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ウエストウイング の商品レビュー

3.9

67件のお客様レビュー

  1. 5つ

    10

  2. 4つ

    29

  3. 3つ

    13

  4. 2つ

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  5. 1つ

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2013/01/26

読み始めは、椿ビルディングみたいなゆるいところで働きたいなぁと思ったけど、家賃が安いということは倒産、立ち退きと背中合わせということ。 その辺りは現実的に書きつつ、物置部屋で相手がどんな人かわからないまま交流を続ける3人のやり取りを描くファンタジー。 3人が互いの正体を知るくだり...

読み始めは、椿ビルディングみたいなゆるいところで働きたいなぁと思ったけど、家賃が安いということは倒産、立ち退きと背中合わせということ。 その辺りは現実的に書きつつ、物置部屋で相手がどんな人かわからないまま交流を続ける3人のやり取りを描くファンタジー。 3人が互いの正体を知るくだりは、小説っぽくて好き。

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2013/01/21

大阪と思われるオフィスビルの一角で繰り広げられる人間模様。 年齢も性別もまったく異なる3人が、その古びたビルの一角の物置スペースと化した廊下の隅を休息場所にしている。 お互いに見知らぬままに、同じ場所でひと時の安らぎを得ていることにお互いが気づいていくところが可笑しい。 退屈...

大阪と思われるオフィスビルの一角で繰り広げられる人間模様。 年齢も性別もまったく異なる3人が、その古びたビルの一角の物置スペースと化した廊下の隅を休息場所にしている。 お互いに見知らぬままに、同じ場所でひと時の安らぎを得ていることにお互いが気づいていくところが可笑しい。 退屈な出先の事務所で仕事の出来ない同僚を持つOL、勉強よりもイラストの落書きが好きな塾通いの小学生、地質検査の会社で下っ端を務める若いサラリーマン。三者三様の人生と個人を取り巻く特別な環境が次第に明かされていく展開は、津村さんの得意のスタイルか。 長い長い前段に比べ、大雨が降ってからの描写は急展開だ。お互いの存在が次第に明らかになるものの、同じ場所に思い出を持つ3人のすれ違った人生は交わることなく、建物の運命と共に消え去っていく。

Posted byブクログ

2013/01/19

とにかく読み応えがある。 大雨の場面は『とにかく家にかえります』と同日の別の場所、とも言える似たシチュエーション。だが、そこで終わらず、老朽化されたビルの取り壊しに関するあれやこれやが続く。 面白かった。 この本の登場人物たちのように、就業時間中に抜け出したりはしないが、人に多...

とにかく読み応えがある。 大雨の場面は『とにかく家にかえります』と同日の別の場所、とも言える似たシチュエーション。だが、そこで終わらず、老朽化されたビルの取り壊しに関するあれやこれやが続く。 面白かった。 この本の登場人物たちのように、就業時間中に抜け出したりはしないが、人に多く会う仕事をしているとどうしても一人になる時間が欲しくなって、行く職場ごとに人があまり来ないスペースをつい探してしまう。「いいなあ、こんな休憩スペース……」とか思いながら読み進めていくと、その後の展開に「いや、やっぱりよくない……」と冷水を浴びせられた気分になった。 津村さんの小説は、共感から始まって、予測の上を行く展開に途中落ち着かない気持ちにさせられる。そして最後はいつも、ままならない日常にちゃんと戻れるように、ちょっとほっとする場面が用意されている。それが読みたくて、繰り返される「仕事の疲れ」をぐったりしながら追体験しつつもやっぱり読んでしまうんだと思う。

Posted byブクログ

2013/01/15

やはり面白かった 津村記久子さんらしい、小説でしかありえない小説。長いけど、ダレない。あるいはずっとダレている。ある種、不景気ブンガクなんだけど、いつも通りどこかには強者への怒りが根にあって、それに共振できるかどうかが、楽しめるかどうかの全てなんだと思う。これだけの分量のものでも...

やはり面白かった 津村記久子さんらしい、小説でしかありえない小説。長いけど、ダレない。あるいはずっとダレている。ある種、不景気ブンガクなんだけど、いつも通りどこかには強者への怒りが根にあって、それに共振できるかどうかが、楽しめるかどうかの全てなんだと思う。これだけの分量のものでも変わらない魅力で書けたことが大きいと思う。なんだかんだ短所も指摘できるだろうけど、編集者やプロデューサーがマーケットを意識して後ろで導いたり操作したりした感じが完膚なきまでにしない。そんな作家性溢れる(それしかない)小説が読めるのは、僕は好き。かつ、実は超・希少。かつ、それでいて、なんとなくこの作家は謙虚だなあ、と思う。ここのところ、実は感じていることの説明が難しい。まあ、そこは省いて(笑)、だから、関西弁が押し付けがましくなく心地良い。テーマでもキャラクターでも物語でもない、文章と言うか、書き手の感じ方といか、が、魅力の全てである小説。だと思う。

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2013/01/13

小学生が登場したのはちょっと意外だったけど、それでも著者らしい作品だったと思う。なんでもないような、登場人物に関する小さなエピソードがちょこちょこ挟まれるところがまた"らしさ"に思えた。

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2013/01/08

廃線地下の長いトンネルを抜けたところにある椿ビルディング。 設計会社で働くOLネゴロ、小学生のヒロシ、会社員のフカボリの3人を主人公に椿ビルディングで起こった出来事を綴る長編。 タイトルのウエストウイングは椿ビルディング東棟のことで、 ネゴロたち3人は同じ空き部屋で時間を潰して...

廃線地下の長いトンネルを抜けたところにある椿ビルディング。 設計会社で働くOLネゴロ、小学生のヒロシ、会社員のフカボリの3人を主人公に椿ビルディングで起こった出来事を綴る長編。 タイトルのウエストウイングは椿ビルディング東棟のことで、 ネゴロたち3人は同じ空き部屋で時間を潰していたが、 ひょんなことから手紙を介しての交流がはじまる。 大人ふたりは会社や仕事や生活に不満と倦怠感を抱え、 学習障害の特徴が濃く出ているヒロシは塾が嫌いで母の存在が面倒で創作の世界に入り浸っている。 だいたい半分はこうした3人の描写で、 それをだらだらしていると読むか考えさせられると共感するかは人それぞれ、私としては冗長だった。 それでも、ネゴロの後輩が問題を起こしたり、 幽霊騒動が巻き起こったり、 大雨でトンネルが浸水したせいでビルに閉じ込められたりと、 いろいろ事件は起きる。 文房具屋のお姉さんや喫茶店のママ、占い師などビルに入居する人々も出てくるので、動きはある。 ただ、長いなあ、と読んでいて何度も思った。 たぶんこの平坦さ平凡さが人生の殆どで、それを許容しながら生きているということを描きたいのだろうけど、途中でもういいよ、と思ってしまった。 時間の余裕があるときにゆっくり読むのがいいのかもしれない。 勢いはないけど、それでもなんとなく読み続けられるという点では優れているのか。 ただ毎日ちょこちょこ読んだら飽きると思う。 感じとしては「とにかくうちに帰ります」に似ている。雨のシーンとか、登場人物の構成とか。 せめて250ページ程度だったらよかった。

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2013/01/07

面白かったぁ~~!(*^_^*) 津村さんお得意の、なんかパッとしないことを自覚しているOL・ネゴロ、,サラリーマン・フカボリ、小学生・ヒロシが、これもパッとしないビルで接点を持つ日々の物語。 大人二人は取り壊しの噂が囁かれるビルに勤めを持ち、ヒロシは進学塾に通っているのだけど...

面白かったぁ~~!(*^_^*) 津村さんお得意の、なんかパッとしないことを自覚しているOL・ネゴロ、,サラリーマン・フカボリ、小学生・ヒロシが、これもパッとしないビルで接点を持つ日々の物語。 大人二人は取り壊しの噂が囁かれるビルに勤めを持ち、ヒロシは進学塾に通っているのだけど、それぞれ偶然にそのビルの中のデッドスペース(こんなのがあるくらいだから、取り壊されそうなんだよね。)に時々やってくる、という設定。お互いの顔どころか性別や年齢も知らないまま、短いメモや残していったものを通して、緩い人間関係を築いていく様がとってもいいんですよ。 何者でもない自分だけど、そんな自分にも一日はやってきて過ぎていくわけで、その中で、あれこれ心の揺らぎをなんとかやり過ごしたり、ふふっと可笑しみを感じたり。 主人公はネゴロなんだろうし、同性として津村さんの描くOLの生態(*^_^*)はいつものことながら巧みで、とても可笑しかったり、苦かったり。 でも、私が一番心惹かれたのはヒロシだったかも。全く勉強に興味がなく、当然、成績もよくない彼が塾のクラスの中で感じる塾生たちへのあれこれにうんうん、と頷けたし、そんな彼の特技(細密画が異常に(*^_^*)上手、という設定)の話が膨らんでいく過程がとても優しくて嬉しかった。 途中、大好きな「とにかくうちに帰ります」の別バージョン?と思える場面が結構長く枚数を費やされていて、そっか、大きな街の自然災害といったら地震以外では大雨なんだね・・・と。 そういえば、去年、東京で大雨が降った日の夜、突然7時のニュースが一時間の特番になって、新潟でどんなに雪が降ってもニュースの時間枠は延びないぞぉ~~!と思ったことを思い出したりして。 生きていれば、特に働いていればイヤなことはもちろん出てくるのだけど、それをなんとかかわして、ひっそりと自分の場を持っていられれば幸せだよね、と気持ちがあきらめではなく、ホントに柔らかく大事なものとして感じられたこと、また、最終ページに向かって、それぞれ三人の目線で一歩前進していく気持ちよさが上手に(ホント、巧い!津村さん、只者じゃないよ!)に語れらていたこと、にスタンディングオベーション(*^_^*)の一冊でありました。

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2013/01/06

津村さんのお仕事小説、好きです。立ち退きになりそうなビルで働く主人公の事務員とそのビルの中学受験塾に通う小学生と20代の会社員がビルの一室で物々交換をはじめるストーリー。ファンタジックなストーリーだけどとても現実的。小さな世界で小さな事件が起こだけだけどやめられない面白さでした。...

津村さんのお仕事小説、好きです。立ち退きになりそうなビルで働く主人公の事務員とそのビルの中学受験塾に通う小学生と20代の会社員がビルの一室で物々交換をはじめるストーリー。ファンタジックなストーリーだけどとても現実的。小さな世界で小さな事件が起こだけだけどやめられない面白さでした。そしていつも文房具が出てくるところも好き。今回はチープなデスクペンだけどカートリッジを入れ替える時の爽快感がうまく表現されていてたまらなかったです。ヒロシの消しゴムはんこも見てみたいです。

Posted byブクログ

2013/01/02

じわじわと後からきいてくる小説だった。 この小説に出てくる人たちはどちらかといえば目立たず人の影でひっそり生きている感じなんだけど、でも、しっかり生きている。 それがいい。

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2012/12/31

+++ 職場の雑事に追われる事務職のOL・ネゴロ、単調な毎日を送る平凡な20代サラリーマン・フカボリ、進学塾に通う母子家庭の小学生・ヒロシ。職場、将来、成績と、それぞれに思いわずらう三人が、取り壊しの噂もある椿ビルディング西棟の物置き場で、互いの顔も知らぬまま物々交換を始める。ビ...

+++ 職場の雑事に追われる事務職のOL・ネゴロ、単調な毎日を送る平凡な20代サラリーマン・フカボリ、進学塾に通う母子家庭の小学生・ヒロシ。職場、将来、成績と、それぞれに思いわずらう三人が、取り壊しの噂もある椿ビルディング西棟の物置き場で、互いの顔も知らぬまま物々交換を始める。ビルの隙間で一息つく日々のなか、隠し部屋の三人には、次から次へと不思議な災難が降りかかる。そして彼らは、図らずも西棟最大の危機に立ち向かうことに…。 +++ 想像していたのとは全く違う物語だった。ゆるく生ぬるく始まったネゴロ、フカボリ、ヒロシの、なんの接点もない椿ビルディングでの日々の物語は、それぞれが別の目的で逃避場にしていたビルの隅の物置場を介して、ある日を境に、じわじわと少しずつ緊張感をはらんだものになっていくのだった。自分以外に――姿が見えない――誰かがいるかもしれないということが、張り合いとか期待とか名づけられるほどではないが、微かな心持ちの変化を生むのだった。それは読者にとっても同じで、いつどんな風にそれぞれに素性が明らかになり、交流が始まる――あるいは途切れる――のだろうか、と興味を惹かれながら読むことになる。物置場での見えない交流とは別に、ゆるくて生ぬるいと見えた日常は、実は椿ビルディングを生活の場にしている万人に降りかかる危機の序章だったのだ。ひとつを乗り越えると、そこにはまた新たな危機が立ちはだかり、途方にくれながらもなんとか解決策を手探りするのだが、彼らになんとなく緊迫感がないような気がするのは、椿ビルディングという建物の属性によるものだろうか。どうなることかといちばん気を揉んでいるのは読者かもしれない、とふと思う。ラストまでゆるいが、屋上のユンボが動かなくてよかったと、ほっと胸をなでおろした一冊である。

Posted byブクログ