世にも奇妙な人体実験の歴史 の商品レビュー
18世紀から外科手術は存在したが麻酔もなく、インチキ医者が横行した時代、患者はモルモットにされ、生死を彷徨う運命にあった。 また、研究者たちは熱意のあまり、我が身さえも人体実験の材料にすることも厭わなかった。 淋病のメカニズムを解明するため、患者の膿を自分の身体に付着させた結果...
18世紀から外科手術は存在したが麻酔もなく、インチキ医者が横行した時代、患者はモルモットにされ、生死を彷徨う運命にあった。 また、研究者たちは熱意のあまり、我が身さえも人体実験の材料にすることも厭わなかった。 淋病のメカニズムを解明するため、患者の膿を自分の身体に付着させた結果、梅毒までももらってしまった医師、毒ニンジンやエーテル、笑気ガス、クロロホルム、コカイン、モルヒネ…麻酔薬開発のために自ら中毒者になってしまったり… ダイナマイトの原料を狭心症の薬とするまでの発見、昆虫やありとあらゆる生き物を食した男、サナダムシを飲まされた死刑囚、黄熱病患者の吐瀉物を煮詰めて飲んだ研究者、炭疽菌や出血熱の禍、放射線ブームとその犠牲者たち、偏食が引き起こす様々な病気、ヒルに血を吸わせたり、羊の血を人体に輸血した事例、自分の心臓にカテーテルを通した医師、爆弾の研究のため被爆を繰り返した博士、ナチスドイツの毒ガスを吸ってみた研究者、深海に挑んだ男たち、漂流実験を繰り返した医師、シートベルトの発明… 時代や戦争などの非常事態に起因するものもあるが、現代ならIRB(医の倫理)的に成し遂げられないであろう実験が盛り沢山。 当然不幸な結果に終わったものが多いが、これらの反省が今日に活きていると思えば、ただただ殉職された皆さんに尊敬と哀悼の思いを抱くばかり。 阪大の仲野教授は「人体実験学特論」の講義テキストとして活用されたとか。
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いやはや。 いやはや。 いま、私が病院であれこれ検査を受けたり、薬をもらったりできるのも、すべてはここに出てきたような人たちの尽力あってのものなのですな…。 信じたくもないような実験も色々あったけど、どう考えても彼らがいないと、もしくはその道を誰かが見つけて通らないことには治...
いやはや。 いやはや。 いま、私が病院であれこれ検査を受けたり、薬をもらったりできるのも、すべてはここに出てきたような人たちの尽力あってのものなのですな…。 信じたくもないような実験も色々あったけど、どう考えても彼らがいないと、もしくはその道を誰かが見つけて通らないことには治療法が確立されなかっただろうという病気の多いこと。 個人的には第10章、血液関連の話が一番リアルに感じられて、呻きながら読みました。痛いよう。 訳文は、主に原文でのジョーク(と思われる表現)が直訳気味でわかりにくい部分が多かったところが残念。ノリで今の日本人にも通じるように書き換えてほしかったなー。
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「自説が正しければ、この実験を敢行しても命の危険はないはずだ」と信じて自己実験に踏み切ったたくさんの先人たち。 つまり科学や医学の名のもとに、彼らはコレラ菌入りの水、塩酸、ニトログリセリン、その他色々のものを飲み込み、マラリアを媒介する蚊に刺され、自ら淋病に感染し、麻薬を試し、有...
「自説が正しければ、この実験を敢行しても命の危険はないはずだ」と信じて自己実験に踏み切ったたくさんの先人たち。 つまり科学や医学の名のもとに、彼らはコレラ菌入りの水、塩酸、ニトログリセリン、その他色々のものを飲み込み、マラリアを媒介する蚊に刺され、自ら淋病に感染し、麻薬を試し、有毒ガスを吸入しては昏倒し、サメが集まる海に飛び込んだ……。 その結果は、現代の医療水準をとくと御覧じろ。 それはまちがいなく人類のためではあるが、背景には利他精神と虚栄心があり、突き動かすものは勇気とそれを凌駕する好奇心であったに違いない。あえて言うなら“愚行”に満ちた物語。 これは褒め言葉である。
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人体実験は古今東西で行われてきた伝統ある手法です。 時には弱者が、時には実験者自身が被験者となってきました。 今現在も治験などの生体実験がありますが、そんな生易しい時代の話ではありません。 内容はとんでもなく強烈・マッドですが、ふんだんに盛り込まれたユーモアによって面白く綴られた...
人体実験は古今東西で行われてきた伝統ある手法です。 時には弱者が、時には実験者自身が被験者となってきました。 今現在も治験などの生体実験がありますが、そんな生易しい時代の話ではありません。 内容はとんでもなく強烈・マッドですが、ふんだんに盛り込まれたユーモアによって面白く綴られた一冊。
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無謀な冒険、実験に挑んだ人々の話です。様様な分野の話が出てきます。前半は医学的な話が多く、全体にグロい話です。後半の方が、子供の冒険心をくすぐるような話です。しかし全て命をかけた話で、実際登場人物の多くが実験のために亡くなっています。 人体実験には、自分が実験台になる人と、人をモルモットとして、使った人がいて、著者の書き方も異なっています。淋病の膿を自身に塗り付けて、その感染を証明しようとした人、黄熱病の血が混じった吐物を飲んで!!接触感染の可能性が低いことを証明した人、やばそうなガスを吸って、麻酔の効果を調べようとして、薬物中毒になってしまった人、さまざまです。人体実験として、孤児院などの人が、普通に、同意なしで動員されていたのは、そういう時代だったと言えはそれまでですが、なかなか衝撃的でした。 昔の医学がいかに、いかさまだったかが繰り返し出てきますが、それに対して、皮肉を込めた言葉で説明しています。昔は瀉血がなんにでも効くという感じだったそうですが、それによって、死ななくていい命が多く失われたようです。「ジョージ・ワシントンは風邪を引いただけだったのだが、何度も瀉血を施されて血を3リットルも抜かれたため死亡してしまった。」「彼は2千万~3千万リットルの血を患者から抜いたと推定されている。彼の弟子も患者から血をカネを搾り取った」 勉強になりますが、前半が特にグロいので注意が必要かも。
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人体実験という素敵なタイトルから始まり、色々な自己実験が紹介してある。 偉大な実験にも関わらずほとんど知られてない人々と言われると、全員の伝記など読んでみたくなる。 しばらくしたらまた読みたい。
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マッドサイエンティストは自分を実験台にする。 お食事中注意のエピソード満載。 日本軍と炭素菌のエピソードなどを見ると、刺激的なトピックを追い求めるあまり、インパクトがあればその情報を鵜呑みにしていて裏取りは不十分なのかもしれないとも思う。
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著者の語り口調がニヒリズムww しかし、また、常人では考えられないような実験の数々。まぁ、その、彼らの究極の自己犠牲の上に我々は生きているのは確かなんだけど、さ。 人間の興味や好奇心はとどまることを知らないんだな。それを「進化」と呼ぶのかは別として。
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好奇心が命の重さを凌駕する時代。しかも、意図も簡単に。検査機器が発達した現代人は、かつて命懸けで自分の身を削って、真実を追い求める先達には及ばないのかも知れない。ならば、何をもって未来を越えていこうとするのか?だけど、分からないことだらけ…まだまだこれからなのかも。
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医学や科学の発展の為にその実験の危険性や痛み・苦しみ等を顧みず自らを犠牲(ちょっとニュアンスは違うかもしれないけど)にして研究した者達の物語。ダイビングで使う減圧表とかも、こうやって作られたんですね。偉大なる研究者達に感謝!
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