光圀伝 の商品レビュー
いい本に出会えてよかった。 長い話ではあったけれど、怖いもの知らずな子供が血気盛んな青年になり、己を知りしだいに文人として、藩主として成長していく過程はその長さを感じさせない濃密なものであった。プロローグとエンディングが同じで、光圀が目指した義が違った形で表れなことに衝撃をうけた...
いい本に出会えてよかった。 長い話ではあったけれど、怖いもの知らずな子供が血気盛んな青年になり、己を知りしだいに文人として、藩主として成長していく過程はその長さを感じさせない濃密なものであった。プロローグとエンディングが同じで、光圀が目指した義が違った形で表れなことに衝撃をうけた。 己を知ること、精神的自己研鑽に努めることが上に立つ人の備えるものなんだなぁと勉強になった。兄、読耕斉、泰姫、左近、佐々、紋太夫など魅力的な人物がたくさん。江戸時代が過去の一片ではなくて、たしかに存在した時間の一部だったんだ、と描写の細かさで感じられた。
Posted by
冲方丁の歴史物2作目。 なんとも雄渾な、力強い作品です。 水戸黄門のモデルとなった水戸藩主、徳川光圀の伝記小説。 「天地明察」とほぼ同時代で、暦の件もあの人物も出てきます。 水戸藩は徳川御三家の中では家禄が低いが、江戸に近く参勤交代を免除され、江戸藩邸に藩主は常住だった。 その...
冲方丁の歴史物2作目。 なんとも雄渾な、力強い作品です。 水戸黄門のモデルとなった水戸藩主、徳川光圀の伝記小説。 「天地明察」とほぼ同時代で、暦の件もあの人物も出てきます。 水戸藩は徳川御三家の中では家禄が低いが、江戸に近く参勤交代を免除され、江戸藩邸に藩主は常住だった。 そのため、副将軍と呼び習わされたとか。正式な役職ではないのですね。 初代藩主は将軍家光と年齢が近く、信頼されていた。 光圀は初代藩主の三男なのですが、この父親というのが苛烈な男。 大勢の側室を抱えながらなぜか正室をおかず、子供をなかなか嫡子と認めない。 父は光圀に会ってもつぎつぎに試練に晒し、跡継ぎにふさわしいか試すかのよう。 優秀な兄がいるのに、ややこしい成り行きで嫡男となった光圀は割り切れないものを抱え、その事情も小説の興味を引っ張ります。 後に、兄の子を自分の跡継ぎに据えることに。 義を貫いた人だったのですね。 父親譲りか?光圀自身もはげしい気性。 もはや戦乱のない時代に、武士がどう生きるかを模索するのでした。 なんと詩で天下を取ろうと高言、京都の冷泉家とも交流を持ち、ついには認められる。 儒家に学び、伯父が大事にしていた日本史をまとめる事業を引き継ぐ。 立派すぎるほど才能と意志とエネルギーに溢れた男。 それでも、何よりの人生の花は、皇族から迎えた正室の泰姫。 感じのいい女性で、心和むひと時を過ごすのですが、残念ながら早世してしまいます。 以後、正室を娶ることはなかったそうです。 泰姫の侍女との信頼関係も、印象的。 光圀は生存中から名君伝説はあったそうですが、「大日本史」の編纂のために家臣を諸国へ視察にやったことなどが、江戸時代後期からの黄門様の話の元になったよう。 読み応えがありました!
Posted by
なるほどなるほど。今までのイメージとはだいぶ違ったなぁ。「義」を追求する若い光圀にはかなり引き込まれたけど、晩年が何ともさらりとしていて残念。特に、光圀とは違った考えを持った紋太夫の書き込みがもう少し欲しかった。
Posted by
世間一般で持たれている水戸黄門像とは全然違った、もののふとしての姿で描かれていた水戸光圀。その光圀が主人公。 冲方丁が書いているため、伝記というより、歴史上のファクトから類推して生き生きと光圀や同時代に生きた人々をエンターテイメントに描かれている。 出生にまつわる悩みから、生涯を...
世間一般で持たれている水戸黄門像とは全然違った、もののふとしての姿で描かれていた水戸光圀。その光圀が主人公。 冲方丁が書いているため、伝記というより、歴史上のファクトから類推して生き生きと光圀や同時代に生きた人々をエンターテイメントに描かれている。 出生にまつわる悩みから、生涯を義という信念のために生きた光圀の姿が、スケールが大きく格好いい。
Posted by
長生きするとは、大切な人たちの死に向き合うこと。あの時代の人たちは短命。いや、現代が長命過ぎるのか。
Posted by
「こちらにおわすは、先の副将軍、水戸光圀公であらせられるぞ。 頭が高い。 控えおろう」 なーんて言われてカッカッカッと笑うお偉いさん、、、という印象だった徳川光圀。 実はものすごく魅力的な偉人だった。宮本武蔵や天地明察の渋川春海も登場!私の中では、司馬遼太郎の『龍馬がゆく』に並ぶ...
「こちらにおわすは、先の副将軍、水戸光圀公であらせられるぞ。 頭が高い。 控えおろう」 なーんて言われてカッカッカッと笑うお偉いさん、、、という印象だった徳川光圀。 実はものすごく魅力的な偉人だった。宮本武蔵や天地明察の渋川春海も登場!私の中では、司馬遼太郎の『龍馬がゆく』に並ぶお気に入りの歴史本となった。 (以下ネタバレ 備忘録) 家康の孫にあたる光圀。徳川御三家の水戸藩の二代目藩主である。徳川御三家は幕府の閣僚ではないから幕府が変なことにならないように見守るお目付役のような相談役のような役割りもあった。 時は戦がおわり泰平の世へ様変わりした江戸時代。戦国武将そのままのおっかない父親の三男として生まれた光圀が父親に認められることが全てだった幼少期から物語は始まる。 のちに次男は亡くなり長男が病を得たことからお世継ぎとなるが、兄の病が完治したことから「自分が兄を差し置いて」と苦悩する。(この兄との関係もいいんだよなー。)ずっと後、光圀が藩主となった後には兄の子を養子に迎え三代目とした義の人である。 光圀の青年時代。武士であるのに戦がない。これはこれでジレンマがかなりあったよう。そんな中、光圀は詩や史書、要するに文学で自らを高めていこうとする。町の居酒屋や色町に身分を隠しては繰り出し世に云う傾奇者と交遊を広げたりもする。この頃、宮本武蔵と出会う事件もあり。 成人した光圀。皇族から姫を嫁にとる。(この姫がすばらしい!聡く優しく大きい人だ)この姫との結婚は二年半で終わるんだけど光圀は死ぬまで姫を愛するんだなぁ。 猛烈に歴史や文学を学び詩の世界でも認められていく。また平等で論理的思考をもち、観察眼に優れ、媚びず恐れない行動力から大名からの信頼を得るばかりでなく江戸っ子からも絶大なる人気を得る。(光圀は隠居までずっと江戸暮らしなのね)その人気が、のちに将軍から疎まれる理由になっちゃうんだけど。 光圀の偉業は、日本の史書を作ったことなのね。それまで画一的で面白みのない記録だったものを、未来の人間が楽しみそこから学べるものを残そうと出版社みたいな図書館みたいなものを事業として始める。わたしたちがいめこうして歴史本を楽しんでいるのも黄門様のお陰かもしれないんだなぁ。 とにかく、光圀かっクイーン! 友情、兄弟愛、夫婦愛、家臣との絆、光圀の人間臭さ、知力、胆力。 楽しむとこ満載の一冊だった!
Posted by
水戸光圀の幼少期から最期までを、丹念に描いた作品。 儒学における「義」とは何か について、光圀を通して問いかけ続けられる。 幼少期からの屈折した思い。そして、学問、詩歌に秀でた光圀公の姿に引き込まれ一気に読ませていただきました。 大河ドラマでみてみたい。
Posted by
最初は何の話を読んでいるのか分からなくなった。 光圀伝だとは分かっていたけど。 泰姫が転換点か?その魅力的な存在がこの作品も変えた気がする。 左近も素敵すぎる。自分なら恋心を秘め続けることは出来なかっただろうな。 久々に読み切ること自体に達成感を感じてしまう、なが〜い作品だった...
最初は何の話を読んでいるのか分からなくなった。 光圀伝だとは分かっていたけど。 泰姫が転換点か?その魅力的な存在がこの作品も変えた気がする。 左近も素敵すぎる。自分なら恋心を秘め続けることは出来なかっただろうな。 久々に読み切ること自体に達成感を感じてしまう、なが〜い作品だった。
Posted by
750頁を越える大作でしたが、とても面白い本でした。 アノ 水戸黄門こと徳川光圀の若い頃は かなりやんちゃだったようですが、正に 本の表紙にあるような 虎のごとき人物だったのでしょう。
Posted by
長かった。2014年、最初の読書一冊である。面白かった。 水戸黄門さまの一代記。カッコいい生きざまを描きます。人の成長していく様。目的に向かって進んでいく様。民を第一に考える様。カッコいいです。 人が見え、自分が見え、世の中が見えているから人に慕われ人を動かし世の中を納めて行き...
長かった。2014年、最初の読書一冊である。面白かった。 水戸黄門さまの一代記。カッコいい生きざまを描きます。人の成長していく様。目的に向かって進んでいく様。民を第一に考える様。カッコいいです。 人が見え、自分が見え、世の中が見えているから人に慕われ人を動かし世の中を納めて行きます。こうスケールの大きい人に近づきたいものです。 江戸時代初期に税公平化、政教分離、大学、海外貿易をめざすも完遂できたわけではない。その志を持ち、向かっていったことに打たれます。 人に出会い、育ち、別れ、出会い、育て、別れる、その繰り返しが人の人生であり、その積み重ねが歴史となっているんです。
Posted by