ウエストウイング の商品レビュー
何か違うけど、どうしたらいいものか。同じビルで漠然と日々を過ごすOLと塾通いの小学生と、サラリーマンが物置きスペースと豪雨をきっかけに、すこしずつ変化していく。 すこしずつすこしずつ、じわりじわりと進むストーリーと、至って普通な人々。津村さんの得意とするタッチが堪能できる。 ...
何か違うけど、どうしたらいいものか。同じビルで漠然と日々を過ごすOLと塾通いの小学生と、サラリーマンが物置きスペースと豪雨をきっかけに、すこしずつ変化していく。 すこしずつすこしずつ、じわりじわりと進むストーリーと、至って普通な人々。津村さんの得意とするタッチが堪能できる。 個人的にはもっとダメな人々も好きなんだけども。
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連載であることもあるからか、けっこう読み口が、前半、中盤、後半で変化していく。ヒロシの成長ともリンクするかもしれない。前半に入るヒロシの幻想的な物語には妙な迫力がある。著者はどこまでも凝った描写ができるのだろうけど、敢えてしてないんだなあ、と感じさせる。妙な迫力は現実感の無さであ...
連載であることもあるからか、けっこう読み口が、前半、中盤、後半で変化していく。ヒロシの成長ともリンクするかもしれない。前半に入るヒロシの幻想的な物語には妙な迫力がある。著者はどこまでも凝った描写ができるのだろうけど、敢えてしてないんだなあ、と感じさせる。妙な迫力は現実感の無さであって、全体の淡白な閉塞感は現実感かもしれない。何の話なの、と読み進め、最後まで読めばすべてが繋がっているのが不思議。みんなひどくひとりぼっちであり、べたべたした連帯を忌避していながらも、それとは異なったところで、社会的な関わりを得ていて、でもそういうのが孤独を癒すことはない。日の差すなかに佇む重機と、伸びる三人の影は、関係性に餓える絆根性とは一線を画している。狭いとか広いとかではなく、そうであるということ、現状肯定でもない。あくまで若者の話であり、それ以上ではないとも思う。青春小説、というか、ポスト青春小説。著者は等身大の風景を描き、安っぽい偶像は提示しない。そこをどう考えるかが津村記久子さんの評価の分かれ目かもしれない。つまり、おとなとこどもをいったり来たり、しかし、それよりさらに上のおとなは出てこない。60とかになったときの津村さんの話がどうなるかすごく気になる。そんな一作。
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ポトスライムの舟の時よりも開けているような、しかしポトスライムの舟からの既視感……。好きな人にはいいのかもしれないけれど、どうにも、読んだあとに残るものがない。えらくさらさらしたスープみたいだ。
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このゆるさ加減、普通の人たちの普通のお話。 大事件が起こるわけでもなく、なんてことないんだけど。 いいのよね~。 ずっと読んでいられる感じ。 大人たちの話より、小5のヒロシくんの状況が 一番大変そうだったのが面白い。
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毎日たくさんの人たちとすれ違うが、そういう人たち全部にそれぞれの日常があるってことを思い出す。今、隣り合っている知らない人とも、どこかでゆるく繋がっているかもしれないんだ。そういうわくわくと、唖然とするような、でもどこか間抜けな事件と、そういうのが煽らない語りで描かれていて、私は...
毎日たくさんの人たちとすれ違うが、そういう人たち全部にそれぞれの日常があるってことを思い出す。今、隣り合っている知らない人とも、どこかでゆるく繋がっているかもしれないんだ。そういうわくわくと、唖然とするような、でもどこか間抜けな事件と、そういうのが煽らない語りで描かれていて、私はこの人の書くものが好きだなあと思う。
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この人の本は本当に好きだ。佐藤さんの話も好きだったけど,次を読むのが楽しみで仕方がなかった(細切れに読んでしまったけど一気に読んだらもっとよかったのではと後悔)。端々に笑いもあるし。フカボリが最後に会えるのはうますぎる気がするけど,それもどうでもよくなる読後感。しかし,この本のラ...
この人の本は本当に好きだ。佐藤さんの話も好きだったけど,次を読むのが楽しみで仕方がなかった(細切れに読んでしまったけど一気に読んだらもっとよかったのではと後悔)。端々に笑いもあるし。フカボリが最後に会えるのはうますぎる気がするけど,それもどうでもよくなる読後感。しかし,この本のラストを「感動的」と表現する文芸時評は,津村記久子を本格的に分かっていないのではないか? 朝日文芸時評「同じビルに通うという意外に縁もゆかりもないのに,すれ違いながらゆるい絆で結びつき,他害を助け合う成り行きになってゆく三人の人物の造形がすばらしい。その三人が初めて一堂に会する感動的なラストシーンまで,津村氏の精度の高い文章に運ばれて,わたしは息を詰めるようにして一気に読んだ。
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またこれもすばらしかった。嫌いなところがひとつもなかった。やっぱり津村さん大好きだ。 イヤな上司や厄介な同僚なんかに悩みながら忙しく働くOLとか、仕事がヒマなサラリーマンとか、勉強できないけど塾行かされてる小学生とか、さえない日々で、うんざりすることばっかあって、楽しいことなん...
またこれもすばらしかった。嫌いなところがひとつもなかった。やっぱり津村さん大好きだ。 イヤな上司や厄介な同僚なんかに悩みながら忙しく働くOLとか、仕事がヒマなサラリーマンとか、勉強できないけど塾行かされてる小学生とか、さえない日々で、うんざりすることばっかあって、楽しいことなんてなくて、って人たちの話なんだけど、読んでてなにか心なごみ、すごく励まされる。みんな、前向きでもなく、日々に流されてるかもしれないけど、考え方がまっとうで、いい人で。すごく共感する。ほんのちょっとしたことを楽しみにしたり、励みにしたりするところがすごく好きで。いろんな場面でぐっとくる。こんなふうに生きていこうとか思えたりする。どんな人生もいいものだとか思ったりする。 小学生のヒロシくんみたいになりたい。小学生だけど精神的に大人。ああいう人になりたい。 「人間は血筋の頭数が減ったり、体が衰える恐怖を感じると、自動的に増殖したいと思うようにできているのだろうか」 登場人物が、両親の両親が全員他界したとき、むしょうに結婚したくなったって、思い出して考えたことなんだけど、すごく共感した。表現のしかたもすごく好き。 まあとにかく好きだ。近いうちに再読したい。
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