岸辺の旅 の商品レビュー
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夫が失踪して3年あまりの時間は何も書かれていない。「どうして、一体何があったの?」という妻の答えのみつからない苦しみがベースに、この物語は突如現れた夫(しかもすでに死者だという)との二人の旅路を、水の流れる方向へ身を委ねるが如く、やがて本当の永久の別れるその時が来るまでを、淡々と刻々と、時を刻み妻と夫の心を刻みながら、進んでいくストーリーです。 本の帯には「身を引き裂かれたのち、現在を生きる者がみずから魂の再生をなす物語。理不尽な痛みや過去…死さえも受け入れる強さをひとが獲得していくひとつの過程がここにある」と書かれてあります。 でも、自分が実感してない痛みはどんなに主人公の心情に寄り添おうとしても、読めば読むほどに混沌とした気持ちになるのです。少なくても私は再生できるところまでは行きつかなかった。まだ切なくて悲しくて、残されたわが身を呪うことは出来ても。。 愛する人の喪失は想像もしたくないけれど、必ず誰の身にも起きること。 その時が来たら、再びこの本をもう一度、間違いなく手にするでしょう。それまでは、分からないままこの本に抱かれています。
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淡々としたきれいな話だった きれい過ぎて残念ながら腑に落ちないというか共感できない オトナのファンタジーかな
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キレイで静かでふらふらしていて、せつなくて、はっきりしなくて、全部が全部あいまいで、話らしい話もなく、ただただ時間と空気が流れゆくだけなのに、そこに魂だとか再生だとか、そういうことばをくっつけて背表紙の解説にしてあるのだけれども、正直に言って、趣味ではない。 どうでもいい、どうだ...
キレイで静かでふらふらしていて、せつなくて、はっきりしなくて、全部が全部あいまいで、話らしい話もなく、ただただ時間と空気が流れゆくだけなのに、そこに魂だとか再生だとか、そういうことばをくっつけて背表紙の解説にしてあるのだけれども、正直に言って、趣味ではない。 どうでもいい、どうだっていい。 こう言う甘ったるい灰色の話しには、無理してまで付いてゆく気にはなれない。 写経だとかヤコブの梯子だとか妙に宗教と絡めてあるのもおまけみたい。 なんの宗教もなく、哲学もなく、生きる実感さえもなく、感性だけで過ぎてゆく人間を淡々と語られても、現実に生きる私には無縁の世界。
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夏の庭とは違う印象を受けながら読んでみる。 クラムボン的な静かな流れだがしっかりと物語に入ってしまった。 不思議な感覚で楽しめました。
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夏の庭の印象が強いだけに、こういうお話も書かれるんだなぁ、と感じるに留まりました。 亡くなった旦那さんと不思議な旅をする話で、とても綺麗な話なのですが、江國香織さんとか、小川洋子さんとか、川上弘美さんとか、他の作家のお話がどうしても連想されてしまう…。
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失踪していた夫が 水底で蟹に食われたと 帰ってくる。 もうこれ、読むしかないでしょ! こういうゆらゆらしたストーリーは大好き。
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死んだ人間が目の前に出てきたら、何を話そうか。 二度目のお別れがあるだろうから、そんなことは起きてほしくない、と思うか。 ふと顔をあげると、三年前に死んだ夫が立っていた。妻は夫と共に、三年の間に夫が辿ってきた道程を旅する。 岸辺とは、彼岸と此岸の間のこと。 幽玄にはいくつか意味があるが、 幽;かすか・はかない 玄;奥深い道理 という意味で受け取ると、この小説のイメージに近いか。 『夏の庭ーThe Friends』・『ポプラの秋』の湯本氏らしい、死と生をテーマとした作品。
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死生観をテーマにした本は数多くあれど、本作は全く新しい視点。死とは?生とは?ではなく、死と生が融合していてハッキリとした区別が無い。死んだ夫と生きている妻の旅、という設定でありながら、どちらが死をどちらが生を象徴してるのか至極曖昧。ふたりに共通するのは懺悔や赦しの追求であり、終始...
死生観をテーマにした本は数多くあれど、本作は全く新しい視点。死とは?生とは?ではなく、死と生が融合していてハッキリとした区別が無い。死んだ夫と生きている妻の旅、という設定でありながら、どちらが死をどちらが生を象徴してるのか至極曖昧。ふたりに共通するのは懺悔や赦しの追求であり、終始それ一貫していた気がする。生も死も本来それらのテーマと切っても切り離せないものなのかもしれない。 著者は音大出身であるせいか流れるような文章が大変繊細で美しい。それだけでも読む価値アリと思います。 尚、本著氏で有名な四季シリーズとは全くタイプの違う作品だと付記して置きます。
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「しらたま」をつくっていたある夜、突然3年前に失踪した夫が帰ってくる。なんでも自分は海の底で身体の一部を蟹に食われたと言う。 そこから夫に連れられるまま旅をする。 物語は静かに進むけれど何も起こらない訳ではない。けれど淡々と進む。物語のそこここにぐっとくる箇所があったのは最近父がなくなったからかもしれない。
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ある日主人公がしらたまを作っていると、不意に夫が帰ってくる。夫は死に、肉体は蟹に食われてしまったという。 ふたりは、水音の聞こえるところに沿って、旅をしていく。 新聞配配達の営業所、中華料理店、たばこの栽培農家...。 不確かなものをなんとなく受け入れたような、よくわからないよう...
ある日主人公がしらたまを作っていると、不意に夫が帰ってくる。夫は死に、肉体は蟹に食われてしまったという。 ふたりは、水音の聞こえるところに沿って、旅をしていく。 新聞配配達の営業所、中華料理店、たばこの栽培農家...。 不確かなものをなんとなく受け入れたような、よくわからないような形のまま、話が漸化式に進んでいく。 登場人物はみんな穏やかで、落ち着いて取り乱すようにさえ見える。 歯科医の夫、浮気をする夫、父親を許せない夫。 知っている姿、知らない姿が、水彩画のように薄く重なって塗られていく。 死んだ夫が、いよいよ本当に消えてなくなってしまうが、夢からは覚めない。 不思議な物語でした。 夫婦の形も私が想像しているものとはまた別のもので、妻が夫という生き物と暮らす風景が、ひとつひとつ印象的でした。 最後、夫が消えてなくなってしまうのに伴って物語は終わっていくと思っていましたが、主人公はふたり分の荷物を持ってまた歩き始めます。 残された生きているものは前に進むしかない、という、孤独の決意が感じられました。 湯本香樹実さんは、やはり死者を描く人なんですね。
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