凍りの掌 の商品レビュー
絵と内容のギャップが抑留の凄惨さや絶望が伝わってくる。 小学生でもスラスラ読めて内容も濃い名著だと思う。
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第16回文化庁メディア芸術祭新人賞受賞。父のシベリア抑留体験を漫画化。忘れられていく抑留の記憶を留める佳作。
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父親のシベリア抑留体験を描いた漫画『凍りの掌』。強制労働の末に異国の白樺の肥料となった日本人。「はだしのゲン」「夕凪の街」と共に残すべき一冊。帯はちばてつや氏「氷点下の地獄図が深くリアルに静かに語られている。次代を担う若者達には何としても読んで貰いたい」 おざわゆきさん、グルメ漫...
父親のシベリア抑留体験を描いた漫画『凍りの掌』。強制労働の末に異国の白樺の肥料となった日本人。「はだしのゲン」「夕凪の街」と共に残すべき一冊。帯はちばてつや氏「氷点下の地獄図が深くリアルに静かに語られている。次代を担う若者達には何としても読んで貰いたい」 おざわゆきさん、グルメ漫画の可愛い絵と豊かな表現が大好き。その振り子が恐れず大きく悲劇に向かってゆき、このような作品になった。文化庁メディア芸術祭新人賞を受賞。
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<寒さに、いや絶望に凍りつく? この作品は、シベリアに抑留された経験を持つ父親から著者が聞き取った事実を元にしたコミックである。 著者の父は帰国して60年というもの、抑留生活の記憶に蓋をして生きてきた。今、聞いておかなければ記憶している人がいなくなってしまうと思った著者の働きか...
<寒さに、いや絶望に凍りつく? この作品は、シベリアに抑留された経験を持つ父親から著者が聞き取った事実を元にしたコミックである。 著者の父は帰国して60年というもの、抑留生活の記憶に蓋をして生きてきた。今、聞いておかなければ記憶している人がいなくなってしまうと思った著者の働きかけにより、その重い口を開いていく。 おそらく父の口調は朴訥で、口ごもりがちであっただろう。 それに呼応するように、著者の絵柄は素朴で、ほのぼの系ともいえそうな趣である。 飾り気のない画風は、描き出される事実の残酷さをなおいっそう際だたせ、胸が締め付けられるようである。 著者の父、小澤昌一は大学生であった昭和18年、実感もないまま招集され、満州に送られる。実質的な実戦に関わることもないままに、ロシア兵に捕縛され、シベリアに送られる。 そこは酷寒の地。 マイナス40℃になることもある、屋内までが凍りつく寒さである。 しかし、それよりもなお人の心を凍らせたのは、絶望だった。 収容所生活がいつ終わるか分からないという絶望。いつ頃には帰れるとデマが飛ぶ。極悪な栄養条件の下での過酷な労働で、次々に倒れていく仲間たち。 だが、それに劣らないほど恐ろしいのは、依って立つイデオロギーが崩れ落ち、次に何がよしとされるのか、予測も付かないことだ。 軍国主義は敗戦によって崩壊し、シベリアではソ連の共産主義を押しつけられる。「アクチブ」と呼ばれる扇動者になるよう洗脳された者たちは、次々にかつての特権階級をつるし上げていく。従わなければ食料を減らされ、労働を増やされる。他人を貶めて自分の立場をよくしようとするものも現れる。偽りの密告でも、疑われたらレッテルを剥がすことはできない。 だが、帰国した後に待っていたのは、シベリア帰りは「アカ」だ、との色眼鏡だった。そのため、まともな職に就けなかったものも多かったという。 著者の父は4年間をシベリアで過ごした。1つ違えばもっと早く戻れたかもしれないし、あるいはシベリアで命を落としていたのかもしれない。 最長で13年をシベリアで過ごした者もいたという。 「ふるさと」を歌いながら逝った阿矢谷の魂は故郷に戻っただろうか。濡れ衣を着せられても毅然としていた碓氷は、その後、どのような戦後を送ったのだろうか。 戦争という極限状態が人に残す傷跡を思うと、粛然とせずにいられない。 *『杏奈と祭りばやし』(大和和紀)のドラおじさん、『ねしょんべんものがたり』のトクさん、そして『善人ハム』(色川武大)の善さんは、いったいどんな深淵を見てしまったのだろう。
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たまたま目に付いて購入したのだが、買って良かったというのと、強く勧めたくなった本。人の死を【作業】と認識してしまうまでに陥ってしまうシベリアでの劣悪な環境。先に逝ってしまう仲間への想いと苦悩。それでも生き抜いた一人の男性(著者の父)の実話を基にした物語。シンプルな絵なだけに、胸に...
たまたま目に付いて購入したのだが、買って良かったというのと、強く勧めたくなった本。人の死を【作業】と認識してしまうまでに陥ってしまうシベリアでの劣悪な環境。先に逝ってしまう仲間への想いと苦悩。それでも生き抜いた一人の男性(著者の父)の実話を基にした物語。シンプルな絵なだけに、胸にきます。
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著者の父が実際に経験した、第二次世界大戦とシベリア抑留を漫画に。温かみある絵柄が逆に体験描写を胸に迫るものにしていると思う。未来に残しておきたい事実。
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可愛いイラストにかなり緩和されているであろう抑留の記録。それでも凄まじい。知らなかった帰国後の差別、共産党がどういうものかがシンプルに的確に表されている。知らないでは済まされない。
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昭和20年8月23日。終戦直後。国家防衛委会上、ソ連最高指揮官スターリンにより敗戦国日本についての極秘文書が署名された。 極東シベリアの環境下の労働に、身体的に適した日本人50万人を選出すること。 この指令により日本人の大量強制抑留が開始された。 満州に駐留していた日本軍兵士た...
昭和20年8月23日。終戦直後。国家防衛委会上、ソ連最高指揮官スターリンにより敗戦国日本についての極秘文書が署名された。 極東シベリアの環境下の労働に、身体的に適した日本人50万人を選出すること。 この指令により日本人の大量強制抑留が開始された。 満州に駐留していた日本軍兵士たちが行先も告げられぬまま北へと連行され、辿り着いた広大な寒冷地。連日強いられる石炭の露天掘り、材木の切り出しなどの辛い肉体労働、しかし食事は満足に与えられず、壮絶な寒さとひもじさと絶望が、彼らの肉体と精神を蝕んでゆく――。 著者・おざわゆきさんが高校生の頃、「家族の戦争体験」を聞き書きにしてレポートにするという宿題に取り組んだ際に初めて知った大正14年生まれのお父様の、シベリア抑留体験。 それから4半世紀、終戦から60年を過ぎ、シベリア抑留の生存者は1割以下、皆80歳を過ぎ、毎年その一割が亡くなっていき、生きた証言が絶えようとしている中、3年の歳月をかけて描かれた、多く語られることのない、けれど日本人が決して忘れてはいけない真実の物語です。 推薦文をちばてつや氏が寄せています。 東京・新宿の平和祈念館ではシベリア抑留の体験談や記録、資料、遺品などを見ることができます。興味を持たれた方はぜひ訪れてみてください。
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「軍や政府の上層部はソ連が日本に侵攻することを知っていた」ということが最新の研究が分かったというNHKのニュースを見た。 あのとき、軍や政府の上層部が、動いていたら現在にも残る中国残留孤児の問題も、この本の主題であるシベリア抑留も起きなかっただろう。 現在に置き換えるとそれは...
「軍や政府の上層部はソ連が日本に侵攻することを知っていた」ということが最新の研究が分かったというNHKのニュースを見た。 あのとき、軍や政府の上層部が、動いていたら現在にも残る中国残留孤児の問題も、この本の主題であるシベリア抑留も起きなかっただろう。 現在に置き換えるとそれは原発問題と重なると私は思う。 本書は、父親のシベリア抑留の体験を娘が漫画として描き残したもの。画力はないが、気持ちの伝わる作品。戦地にも行ったことのない一般人が捕虜として極寒の土地で強制労働させられていた事実。ソ連が悪いなどという話ではなく、やはり戦争はいけないものだと本書のシベリア抑留の記録を見て改めて思った。
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本屋で気になって気になって、でもきっと読んだら重くてきついだろうな、と手に取るだけでやめること数回。いつまでたっても気になり続けるので、これは逃げられない、と買いました。 こういう、銃をろくに撃たずに、それでも戦争の理不尽に巻き込まれる一般庶民のお話は本当にきつい。でも、こういう...
本屋で気になって気になって、でもきっと読んだら重くてきついだろうな、と手に取るだけでやめること数回。いつまでたっても気になり続けるので、これは逃げられない、と買いました。 こういう、銃をろくに撃たずに、それでも戦争の理不尽に巻き込まれる一般庶民のお話は本当にきつい。でも、こういうひとたちの話も知っていないと、あの戦争の本当のかたちは見えてこない。 ほんわりしたかわいい絵柄な分、よけいにぐっときます。 若い世代に薦めたい本です。
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