桜ほうさら の商品レビュー

宮部みゆき【著】

2018/10/13

中編4話、つながって長編。富勘長屋・三八愛郷録・拐かし・桜ほうさら。お家廃絶、江戸に上り長屋で写本仕事をしつつ、偽文の代書屋を探す次男坊。切腹した父、士官を望む兄と母、江戸留守居役、船宿の女将、貸本屋、長屋の庶民たち。

江戸の日常の暮らしに、武士・町人・商家の事情、謎、ほのぼの、人情が絶妙にミックスされて、楽しんで読めました。読み直して、人物・背景・状況・関連、実に巧みに世界が作られていることに感心します。

2018/10/20

笙之介は小藩の武士の次男。父が賄賂を取ったという容疑でお預けになっていた時に切腹してはてた。残された兄は母の実家にお預け。笙之介は儒者の老師にお預けとなった。そして藩の江戸留守居役の指示で江戸に行くことになった。出来得れば父の汚名を晴らしたいとの希望を持って。なぜなら父の筆跡と瓜二つの証文が賄賂の証拠となったのである。父はその証文を見て、非常に驚いていた。自分の筆跡と同じであるが、自分はそれを書いた覚えが無いという。偽書なのではないかと笙之介は思っている。そんな偽書を書ける人間を江戸で探し出したい。

2018/09/07

面白かった。主人公以外はみんな知ってた、みたいなオチはちょっとがっかりしたけど。
最後に兄に切られた時は主人公でいい奴だけど弱いし色々抜けてるから死んでおしまいだったらどうしようとハラハラした。生きてて良かった。
和香さんとはこの後どうなるんだろう。商家のお嬢さんと書生さんで結婚できるものなのか気になった。

2018/05/22

下町に住む、青年の笙太郎がある事件に対する犯人を探し当てる物語。文字の謎から真相を紐解く際に、下町に住む人物らと関わっていくうちに、喜怒哀楽や恋愛に発展するのではないかと感じさせるような素振りもあったりなど、真相究明と一見関係がなさそうな人間模様を覗かせる。色々と知恵を絞ったり、手がかりを掴むための何かを手に入れ、最後に真実が見えて、無事解決して一安心。物語の面白さがある。江戸に生きる人々の人間模様が時代劇かのようだった。この人間関係を通して笙さんがまた一皮むけたようで、最後は心温まるものだった。

2017/10/20

キーワードは、書・字・文。
一見バラバラなような話が実は繋がっているという、
そんな笙之介の物語。
他人の縁の温かさと家族であっても縁の冷たさ、
人って本当に不思議だなぁ。

2017/09/22

読み物としてとても楽しく読ませてもらいました。
ただ、宮部さんなら…と思ってしまったり。。
彼の周りにたくさんの暖かい人たちがいるんだけど、こんなに身内から嫌われて恨まれたら…真っ直ぐ生きていけないなぁと思ってしました。

2017/06/28

舞台は深川は北永堀町にある富勘長屋。主人公古橋笙之介は上総国搗根藩の生家を離れ、佐賀町の貸本屋、村田屋の治兵衛から受ける写本で食いつなぐ。

(搗根藩と言えば、「ひだる神」(『三鬼』)のだるま屋主人の実家、設定の使い回しだw)

収賄の疑いをかけられて死んだ父・宗左衛門の無念を晴らすため、母・勝江の元係累・江戸留守居役の坂崎重秀に呼ばれて謎の代書屋探しに江戸へ …って訳。

搗根藩のお家騒動をベースにしつつ、あくまで舞台は江戸長屋の町人生活。とは言え、冴えない武家崩れとアトピー持ちの商家の一人娘の淡い恋バナ、とは行かず。
最終的には、黒幕の末端が兄・勝之介と分かり、その父への確執が無残に晒される。
でも客観的に見ると、そもそも東谷と勝江が半端な仲良しが勝之介を振り回しただけじゃないか〜な疑惑あり。

2017/03/28

父親が賄賂を受け取った罪を着せられて切腹した次男坊の話。江戸でいろいろな人と出会い、いろいろな経験を積んで、最後には辛い現実にも直面して。
だけど、彼は”不幸”ではないんだろうな。理不尽な現実はあって、許しがたい相手もいて、取り戻せない大切な人や記憶や時間もあって、”幸せ”ではないかもしれないけれど、今の彼は、不幸一色ではない、ような気がする。

2017/03/04

舞台は江戸深川。
主人公は、22歳の古橋笙之介。上総国搗根藩で小納戸役を仰せつかる古橋家の次男坊。
大好きだった父が賄賂を受け取った疑いをかけられて自刃。兄が蟄居の身となったため、江戸へやって来た笙之介は、父の汚名をそそぎたい、という思いを胸に秘め、深川の富勘長屋に住み、写本の仕事で生計をたてながら事件の真相究明にあたる。父の自刃には搗根藩の御家騒動がからんでいた。
ミステリアスな事件が次々と起きるなか、傷ついた笙之介は思いを遂げることができるのか。「家族は万能薬ではありません」と語る著者が用意した思いがけない結末とは。
厳しい現実を心の奥底にしまい、貸本屋・治兵衛が持ってきたくれた仕事に目を開かれ、「桜の精」との淡い恋にやきもきする笙之介の姿が微笑ましく、思わず応援したくなる人も多いはず。
人生の切なさ、ほろ苦さ、そして長屋の人々の温かさが心に沁みる物語。

2017/02/27

のんびりとした笙之介と惨いとも言えるお家の、藩の騒動。血縁というのはめんどくさい。それにしても酷い。
その分江戸での皆さんがいい人で安心する。
普通に和香さんと一緒になる続編が読みたいなー。