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私とは何か の商品レビュー

4.2

530件のお客様レビュー

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2013/01/27

キンドルで読了。他者との交流においてそれぞれ相手ごとに違った自分が存在するとして、それを分人と称して論を説く。元々は本著者の小説である「ドーン」でテーマとして展開していた内容を分かり易くエッセンスをまとめたものだ。 確かに別々にお付き合いしているAさんそしてBさんと同時に会うと...

キンドルで読了。他者との交流においてそれぞれ相手ごとに違った自分が存在するとして、それを分人と称して論を説く。元々は本著者の小説である「ドーン」でテーマとして展開していた内容を分かり易くエッセンスをまとめたものだ。 確かに別々にお付き合いしているAさんそしてBさんと同時に会うときのあの居心地の悪さや、逆に友人であるAさんとその友人Cさんとご一緒したときのAさんの余所余所しい雰囲気などとても良く分かる。 著者はそのような「分人の集合として個人が成立する」としていますが、ソーシャルメディアなどの影響でこれからどのように変化するなども興味深いところです。小説「ドーン」再読しようか。。。

Posted byブクログ

2013/01/26

平野さんの「ドーン」という小説で出てきた「分人」という言葉の考察を深く進めていった本。 中世における個人の誕生から、日本に輸入された個人主義などを解説しながら、自分がいつでも一個人としてぶれないものであるべきだ、という幻想に縛られてしまっている現代に、分人という概念を提唱してくれ...

平野さんの「ドーン」という小説で出てきた「分人」という言葉の考察を深く進めていった本。 中世における個人の誕生から、日本に輸入された個人主義などを解説しながら、自分がいつでも一個人としてぶれないものであるべきだ、という幻想に縛られてしまっている現代に、分人という概念を提唱してくれる。 ドーンを読んでいたからか、自分の中では「分人」という響きにSF要素がくっついてしまっているが、初読の人はどう思うのだろう。自分とは何か、と考えて息詰まりを感じている人は、この本を読んだら少しは楽になるんじゃないか。 平野さんがこれまでの著作を書く中でどんな事を考えていたのか、というテキストとしても面白かった。

Posted byブクログ

2013/01/20

小説家・平野啓一郎が提唱する、分人という概念。 メディアが発達し人間関係がますます複雑化する中で今日ほど、コミュニケーション能力が声高に叫ばれている時代もない。そのために多くの人がアイデンティティについて思い悩んでいる。私とは何か。自分はこれからどう生きていくべきなのか。 旧態依...

小説家・平野啓一郎が提唱する、分人という概念。 メディアが発達し人間関係がますます複雑化する中で今日ほど、コミュニケーション能力が声高に叫ばれている時代もない。そのために多くの人がアイデンティティについて思い悩んでいる。私とは何か。自分はこれからどう生きていくべきなのか。 旧態依然とした発想では問題は解決しない。 現代人の実情にかなう思想を、一から作っておくべきである。と著者はいう。 いうほど新しい考えではないと思うけど。哲学の領域では現象学、社会学では多元的所属などが類似概念なのかと一読して思ったが、わかりやすい文章でかつ、実生活に即した形で一般に浸透させてるのは、この人の功績。 著者は「本当の自分」は一つじゃないよという。様々な場面で様々な人に見せる自分、キャラ、そのすべてが「本当の自分」なのだから、と。 主体の解体を叫ぶポストモダン思想に馴染めなかったという著者の感覚はよくわかる。 ポストモダン思想の基本はおおざっぱにいうと根拠はないということ。システムの生産物ではないものはない。という言説でさえシステムの生産物だっていう思想。 でも、どうしようもなく考えてしまうこの私は何なんだ!という疑問は常につきまとう。 取替不能な実存である私の存在の謎は解けることはないのだ。 で、個人的に思ったのが、お釈迦さまのいう縁起する空や無我の思想は、これら自我の悩みから逃れるためにたどり着いた思想だとすれば、平野啓一郎はまったく逆の言い方をしているものの、乱暴なことをいえば同じことだよねっていう。 つまり、すべてが自我であるよというのも、自我は幻想だよというのも求める結果においては同じだということ。 たとえシステムによって作り出された架空の自己モデルが自我だとしても、結局ありもしないモノに執着して悩み苦しんでしまうんであれば、分人という概念を受け入れてみてもよいのではなかろうか。 自己啓発本みたいだけど、平野啓一郎小説理解の一助になるという側面もあり。71点。

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2013/01/13

この人の本、初めて読んだけど、結構面白かった。 在学中に芥川賞を受賞した作家程度のことしか知らなかったので、こんな本を書いているのが意外だった。 中身は分人”dividual"という概念の説明。本当の自分は一つじゃない。 それぞれのシーン、相手によって使い分けている自分...

この人の本、初めて読んだけど、結構面白かった。 在学中に芥川賞を受賞した作家程度のことしか知らなかったので、こんな本を書いているのが意外だった。 中身は分人”dividual"という概念の説明。本当の自分は一つじゃない。 それぞれのシーン、相手によって使い分けている自分(分人)の総体が本当の自分、みたいな説明。 結構、納得したかな。 むしろ、本当の自分が一パターンしかないと苦しくなる、というのもとてもよくわかるし。 自分探しの旅は、新しい分人を探しに行く旅、というのも納得。

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2013/01/13

「本当の自分」は探しても見つからない→場面場面で表れる自分(分人)各々の集合体が「本当の自分」 その考えは思考の多様性や自由度を生み出し、少し自分を解放してくれる という分人主義 面白い考え方だと思う! この人の小説を読んでみたくなった! 以下メモ 職業選択の自由→職...

「本当の自分」は探しても見つからない→場面場面で表れる自分(分人)各々の集合体が「本当の自分」 その考えは思考の多様性や自由度を生み出し、少し自分を解放してくれる という分人主義 面白い考え方だと思う! この人の小説を読んでみたくなった! 以下メモ 職業選択の自由→職業選択の義務 何らかの社会的責任を果たせ!という圧力 個性の尊重→将来的に個性と職業とを結びつけなさい 不況 職業という社会的地位だけでなく、「こんなものを身につけています」という形での自分の確認ができない→アイデンティティの動揺からの引きこもりや自分探しの旅 森鷗外の「しごと」 仕事→為事 仕える事→為る事 リスカ 今の自分を否定し、生まれ変わりたいという思いの現れ 分人構成が変われば人が変わる→戻したり、変えるためには環境を変える

Posted byブクログ

2013/01/05

ただひとつの「本当の自分」を探すのではなく、状況や相手によって変わる「分人」を複数抱えて生きる存在として個人を捉え直す。結局、教育現場で「個性の尊重」が叫ばれるのは、将来的に、個性と職業を結びつけなさいという意味である、との指摘は新鮮。

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2013/01/12

個人=individual ならぬ 分人=dividual としての自己規定を是とすればいろいろクリアになる、という話。ほぼ百パーセント同意できる姿勢だが、一方で「本当の自分」への執着という認識自体が神話ではないかとも思いながら読んだ。 ずっと自分自身の体験の事例を挙げての説明...

個人=individual ならぬ 分人=dividual としての自己規定を是とすればいろいろクリアになる、という話。ほぼ百パーセント同意できる姿勢だが、一方で「本当の自分」への執着という認識自体が神話ではないかとも思いながら読んだ。 ずっと自分自身の体験の事例を挙げての説明がやや迂遠に感じられもする。モデルを抽象的にあるいは図式的に説明してくれればもっとスッキリ理解できるのにな、とも思った。概念を理解しているかどうかをテストするために、たとえ話をさせることは時々あるが、こういう風に書くことが「分かりやすさ」として認知されているのだとすると、概念の説明というのはなんとも大変な仕事だ。 このモデルの小説版が、 空白を満たしなさい また違う味わい。 私は小説の方が好きだ。

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2012/12/21

「個人は分人からできている。 分人とは自分以外の他者との間に生まれる人格。 その人格のどれもが自分で、本物の自分、偽物の自分なんでいないんです。」 というのがこの本の概要。 大学の先生に勧められて読みました。 優しい言葉で、具体的なエピソードを踏まえながら書かれた本書は、新しい考...

「個人は分人からできている。 分人とは自分以外の他者との間に生まれる人格。 その人格のどれもが自分で、本物の自分、偽物の自分なんでいないんです。」 というのがこの本の概要。 大学の先生に勧められて読みました。 優しい言葉で、具体的なエピソードを踏まえながら書かれた本書は、新しい考えを理解解しやすくて面白い!! 世の中に本物は無いと考える記号論という学問にとても近くて、入り口にとても良さそうです。 この本を読んで心が軽くなったり、過去の自分を許せるようになる人が多いのでは無いかと思います。 私もその一人。 個人的には、恋愛の話の 「その人に対する分人(自分の人格)が好きなら、その人をずっと愛せる」 という内容が心に響きました。 恋愛の価値観が変わりそうです。

Posted byブクログ

2013/01/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

新刊「空白を満たしなさい」とともに、購入。平野啓一郎は、処女作「日蝕」で芥川賞を取った時のインパクトが強い。 当時大学生だった僕は、書店で本を手にして全く読み進められずに終わったことを憶えている。そんな彼が、個人に対して「分人」という概念を提唱し、前述の新作ではモーニングでの連載を行ったということで、改めてチャレンジ。  小説の前に、この200ページ弱の新書を読了。彼の著作を通して描いてきたことを語りながら、「分人」の誕生と分人主義によるさまざまな考察を進める。  大震災と原発事故の後、中沢新一の「日本の大転換」の中で一神教の弊害と資本主義、原発神話に関しての考察を目にして以来、西洋的なキリスト教思想が日本においてどのような位置づけになっているのか気になっていた。  平野は、「個人(individual) 」は、明治以後に西洋から輸入された言葉であり、一神教をベーストした西洋文化に独特のものであると述べる。西洋の恋愛観も、それゆえ、お互いを「唯一神」とするような個人を単位としたものである。  それに対し、自分と他人の関係の中で継続的に絶えず変化し続ける「分人」の総体こそが「個」であり、「本当の自分」というものは一つではない、と述べる。これは、全ての自然やモノに神が宿る、多神教的な考え方なんだろうと思う。 「自分か世界か、どちらかを愛する気持ちがあれば、生きていける」   数ある自分の分人のうち、好きな分人が一つでも二つでもあれば、そこを足場に生きていけばいい。  そして、その足場となる分人は、生きた人との関係性限らず、詩でも小説でも、音楽でもかまわないと筆者はいう。文化というのは人間に、ポジティブな分人を与え得る装置といえるのではないか?そして、それこそが自分を肯定するための入り口だと言う。  分人主義的な考え方によって、ネガティブシンキングをポジティブシンキングに変えられるのか?という疑問はある。好きな分人を足場に出来ない人は、何から始めれば良いのか??  筆者の言葉を自分なりに解釈すると、「自分を愛するために他者の存在が不可欠であるという逆説」を知り、他人と関わりを通して好きな分人が増えるように努めること、となろうか?  さらに4章で、愛情とは継続性を期待されるものであり、持続する関係とは、相互の献身の応酬ではなく、相手のおかげで、それぞれが、自分自身に感じる何か特別な居心地の良さであると述べる。    分人の考え方によると、個人(個性)とは相手を通した自分の総体みたいなものだから、その関係性は常に双方向である。だから、逆に自分が念ずれば、とか、自分がこうすれば、という主体性だけではどうしようもないことが多いのだと思う。はっきりいって思い込みが強くてコミュニケーションが苦手な人には、結構辛い概念だとも思う。嫉妬・ストーカー・自己卑下・・・  でも、逆に、このような考え方をベースに「双方向なのだから、相手のことを思いやらないといけない。それは自分に返ってくるものだから」とみんなが思うことができれば、と理想論を語ってみる。。。  最も面白かったのは、死者との分人についての件。訃報の悲しみが遅れてやってくるのは、相手との分人が、関係を必要とする段階で初めて不在を痛感するから。大江健三郎の言う「文章を書くことで死んだ友人を自分の中に取り込んでしまう」ということ。故人について語る資格がある人は、故人との分人が消滅しきれずに、語る言葉の半分が故人のものであるということ。。死んだ後も、人は、他者の分人を通してこの世界に残り続ける、という死生観。これは、とてもよい言葉だと思う。年齢とともに、人間は死者との分人を否応なく抱え込んでゆくのだ。仏壇に語りかけるのは、時々その死者との分人を生きてみることに他ならないと。   追記:ターミナルケアに関わる医師によると、クリスチャンは非常に穏やかに死を迎えるケースが多いという。これは、分人主義的な考え方が、”生に絶望している人に対し、生へとつなぎ止めようとする処方箋”なのに対して、一神教的な考え方が、死へ向かおうとする者に対する処方箋であるからなのかもしれないと思った。

Posted byブクログ

2012/12/09

個性とは不可抗力的な遺伝要因と環境に対する分人化の産物という人間観の元,他者との関わりと自分自身を規定する.個人(individual)から分人(dividual)という新たな基底の創出はまるで素粒子論の様だ.此迄の御自身の小説で追究したテーマの根底の解説書としても読み下せる.面...

個性とは不可抗力的な遺伝要因と環境に対する分人化の産物という人間観の元,他者との関わりと自分自身を規定する.個人(individual)から分人(dividual)という新たな基底の創出はまるで素粒子論の様だ.此迄の御自身の小説で追究したテーマの根底の解説書としても読み下せる.面白い.

Posted byブクログ