戦後史の正体 の商品レビュー
これは久しぶりにハンマーで頭を殴られるほどの衝撃を受けた著作であった。 1945年から2012年までの戦後史について、「米国からの圧力」というタブーを軸に論が展開されている。 具体的には、「対米追随路線」VS「自主路線」という2つの軸であり、戦後からの各政権がそれぞれどちらの路...
これは久しぶりにハンマーで頭を殴られるほどの衝撃を受けた著作であった。 1945年から2012年までの戦後史について、「米国からの圧力」というタブーを軸に論が展開されている。 具体的には、「対米追随路線」VS「自主路線」という2つの軸であり、戦後からの各政権がそれぞれどちらの路線を軸にアメリカと渡り合ってきたのか、その結果どういうことが両国の間で取り決められてきたのかが手に取るように分かる。 この書籍から分かったことは、以下の点に集約される。 ①米国の対日政策は、あくまでも米国の利益のためにある。日本の利益と常に一致しているとは限らない。 ②米国の対日政策は、米国の環境の変化によって大きく変わる。 戦後直後、冷戦時、冷戦後など ③だからこそ、米国の言うとおりに何でも聞いているのではなく、日本の譲れない国益については主張していく必要がある。 ④以前の自主路線派の中には国益を最優先に考え、命がけで行動に打ついている官僚、政治家がいた。 これは、まったく政治音痴な方でも読めるし、読まなければならないと強く思います。実際、高校生に教えるように書かれているので読みやすいです。
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話題になっていたので、楽しみに読んだのですが、 期待していた分、がっかりしてしまいました。 目新しいことは何も言っていないし、理論の組み立て方に危うさがあるな~と感じました。 「高校生にもわかる」ということと、複雑な事の複雑さを切り捨てて単純化することは、またちがうと思う。 出典をみると、一次史料にあたってないのもなんだかな。。。 言ってることがそれほど間違ってるとは思わないです。 歴史を語る本としては、あまりに粗雑でした。
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この本は近くに新装開店した本屋で山積みされていて目に留まりました。戦後70年も経過すると、当時の状況をよく知る人からの本が出るようですね。終戦からサンフランシスコ講和条約が締結されるまでは「どさくさ」の時代のようですが、この本により私にとって「闇」と重されていた時代について知るこ...
この本は近くに新装開店した本屋で山積みされていて目に留まりました。戦後70年も経過すると、当時の状況をよく知る人からの本が出るようですね。終戦からサンフランシスコ講和条約が締結されるまでは「どさくさ」の時代のようですが、この本により私にとって「闇」と重されていた時代について知ることができて貴重な経験をしました。 特に、北方領土問題が解決していない中、択捉・国後島は、戦争末期に米国がソ連に対日参戦のために与え、その後に反対して拗らしたという事実(p169)は驚きました。また、ドルショック後に、360円から307円程度になって安定した理由(輸入課徴金:10%の導入、為替変更により取止め)も自分なりに理解できました。 長年理解できなかった、福田首相の突然の辞任の理由も、この本の説明(自衛隊のアフガニスタン派遣とファニーメイ救済のための資金提供の拒絶、p353)は私としては理解できたように思います。 以下は気になったポイントです。 ・日本の外交におけるもっとも重要な課題は、つねに存在する米国からの圧力に対して、「自主」路線と「対米追随」路線のあいだでどのような選択をするかというもの(p6) ・自主を選択した多くの政治家や官僚は排斥されている、重光葵・芦田均・鳩山一郎・石橋湛山・田中角栄・細川護煕・鳩山由紀夫、竹下登・福田康夫もそれに入るだろう(p9,84) ・昭和天皇は、沖縄の軍事占領を無期限で継続してほしいと米国に伝えた(p14、87) ・日本人は8月15日を終戦の日と認識しているが、一般には9月2日の降伏調印式を「対日戦争勝利の日」としている(p19) ・降伏文書には、「日本はすべての官庁および軍は降伏を実施するため、連合国最高司令官の出す布告、命令、指示を守る」と書かれている、より具体的には、1)公用語を英語、2)米軍に対する違反は軍事裁判で処分、3)通貨を米軍の軍票とする、が最初の布告案だった(p27、30) ・1946.1には約6000人、1947.1-1948.8までに約19万人が追放された、その後公職追放令は緩められ、25万人以上の追放解除となった(p43、113) ・日本への占領政策が変わったのは、冷戦が始まって日本をソ連との戦争に利用しようと考えるようになったから、これによりマッカーサーとトルーマン大統領が対立してマッカーサーは解任された(p46、98) ・占領時代に日本政府は米軍駐留経費(名目は終戦処理費)は、当初三年間は一般会計の2-3割にものぼる(p63) ・1945.10には、GHQ自身が東京の三井信託の地下倉庫からダイヤモンドを、16万カラット接収した(p85) ・1980-88年まで続いたイラン・イラク戦争では、米国はサダムフセインを支援した、その後イラクは1990.8にクウェートを攻撃した(p102) ・講和条約はオペラハウスで行われたが、日米安保条約は陸軍6軍の基地のなかの下士官クラブで調印された(p117) ・言論統制を行うのに高度な教育のある日本人5000人を雇用した、預金封鎖の中、月に500円しか引き出せない中で、900-1200円の高給が払われた、彼等は大学教授や大新聞の記者である(p128) ・マッカーサーの後をついだダレスは、対日講和条約を締結するにあたって、1)日本を早期に独立させる、2)経済力をつけて共産主義の防波堤にする、3)日本の基地は自由に使う、という基本方針とした(p141) ・北方領土の国後、択捉島は、第二次世界大戦末期に米国がソ連に対して、対日戦争に参加してもらう代償として与えた領土、冷戦勃発後は反対して、問題解決をできないようにしている(p169) ・英国がインドから撤退するときは、パキスタンとの間にカシミール紛争、アラブ首長国から撤退するときは、首長国同士で争うにように飛び地をつくったり、境界を複雑にした(p172) ・ニクソンショックでドルと金の交換停止と同時に、10%の貿易課徴金を課した、これにより為替レートが360→308円となり日本の製品は12%高くなって、その課徴金は取りやめになった(p253) ・湾岸戦争でクウェートが有力紙に掲載した感謝広告に日本が載っていなかったが、あれは現地が政府の指示なしでやったものであった、戦後発行した解放記念切手シートには日の丸が入り、戦争記念館には日本国旗が掲載され特設パネルも展示(p318) ・日本政府がファニーメイを救済することを拒否するため、さらに自衛隊の海外派遣を拒否するために、自分のクビをかけた(p353) 2012年9月17日作成
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戦後の総理大臣らを,対米自主派,対米追従派という区分けをして戦後史を振り返った本。アメリカがどういう場面で日本に容喙してきたか,歴代の首相が取ってきた行動がいかなるものであったかなど,世間にあまり知られていないことをわかりやすく,詳しく書いてくれている。尖閣について中国が無理筋な...
戦後の総理大臣らを,対米自主派,対米追従派という区分けをして戦後史を振り返った本。アメリカがどういう場面で日本に容喙してきたか,歴代の首相が取ってきた行動がいかなるものであったかなど,世間にあまり知られていないことをわかりやすく,詳しく書いてくれている。尖閣について中国が無理筋な主張をしてくるのもアメリカが一枚噛んでいることや,アメリカの本当の目的は地位協定に落とし込まれていて,地位協定のための安保条約であり,安保条約のための講和条約であったことなど,興味深い話がたくさん。対米自主派,対米追従派という観点だけで語るのはやや無理があると感じられるところもあるが,読み物としてかなり面白い。
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日本の戦後史、外交史には米国のその時々の国益に基づいた陰に陽にの関与があり、日本は外交自主派、米国追従派のなかで振り子のように方針を動かしてきた、という「史観」に基づく戦後史。 単なる陰謀論と捨てておけないのは、著者が一級の外交官であり、論拠も多く示していること。 米国への陰の...
日本の戦後史、外交史には米国のその時々の国益に基づいた陰に陽にの関与があり、日本は外交自主派、米国追従派のなかで振り子のように方針を動かしてきた、という「史観」に基づく戦後史。 単なる陰謀論と捨てておけないのは、著者が一級の外交官であり、論拠も多く示していること。 米国への陰の協力者、反抗者が幾人も変死を遂げている事実をにおわせる記述もスリリング。
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「対米追随」と「自主」路線。 「自主」を選択した多くの政治家や閣僚は、排斥されている。 重光葵(マモル)、石橋湛山、芦田均(ヒトシ)、岸信介、鳩山一郎、佐藤栄作、田中角栄、福田赳夫、宮沢喜一、細川護煕(モリヒロ)、鳩山由紀夫 「対米追随」派 吉田茂、池田勇人、三木武夫、中曽根康弘、小泉純一郎、海部俊樹、小渕恵三、森喜朗、阿部普三、麻生太郎、菅直人、野田佳彦 「一部抵抗」派 鈴木善幸、竹下登、橋本龍太郎、福田康夫
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本屋で平積みだったけど「どうしようかな」と逡巡していたが、内田樹先生がツイッターで言及されていたので、購入。日米関係については内田・田中宇本などからそれほど驚かなかったが、福田内閣についてとか、ウィキリークスの文書については全く無知だったのでとても勉強になりました。ちょっと後半解...
本屋で平積みだったけど「どうしようかな」と逡巡していたが、内田樹先生がツイッターで言及されていたので、購入。日米関係については内田・田中宇本などからそれほど驚かなかったが、福田内閣についてとか、ウィキリークスの文書については全く無知だったのでとても勉強になりました。ちょっと後半解釈が強引になりますが、とくに前半は面白いです。
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日本の戦後史を動かす原動力は、米国に対するふたつの外交路線、自主と追随の相克である。 深慮遠謀、日本人に、アメリカ教の信者をたくさん作っておいたことが、奏功しているのですね。
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陰謀論満載だけど面白いし勉強になる。ちょうどNHKでやってる吉田茂のドラマを見ながら読むと裏背景や伏線が分かっていいかもね。
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非常に解り易い対米戦後史。若干の説明不足から、恣意的な印象を受ける部分はあるが(※)概ね真っ当な歴史観ではないか。自民党政権は、常々、米国に対してケツを振りまくっている印象があったのだが、歴史を振り返ってみると、その都度激しい攻防があったのが見受けられる。ようは、中曽根~竹下(※...
非常に解り易い対米戦後史。若干の説明不足から、恣意的な印象を受ける部分はあるが(※)概ね真っ当な歴史観ではないか。自民党政権は、常々、米国に対してケツを振りまくっている印象があったのだが、歴史を振り返ってみると、その都度激しい攻防があったのが見受けられる。ようは、中曽根~竹下(※)~小泉ラインのクソビッチ的印象が強すぎるわけだ。 【検察特捜部はGHQ管理下でスタートした「隠匿退蔵物資事件捜査部」を前身としている】 対米自主路線を歩もうとした芦田内閣は検察・マスコミの作りあげた「昭電事件」の影響で早々に崩壊する。同様の事件は、その後数度繰り返されているのは周知の事実。 【イラン大使が『米国がイランを攻撃しないことは誰もが知っている』と述べた。これに対してイラク大使は次のように説明した。『そういう結論を出すのは深刻な間違いにつながります。特定の出来事が起こらないと推定し、その推定に基づいて政策を立てるのは間違いです』】 じつは、イラン大使は大変聡明な方で、実際のところは「推定」で物事を捉えてはいない。直接、自国の方針を非難出来ないため、イラク大使の言として忠告を与えている。これが外交というものだ。 【安保闘争は何故あれほどまでに拡大し、その後急速に衰退していったのか】 安保闘争の資金は、親米路線をとる経済同友会から流れていた。つまり、財界の動きをどうとらえるかというのは非常に大事。昨今の原発問題においても近しいものを感じざるを得ない。当時はそれに対して大手マスコミが「全て」同調したわけだが、その辺りは少し開かれてきているのではないだろうか。 (※)吉田茂の評価=「従米一辺倒の売国奴」としている点は同意しかねる。それは「吉田茂は自国の軍隊を持つことに対して全面否定した」ことに起因しているわけだが、それは結局のところ、戦中、反戦運動に従事した彼氏のこと、「あのような腐り切ったシステムを持ちたくない」という思いが圧倒的に強かったのだと思える(そして、それは天皇陛下も同様の発言をしていることからも感じられる)。つまり、もっとも罪深いのは――アホのネット右翼民が賛美を送りがちな――戦前戦中のクソ軍隊システムなのだ。 (※)「竹下氏、軍事面での米国への協力は消極的だった」という一点において一部対米自主派として分類してらっしゃるが、実際のプラスマイナスの部分は検討してみたいところ。
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