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ファスト&スロー(下) の商品レビュー

4.3

46件のお客様レビュー

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2024/05/03

下巻はとことん、経済合理性で説明できない意思決定の解明へ。本書の専門用語を用いれば「プロスペクト理論と損失回避性」という事だが、〝損失や期待値が幾らなら賭けに乗るか“という事をアンケートから徹底的に追求し、数値化した点は素晴らしい。人間は、得をしなくても良いから、それ以上に損をし...

下巻はとことん、経済合理性で説明できない意思決定の解明へ。本書の専門用語を用いれば「プロスペクト理論と損失回避性」という事だが、〝損失や期待値が幾らなら賭けに乗るか“という事をアンケートから徹底的に追求し、数値化した点は素晴らしい。人間は、得をしなくても良いから、それ以上に損をしたくない生き物だ。 ー 損失回避というコンセプトは、心理学から行動経済学への貢献の中で、おそらく最も重要なものだ。また脳は単に象徴的な危険に対しても敏感に反応する。感情的な言葉はすぐに注意を引きつけるし、戦争や犯罪といった危険を払う言葉は、幸福に満ちた言葉よりも早く注意を喚起する。 死ねば終わり、という事を無意識に知っている。この本を読んで痛感したのは、人間はセックスや飽食よりも、自己保存つまり防衛本能が勝るという事。それはそうだろう。殺されそうになれば、それらの行為を中断するはずだ。つまり「防衛」が全てに勝る。という事からも、リスク回避最強説は自明とも言えそうだ。承認欲求や不正忌避、徒党を組むような所作も全て「防御本能」だ。 経済合理性など、生命には勝たん。ゆえに。 合理的存在のエコンなど、理論上の存在だ。 では、「生命>経済合理性」をどのような基準値で判断しているのか。命の値段、命に間接的に関わる意思決定のボーダーラインとは。本書が面白いのは、この見えない境界線を探りに探りまくる所。 ー 感情は正確な確率に反応しない。自爆テロにより利用可能性の連鎖を引き起こす。痛ましくも鮮明な死者や負傷者のイメージが報道や日々の会話によって絶えず増幅され、広く身近な取り出しやすい情報となる。自分では制御できない連想的で自動的な感情覚醒が起こり、どうしても防衛行動を取りたいと言う衝動に駆られてしまう。 バスでテロが発生。そんな非日常が起こる確率はほとんどないのに、著者はバスに近寄ることさえ敬遠する。コロナ禍でもよく分かった。確率など大多数には無意味だ。 ー 自分の選考が客観的事実ではなく、フレームに左右されていると言うことに気づく機会が滅多にない。例えば死亡率10%、生存率90%であれば生存率90%の方が手術を受けやすい。 ー 身銭を切って投資したものに対して、きちんと元を取ろうとする感覚。メンタルアカウンティング。 言葉の印象から、自らの身体的危機を見抜く。大切なのは、数字ではなく直感。しかしそれは正しくない。ただ、直感で動かなければ、捕食されてしまう可能性もあるため、元来人間に備わった機能だ。また、お金をかけたものを大事にしたいという感情もよくわかる。お金はカロリー交換券だ。だから、執着する。マネーマネー。生きるために。 ー 日常生活のいくつかの場面では、損失は利得の約二倍の重みを持つ。損失という言葉は、費用という言葉よりずっと強い嫌悪感をかき立てる。 分かる、分かる。共感する。人間にインプリントされた基本機能だ。自分たちのプログラミングをリバースエンジしていく。 ー 重要なのは記憶である。素晴らしい旅行をした後にその記憶が消されるのであれば、人はその旅行にお金を全く払いたくない。また苦痛を伴う手術をしてもその記憶が消されるのであれば、人はその苦痛を我慢しようとする。 自身のメモリーを守れ。そのために必要な行動をせよ。時に、悠長に考えている時間はないのだと。また、面白い本と出会った。

Posted byブクログ

2023/04/11

読みやすいけど、腑に落ちる感覚があまりない。 人間の思考について書かれているが、応用先が思いつかなかった。 上下巻共に読むのに時間をかけすぎた。 一気に読破すると見えてくるものがあるかもしれない。 とりあえず寝かせて、数年後にでも戻ってきたい。

Posted byブクログ

2022/09/05

人間の認知選択の特性はこの本を読んでおけば事足りるのではないかと思えるくらい網羅的に書かれている。 プロスペクト理論により選択を間違えることはかなり多そうなので、計算に基づいた選択をするように心がけていこう。

Posted byブクログ

2020/07/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

直感的に働くシステム1と、熟考するシステム2という人間の意思決定について書かれた本。直感であっても、プロが下すものや長年の経験があれば正しく判断できたりするなど、システム1も侮れない。 より広いフレームで考えること、なるべく多くの選択肢を比較して決定することが大事。そうでないと「見たものがすべて」になり、狭い選択肢で判断してしまうことになる。 本書でプロスペクト理論と確率決定加重の、行動経済学にこける2つの重要な考えが出てくるので、是非読んでいただきたい。

Posted byブクログ

2018/12/27

下巻は本丸であるプロスペクト理論の解説に入る.人間の脳の統計や確率に対する取扱いとして,利益と損失では損失がより大きく評価される,また「ない」と「ほとんどない」・「ある」と「ほとんどある」の違いに敏感な一方,確率そのものの値の差には鈍感であるなど,本質的に偏った重み付けをするよう...

下巻は本丸であるプロスペクト理論の解説に入る.人間の脳の統計や確率に対する取扱いとして,利益と損失では損失がより大きく評価される,また「ない」と「ほとんどない」・「ある」と「ほとんどある」の違いに敏感な一方,確率そのものの値の差には鈍感であるなど,本質的に偏った重み付けをするようになっている.つまり脳は統計的処理に弱く,そこに上巻で説いたシステム1の働きとも相まって,これらが人間をエコンではなくヒューマンたらしめているとしている.そもそもエコンの合理性というのは,その後に何が起こるのかをすべて知っていることが前提である一方,実際に起こる事象は様々な理由から予測不可能である以上,常にエコンとして振る舞うことはできないという点からも,エコンの現実性は薄められると思うが,本書の内容はそういったものとは違うよう.合理的というのは即ち利益につながるということのはずなので,上下巻で挙げられたバイアスを把握し,とりわけ組織において互いの誤りを適切に修正できるようになれば,成功を収められる可能性が高まるということかと思われるが,特に統計的な話で,何を根拠としてよい情報だと判断するか,みたいな部分はあまり言及がなかったので,その辺りはまた別なものを学ぶ必要がありそう.本筋の話題とは若干ずれるが,「利他的な報復」が快感をもたらすという話が興味深かった.

Posted byブクログ

2018/11/12

上巻ではあまり感じなかったが、これは行動経済学の本であるとしっかり感じられる。システム1とシステム2をうまく使って従来の経済学の理論を行動、経済学が打ち破っていく様子を順々に解き明かしている。

Posted byブクログ

2018/10/23

人間の直感とは、いかにいい加減かが良くわかる本。これを数理モデルにして、行動経済学という分野を切り開いて、ノーベル賞を受賞した人の著作だけあって、すごく説得力がある。これを理解しなければ、マーケッティングもできないだろうし、チームビルドもできないだろう。という意味で、すべてのビジ...

人間の直感とは、いかにいい加減かが良くわかる本。これを数理モデルにして、行動経済学という分野を切り開いて、ノーベル賞を受賞した人の著作だけあって、すごく説得力がある。これを理解しなければ、マーケッティングもできないだろうし、チームビルドもできないだろう。という意味で、すべてのビジネス・パーソンにお勧めしたい。

Posted byブクログ

2018/10/20

システム1とシステム2。速い思考と遅い思考。意思決定を行う際にわれわれは直感による速い思考を行っている。直感の出番がない場合には論理で考える。これが遅い思考である。直感は自動的に連想を働かして結論をだす。それは論理的思考でもないし統計的思考でもない。ただうまくストーリーができてい...

システム1とシステム2。速い思考と遅い思考。意思決定を行う際にわれわれは直感による速い思考を行っている。直感の出番がない場合には論理で考える。これが遅い思考である。直感は自動的に連想を働かして結論をだす。それは論理的思考でもないし統計的思考でもない。ただうまくストーリーができていればよい。われわれはそれを自信をもって正しいと思い込む。ちゃんと論理的思考の出番があれば間違わなかったはずの結論も直感を信じたために間違えた結論を下す。また思考には色々なバイアスがあり、それによって間違った結論を出してしまう。このようにわれわれの意思決定の仕組みを解き明かした心理学者にしてノーベル経済学賞受賞者の一般読者向けの著作。 プロスペクト理論:  参照点と損失回避 二項対立:  システム1とシステム2。エコン(合理的経済人)とヒューマン。経験する自己と記憶する自己。

Posted byブクログ

2017/09/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

まとめると、この上下巻の結論は、二つのキャラクター(システム1, 2)、二つの人種(理論の世界に住む架空の人種エコンと、現実の世界で行動するヒューマン)、二つの自己(現実を生きる「経験する自己」と記録をとり選択する「記憶する自己」→冷水実験、持続時間の無視とピーク・エンドの法則)が存在するということ。そして常に認知的錯覚があるということを知っておく必要があるということ!

Posted byブクログ

2016/06/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

上巻に続き、さらに深い世界へ。特にプロスペクト理論、「経験と記憶」は秀逸。いつも読み飛ばす解説も上下巻をうまく総括してくれており、さらにカーネマンの2つの論文付と魅力満載!

Posted byブクログ