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トータル・リコール ディック短篇傑作選 の商品レビュー

4.2

44件のお客様レビュー

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2025/08/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

過去に何冊か読んだがあまり響かなかったようで、それっきりになっていた。映画『トータル・リコール』を再視聴しようとして序盤も序盤で気力が尽きたので、原作を読んでみることにした。 この選集に掲載された作品はほぼすべて全面核戦争中ないし後を舞台にしている。全面核戦争をテーマにした作品は1950年代にはすでに存在したことになる。 ゾーニングなどない喫煙がシーンに自然にまざっている。 そんな時代の空気を感じながら。 『トータル・リコール』△ 邦題『追憶売ります』で発表されたが映画の原作となったことで改題された。寺沢武一の『コブラ』第一話のモチーフとなっているらしいことは聞いていた。その通りかもしれない。しかし、映画にせよコブラにせよ、引用した側が真摯であるように見えるのに比べて、原作はどこかおちょくってる感じがする。その由縁たる物語のマトリョーシカ構造も、ほうぼうで模倣されているように思う。 『地球防衛軍』◎ これは、以後のさまざまな創作の種本になったのではないか。 歴史のゴール。「われわれ」を示すものがひとつになること。アークナイツで繰り返し語られていること。 『訪問者』△ 冒頭の防護服と酸素ボンベのイメージは、ボトムズを想起させるものがある。 ひょっとしたらナウシカにインスピレーションを与えたかもしれない。 『ミスタ・スペースシップ』✕ 『歌う船』以前の頭脳船、R-TYPEの元ネタだろうか。 このオチはなんだ。反戦という主題が頭でっかちになりすぎたか。 『非0』✕ C爆、コバルト爆弾。1950年にレオ・シラードが想定した核戦争の最悪のシナリオの中に登場する。 共感能力を全くもたないとされる人々の集団が、なにかをなしとげるために協力しあえるのだろうか。 『フード・メーカー』△ 『超人ロック』は超能力者への迫害が通底している。初期はおもにテレパシー能力由来だったように記憶している。特に重要なキャラでもないのに意味ありげに少女を連絡員や工作員として登場させたりとか。 ここに語られているティープすなわちテレパスは、現実の現在における利権にくいこむ人々を彷彿とさせる。当時からそのような人々は存在したのであろう。 "「だれか特定の人間が人類を導くべきじゃない。人類を導くべきは人類自身です」" p.323 超人ロックが信条とする「人類を導くのは英雄やシステムではない」に、一番似た言葉かもしれない。 『マイノリティ・レポート』◯ p.391 “閉じた時間の輪の中” MAGIシステムの祖型が。タカシ、キヨコ、マサルの3人組は、ひょっとすると3人のプレコグ(予知能力者)から来てたりするのかな。男女比は一致する。 時間線という表現。 対中戦争。1950年代半ばにそういう想定があったのだろうか。 タイムループものではないが、それ系の用語が登場する。未来予知の話であるから。

Posted byブクログ

2025/05/13

p9 - トータル・リコール 彼はめざめた——そして火星を恋い、その峡谷を想った。一歩一歩、足を踏みしめてその谷間を歩くのは、どんな気分のものだろう。意識がはっきりしてくるにつれ、しだいしだいに大きくその夢はふくれあがっていった。その夢、その憧憬。自分をとりかこんでいるその世界の...

p9 - トータル・リコール 彼はめざめた——そして火星を恋い、その峡谷を想った。一歩一歩、足を踏みしめてその谷間を歩くのは、どんな気分のものだろう。意識がはっきりしてくるにつれ、しだいしだいに大きくその夢はふくれあがっていった。その夢、その憧憬。自分をとりかこんでいるその世界の存在さえ、実感できるような心地がした。 SFとしての面白さはもちろん一品級だが、書き出しの情景描写からとてもわくわくするし、何よりフィリップ・ディックの想像力がとてつもない。本当に近未来に起こり得そうなリアリティが各作品の醍醐味。

Posted byブクログ

2025/04/10

映画「トータルリコール」の原作を含む短編集 たぶん遠くない未来はこうなるのだろうかと、思わせるそれぞれの世界は見事 中でも「世界をわが手に」の結末はゾワッときた あまり読んでいない分野なので頭がついていかないところも多々ありでしたが たまにはこんな未来に想像を膨らませるのも良き...

映画「トータルリコール」の原作を含む短編集 たぶん遠くない未来はこうなるのだろうかと、思わせるそれぞれの世界は見事 中でも「世界をわが手に」の結末はゾワッときた あまり読んでいない分野なので頭がついていかないところも多々ありでしたが たまにはこんな未来に想像を膨らませるのも良きかな かなりリアルで考えたくないこともあるけれど だからこそ今の世界を考えるきっかけにもなるだろうか

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2025/03/30

SF短編集。10篇入っていて手軽で読みやすい。タイトルの映画に原作があるのを知らなかったので手に取った。骨子は小説から取っているが、かなり膨らませて映画にしたのだなぁと思った。 他の話も意外なものに助けられるような展開や、前提の立場が入れ替わることで話の流れが変わるようなものが...

SF短編集。10篇入っていて手軽で読みやすい。タイトルの映画に原作があるのを知らなかったので手に取った。骨子は小説から取っているが、かなり膨らませて映画にしたのだなぁと思った。 他の話も意外なものに助けられるような展開や、前提の立場が入れ替わることで話の流れが変わるようなものが多く、面白かった。 個人的には、テレパスが当たり前にあり、頭の中を読まれることを拒むことが悪いこととされている世界で、精神走査を拒絶するためのフードが送られてくる「フード・メーカー」が好みだった。

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2025/01/05

どの話も面白い マリノリティ・リポート(映画版も見た。映画も負けず劣らず面白い)、訪問者、ミスター・スペースシップ、吊るされたよそ者あたりがよかった ミスター・スペースシップはこの中だとファン人気が低いらしいけど、ロマンティックで美しい余韻がある

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2024/04/24

どれもフィリップKディックワールド全開。 SF大好きマンからするともう堪らなく楽しい…! 全体的にそうだけど、特に「地球防衛軍」なんかはプーチンはじめ世界中の戦争おっぱじめる奴らにぜひ読んでほしいお話だった……

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2024/02/25

2024年になっても新鮮な読み心地と生々しい迫力を備えている。時代を超えて読み継がれるとともに、実現可能な時代になりつつあることの恐怖も沸き起こる短編集。以下は個々の作品の備忘録 ・トータルリコール 経験の記憶を販売する会社で記憶の植え付け施術失敗と思いきや、政府の要人という...

2024年になっても新鮮な読み心地と生々しい迫力を備えている。時代を超えて読み継がれるとともに、実現可能な時代になりつつあることの恐怖も沸き起こる短編集。以下は個々の作品の備忘録 ・トータルリコール 経験の記憶を販売する会社で記憶の植え付け施術失敗と思いきや、政府の要人というか機密を持っている重要参考人的な立場だった人の話。映画も見てみたい ・地球防衛軍 人類が始めた戦争を、人類が作ったAIで代理戦争をさせるも人間より遥か上の知能を持ったAIによって管理下に置かれていたことに気が付く愚かな人間の話。 ・訪問者 核戦争後、人間が住めなくなった地球で生き延びるために細々と息をしている様を描いた作品。地球も生きていて、人間が滅びるのも地球の歴史の一部になり得る。人間が最後の地球の支配者だなんて考えは傲慢…。 ・世界をわが手に ラスト数行で察してしまう世界の真実と創造者。破壊衝動に限らず「本能的欲求・衝動」と括ってしまうが、それは理解を簡素化するための言葉だった。溜まったエネルギーの発出。何かを使役したい、力を持ちたい、強さを自覚したい。神になりたい。残酷な世界の成り立ちは残酷な人間のエネルギー衝動によるものだったかもしれない。 ・フードメーカー 頭の中を他人から読まれてしまう恐怖。政府に対して不都合な思想ややましいことがあれば即刻逮捕。まさにディストピア!

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2024/02/17

フィリップ・K・ディックの短編傑作集。 どの作品も短いので読みやすいとは言え、それでも、SF初級者の私には難しかった。いつか、すらすら理解できるようになりたいものだ。 「ミスター・スペースシップ」と「マイノリティ・リポート」が良かった。 未来の物語の中に人間の本質、社会の歪みを突...

フィリップ・K・ディックの短編傑作集。 どの作品も短いので読みやすいとは言え、それでも、SF初級者の私には難しかった。いつか、すらすら理解できるようになりたいものだ。 「ミスター・スペースシップ」と「マイノリティ・リポート」が良かった。 未来の物語の中に人間の本質、社会の歪みを突いて来るので、気づきが多い。SF小説の深さなんだろうな。

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2024/02/14

現実と虚構の境界が曖昧模糊となる世界を描いたトータル・リコールや予知により犯罪者を未然に取り締まる世界を描いたマイノリティ・リポートを始めとした10篇の短編集.いずれの世界も,人間やその創造物へのアンチテーゼであり,現在のAIにも通じるSF世界を含め,全ての近未来をディストピアと...

現実と虚構の境界が曖昧模糊となる世界を描いたトータル・リコールや予知により犯罪者を未然に取り締まる世界を描いたマイノリティ・リポートを始めとした10篇の短編集.いずれの世界も,人間やその創造物へのアンチテーゼであり,現在のAIにも通じるSF世界を含め,全ての近未来をディストピアとして見事に提示していることに驚きつつ,ディックにとって近未来だった現在が,まるでディックの掌に乗っているような印象から逸脱できない.

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2024/04/08

表題となるトータル・リコールを含む短編集。 一番面白かったのはやはりトータル・リコール。 映画で観たなぁと思って読んだら全然違う話でびっくり!でも面白い。 なんというか落語にもなりそうだし「世にも奇妙な物語」にも出てきそうな、ありそうでありえない、子どもが夢想しそうなことを一流...

表題となるトータル・リコールを含む短編集。 一番面白かったのはやはりトータル・リコール。 映画で観たなぁと思って読んだら全然違う話でびっくり!でも面白い。 なんというか落語にもなりそうだし「世にも奇妙な物語」にも出てきそうな、ありそうでありえない、子どもが夢想しそうなことを一流作家が書いたらこうなる、といった感じの短編小説。 他の映像化作品もぼちぼち面白いのでファンの方が読む分には良いと思う。

Posted byブクログ