。まぁ考えてみれば、剣や魔術がある世界なのだから、それらを最大限に活かさない手はない訳だが。 そして巧妙に張り巡らされた伏線。これは基本的にどんなミステリにも言えることだが、本作の伏線は先程の戦の場面にも張られているのが面白い。 あらすじにある「走狗(ミニオン)」とは魔術で操られた人間のことで、領主殺害の犯人。犯人は操られていた時の記憶がないので、自分でも殺したかどうか判らないというのがこの作品の一つのミソ。当然アリバイなどを聞いても狼狽えることはまずない。このように作品世界の設定を上手く活かしていると思うことが多々あった。 最後、全員を集めての推理は自然に消去法形式になるが、論理的で面白かった。結末も意外といえば意外かもしれないが途中で何となく判る人もいるだろう。 読後感は少し切ないものがあったけれど、非常に面白い作品だった。
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とにもかくにも、ファンタジーとミステリを見事に融合させた作者の力量に脱帽。 冷静にふりかえれば、単体のファンタジーとして、もしくはミステリとして、秀作なれど突出した傑作とまでは言えないと思う。しかし、本格読みも惹き込む謎解きの要素と、ロマンに溢れる世界観にキャラクターたち。 騎士...
とにもかくにも、ファンタジーとミステリを見事に融合させた作者の力量に脱帽。 冷静にふりかえれば、単体のファンタジーとして、もしくはミステリとして、秀作なれど突出した傑作とまでは言えないと思う。しかし、本格読みも惹き込む謎解きの要素と、ロマンに溢れる世界観にキャラクターたち。 騎士と魔術師とゾンビ。英雄と愚者とが入り乱れた大活劇。 最後は謎をきれいに回収し、どんでん返しも交えて、ストーリーをおそらく最高の形で収束させた。 ブラボーだ。
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中世欧州風の魔法世界で起こった孤島の領主殺害事件。領主の娘が出会った放浪の騎士とその従士が事件の意外な真相を暴き出す。魔術と剣と謎解きが交錯する世界の見せ方がとてもステキ!
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ファルクとニコラとアニーナがアミーナの父であるソロンの領主ローレント殺害事件を解決する物語。 ソロン島に呪われたデーン人が攻めてくるという情報を受け、領主は傭兵を募集。 その傭兵たちの誰かが暗殺騎士により、暗殺者の魔法をかけられ領主を殺害したと見たファルクたちは、犯人にされた者を探し出していく。 <ネタバレ> 犯人はファルク自身であった。 皆を集めて犯人を発表する場で、消去法によりエンマが 犯人であると結論づけたファルクだが、間違いを弟子のニコラに指摘させ、アンブロジウス兄弟団の名誉を守るため、自らは暗殺騎士のエドリックであると演出し自らを殺させるラストである。 エンマはデーン人の王の子で、トーステンはエンマが来るのを待ち、領主からの釈放を断り続けエンマの来島を知り脱獄した。 デーン人とソロン島の関係は、元々ソロンの領主自身がデーン人であったのだが、島の人々を裏切り自分たちが領主となろうとした為、裏切られた残りの人々は呪いの魔法に自らがかかり、ソロンを取り返そうとする歴史があった。
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ファンタジー且つミステリーという異色作。 魔法の存在があるがそれを上手く絡めてある。 下巻は戦いの描写もあり、戦記ものみたいな感じもするが、終盤にかけてのストーリーは秀逸。
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どう推理するのかと思われましたが。 成程。 魔術も呪いも何でもできる便利なものとしてだけではなく、 それぞれの結果を得る為にはどういう条件が必要で、 どういった風に発現し、 結果どうなるか(どう見えるか)という規定を設けるのですね。 そうすることで規定に基づいた推理を展開できる訳...
どう推理するのかと思われましたが。 成程。 魔術も呪いも何でもできる便利なものとしてだけではなく、 それぞれの結果を得る為にはどういう条件が必要で、 どういった風に発現し、 結果どうなるか(どう見えるか)という規定を設けるのですね。 そうすることで規定に基づいた推理を展開できる訳です。 納得しました。 領主殺害の推理ではどんでん返しがありましたし、 直接動機やトリックにつながらないものも含めて、 意外な事実が次々と明らかになり、 急転直下の結末には驚かされました。 蛇足ですが。 読破する前はタイトルが作品全体を象徴するのかと思われましたが、 「折れた竜骨」が何処から来たのか作中明かされて、 個人的にはそれ程重要な意味は無いと感じました。
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いやー面白かった! 魔術とか出てくるとミステリーとしてはちょっとズルイというか、そういう違和感が出るものなのかなと思ってたけど、そんなこと全く感じなかった。 ページを捲る手が止まらず、ハラハラしながら読みました。 細部の設定が「なるほど!」という事が多くて、ボンヤリと走狗は解っ...
いやー面白かった! 魔術とか出てくるとミステリーとしてはちょっとズルイというか、そういう違和感が出るものなのかなと思ってたけど、そんなこと全く感じなかった。 ページを捲る手が止まらず、ハラハラしながら読みました。 細部の設定が「なるほど!」という事が多くて、ボンヤリと走狗は解っていながらも面白かった。伏線が素晴らしい。 実はあまり期待せずに読み始めたので、嬉しい誤算でした。
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種明かしの下巻。途中でバトルシーンが盛り込まれたのには驚いたけど、そこにしたって、本作者にかかればスリリングな描写で一気に読ませてくれる。とくに根拠もなく、何となく犯人はそうかもな~、でもあり得んな~、とか思ってたから、真相にはそれほど強い衝撃は受けなかった。でもよく練られてると...
種明かしの下巻。途中でバトルシーンが盛り込まれたのには驚いたけど、そこにしたって、本作者にかかればスリリングな描写で一気に読ませてくれる。とくに根拠もなく、何となく犯人はそうかもな~、でもあり得んな~、とか思ってたから、真相にはそれほど強い衝撃は受けなかった。でもよく練られてると思うし、この続編とか、ぜひ読んでみたいとは思いました。
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あえてファンタジーの形式をとったのは、トリックの幅を広げるためだったのかと合点。ファンタジーならではの物語の古めかしさと独特の雰囲気が、シャーロックホームズのようなファルクとワトソンのようなニコラが織りなす探偵劇と見事にマッチしていた。折れた竜骨という題名そのものにどこまで深い意...
あえてファンタジーの形式をとったのは、トリックの幅を広げるためだったのかと合点。ファンタジーならではの物語の古めかしさと独特の雰囲気が、シャーロックホームズのようなファルクとワトソンのようなニコラが織りなす探偵劇と見事にマッチしていた。折れた竜骨という題名そのものにどこまで深い意味があるのか、未だに計り知れない。ただの合言葉だけなのか?個人的にはファルクは殺して欲しくなかったなぁ。まあそう思えるほどの愛着を、思い入れを抱いてしまうほど見事なキャラ設定だったのだろう。騎士道を見た。
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ファンタジーでありながら、その中で本格ミステリの面白さ抜群のロジックミステリです。 そして騎士と魔法の世界に何が起こったか、そして…
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