赤猫異聞 の商品レビュー
赤猫とは,火事時の囚人解き放ちのこと。 そんな赤猫の際に起きた,三人の囚人と,二人の役人のお話。 時代が個人に与える影響は大きいな。 特に江戸時代までは,自分そのものの価値なんてどうでも良かった気がする。 与えられた立場や関係性の中にある自分の”分”をいかに正しく...
赤猫とは,火事時の囚人解き放ちのこと。 そんな赤猫の際に起きた,三人の囚人と,二人の役人のお話。 時代が個人に与える影響は大きいな。 特に江戸時代までは,自分そのものの価値なんてどうでも良かった気がする。 与えられた立場や関係性の中にある自分の”分”をいかに正しく生きていけるかが,一番の粋だったんだろう。 そこに,個人の利益や合理性などはほとんど影響しない。 お上の威光を預かる役人として,親に育てられた子分として,朝廷ではなく幕府の末端である旗本として,そんな自分が通すべき筋は何なのか。その筋を通すことで自分が被る不利益は,筋を曲げることへの恥,怯懦と比べたら些細なこと。 同じ事象でも,人によって見方が変わる点が多いところが面白かった。当然のことだけどね。 そして宇江佐さんといい,時代小説では登場人物があっさり消されてしまうなあ(笑)
Posted by
2015年2月22日 すごくよかった。武士の矜持、牢名主の男気。三大美人の真っ直ぐなところ。 杉浦の役回りに驚かされた。憎まれ役をずっとやりきったとは。 丸山と身ふたつのひとりと分かりあっているこの濃さ。友情、家族を越えたつながりに現代にない何かを感じる。
Posted by
久しぶりに浅田次郎で面白い!!と思った。まだまだこんな面白い作品が書けることがわかって嬉しかった。 まずテーマがすごくいい!200年以上続いた江戸時代からガラッと変わる明治維新のドサクサな時期に行われた火事に伴う囚人の解き放ち。 そこで働く人のことなんて考えたこともなかったけど、...
久しぶりに浅田次郎で面白い!!と思った。まだまだこんな面白い作品が書けることがわかって嬉しかった。 まずテーマがすごくいい!200年以上続いた江戸時代からガラッと変わる明治維新のドサクサな時期に行われた火事に伴う囚人の解き放ち。 そこで働く人のことなんて考えたこともなかったけど、なるほど不浄な仕事というので成り手がなくずっと世襲で太平の世にあって唯一人を切り殺す武士。そんな仕事が嫌でも世襲なら仕方ないこと。 それでも罪なき人を切れば鬼になってしまう、それだけは絶対に断る!という代々の不浄役人の意地と誇りをかけた所業に胸があつくなった。 とにかく、いい。皆におすすめしたい。
Posted by
江戸から明治への混乱のさなか、大火事による牢屋敷からの囚人の解き放ち。浅田次郎お得意の時代を描く時代小説。 無宿重松、辻斬り七之丞、白魚お仙。3人の曰くつき罪人たちの解き放ち後の物語を数年後の本人たちの語りで紹介していくストーリー。しかしながら、キーマンはまさかの丸山小兵衛なん...
江戸から明治への混乱のさなか、大火事による牢屋敷からの囚人の解き放ち。浅田次郎お得意の時代を描く時代小説。 無宿重松、辻斬り七之丞、白魚お仙。3人の曰くつき罪人たちの解き放ち後の物語を数年後の本人たちの語りで紹介していくストーリー。しかしながら、キーマンはまさかの丸山小兵衛なんですよねえ。と、ネタバレですが。 罪人たち3人にとっては、生きて世の役に立ちなさいという天の情けか、様々な運命の中、真っ当に生きてきたことへの天の情けか、自分の手をこれ以上汚さずに本懐を果たすことができたという、浅田次郎らしい人情あり奇跡ありの物語でした。 小兵衛は、なぜ、このような行動に出たのか。役人としての正義を貫くということなのでしょうが、解釈が難しいところもありました。 そういった部分がスッと頭に入ってきていないことからしても、時代小説を読むには、まだまだ修行が必要だなと思う今日この頃ですね。
Posted by
ぬるくない時代の話。混乱、不安、変遷入り混じりながらも中途半端な時代。 そんな中の本当の武士としての生き様が胸を打つ。
Posted by
浅田次郎の幕末・御一新モノ。腕に覚えのある武士が、己の天分を全うする話。だが、まさかここに話が落ちるとは読めなかった。憑神を思い出した。
Posted by
幕末から明治へと向かう混沌の時代。 獄中にあった囚人たちが、火事のために解き放たれた。 後年、その中の重罪人であった3人、夜鷹の大元締めの白魚のお仙・信州無宿繁松・岩瀬の若様である七之丞に加え若き牢屋敷同心・鍵役同心杉浦にその時の事を聞き書きしたものがこの書である。 どの話の中に...
幕末から明治へと向かう混沌の時代。 獄中にあった囚人たちが、火事のために解き放たれた。 後年、その中の重罪人であった3人、夜鷹の大元締めの白魚のお仙・信州無宿繁松・岩瀬の若様である七之丞に加え若き牢屋敷同心・鍵役同心杉浦にその時の事を聞き書きしたものがこの書である。 どの話の中にも出てくるのが杉浦と同じ職分の丸山小兵衛である。 3人を死なせず、解き放つために丸山小兵衛が出した条件は「三人とも戻れば無罪放免、一人でも逃げれば全員死罪」というもの。しかも誰も戻らねば丸山小兵衛が腹を切るという。 丸山の覚悟に、三人の囚人はどう向き合ったか。 最後に明かされる丸山小兵衛と杉浦の絆は感動ものである。
Posted by
思いがけず一気読み。Amazon に掲載されているあらすじを読んだときから面白そうだなと思ってはいたのだが、ふと図書館でみかけて読了。 時は明治元年、鳥羽・伏見の闘いを制した新政府が江戸入城を果たしたものの、牢屋の運営は旧体制を引き継ぐとも引き継がぬとも言われぬままという不安定...
思いがけず一気読み。Amazon に掲載されているあらすじを読んだときから面白そうだなと思ってはいたのだが、ふと図書館でみかけて読了。 時は明治元年、鳥羽・伏見の闘いを制した新政府が江戸入城を果たしたものの、牢屋の運営は旧体制を引き継ぐとも引き継がぬとも言われぬままという不安定な状態。江戸の町を襲う火事に、牢屋奉行石出帯刀は囚人を一時、伝馬町牢屋敷から解放する「解き放ち」を宣言する…という物語。当時牢屋を管理していた同心 2人と明治の新時代で第二の人生を生きる元囚人 3人への聞き取り調査という形で語られる「解き放ち」の詳細は、読み進むに従い徐々に核心へと迫る。 腐敗した司法制度によって不相応な罪を着せられた囚人たちが、許された一時の中で自分自身の正義を追い求める一方、牢屋同心は牢屋同心で法とは何かを問いつめ、自ら正義を全うした…と書くと陳腐だが、浅田次郎の筆にかかるとあら不思議、江戸から明治へ、そして現代へと流れる一大エンターテイメントに一変するのだ。
Posted by
浅田さんお得意の人情モノ。 一見悪者のように見える人が、実はものすごい善人だったってお話です。 確かにラストに感動するんだけど、ちょっとこのパターンに飽きてしまったというのも事実。 それと、浅田さんの1人称で書かれた小説は、疲れているときは気分がノラなくて楽しく読めません。 浅田...
浅田さんお得意の人情モノ。 一見悪者のように見える人が、実はものすごい善人だったってお話です。 確かにラストに感動するんだけど、ちょっとこのパターンに飽きてしまったというのも事実。 それと、浅田さんの1人称で書かれた小説は、疲れているときは気分がノラなくて楽しく読めません。 浅田さん好きとしては、ちょっと微妙なお話でした。
Posted by
明治初年、まさしくと舞台は時代の変換期。火事による囚人の解き放ちを巡り、ミステリー仕立ての寸劇が展開する。時代劇であるが、良質の法廷ミステリーを読んでいるようだ。
Posted by