桜ほうさら の商品レビュー
私をミステリー好きにしてくれた宮部みゆきさんの時代小説。 武士らしくないおっとりと優しすぎる古橋笙之介は父によく似ていた。父は生物を愛し、自然を愛した人だった。そんな父が汚名を着せられ自刃した。父の無実を証明するために、笙之介は奔走する。 「桜ほうさら」とは南信州や甲州で「いろい...
私をミステリー好きにしてくれた宮部みゆきさんの時代小説。 武士らしくないおっとりと優しすぎる古橋笙之介は父によく似ていた。父は生物を愛し、自然を愛した人だった。そんな父が汚名を着せられ自刃した。父の無実を証明するために、笙之介は奔走する。 「桜ほうさら」とは南信州や甲州で「いろいろあって大変だった」の意味の「ささらほうさら」をもじったもの。そのきれいな地口から初恋の甘酸っぱい匂いがする。 605ページと大作だが宮部作品らしく端的かつ美しい文章でテンポよく読めた。これはこう繋がっていたのかと付箋もいくつかあった。 読んだ後味は少し苦さを残しつつ、ほっこりした感じ。宮部作品を漁るように読んでいた頃から久しぶりに読んだので、「ああ、こんな感じだった」と嬉しく思い出した。
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2021.12.7読了 「桜ほうさら」 宮部センセの捕物帳から先に読んで、面白かったので同じ時代物って事で手に取った。 順番逆だったー。先にこちらを読むべきだったー。 登場人物がちょいちょい重なります。 ちょっと後悔。 1話 富勘長屋 主人公の笙之助が故郷を離れ江戸に出てきた道筋から主に長屋の人々や貸本屋"治兵衛"の交流を描いている。和香と出会う場面の描写が美しい。 2話 三八野愛郷録 ある日長堀金五郎が笙之介を訪ねてくる。 聞けば同姓同名"古橋笙之介"という人物を探しているらしい。これも何かの縁とお人好しの笙之介は金五郎の人探しを手伝う事に…。 3話 拐かし お嬢様失踪事件。 世間知らずなお嬢様が人質に…金銭要求もされてお金も払った挙句全部お芝居でしたーの話。 終盤辺り和香さんが嗜める?場面で育ての母親に素直になれなかった、捨てられるのが恐かったと。 うん。これまで強がってたのかーこの娘も辛かったのかな、と。しかーし育ての親に対してそれはないよって仕打ちだけどね。 4話 桜ほうさら 一気に話はクライマックスへ。 父親の仇…その黒幕は? まぁ黒幕は予想通りだったけどまさかの展開だった。何故謀とは無縁の父がターゲットにされたのか。笙之介は偽装書を書いた犯人と対峙し打ちのめされその後全貌を聞かされる。 お兄さんが笙之介にとどめを刺さなかったのは家族の情が少しでも残っていたと信じたい。 バッドエンドじゃなくて良かった。 本当に良かったー…兄が後ろに立ってるトコ←あ"ーーーマジオワタと思った。 続編じゃなくても捕物帳で笙之介と和香のほっこり場面出てこないかな。
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珍しく武士が主人公。 はじめは少し話のテンポがゆっくりめに感じたが最後で一気に話が進む。連載モノだからか。 全体的に物悲しい、すっきりしない雰囲気の話が多い気がする。 治兵衛さんの奥さんの話など、また謎があるので、同じ舞台のきたきた捕物帳で解決されることを期待。
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何度もドキっとさせられて、次から次へと読みたくなるお話でした。 時代小説なので言い回しは特徴がありますが、読書を始めたばかりのわたしにも読みやすかったです。丁寧な描写で、行ったことのない江戸の町の映像が浮かんできました。 笙さんの、父親譲りのお人好しな性格に、とても親近感を覚えま...
何度もドキっとさせられて、次から次へと読みたくなるお話でした。 時代小説なので言い回しは特徴がありますが、読書を始めたばかりのわたしにも読みやすかったです。丁寧な描写で、行ったことのない江戸の町の映像が浮かんできました。 笙さんの、父親譲りのお人好しな性格に、とても親近感を覚えました。主人公が優しい人なので、応援しながら読み進めていると、物語に出てくる人々も、みんな笙さんを気にかけ助けてくれていました。 とても面白かったです。宮部みゆきさんの他の本も読んでみたいし、時代小説にもこれからどんどんチャレンジしたいと思いました。
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久しぶりに宮部みゆきを読みました。 常々、人の心の奥底にある悪意を炙り出すのが上手な方だと思っていましたが、この『桜ほうさら』もまさにそうでした。 ただ、主人公やその周りには実直で心根の優しい人ばかりで、悪意に翻弄されながらも心を寄せ合い支え合う姿に、世の中捨てたもんじゃないと思...
久しぶりに宮部みゆきを読みました。 常々、人の心の奥底にある悪意を炙り出すのが上手な方だと思っていましたが、この『桜ほうさら』もまさにそうでした。 ただ、主人公やその周りには実直で心根の優しい人ばかりで、悪意に翻弄されながらも心を寄せ合い支え合う姿に、世の中捨てたもんじゃないと思わせられます。 それにしても、単行本で3cmを超える厚さには、読むのをためらわせるものがあります。読めるもんなら読んでみろ!と挑発されているかのよう。でも、多分割と厚めの紙を使っているのでしょう、思ったよりもずんずん読み進められました。 この勢いで、同じ長屋が舞台の『きたきた捕物帖』も読みたいなぁと思っています。
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最後の展開が早い。連載モノで、最後は終わらせにきてるなと思ったら、やはり連載モノだった。けど、面白かった。
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きたきたを読んで、忘れてるなぁ〜と再読。切ない読後の記憶しかなくて、きたきたでもういない笙さんがチラチラ出てきたので死んじゃったらどうしよう…と初めて読むみたいにドキドキ。どんどん和歌さんがかわいくなって、笙さんのまじめで優しいところに救われる。
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宮部みゆきの時代物、今回は少し悲しくて可哀想だが終わりには救いもある物語。小さな貧しい藩トウガネ藩で生まれ育った笙之介が主人公で、冤罪で父を失くし一家は離散して ゆえあって江戸で暮らすことに。剣の腕前はからっきしだけど書の腕ならばそこそこの彼を取り巻く人々がみな個性的で魅力的な...
宮部みゆきの時代物、今回は少し悲しくて可哀想だが終わりには救いもある物語。小さな貧しい藩トウガネ藩で生まれ育った笙之介が主人公で、冤罪で父を失くし一家は離散して ゆえあって江戸で暮らすことに。剣の腕前はからっきしだけど書の腕ならばそこそこの彼を取り巻く人々がみな個性的で魅力的な設定。さて草食系男子の笙之介が遭遇して行く出来事や如何に?! 605ページの厚さも苦にならずスイスイ楽しく読了しました♪
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宮部みゆきの時代ものは最高だ。 ①登場人物がいい。 ②時は変われと人の悲しみ、喜びは変わらない ③生きていくことは大変だ、特に江戸時代、不作で飢饉、金があっても作物がなければ食べられない 毎日の今日食べるものを、何とか得て暮らしている ④教わることが多い。 例えば、本文より 嘘...
宮部みゆきの時代ものは最高だ。 ①登場人物がいい。 ②時は変われと人の悲しみ、喜びは変わらない ③生きていくことは大変だ、特に江戸時代、不作で飢饉、金があっても作物がなければ食べられない 毎日の今日食べるものを、何とか得て暮らしている ④教わることが多い。 例えば、本文より 嘘というものは、釣り針に似ている 釣り針ー返しがついている 引っ掛けるには容易だが、なかなか抜けない 刺さっている時より深く人を傷つけその心も 抉ってしまう だから些細なつまらぬ嘘をついてはいけない一生突き通す覚悟を決めたときだけにしておきなさい。 古橋笙之介の父 古橋宗左衛門はあることから藩の取り調べを受ける 賄賂を受け取った罪で、 書いた覚えのない証文も宗右衛門の直筆であった。 陥れられた。 兄勝之助は温和な父を軽蔑し軽んじてた「母の影響もあるが」 父と子の確執、兄、弟の確執 とりわけ血肉を分けた争いほど悲しく酷いものはない どうしても許せない、理屈ではなく 憎しみ! そこから始まる。 笙の介の、江戸で暮らしが始まる お家騒動、藩騒動 伏線はたくさんあった。 村田屋治兵衛の世話になる 村田屋は貸本であり、写本でアリ 教本など写す 今のように印刷もないし 手で写す「名頭字尽」「伊呂波尽」「庭訓往来」「消息往来」 算盤の教本「日用塵劫記」「比売鑑」「和俗童子訓」「御伽草子」「化け物草紙」そんな仕事を上負わせてもらう 題名の「桜ほうさら」は そえさんの甲州でささらほうさらというんだよ。 「ささらほうさら」ーあれこれいろんなことがあって大変だ。という。 とにかく いろいろあって大変だし 飽きることがなく読みづつけた。 仕掛けはいくつもあった「凄い構成」 最後は 人間って哀れでどうしょうもなくて 笙之介を思い泣けて、 また愚かな勝之助にもどうしょうもなく ー 人の心は揺れ動くものだし、何かの拍子にころりと変わることもある 明け方にはこれが正しいと信じていたものが 夕べには色あせて見えることもある ー うちら本好きは多分村田屋さんに 入り浸って あの本読んだりいろいろしてるけど 先立つものがない暮らしだとそうはいかない、 やはり現代の方が恵まれてますよね。 宮部みゆきの時代物にどハマりすると こんな凄いものが他にあるだろうかと思う。 まだまだ言いたいことだらけ 誰も見てくれないよね「だらだらと」
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地方の下級武士の家の次男坊が、藩内の謀りごとに巻き込まれて江戸に出て来る。 家族の中の亀裂は根深い。価値観の違う父と母、そして真っ二つに分かれた兄と弟。 こう言う対立は現代でもよくありそうだけど、武士の世の中では考えの違いが際立つし、相容れない者を切って捨てるってなるのは過激。 ...
地方の下級武士の家の次男坊が、藩内の謀りごとに巻き込まれて江戸に出て来る。 家族の中の亀裂は根深い。価値観の違う父と母、そして真っ二つに分かれた兄と弟。 こう言う対立は現代でもよくありそうだけど、武士の世の中では考えの違いが際立つし、相容れない者を切って捨てるってなるのは過激。 写本の仕事をしながら様々な出会いを糧に成長してゆく主人公。 取り巻く人々は様々で多様な問題を抱えているが、それをまとめてラストに収束させていく宮部さんの力量はさすが! アザと見紛う肌荒れ体質で引きこもっているが、なお勝気で明るい和香が印象的。 文字には書いた人の性格やその時の気分までもが出ると何回も強調されるが、他人の書を丸ごとそっくりに書ける人間には己が無く中身が空洞なのではないかという問いかけにはちょっとゾッとする。 今紙に文字を書く事が減ってきているが、現代人の中身は段々無くなっていくのかも(苦笑) 最後どうしても分かり合えなかった兄は、実は一番気の毒な人間だった。自分の間違いを認める事も出来ず、全てを他人のせいにして何もかもを恨み続ける。 そして中身の空洞な人間になって行くのかもしれない。
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