ロスト・ケア の商品レビュー
43人もの人間を殺害、起訴され死刑判決を待つ〈彼〉。「後悔はない。予定通りだ。」と微笑むシーンから開幕。事件が起きたのはその4年前… 父親を老人介護施設に入れる検事•大友秀樹、その同級生で介護施設の営業部長を務める佐久間功一郎、認知症の母親の介護に苦悩する羽田洋子、過酷な労働で働...
43人もの人間を殺害、起訴され死刑判決を待つ〈彼〉。「後悔はない。予定通りだ。」と微笑むシーンから開幕。事件が起きたのはその4年前… 父親を老人介護施設に入れる検事•大友秀樹、その同級生で介護施設の営業部長を務める佐久間功一郎、認知症の母親の介護に苦悩する羽田洋子、過酷な労働で働く介護職員•斯波宗典、加えて冒頭の〈彼〉の視点で物語は進む… 総人口の2割を占める老齢(65歳以上)人口。膨らむ社会保障費。過酷な在宅介護。介護保険によって介護はビジネスとなり、それによって生まれる“老人の格差”。介護の実態が生々しく描かれた社会派ミステリ。 〈彼〉はある行動により、高齢化が進む日本社会の現状に問題提起する。日本が高齢化社会になることは“昔からわかっていた”ことなのに。なすすべが無い社会システム、明日は我が身の自分。〈彼〉の真意を知った時、検事同様私も胸を突き刺された。ブラックジャックとドクターキリコの対決を思い出す。本書が刊行されて10年経つが、問題は何も解決していない。 ミステリ的“仕掛け”については、ミスリードがあからさまだったのでさほど驚かされず。一方、要介護者を狙った連続殺人犯を「統計学」を用いた推理で暴く手法は、ユニークで感心した。 主要登場人物の一人が検事で、普段馴染みがない職業なだけに興味深かった。自由に休みが取れず、1〜2年ごとに異動があり全国を転々とする。判断一つで他人の人生を変えてしまう。気の休まる暇のない職業だろうな… 言い得て妙だと感じた台詞 「人は損得よりも負の感情に動かされる。恥と不安は最も強く人を動かす」 このミステリーがすごい! 10位 ミステリが読みたい! 5位 日本ミステリー文学大賞新人賞 受賞(2012年)
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怖くてなかなか読み進めれれなかった。 認知症の祖母がいたけど、こんなにひどかったの?って思うくらい。その描写が怖くて。 いまは両親、義両親とも元気だけど、いつかこうなってしまうの?私もいつか娘や息子にこんなふうに面倒をかけるのかと思ったら歳をとることが怖くなってくる。 介護を...
怖くてなかなか読み進めれれなかった。 認知症の祖母がいたけど、こんなにひどかったの?って思うくらい。その描写が怖くて。 いまは両親、義両親とも元気だけど、いつかこうなってしまうの?私もいつか娘や息子にこんなふうに面倒をかけるのかと思ったら歳をとることが怖くなってくる。 介護を生業としている方々は私の想像を絶する苦労をされているんだということ。 気をつけたからって認知症にならないことはない。何がきっかけになるかわからない。歳をとって転んで骨を折った母が寝たきりにならないようにリハビリを頑張っていたことを思い出した。 私は故郷を離れていまここに暮らしていることが、いつも心に引っかかる。そう思う、今の生活が気に入らないというか、不満だと認知症にもなりやすいのかも。
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映画を最初に視た。 松山ケンイチの演技が素晴らしかった。 原作はさらに、素晴らしかった。 検事の細かい心理描写、苦悩、など深く書かれている。 老人介護、介護保険制度、老人をだます詐欺など、 様々な社会問題がとてもよく書かれている。 安全地帯にいる者(政治家を含め)には、 穴...
映画を最初に視た。 松山ケンイチの演技が素晴らしかった。 原作はさらに、素晴らしかった。 検事の細かい心理描写、苦悩、など深く書かれている。 老人介護、介護保険制度、老人をだます詐欺など、 様々な社会問題がとてもよく書かれている。 安全地帯にいる者(政治家を含め)には、 穴の中にいる者の苦しみはわかるはずもない、 穴があることさえ気づかないだろう。 同じ穴の中で苦しんだからこそ、 救おうとする気持ちがわく。 「してほしい事を人にもしなさい」 という聖書の言葉が重い。 でも、してほしい事は人それぞれであり、 してほしくない事は、大体の人がしてほしくない。 と、何かの本で読んだことがある。 「彼」のしたことは、はたして犯罪か、救いか、 人によってはかなりの救いだったはず。 高齢化も少子化も、どんどん拍車がかかり、 人手不足は悪化するばかり。 これからの社会、どうなるのだろう。 安全地帯の人たちが決めた制度は果たして穴の中の人を助けられるのか・・・
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現代の高齢化社会で介護は切実な問題。自分の事も認識できず徘徊を繰り返し、トイレもできなくなり、子供や孫たちに苦労を強いていることもわからない。人としての尊厳を失っていくことは決して本意ではないと思う。家族も疲弊し、先の見えない地獄を進むしかない。介護離職、老老介護など悩み苦しんで...
現代の高齢化社会で介護は切実な問題。自分の事も認識できず徘徊を繰り返し、トイレもできなくなり、子供や孫たちに苦労を強いていることもわからない。人としての尊厳を失っていくことは決して本意ではないと思う。家族も疲弊し、先の見えない地獄を進むしかない。介護離職、老老介護など悩み苦しんでいる人たちを助けるべき法が今の日本にはない。殺人を犯すことでしか、介護問題から抜け出すことができない世の中になってきているのだろうか。
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Blueに続いて同じ作家さんを読んで見ました。 自分が期待していたミステリとはやっぱり違うけど、介護問題に深く胸を抉られた
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介護保険制度への疑問点や欠陥指摘などをベースにしたミステリー作品。 独善と思い込みと一人よがりに固まった犯人が密かに数十人もの要介護老人を手がけるという設定に拒否感を覚えながら読了しました。 介護施設や制度など少し知っている身としては頷けない箇所もあるのでついていけなかったのかも...
介護保険制度への疑問点や欠陥指摘などをベースにしたミステリー作品。 独善と思い込みと一人よがりに固まった犯人が密かに数十人もの要介護老人を手がけるという設定に拒否感を覚えながら読了しました。 介護施設や制度など少し知っている身としては頷けない箇所もあるのでついていけなかったのかもしれないけれど。 それなりの展開とちょっとした意外性は仕込んであるけど、着眼点は買うもののこんな犯人像と犯人を暴いた検事の葛藤には違和感を感じてしまいました。2013年発刊、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。
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2013年の作品。 それから10年経ち、ますます少子高齢化は進んでいる。老老介護や独居高齢者も増え、施設入所を待つ待機高齢者で溢れている。 『介護』というテーマにフォーカスした作品。 戦後どんどん日本は豊かになり、医学も進み、長寿国となった。今では人生100年時代と言われる。 ...
2013年の作品。 それから10年経ち、ますます少子高齢化は進んでいる。老老介護や独居高齢者も増え、施設入所を待つ待機高齢者で溢れている。 『介護』というテーマにフォーカスした作品。 戦後どんどん日本は豊かになり、医学も進み、長寿国となった。今では人生100年時代と言われる。 しかし中を覗いてみると、健康で長生きできる者ばかりではない。疾患の後遺症や認知症、足腰の弱りから寝たきりとなり要介護状態である者も増え、介護期間が長くなると介護をする側、受ける側共に苦しんでいる現状がある。 家族介護には限界がある。 だからといって、少子化が進み働き手が少なくなると介護職の成り手も不足し、公的サービスを利用することもままならない。 様々な理由から少子化は進んでいると思うが、そんな理由を並べ、傍観しかしていない一人一人が将来の自分の首を絞めているのではないだろうか。 綺麗事や偽善では語れない、〈彼〉が処置していたロストケア。 今の日本は、安楽死が認められていない。 しかし、これから10年20年と高齢化が更に進んでいく中で、どのような変化が必要となってくるのだろうか。考えさせられる作品であった。
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重かった。やまゆり園の事件を連想したが、事件より前に書かれたものと知り驚く。大友の正しさが読み手にとって負担となり、気づけば加害者に寄り添いそうになり、罪悪感におそわれる。「わかっていたはず」は現在進行形で今も続く。。老いた自分が子供達の負担にならないことだけを願う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ある日、時間があったので、スタバに入る。飲んでみたかった桃のフラペチーノを頼み、この本を読み始めた。 フラペチーノの甘ったるさと、相反するような、重たさ、社会の闇…。 でも、人は生きて、死ぬ。高齢化が進み、家庭での辛い介護問題だって、当たり前のように様々な家庭が抱えているに違いない。 この本を読むことで、高齢化社会への問題を、より深刻に捉えることができた。 物語自体は、何人もの人物によって語られ、いくつかの事件も絡み合い、面白い。一気に読んでしまった。 大友の斬波への取り調べによる殺人は善か悪か?という話。社会にはルールがないと成り立たないし、彼は罪を犯したことは間違いない。 でも、すごく難しい問題だと感じた。
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一気読み。つい最近読んだ本は「いのち」について考えさせられたが、これは「死」について考えさせられた。 このストーリーの本筋ではないのかもしれないが、登場人物の一人、羽田洋子の物語から筆者の思いが伝わってきた。「絆」という言葉は一見幸福感に溢れる言葉のようだが、実は相手の自由を奪う...
一気読み。つい最近読んだ本は「いのち」について考えさせられたが、これは「死」について考えさせられた。 このストーリーの本筋ではないのかもしれないが、登場人物の一人、羽田洋子の物語から筆者の思いが伝わってきた。「絆」という言葉は一見幸福感に溢れる言葉のようだが、実は相手の自由を奪うものでもある。その覚悟がないまま安易に使いすぎてはいないだろうか? また、互いに迷惑をかけていることを許容し合える関係性があると、もう少しゆったりと生きられるのかな、とも思った。 最後は『もうすぐ、夜が来る」の一文で終わっている。まだまだこんなものでは済まされない時代がやってくるということを示唆しているのだろうか?
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