七つの海を照らす星 の商品レビュー
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ネタバレ注意です! 「もし、私がこのことを小説に書くんだったら、ペンネームは絶対ローマ字回文になるようにするな。そうしたら冒頭どころか表紙に載るもんね。『最大の伏線は本を開く前から読者の目の前に!』とかってコピーができるわよ」 にこの物語の全てが集約。 児童養護施設という社会的テーマをも扱いつつ、日常の謎を混ぜ込み、最後の話で大風呂敷をきちんとまとめたところが小気味よい。謎の論理的組み立てはもうちょっとなるほどーというものがあるともっとよかった。 けれど、個人的には若竹七海の「ぼくのミステリな日常」の方が驚きは大きかった。
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「最大の伏線は本を開く前から読者の前に!」これを新人賞でやるってのは作品の完成度より何より相当な度胸。「しあわせの書」を思い出しました。 児童養護施設と言われるとどうも色眼鏡でみてしまう偽善者なもので、最初のうちは気負ってました。どんな事情を抱えた子たちなんだろう、多少癖のある子...
「最大の伏線は本を開く前から読者の前に!」これを新人賞でやるってのは作品の完成度より何より相当な度胸。「しあわせの書」を思い出しました。 児童養護施設と言われるとどうも色眼鏡でみてしまう偽善者なもので、最初のうちは気負ってました。どんな事情を抱えた子たちなんだろう、多少癖のある子でもわかってあげなくちゃ…という上から目線。それが最後には、もう皆普通の、どこにでもいる子たちに見えてくる。いい話ではあるけどミステリとしてそこで終らせちゃいかんでしょうよ、後で収拾つけてくれるんでしょうね?と疑ってかかった第一話。余韻の残る第二話。そして個人的にはとっても楽しかった第三話…と続き、最終的には謎は解けるし偏見も少しは減らせたし、と著者に感謝です。こちらの想像力の問題で、建造物の構造が理解しにくかったというのはありましたが。 以前仮装大賞に養護施設の子達が出てまして、関係を問われて代表の子が「仲間です」と答えてたのがとても印象的でした。家族とも友達とも違う、その言葉がぴったりだと思えます。
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児童養護施設を舞台に、学園の七不思議の謎を解くストーリー。主人公の施設職員と子供達との関係には心温まるものがあり、しかもミステリーの部分もしっかりしているという一冊で二度美味しい、いい作品。少し真相の説明がクドいのが難点か。最終話の展開は鮮やか。驚かされた〜。
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児童養護施設の七不思議を一つずつ追っていくストーリー展開。 単純な感動ものかと思いきや、しっかりとしたミステリーだった。 とりわけ最後の意外性は、「やられた!」という爽快感もあって、読み応えがあった。
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連作短編集。 児童養護施設「七海学園」での日常を描いたミステリー。 ミステリーであるが、殺人があるわけでなく、かと言っ 平凡な日常の謎でもなく、学園七不思議を呼ばれる謎を解明していく。 一つ一つの短編が面白く人間味ある物語であるうえ、 最後の章でとっておきのミステリーが炸裂する。 <ネタバレ> 主役の学園職員 北沢春菜が児童福祉司の海王さんの 助けを借り謎を解明していくのだが、春菜の友人 佳音ちゃんに学園の話をよくするのだが、その謎解きの1つに行方不明になった少女の謎解きがある。 その少女自身が佳音ちゃんだったというのが最後のミステリーとなる。 各章に出てくる色々な謎の女性も佳音ちゃんであった。 佳音ちゃんが意識してそういう役回りをしたのでなく、たまたまそうなってしまった。 佳音ちゃん自身も七海学園に一時保護されていたのだが、春菜と知り合ったのも大学が同じであった為の偶然でしかなかった。
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素晴らしかった。児童養護施設が舞台ということでふわふわした感動ものだったりしたら嫌だなぁと読み始めたのですが全然そんなことなかった。子供たちにとって厳しい現実を彼ら自身が逞しく生きぬいていく様が強く印象に残った。個人的には2話目の話がすごく好きで、真実を隠したまま幸せになる、2人の選択が許させる世界で良かった。最後の"みすず"の暗示にもぞくっとしたけど、彼女の行動が復讐のためなのかそれても…と、考えさせる終わり方もとても味があり好き。 ミステリー性よりも他に光るところが目立った印象でした。初作家さんでしたがこれからも読んでいきたいです。
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児童養護施設を舞台に、日常の謎を追うというもの。その重いテーマ性にもかかわらず、著者のみずみずしい文章のタッチと主人公の性格ゆえか、思ったよりも重くは感じられない。マイノリティあるいは社会的弱者に対して、わたくしたちはいかに関わっていくか、ということを考えていく上で、考えさせてく...
児童養護施設を舞台に、日常の謎を追うというもの。その重いテーマ性にもかかわらず、著者のみずみずしい文章のタッチと主人公の性格ゆえか、思ったよりも重くは感じられない。マイノリティあるいは社会的弱者に対して、わたくしたちはいかに関わっていくか、ということを考えていく上で、考えさせてくれる作品です。
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表紙に惹かれて読んでみたら、思いのほか面白かった。ただ、謎解きがやや強引すぎるかな?という話もちらほら・・・。でも、最後で全ての話が一つに繋がってたのには驚かされました。
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第18回鮎川哲也賞を受賞した 児童養護施設を舞台に展開される 保育士、児童福祉司、そして施設に暮らす子供たちの物語。 複雑な事情を抱える子供たちが出てきますが 重いだけの話にならず、どこか救いというか 未来を照らす明るさのようなものが随所に感じられ 品の良い丁寧な筆致と相まって...
第18回鮎川哲也賞を受賞した 児童養護施設を舞台に展開される 保育士、児童福祉司、そして施設に暮らす子供たちの物語。 複雑な事情を抱える子供たちが出てきますが 重いだけの話にならず、どこか救いというか 未来を照らす明るさのようなものが随所に感じられ 品の良い丁寧な筆致と相まって 一歩引いた視点からずっと登場人物たちを見守るような 感じで最後まで読むことができました。 細かい仕掛けがいろいろと仕掛けられていて それを読み解くのも楽しみの一つで、 作中貫かれている温かさというか優しい視点が 最終話の第7話で伏線の回収と合わせて昇華され 驚きとともにある種のハッピーエンドのような 爽やかな終わり方でした。
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児童養護施設の「学園七不思議」をテーマにした連作短編集。保育士が狂言回しで児童福祉司が安楽椅子探偵という一見、地味な設定ですが、行間から漂う品の良さと、最終章での総まとめ(少々強引だけれども)の構成力など読む価値はありました。
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